電子レンジのエネルギー消費効率

基準エネルギー消費効率

 電子レンジは省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)施行令(1979年政令第267号)の第18条第20号に掲げられた特定エネルギー消費機器の1つです。その省エネ基準(基準エネルギー消費効率)は2006年経済産業省告示第63号(制定)「電子レンジのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号に示されています1)。 

(1)対象範囲

 まず、対象となる範囲は、「業務用のもの、定格入力電圧が200V専用のもの、組込形のもの、ガスオーブンを有するもの、庫内高さが135mm 未満のものを除く」とされています2)。これらの製品が除外された理由は、エネルギー消費効率の測定方法が設定できないこと(組み込み方のもの、庫内高さ135mm未満)や、普及台数が少ない(業務用、組み込み式のもの)ことなどによります。

(2)目標年度

 また、目標年度は2008年度です。本基準の制定は2006年であり、新製品の開発が可能な期間として2008年が設定されたものです。

(3)目標基準値

 目標基準値は下表に示すように6区分に分けられて決められています。区分は電子レンジの「機能」、「加熱方式」、「庫内容積」に着目しています。「機能」はオーブン機能の有無により2区分、「加熱方式」はヒーターの露出の有無及び熱風循環加熱方式により3区分、「庫内容積」は30L未満、以上の2区分に分類されています。そしてこれらの組み合わせにより、全体で6区分となっています。

 電子レンジの基準エネルギー消費効率は年間消費電力量(kWh/年)により設定されています。「区分A」の単機能レンジ(オーブン機能を有するもの以外)の基準エネルギー消費効率は60.1(kWh/年)です。オーブン機能を有する「区分B」から「区分F」まではそれよりやや大きな年間消費電力量が設定されています。加熱方式が同じでも庫内容積が大きなものは基準エネルギー消費効率が大きくなっています。

表-1 電子レンジの基準エネルギー消費効率

区 分基準エネルギー消費効率
 機 能 加熱方式 庫内容積区分名 (kWh/年)
オーブン機能を有する
もの以外(単機能レンジ)
 A   60.1
オーブン機能を有するもの
(オーブンレンジ)
ヒーターの露出があるもの
(熱風循環加熱方式のものを除く)
30L未満のもの B   73.4
30L以上のもの C   78.2
ヒーターの露出があるもの以外
(熱風循環加熱方式のものを除く)
30L未満のもの D   70.4
30L以上のもの E   79.6
熱風循環加熱方式のもの F   73.5
備考「庫内容積」とは、家庭用品品質表示法(1962年法律第104号)に基づく電気機械機具品質表示規程で定める加熱室の有効寸法より算出した数値をいう。

エネルギー消費効率の測定方法

 電子レンジのエネルギー消費効率は年間消費電力量ですが、この年間消費電力量は次の式により算出するものとされています。以下、測定方法の詳細を告示から引用します。

 E={(580.8×AV285+66×AV245+571.1×AV125+205×AV185)+31×B+6400×C}/1000

 この式において、E、AV285、AV245、AV125、AV185、B及びCは、それぞれ次の数値を表すものとする。

 E:エネルギー消費効率(kWh/年)
 AV285:電子レンジ機能の285gの疑似負荷の加熱に要する1回当たりの消費電力量(Wh/回)
 AV245:電子レンジ機能の245gの疑似負荷の加熱に要する1回当たりの消費電力量(Wh/回)
 AV125:電子レンジ機能の125gの疑似負荷の加熱に要する1回当たりの消費電力量(Wh/回)
 AV185:電子レンジ機能の185gの疑似負荷の加熱に要する1回当たりの消費電力量(Wh/回)
 B:オーブン機能の1回当たりの消費電力量(Wh/回)
 C:1時間当たりの待機時消費電力量(Wh/回)


(1) A:電子レンジ機能の1回当たりの消費電力量(Wh/回)
 電子レンジ機能の1回当たりの消費電力量は、次の方法により実容器を使用して4℃から70℃までの加熱に要する消費電力量とし、2回の測定による算出値の平均値とする。ただし、2回の算出値の平均値と2回の算出値を比べ、その乖離が±1.5%以上ある場合は、更に測定を2回追加して行い、計4回の算出値の平均値とする。

①実容器を使用して4℃から70℃までの加熱に要する消費電力量は、②による疑似負荷量それぞれにより、次式により算出した数値とする。
A=A1070×〔〔1-{2257×(M10-M70)}/{(4.187×M+0.55×m)×(T70-T10)+2257×(M10-M70)}〕×{66/(T70-T10)}×{(4.187×M+C×mJ)/(4.187×M+0.55×m)}+{2257×(M10-M70)}/{(4.187×M+0.55×m)×(T70-T10)+2257×(M10-M70)}〕

 この式において、A、A1070、T10、T70、M10、M70、M、m、m及びCは、それぞれ次の数値を表すものとする。

 A:実容器を使用して4℃から70℃までの加熱に要する消費電力量(Wh/回)
 A1070:T70℃の加熱に要した消費電力量(Wh)
 T10:疑似負荷温度の加熱前温度(℃)
 T70:疑似負荷温度の加熱後温度(℃)
 M10 :T10℃のときの疑似負荷と試験容器の質量(g)
 M70:T70℃のときの疑似負荷と試験容器の質量(g)
 M:疑似負荷質量(g)
 m:試験容器の質量(g)
 m:実容器の質量(g)
 C:実容器の比熱(J/gK)
 なお、m及びCの数値は表1による。

表1 消費電力量算定式の係数

疑似負荷質量実容器の質量実容器の比熱
M(g)mJ(g)CP (J/(g・K))
2854001.07
245
1252001.07
1852500.55

② 疑似負荷は水とし、表2の左欄に掲げる疑似負荷質量とする。

表2 疑似負荷質量と試験容器の仕様

 疑似負荷質量M(g)試験容器の仕様
   285日本産業規格R3503(1994)に規定する外径150mm、高さ75mmの結晶皿
   245
   125日本産業規格R3503(1994)に規定する外径90mm、高さ45mmの結晶皿
   185日本産業規格R3503(1994)に規定する胴外径66mm、高さ135mmのトールビーカ

③ 試験容器は、表2の左欄の疑似負荷質量に応じて、右欄に掲げる試験容器を使用すること。また、その質量m(g)を測定する。
④ 食味の評価を上げる目的で付加的な機能を設けている機器であって、消費者によってその機能をON/OFFできる場合は、付加機能をOFFにして測定することができる。
⑤ 電子レンジ庫内の試験開始前の温度は、23±2℃とする。
⑥ 試験を続けて行う時には、1回目の試験が終了後、2回目の試験は強制冷却を最低15分間行い2回目の試験を実施する。
⑦ 疑似負荷と試験容器の質量M10(g)を測定する。
⑧ 疑似負荷及び容器の試験開始前温度を10±1℃とし、電子レンジ庫内の皿を幾何学的中心に置く。
⑨ 電子レンジ機能を用いて、疑似負荷の温度を70±2℃に加熱する。
⑩ 電子レンジの出力設定は、手動でできる最高出力で測定する。
⑪ 加熱後、速やかに疑似負荷を攪拌し、疑似負荷温度T70℃を測定する。また、疑似負荷と容器の質量M70(g)とその加熱に要した消費電力量A1070(Wh)を測定する。

(2) B:オーブン機能の1回当たりの消費電力量(Wh/回)
 オーブン機能の1回当たりの消費電力量は、次の方法により測定した消費電力量とし、2回測定した測定値の平均値とする。だたし、2回の測定値の平均値と2回の算出値を比べ、その乖離が±1.5%以上ある場合は、更に測定を2回追加して行い、計4回の測定値の平均値とする。
① 電子レンジ庫内の試験開始前の温度は23±2℃とすること。
② 電子レンジの庫内は空とし、庫内に負荷及び受皿はいれないこととする。ただし、受皿を載せて回転する回転台をもつものにあっては、回転台を取り付けた状態とする。
③ 熱電対の取り付け位置は、電気機械器具品質表示規程別表第2(第2条関係)14(2)による幅、奥行、高さの1/2の庫内中心とする。
④ オーブン庫内の温度が、初温より177K(ケルビン)上昇するまでの消費電力量をB(Wh)とし、その後継続して、その状態を20分間保持した間の消費電力量をB(Wh)とし、 BとBを合算した値とする。
⑤ ただし、機種によっては、温度設定機構上、温度を一定にすることが困難な場合がある。その場合は、原則として、初温より177K上昇した温度を挟む2点の保持温度及び消費電力量を測定し、直線補間により初温から177K上昇した温度の消費電力量を算出することとする。なお、177K上昇した温度を挟む2点が取れない機種の場合は、その機種で選択できるに177K上昇した温度に最も近い温度設定の2点を取ることとする。いずれの場合も
、次式に基づき、初温から177K上昇した温度の消費電力量を算出する。 B=B+(B-B)×(T-T)/(T-T
だたし、
B :初温より177K上昇した温度の消費電力量(Wh)
:低温度側保持の消費電力量(Wh)
:高温度側保持の消費電力量(Wh)
:低温度側保持温度(℃)
:高温度側保持温度(℃)
T :初温より177K上昇した温度(℃)

(3)C:1時間当たりの待機時消費電力量(Wh/h)
1時間当たりの待機時消費電力量は、電子レンジに交流電源が供給されている状態で、かつ調理をしていない状態において、以降機器の状態に変化が起こらない安定状態で、1時間測定した消費電力量の数値とする。

(4)測定条件
エネルギー消費効率の測定は、以下の条件の下で行うものとする。
① 周囲温度は23±2℃とする。
② 機器は、厚さが10mm以上の表面が平らな木台の上に通常の状態で設置する。
③ 電源電圧は100±1V、電源周波数は50±0.1Hz又は60±0.1Hzとする。
④ 秤は、0.1gまで計測可能なものとし、測定値に対する相対誤差の大きさとして±0.5%以内を確保すること。
⑤ 電力量計は、測定値に対する相対誤差の大きさとして±2%以内を確保すること。
⑥ 温度計は、日本産業規格B7414(2018)表4のMの温度計、又は同等品を使用すること。
⑦ 熱電対は、日本産業規格C1602(2015)に規定される種類Kのもの、かつクラス1のものを使用すること。

<参考文献>
1)2006年経済産業省告示第63号(制定)「電子レンジのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
2)経済産業省:総合資源エネルギー調査会省エネルギー基準部会、電子レンジ判断基準小委員会、最終取りまとめ