小売り事業者の省エネの表示内容
エネルギー消費機器の小売事業者に対する省エネラベリング制度の概要については、「エネルギー消費機器のトップランナー制度と省エネラベリング制度」に示した通りです。ここでは、エネルギー消費機器別に具体的な省エネラベルの内容について、関連する経済産業省の告示に基づいて説明していきます。
この制度の法的根拠は2006年8月18日経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」です。
複数回の改定が行われ2020年11月の改定で、4製品(照明器具、冷蔵庫、冷凍庫、電気便座)について「5段階」から「41段階」に多段階評価点に変更しました。また2021年の改正ではガス温水器、石油温水器、電気温水器、テレビの4製品について、そして2022年9月に最後に残っていたエアコンについても「41段階」の評価に変わりました。
従って、小売り事業者の省エネラベルの表示内容は以下のように変更されています。
表-1 小売事業者の省エネ表示内容
No. | エネルギー消費機器 | 多段階評価 | 省エネラベル | 電気代等 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
1 | エアコンディショナー | 〇 (41段階) | 〇 | 〇 | 省エネラベルはJIS C9901に従う |
2 | 照明器具 | 〇 (41段階) | 〇 | 〇 | 〃 |
3 | テレビジョン受信機 | 〇 (41段階) | 〇 | 〇 | 〃 |
4 | 電子計算機 | 〇 | 〃 | ||
5 | 磁気ディスク装置 | 〇 | 〃 | ||
6 | ビデオテープレコーダー | 〇 | |||
7 | 電気冷蔵庫 | 〇 (41段階) | 〇 | 〇 | 〃 |
8 | 電気冷凍庫 | 〇 (41段階) | 〇 | 〇 | 〃 |
9 | ストーブ | 〇 | 省エネラベルはJIS S2070に従う | ||
10 | ガス調理機器 | 〇 | 〇 (燃料使用量) | 〃 | |
11 | ガス温水機器 | 〇 (41段階) | 〇 | 〇 (燃料使用量) | 〃 |
12 | 石油温水機器 | 〇 (41段階) | 〇 (燃料使用量) | 〃 | |
13 | 電気便座 | 〇 (41段階) | 〇 | 〇 | 省エネラベルはJIS A4423に従う |
14 | ジャー炊飯器 | 〇 | 〇 | 省エネラベルはJIS C9901に従う | |
15 | 電子レンジ | 〇 | 〇 | 〃 | |
16 | DVD レコーダー | 〇 | 〇 | 〃 | |
17 | ルーティング機器 | 〇 | 〃 | ||
18 | スイッチング機器 | 〇 | 〃 | ||
19 | 電気温水機器 (ヒートポンプ式給湯器) | 〇 (41段階) | 〇 | 〃 | |
20 | 電球 | 〇 | 〇 | 〃 |
多段階評価点の算出方法
2022年9月の改正で、照明器具、冷蔵庫、冷凍庫、電気便座、ガス温水器、石油温水器、電気温水器、テレビ、エアコンが41段階の多段階評価点になりました。ここでは、これら製品の多段階評価点(41段階)の算出方法を整理します。
下表においては、Eはエネルギー消費効率であり、これは製品により異なった指標になっています。冷蔵庫、冷凍庫、電気便座、テレビは年間消費電力量(kWh/年)であり、照明器具は全光束のエネルギー消費効率(lm/W)、温水器は熱効率(%)です。
多段階評価点(Y)を算出するには多段階評価比率(X)を求めますが、それは設定されたEMと製品のEとの比率で計算されます。エネルギー消費効率が 年間消費電力量の場合はX=EM/E、 エネルギー消費効率がそれ以外の場合はX=E/EMで計算されます。
表-2 多段階評価点の算定方法(1)
照明器具 | 冷蔵庫 | 冷凍庫 |
---|---|---|
(1) Xが100未満の場合 Y=2+1/13×(X-100) Y:1未満の場合は1.0とする (2) Xが100以上の場合 Y=2+2.5/164×(X-100) Y:5を超える場合は5.0とする | (1) Xが100未満の場合 Y=2+1/29×(X-100) Y:1未満の場合は1.0とする (2) Xが100以上の場合 Y=2+2.5/61×(X-100) Y:5を超える場合は5.0とする | (1) Xが100未満の場合 Y=2+1/13×(X-100) Y:1未満の場合は1.0とする (2) Xが100以上の場合 Y=2+2.5/189×(X-100) Y:5を超える場合は5.0とする |
X=E/EM×100 EM=50(lm/W) | (1) 調整内容積が266以下の場合 X=EM/E×100 EM=0.735V+122 (kWh/年) (2) 調整内容積が266超の場合 X=EM/E×100 EM=0.199V+265 (kWh/年) | X=EM/E×100 EM=1.328V+80 (kWh/年) |
E=エネルギー消費効率、Y:多段階評価点、X:多段階評価比率、V:調整内容積(L) |
表-3 多段階評価点の算定方法(2)
電気便座 | 温水器 | テレビ |
---|---|---|
(1) Xが100未満の場合 Y=2+1/10×(X-100) Y:1未満の場合は1.0とする (2) Xが100以上の場合 Y=2+2.5/173×(X-100) Y:5を超える場合は5.0とする | (1) Xが100未満の場合 Y=3+2/11×(X-100) Y:1未満の場合は1.0とする (1) Xが100以上の場合 Y=3+2/64×(X-100) Y:5を超える場合は5.0とする | (1) Xが100未満の場合 Y=3+2/59×(X-100) Y:1未満の場合は1.0とする (2) Xが100以上の場合 Y=3+1.5/98×(X-100) Y:5を超える場合は5.0とする |
X=EM/E×100 EM=183(kWh/年) | X=E/EM×100 EM=87.21(%) 注)電気温水機器のエネルギー 消費効率は注釈参照 | X=EM/E×100 EM=0.00728A+62.99(kWh/年) |
E:エネルギー消費効率、Y:多段階評価点、X:多段階評価比率、A:テレビの画面面積(cm2) |
出所)2006年経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」、最終改定2022年経済産業省告示第162号
なお、2022年8月までは5段階評価が行われていたエアコンが多段階評価点方式に変更され、全ての機器が多段階評価点を採用することになりました。
表-4 多段階評価点の算定方法(3)
エアコン | ||
---|---|---|
(1) Xが100未満の場合 Y=3+2/26×(X-100) Y:1未満の場合は1.0とする (2) Xが100以上の場合 Y=3+1.5/10×(X-100) Y:5を超える場合は5.0とする | ||
X=EM/E×100 EM=6.6(APF:通年エネルギー消費効率) | ||
E:エネルギー消費効率、Y:多段階評価点、X:多段階評価比率 |
<参考文献>
1)2006年経済産業省告示第258号「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」(制定)、最終改定2022年経済産業省告示第162号