磁気ディスクのエネルギー消費効率

基準エネルギー消費効率

 磁気ディスクが省エネ法の対象になったのは1999年であり、告示で省エネ基準が定められています。その告示は1999年経済産業省告示195号(廃止・制定)「磁気ディスク装置のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改正2021年告示96号です1)。新しい改正が2021年に行われており、前告示の目標年度は2022年まで、改正された告示の目標年度は2023年度以降となっています。基準エネルギー消費効率は以下の通りです。

<目標年度(2011年度以降~2022年度まで)>

区 分基準エネルギー消費効率の算定式
磁気ディスク装置の種別磁気ディスク装置の形状及び性能回転数用途区分名
単体ディスクディスクサイズが75ミリメートル超であってディスク枚数が1枚のものE=exp(2.98×ln (N)-30.8)
ディスクサイズが75ミリメートル超であってディスク枚数が2枚又は3枚のものE=exp(2.98×ln (N)-31.2)
ディスクサイズが75ミリメートル超であってディスク枚数が4枚以上のものE=exp(2.11×ln (N)-23.5)
ディスクサイズが50ミリメートル超75ミリメートル以下であってディスク枚数が1枚のもの5000回毎分以下E=exp(2.98×ln(N)-29.8)
5000回毎分超6000回毎分以下E=exp(2.98×ln(N)-31.2)
6000回毎分超E=exp(4.30×ln (N)-43.5)
ディスクサイズが50ミリメートル超75ミリメートル以下であってディスク枚数が2枚又は3枚のもの5000回毎分以下E=exp(2.98×ln(N)-31.5)
5000回毎分超6000回毎分以下E=exp(2.98×ln(N)-32.2)
6000回毎分超E=exp(4.58×ln(N)-46.8)
ディスクサイズが50ミリメートル超75ミリメートル以下であってディスク枚数が4枚以上のものE=exp(2.98×ln (N)-31.9)
ディスクサイズが40ミリメートル超50ミリメートル以下であってディスク枚数が1枚のものE=exp(2.98×ln (N)-30.2)
ディスクサイズが40ミリメートル超50ミリメートル以下であってディスク枚数が2枚以上のものE=exp(2.98×ln (N)-30.9)
サブシステムメインフレームサーバ用のものE=exp(1.85×ln (N)-18.8)
区分名がM以外のものE=exp(1.56×ln (N)-17.7)
備考1. 「メインフレームサーバ」とは、専用CISC(ビット数の異なる複数の命令を実行できるように設計されたCPUのうち、電子計算機毎に専用に設計されたものをいう。)が搭載されたサーバ型電子計算機(ネットワークを介してサービス等を提供するために設計された電子計算機をいう。)をいう。
2. E及びNは次の数値を表すものとする。
 E:基準エネルギー消費効率(W/GB)
 N:回転数(回/分)
3. lnは底をeとする対数を表す。

<目標年度(2023年度以降)>

磁気ディスク装置
一台当たりのディスク
ドライブ搭載可能数
ディスクドライブ
の外形寸法
ディスク枚数区分名基準エネルギー
消費効率又は
その算定式
1台1枚 ⅠE=exp(2.98×ln(N)-30.8)
2枚又は3枚 ⅡE=exp(2.98×ln(N)-31.2)
4枚以上 ⅢE=exp(2.11×ln(N)-23.5)
2台以上11台以下 ⅣE=exp(1.56×ln(N)-17.7)
12台以上3.5型(幅75mm超)
を含む構成
 Ⅴ0.0017
2.5型(幅75mm以下)
のみの構成
 ⅥE=exp(0.952×ln(N)-14.2)
備考1. E及びNは次の数値を表すものとする。
E:基準エネルギー消費効率(W/GB)
N:ディスクドライブの定常回転数(回/分)
2. nは底をeとする対数を表す。
3. 回転数の異なるディスクドライブが混載される場合にあっては、回転数(N)は、各ディスクドライブの回転数を搭載台数で加重平均した値とする。
4. 幅はディスクドライブ外形の3つの辺のうち、長さが中間であるものとする。

 目標年度2023年度以降の対象範囲は「交流電源から給電を受けず、USBケーブル等直流電源の給電のみで動く磁気ディスク装置(いわゆるバスパワー)は、消費電⼒が⽐較的⼩さく、国際規格において測定⽅法が明らかとなっていないため、新たに除外する」とされています2)

 そのため、新告示ではバスパワーがほとんどの2.5インチと3.5インチを分けることなく、ディスクの大きさでは区分せず、ディスクドライブ内のディスク枚数の違いにより「1枚」、「2枚又は3枚」、「4枚以上」の3つの区分(新区分ⅠからⅢ)とされました。ディスクドライブを2~11台搭載可能な磁気ディスク装置については現行のサブシステムの2区分が統合(新区分Ⅳ)されました。また、データセンター等で用いられる様なディスクドライブを12台以上搭載可能な磁気ディスク装置については、ディスクドライブの外形寸法により2つに区分(新区分Ⅴ及びⅥ)とされました。

 各区分の新旧の基準エネルギー消費効率の比較を下図に示します。目標年度2022年度までの基準は区分が細かく分かれていましたが、目標年度2023年度以降は下図の区分にまとめられました。例えば、単体ディスク(ディスク1枚)のものは旧告示の区分A、D、E、F、Kが区分Ⅰに統一されています。区分Ⅰの基準エネルギー消費効率は回転数の関数として設定されており、7,000回転で0.01W/GB程度の値となっています。

出所)総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会、省エネルギー小委員会、電子計算機及び磁気ディスク装置判断基準ワーキンググループ、「磁気ディスク装置判断基準等のとりまとめ」、2020年8月

エネルギー消費効率の測定方法

 以下に告示に示されたエネルギー消費効率の測定方法を以下にそのまま引用します。

 エネルギー消費効率は、次に掲げる方法により測定した消費電力をワット単位で表した数値を、記憶容量(物理的に記憶できる最大の記憶容量であり、磁気ディスク装置に搭載するデータ記憶に使用するディスクドライブごとの記憶容量の合計とする。ディスクアレイの冗長部分やミラーリングのミラー部分の記憶容量を含み、容量最適化技術による論理容量は含まない。)をギガバイト単位で表した数値で除した数値とする。ただし、実測が困難な場合には計算式によって算出することを認める。
(1) 周囲温度は18℃~28℃、周囲湿度は15~80%とすること。
(2) 電源電圧は定格消費電力が1500W以下では、電源電圧±1%の範囲とし、1500W超では±5%の範囲とすること。
(3) 電源周波数は、定格周波数とすること
(4) 単体ディスクについては、内蔵する制御装置、バッファ用のキャッシュメモリ及びディスクドライブの範囲で測定する。
(5) 1(2)の区分名がⅤ又はⅥであるものについては、必要な電源、バッファ用のキャッシュメモリ及び制御装置を搭載し、最大構成で測定すること。ただし、最大構成での実測が困難な場合には、製造事業者等は算出過程を明らかにした上で、計算式によって算出すること(制御装置を持つ筐体(以下「基本筐体」という。)と制御装置を持たない筐体(以下「拡張筐体」という。)から成る構成の消費電力から基本筐体の消費電力を差し引くことにより、拡張筐体の消費電力を求め、最大構成時の拡張筐体の個数との積に基本筐体の消費電力を加算することで、最大構成の消費電力とすることができる。)。なお、区分名ⅤとⅥの双方の構成があり得る装置の場合は、それぞれの最大構成で測定すること。
(6) 電源を入力し、ディスクが回転している状態で、直ちにデータの書き込み及び読み取りをすることが可能な状態(以下「レディアイドルモード」という。)で、5秒以下の測定間隔で消費電力を7200秒間測定し、平均消費電力を算出すること。ただし、1(2)の区分名がⅠ、Ⅱ、Ⅲ又はⅣの 装置で、7200秒間の測定時間中レディアイドルモードを維持できない場合には、製造事業者等は、測定過程を明らかにして、測定時間を短縮すること等ができる。

<参考文献>
1)1999年経済産業省告示195号(廃止・制定)「磁気ディスク装置のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改正2021年告示96号
2)総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会、省エネルギー小委員会、電子計算機及び磁気ディスク装置判断基準ワーキンググループ、「磁気ディスク装置判断基準等のとりまとめ」、2020年8月