ガス温水器のエネルギー消費効率

エネルギー別の省エネ法の対象温水器と対応する告示

 温水器は省エネ法の特定エネルギー消費機器の対象となっており、省エネ基準も決められています。省エネ法の適用になっている温水器をエネルギー別に示すと以下の通りです1)2)3)

表-0 エネルギー別の省エネ法の対象温水器と対応する告示

エネルギー 対象設備  経産省告示 目標年度
ガスガス温水器2002年経済産業省告示第434号「ガス温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(制定)、2021年告示第97号(最終改定)・2006年度(瞬間湯沸器、ふろがま)
・2008年度(暖房機器)
・2025年度
石油石油温水器2002年経済産業省告示第435号「石油温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(制定)、2021年告示第98号(最終改訂)・2006年度
・2025年度
電気ヒートポンプ式温水器2013年経済産業省告示第38号「電気温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(制定)、2021年告示第115号(最終改定)・2017年度
・2025年度

 ガス温水器と石油温水器は2002年の経済産業省告示により省エネ基準が決められおり、その時点の目標年度は瞬間湯沸器、ふろがまは2006年、暖房機器は2008年度でした。2021年の改定で2025年を目標とした新たな省エネ基準が決められています。

 また、電気をエネルギー源とした温水器は、省エネ法の対象となっているのはヒートポンプ式温水器(エコキュート)のみです。これは、水の潜熱を利用した熱効率の高いものです。潜熱を利用した温水器はガス温水器、石油温水器でも製造されていますが、従来型と潜熱利用型の普及率を基に、平均した省エネ基準として算定されています。

 以下ではガス温水器についての省エネ基準について説明します。ガス温水器の用途は湯沸かし、ふろがま(湯はり、追い焚き)、温水暖房があります。これらの用途や構造等によって省エネ基準が決められています。

基準エネルギー消費効率

(1) 対象範囲

① 旧告示において適用除外している機種
 • 貯蔵式湯沸器
 • 業務の用に供するために製造されたもの
 • 都市ガスのうち13Aガスグループに属するもの及び液化石油ガス以外のガスを燃料とするもの
 • 浴室内に設置するガスふろがまであって、不完全燃焼を防止する機能を有するもの
 • 給排気口にダクトを接続する構造の密閉式ガスふろがま

②新告示によって新たに適用除外する機種
 a)ガス瞬間湯沸器
 • ガス瞬間湯沸器のうち通気方式が自然通気式かつ給排気方式が開放式のもの以外のもの
 b)ガスふろがま
 • ガスふろがまのうち給湯の機能を有しないもの
 • 給湯の機能を有するガスふろがまのうち通気方式が自然通気式のもの
 • 給湯の機能を有するガスふろがまのうち通気方式が強制通気式かつ循環方式が自然循環式のもの
 • 給湯の機能を有するガスふろがまのうち通気方式が強制通気式かつ循環方式が強制循環式で、給排気方式が屋外式のもの以外のもの
 c)ガス暖房機器
 • 暖房の用のみに供するもの

(2) 目標年度

 <旧告示>
 ・2006年度(瞬間湯沸器、ふろがま)
 ・2008年度(暖房機器)
 <新告示>
 ・2025年度

(3)ガス温水器の目標基準値(目標年度2006年度)

 ガス温水器の省エネ基準等は2002年経済産業省告示第434号(制定)「ガス温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2021年経済産業省告示第97号によって規定されています。

 ガス温水器の省エネ区分別の省エネ基準(目標年度2006年)を表-1に示します。表-1に示すように、省エネ基準は2006年度目標(ガス暖房機器は2008年度)のものについては、用途(瞬間湯沸器、ふろがま、暖房の3種)、通気方式(自然通期、強制通気の2種)、循環方式(自然循環、強制循環)、給排気方式(開放、半密閉、密閉式、屋外式など)により区分が決められいます。

 ガス温水器のエネルギー消費効率の指標は熱効率です。下表に示す通り、ガス温水器の省エネ基準(熱効率の基準)は70%台が多く、最大でも83.5%(区分A)となっています。

表-1 ガス温水器の省エネ基準(目標年度2006年度または2008年度以降)

   区 分基準エネルギー
種別通気方式循環方式給排気方式区分名消費効率(%)
ガス瞬間湯沸器自然通気式開放式 A 83.5
開放式以外のもの B 78.0
強制通気式屋外式以外のもの C 80.0
屋外式 D 82.0
ガスふろがま
(給湯付のもの以外)
自然通気式自然循環式半密閉式又は密閉式 (給排気部
が外壁を貫通する位置が半密閉
式と同程度の高さのもの)
 E 75.5
密閉式(給排気部が外壁を貫通
する位置が半密閉式と同程度
の高さのもの以外)
 F 71.0
屋外式 G 76.4
強制通気式自然循環式 H 70.8
強制循環式 I 77.0
ガスふろがま
(給湯付のもの)
自然通気式自然循環式半密閉式又は密閉式(給排気部
が外壁を貫通する位置が半密閉
式と同程度の高さのもの)
 J 78.0
密閉式(給排気部が外壁を貫通
する位置が半密閉式と同程度
の高さのもの以外)
 K 77.0
屋外式 L 78.9
強制通気式自然循環式 M 76.1
強制循環式屋外式以外のもの N 78.8
屋外式 O 80.4
ガス暖房機器
(給湯付のもの以外)
 P 83.4
ガス暖房機器
(給湯付のもの)
 Q 83.0
出所)資源エネルギー庁:省エネ性能カタログ(家庭用)、2021年版

(4)ガス温水器の目標基準値(目標年度2025年度)

 目標年度が2025年度については、用途(瞬間湯沸器、ふろがま、暖房機器)、通気方式(自然通気式、強制通気式)、構造(壁貫通型、壁組込型、強制給排気式、強制排気式、レンジフード一体型、その他)により区分が決められており、その省エネ基準は表-2の通りです。

 目標年度が2025年度の省エネ基準は、多くの区分で80%を超える性能となっています。

表-2 ガス温水器の省エネ基準(目標年度2025年度以降)

   区    分基準エネルギー消費効率又はその算定式
区分名 用 途 通気方式  (%)
 Ⅰガス瞬間湯沸器自然通気式 η=77.50
 Ⅱ強制通気式 η=84.37×αⅡi
 Ⅲガスふろがま η=87.21×αⅢi
 Ⅳガス暖房機器 η=90.32
備考 1. ηは次の数値を表すものとする。
 η:基準エネルギー消費効率(%)
2. αⅡi は次の表の左欄に掲げる構造の種類に応じ、同表の右欄に掲げる数値とする。
    構造の種類   αⅡi 
 構造名 構 造 
 Ⅱ-1壁貫通型 0.9998
 Ⅱ-2壁組込型 0.9869
 Ⅱ-3強制給排気式 0.9900
 Ⅱ-4強制排気式(従来型に限る。) 0.9661
 Ⅱ-5レンジフード一体型(従来型に限る。) 0.8415
 Ⅱ-6その他 1.0000
3.αⅢi は次の表の左欄に掲げる構造の種類に応じ、同表の右欄に掲げる数値とする。
   構造の種類 αⅢi 
 構造名 構 造
 Ⅲ-1壁貫通型 0.9839
 Ⅲ-2壁組込型(従来型に限る。) 0.9576
 Ⅲ-3その他 1.0000
4. 「壁貫通型」とは、日本産業規格 (以下JISと略称) S2092(2010)の4の表3の屋内式機器の給排気方式による区分に規定する密閉式かつ自然給排気式(BF)の機器の給排気筒トップに置き換えて設置する機器であってJIS S2092(2010)の表2の屋内外設置による区分に規定する屋外式の機器をいう。
5. 「壁組込型」とは、壁組込型取付ボックスと一体の機器としてガス機器防火性能評定試験により評定された機器であってJIS S2092(2010)の表2の屋内外設置による区分に規定する屋外式の機器をいう。
6. 「強制給排気式」とは、JIS S2092(2010)の4の表3の屋内式機器の給排気方式による区分に規定する密閉式かつ強制給排気式(FF)の機器をいう。
7. 「強制排気式」とは、JIS S2092(2010)の4の表3の屋内式機器の給排気方式による区分に規定する半密閉式かつ強制排気式(FE)の機器をいう。
8. 「レンジフード一体型」とは、JIS S2092(2010)の4の表3の屋内式機器の給排気方式による区分に規定する密閉式かつ強制給排気式の強制給排気外壁式(FF-W)の機器であって操作部がレンジフードに内蔵されており給気管及び排気管の直径が40mm以下の機器をいう。
9. 「従来型」とは、JIS S2091(2013)の4.4のa)の燃焼機器の種類に規定する潜熱回収型燃焼機器以外の機器をいう。
出所)経済産業省:総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会、ガス・石油機器判断基準ワーキンググループ取りまとめ、2020年7月

(5)製品への表示事項

 製造事業者に求められている表示内容は以下の通りです。
(1) 品名または形名
(2) 区分名
(3) 構造名(表-2の左欄に掲げる区分名がⅡ又はⅢであるものに限る。)
(4) エネルギー消費効率
(5) 製造事業者等の氏名又は名称

エネルギー消費効率の測定方法

 表-1のエネルギー消費効率は、それぞれ次に定めるところによるものとする。

① 表-1の左欄に掲げる区分のガス温水機器の種別がガス瞬間湯沸器であるもののエネルギー消費効率は、JIS S2109(2019)の9試験方法に規定する瞬間湯沸器の定格熱効率試験により測定した熱効率とする。
② 表-1の左欄に掲げる区分のガス温水機器の種別がガスふろがま(給湯付のもの以外)であるもののエネルギー消費効率は、JIS S2109(2019)の9試験方法に規定するふろ定格熱効率の試験方法により測定した熱効率とする。
③ 表-1の左欄に掲げる区分のガス温水機器の種別がガスふろがま(給湯付のもの)であるもののエネルギー消費効率は、②で測定した熱効率と①で測定した熱効率を1対3.3の比率により加重平均した値とする。
④ 表-1の左欄に掲げる区分のガス温水機器の種類がガス暖房機器(給湯付きのもの以外)であるもののエネルギー消費効率は、熱効率とし、当該熱効率は次の式により算出するものとする。

 なお、高温と低温の2種類の循環水を利用する機器にあっては、高温水における熱効率と低温水における熱効率を単純平均した数値をいう。

η=[{4.19×Gh×(Th3-Th4))}/(V×Q)]×{101.3×(273+Tg)}/{(B+Pm-S) ×273}×100

 この式において、η、Gh、Th3、Th4、V、Q、Tg、B、Pm及びSは、それぞれ次の数値を表すものとする。

 η:熱効率(%)
 Gh:冷却水の水量(kg)
 Th3:冷却水の出口温度(℃)
 Th4:冷却水の入口温度(℃)
 V:実測ガス消費量(m3
 Q:ガスの総発熱量(kJ/m3
 Tg:測定時のガスメータ内のガス温度(℃)
 B:測定時の大気圧(kPa)
 Pm:測定時のガスメータ内のガス圧力(kPa)
 S:温度tg(℃)における飽和水蒸気圧(kPa)

<熱効率の温度補正、圧力補正について>
 
上記の熱効率の算定に用いているガスの発熱量(Q)は、1気圧(101.3kPa)、0℃の値となっています。そのため、測定時の実測ガス量(V)をこの条件に合わせて補正する必要があります。
 具体的には、理想気体の以下の一般式から導出されます。
 PV=nRT
 P:圧力
 V:体積
 T:温度
 n:モル数
 R:気体状数
 この式を変形した以下の式から、体積(V)は温度(T)に比例し、圧力(P)に反比例することが分かります。
 V=nRT/P
 したがって、1気圧、0℃の時の体積(V)に補正するためには、以下を用いることになります。
 1気圧への補正:V×(B+Pm-S)/101.3
 0℃への補正:V×273/(273+Tg

ⅰ. V:実測ガス消費量(m3
 高温水を使用するものにあっては、暖房循環温水の往き温度を80±3℃に設定し、かつ、暖房循環温水の戻り温度と暖房循環温水の往き温度との差が20~30Kになるよう循環温水の流量と冷却水の流量を調節し、暖房循環温水の戻り温度と暖房循環温水の往き温度の差が安定した状態において、ガスメータが1回転以上整数回転する間出湯した場合のガス消費量をいう。
 低温水を使用するものにあっては、上記において暖房循環温水の往き温度を60±3℃に設定した場合のガス消費量をいう。

ⅱ. ⅰの実測ガス消費量の測定は、次の条件の下で行うものとする。
ア 試験室の温度は20±5℃、試験室の湿度は65±20%とすること。なお、試験室の雰囲気、試験室の温度の測定については、JIS S2093(2019)の4.1試験室の条件の規定に準拠すること。
イ ガス消費量の測定は、JIS S2093(2019)の9ガス消費量試験の1.ガス消費量の測定a)機器の状態及びb)試験の条件に規定される状態とすること。
ウ 機器の設置状態は、JIS S2109(2019)の表12温水機器の性能及び試験方法の平常時温度上昇(機器の各部)に規定される状態とすること。
エ 屋内式の機器の吸排気管の長さについては、取扱説明書に記載する最も短い長さとすること。
オ 暖房循環温水の戻り温度及び往き温度の測定に当たっては、機器の戻り口及び往き口の近傍とする。また、冷却水の入口温度及び出口温度の測定に当たっては、熱交換器入口及び出口の近傍とする。
カ 熱交換器は定格出力に適するものとし、プレート式熱交換器を用いること。キ ポンプの能力は最大とすること。

⑤ 表-1に掲げる区分のガス温水機器の種別がガス暖房機器(給湯付のもの)であるもののエネルギー消費効率は、④で測定した熱効率と①で測定した熱効率を1対3の比率により加重平均した値とする。

 表-2のエネルギー消費効率は、それぞれ次に定めるところによるものとする。
① 表-2の左欄に掲げる区分名がⅠ、Ⅱ又はⅢであるもののエネルギー消費効率は、JIS S2075(2011)に規定する方法により測定し、同規格附属書Bにより算出したモード熱効率とする。
② 表-2の左欄に掲げる区分名がⅣであるもののエネルギー消費効率は、JIS S2112(2019)の9試験方法に規定する温水熱源機部の熱効率試験により測定した熱効率とJIS S2109(2019)の9試験方法に規定する瞬間湯沸器の定格熱効率試験により測定した熱効率を1対3の比率により加重平均した値とする。

<参考文献>
1)経済産業省:2002年経済産業省告示第434号「ガス温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(制定)、2021年告示第97号(最終改定)
2)経済産業省:2002年経済産業省告示第435号「石油温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(制定)、2021年告示第98号(最終改訂)
3)経済産業省:2013年経済産業省告示第38号「電気温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(制定)、2021年告示第115号(最終改定)
4)資源エネルギー庁:省エネ性能カタログ(家庭用)、2021年版
5)経済産業省:総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会、ガス・石油機器判断基準ワーキンググループ取りまとめ、2020年7月