第6次エネルギー基本計画の概要

 第6次エネルギー基本計画が2021年10月22日に閣議決定されました。以下にその概要を示します。本資料は経済産業省の基本計画に関する提供資料のうち「第6次基本計画の概要」に示されたものです。

第6次エネルギー基本計画 目次

はじめに
~気候変動問題への対応~
~日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服~
~第六次エネルギー基本計画の構造と2050年目標と2030年度目標の関係~
1.東京電力福島第一原子力発電所事故後10年の歩み
(1)福島復興はエネルギー政策を進める上での原点
(2)今後の福島復興への取組
2.第五次エネルギー基本計画策定時からの情勢の変化
(1)脱炭素化に向けた世界的潮流
(2)気候変動問題以外のエネルギーに関係する情勢変化
3.エネルギー政策の基本的視点(S+3E)の確認
(1)あらゆる前提としての安全性の確保
(2)エネルギーの安定供給の確保と強靭化
(3)気候変動や周辺環境との調和など環境適合性の確保
(4)エネルギー全体の経済効率性の確保
4.2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応
(1)2050年カーボンニュートラル時代のエネルギー需給構造
(2)複数シナリオの重要性
(3)電力部門に求められる取組
(4)産業・業務・家庭・運輸部門に求められる取組
5.2050年を見据えた2030年に向けた政策対応
(1)現時点での技術を前提としたそれぞれのエネルギー源の位置付け
(2)2030年に向けたエネルギー政策の基本的考え方
(3)需要サイドの徹底した省エネルギーと供給サイドの脱炭素化を踏まえた電化・水素化等による非化石エネルギーの導入拡大
(4)蓄電池等の分散型エネルギーリソースの有効活用など二次エネルギー構造の高度化
(5)再生可能エネルギーの主力電源への取組
(6)原子力政策の再構築
(7)火力発電の今後の在り方
(8)水素社会実現に向けた取組の抜本強化
(9)エネルギー安定供給とカーボンニュートラル時代を見据えたエネルギー・鉱物資源確保の推進
(10)化石燃料の供給体制の今後の在り方
(11)エネルギーシステム改革の更なる推進
(12)国際協調と国際競争
(13)2030年度におけるエネルギー需給の見通し
6.2050年カーボンニュートラルの実現に向けた産業・競争・イノベーション政策と一体となった戦略的な技術開発・社会実装等の推進
7.国民各層とのコミュニケーションの充実
(1)エネルギーに関する国民各層の理解の増進
(2)政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実

エネルギー基本計画の全体像

 新たなエネルギー基本計画では、2050年カーボンニュートラル(2020年10月表明)、2030年度の46%削減、更に50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標(2021年4月表明)の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことが重要テーマ。
●世界的な脱炭素に向けた動きの中で、国際的なルール形成を主導することや、これまで培ってきた脱炭素技術、新たな脱炭素に資するイノベーションにより国際的な競争力を高めることが重要。
●同時に、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服が、もう一つの重要なテーマ。安全性の確保を大前提に、気候変動対策を進める中でも、安定供給の確保やエネルギーコストの低減(S+3E)に向けた取組を進める。
●エネ基全体は、主として、①東電福島第一の事故後10年の歩み、②2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応、③2050年を見据えた2030年に向けた政策対応のパートから構成。

東京電力福島第一原子力発電所事故後10年の歩みのポイント

 東京電力福島第一原子力発電所事故を含む東日本大震災から10年を迎え、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが、エネルギー政策の原点。
●2021年3月時点で2.2万人の被災者が、避難対象となっており、被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、最後まで福島の復興・再生に全力で取り組むことは、これまで原子力を活用したエネルギー政策を進めてきた政府の責務。今後も原子力を活用し続ける上では、「安全神話」に陥って悲惨な事態を防ぐことができなかったという反省を一時たりとも忘れることなく、安全を最優先で考えていく。
●福島第一原発の廃炉は、福島復興の大前提だが、世界にも前例のない困難な事業。事業者任せにするのではなく、国が前面に立ち、2041~2051年までの廃止措置完了を目標に、国内外の叡智を結集し、不退転の決意を持って取り組む。
●ALPS処理水については、厳格な安全性の担保や政府一丸となって行う風評対策の徹底を前提に、東京電力が原子力規制委員会による認可を得た上で、2年程度後を目途に、福島第一原子力発電所において海洋放出を行う。
●帰還困難区域を除く全ての地域で避難指示を解除し、避難指示の対象人口・区域の面積は、当初と比較して7割減となった。たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けた環境整備を進める。特定復興再生拠点区域外についても、2020年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう、帰還に関する意向を個別に丁寧に把握した上で、帰還に必要な箇所を除染し、避難指示解除の取組を進めていく。
●浜通り地域等の自立的な産業発展に向けて、事業・なりわいの再建と、福島イノベーション・コースト構想の具体化による新産業の創出を、引き続き車の両輪として進める。加えて、帰還促進と併せて、交流人口の拡大による域外消費の取込みも進める。福島新エネ社会構想の実現に向け、再生可能エネルギーと水素を二本柱とし、更なる導入拡大に加え、社会実装への展開に取り組んでいく。
●東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、2050年カーボンニュートラルや2030年度の新たな削減目標の実現を目指すに際して、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。

2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応のポイント

 2050年に向けては、温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取組が重要。
●ものづくり産業がGDPの2割を占める産業構造や自然条件を踏まえても、その実現は容易なものではなく、実現へのハードルを越えるためにも、産業界、消費者、政府など国民各層が総力を挙げた取組が必要。
●電力部門は、再エネや原子力などの実用段階にある脱炭素電源を活用し着実に脱炭素化を進めるとともに、水素・アンモニア発電やCCUS/カーボンリサイクルによる炭素貯蔵・再利用を前提とした火力発電などのイノベーションを追求。
●非電力部門は、脱炭素化された電力による電化を進める。電化が困難な部門(高温の熱需要等)では、水素や合成メタン、合成燃料の活用などにより脱炭素化。特に産業部門においては、水素還元製鉄や人工光合成などのイノベーションが不可欠。
●脱炭素イノベーションを日本の産業界競争力強化につなげるためにも、「グリーンイノベーション基金」などを活用し、総力を挙げて取り組む。
●最終的に、CO2の排出が避けられない分野は、DACCSやBECCS、森林吸収源などにより対応。
●2050年カーボンニュートラルを目指す上でも、安全の確保を大前提に、安定的で安価なエネルギーの供給確保は重要。この前提に立ち、2050年カーボンニュートラルを実現するために、再エネについては、主力電源として最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組み、水素・CCUSについては、社会実装を進めるとともに、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。
●こうした取組など、安価で安定したエネルギー供給によって国際競争力の維持や国民負担の抑制を図りつつ2050年カーボンニュートラルを実現できるよう、あらゆる選択肢を追求する。

2030年に向けた政策対応のポイント 【基本方針】

●エネルギー政策の要諦は、安全性を前提とした上で、エネルギーの安定供給を第一とし、経済効率性の向上による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合を図るS+3Eの実現のため、最大限の取組を行うこと。

2030年に向けた政策対応のポイント 【需要サイドの取組】

●徹底した省エネの更なる追求
●産業部門では、エネルギー消費原単位の改善を促すベンチマーク指標や目標値の見直し、「省エネ技術戦略」の改定による省エネ技術開発・導入支援の強化などに取り組む。
●業務・家庭部門では、2030年度以降に新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能の確保を目指し、建築物省エネ法による省エネ基準適合義務化と基準引上げ、建材・機器トップランナーの引上げなどに取り組む。
●運輸部門では、電動車・インフラの導入拡大、電池等の電動車関連技術・サプライチェーンの強化、荷主・輸送事業者が連携した貨物輸送全体の最適化に向け、AI・IoTなどの新技術の導入支援などに取り組む。
●需要サイドにおけるエネルギー転換を後押しするための省エネ法改正を視野に入れた制度的対応の検討。
●化石エネルギーの使用の合理化を目的としている省エネ法について、非化石エネルギーも含むエネルギー全体の使用の合理化や、非化石エネルギーの導入拡大等を促す規制体系への見直しを検討。
→事業者による非化石エネルギーの導入比率の向上や、供給サイドの変動に合わせたディマンドリスポンス等の需要の最適化を適切に評価する枠組みを構築。
●蓄電池等の分散型エネルギーリソースの有効活用など二次エネルギー構造の高度化
●蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用したアグリゲーションビジネスを推進するとともに、マイクログリッドの構築によって、地産地消による効率的なエネルギー利用、レジリエンス強化、地域活性化を促進

2030年に向けた政策対応のポイント 【再生可能エネルギー】

●S+3Eを大前提に、再エネの主力電源化を徹底し、再エネに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す。
【具体的な取組】
 地域と共生する形での適地確保
→改正温対法に基づく再エネ促進区域の設定(ポジティブゾーニング)による太陽光・陸上風力の導入拡大、再エネ海域利用法に基づく洋上風力の案件形成加速などに取り組む。
 事業規律の強化
→太陽光発電に特化した技術基準の着実な執行、小型電源の事故報告の強化等による安全対策強化、地域共生を円滑にするための条例策定の支援などに取り組む。
 コスト低減・市場への統合
→FIT・FIP制度における入札制度の活用や中長期的な価格目標の設定、発電事業者が市場で自ら売電し市場連動のプレミアムを受け取るFIP制度により再エネの市場への統合に取り組む。
 系統制約の克服
→連系線等の基幹系統をマスタープランにより「プッシュ型」で増強するとともに、ノンファーム型接続をローカル系統まで拡大。再エネが石炭火力等より優先的に基幹系統を利用できるように、系統利用ルールの見直しなどに取り組む。
 規制の合理化
→風力発電の導入円滑化に向けアセスの適正化、地熱の導入拡大に向け自然公園法・温泉法・森林法の規制の運用の見直しなどに取り組む。
 技術開発の推進
→建物の壁面、強度の弱い屋根にも設置可能な次世代太陽電池の研究開発・社会実装を加速、浮体式の要素技術開発を加速、超臨界地熱資源の活用に向けた大深度掘削技術の開発などに取り組む。

2030年に向けた政策対応のポイント 【原子力】

●東京電力福島第一原子力発電所事故への真摯な反省が原子力政策の出発点
 いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。
●原子力の社会的信頼の獲得と、安全確保を大前提として原子力の安定的な利用の推進
 安全最優先での再稼働: 再稼働加速タスクフォース立ち上げ、人材・知見の集約、技術力維持向上
 使用済燃料対策: 貯蔵能力の拡大に向けた中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用の促進、放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発
 核燃料サイクル: 関係自治体や国際社会の理解を得つつ、六ヶ所再処理工場の竣工と操業に向けた官民一体での対応、プルサーマルの一層の推進
 最終処分: 北海道2町村での文献調査の着実な実施、全国のできるだけ多くの地域での調査の実現
 安全性を確保しつつ長期運転を進めていく上での諸課題等への取組:
保全活動の充実等に取り組むとともに、諸課題について、官民それぞれの役割に応じ検討
 国民理解: 電力の消費地域も含めて、双方向での対話、分かりやすく丁寧な広報・広聴

●立地自治体との信頼関係構築
 立地自治体との丁寧な対話を通じた認識の共有・信頼関係の深化、地域の産業の複線化や新産業・雇用の創出も含め、立地地域の将来像を共に描く枠組み等を設け、実態に即した支援に取り組む。
●研究開発の推進
 2030年までに、民間の創意工夫や知恵を活かしながら、国際連携を活用した高速炉開発の着実な推進、小型モジュール炉技術の国際連携による実証、高温ガス炉における水素製造に係る要素技術確立等を進めるとともに、ITER計画等の国際連携を通じ、核融合研究開発に取り組む。

2030年に向けた政策対応のポイント 【火力】

●火力発電については、安定供給を大前提に、再エネの瞬時的・継続的な発電電力量の低下にも対応可能な供給力を持つ形で設備容量を確保しつつ、以下を踏まえ、できる限り電源構成に占める火力発電比率を引き下げる。
 調達リスク、発電量当たりのCO2排出量、備蓄性・保管の容易性といったレジリエンス向上への寄与度等の観点から、LNG、石炭、石油における適切な火力のポートフォリオを維持。
 次世代化・高効率化を推進しつつ、非効率な火力のフェードアウトに着実に取り組むとともに、脱炭素型の火力発電への置き換えに向け、アンモニア・水素等の脱炭素燃料の混焼やCCUS/カーボンリサイクル等のCO2排出を削減する措置の促進に取り組む。
●政府開発援助、輸出金融、投資、金融・貿易促進支援等を通じた、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を2021年末までに終了。

2030年に向けた政策対応のポイント 【電力システム改革】

●脱炭素化の中での安定供給の実現に向けた電力システムの構築。
 供給力の低下に伴う安定供給へのリスクが顕在化している中、脱炭素と安定供給を両立するため、容量市場の着実な運用、新規投資について長期的な収入の予見可能性を付与する方法の検討に取り組む。
 安定供給確保のための責任・役割の在り方について、改めて検討する。
 再エネ導入拡大に向けて電力システムの柔軟性を高め、調整力の脱炭素化を進めるため、蓄電池、水電解装置などのコスト低減などを通じた実用化、系統用蓄電池の電気事業法への位置付けの明確化や市場の整備などに取り組む。
 非化石価値取引市場について、トラッキング付き非化石証書の増加や需要家による購入可能化などに取り組む。
 災害時の安定供給確保に向け、地域間連系線の増強・災害時連携計画に基づく倒木対策の強化、サイバー攻撃に備え、従来の大手電力に加え新規参入事業者のサイバーセキュリティ対策の確保等に取り組む

2030年に向けた政策対応のポイント 【水素・アンモニア】

●カーボンニュートラル時代を見据え、水素を新たな資源として位置付け、社会実装を加速。
●長期的に安価な水素・アンモニアを安定的かつ大量に供給するため、海外からの安価な水素活用、国内の資源を活用した水素製造基盤を確立。
 国際水素サプライチェーン、余剰再エネ等を活用した水電解装置による水素製造の商用化、光触媒・高温ガス炉等の高温熱源を活用した革新的な水素製造技術の開発などに取り組む。
 水素の供給コストを、化石燃料と同等程度の水準まで低減させ、供給量の引上げを目指す。
コスト :現在の100円/Nm3→2030年に30円/Nm3 、2050年に20円/Nm3以下に低減
供給量:現在の約200万t/年→2030年に最大300万t/年、2050年に2,000万t/年に拡大
●需要サイド(発電、運輸、産業、民生部門)における水素利用を拡大。
 大量の水素需要が見込める発電部門では、2030年までに、ガス火力への30%水素混焼や水素専焼、石炭火力への20%アンモニア混焼の導入・普及を目標に、混焼・専焼の実証の推進や非化石価値の適切な評価ができる環境整備を行う。また、2030年の電源構成において、水素・アンモニア1%を位置付け。
 運輸部門では、FCVや将来的なFCトラックなどの更なる導入拡大に向け、水素ステーションの戦略的整備などに取り組む。
 産業部門では、水素還元製鉄などの製造プロセスの大規模転換や水素等の燃焼特性を踏まえたバーナー、大型・高機能ボイラーの技術開発などに取り組む。
 民生部門では、純水素燃料電池も含む、定置用燃料電池の更なる導入拡大に向け、コスト低減に向けた技術開発などに取り組む。

2030年に向けた政策対応のポイント 【資源・燃料】

●カーボンニュートラルへの円滑な移行を進めつつ、将来にわたって途切れなく必要な資源・燃料を安定的に確保。
 石油・天然ガス・鉱物資源の安定供給確保に加え、これまで資源外交で培った資源国とのネットワークを活用した水素・アンモニアのサプライチェーン構築やCCS適地確保等を一体的に推進すべく、「包括的な資源外交」を新たに展開。また、アジアの現実的なエネルギートランジションに積極的に関与。
 JOGMECが、水素・アンモニア、CCSといった脱炭素燃料・技術の導入に向けた技術開発・リスクマネー供給の役割を担えるよう、JOGMECの機能強化を検討。
 石油・天然ガスについて、自主開発比率を2019年度の34.7%から、2030年に50%以上、2040年には60%以上を目指す。また、メタンハイドレートを含む国産資源開発などに取り組む。
 鉱物資源について、供給途絶が懸念されるレアメタル等へのリスクマネー支援を強化。海外権益確保とベースメタルのリサイクル促進により2050年までに国内需要量相当の確保を目指す。また、海底熱水鉱床やレアアース泥等の国産海洋鉱物資源開発などに取り組む。
●平時のみならず緊急時にも対応できるよう燃料供給体制の強靱化を図るとともに、脱炭素化の取組を促進。
 災害時などの有事も含めたエネルギー供給を盤石なものとするため、石油やLPガスの備蓄機能を維持するとともに、コンビナート内外の事業者間連携等による製油所の生産性向上に加え、CO2フリー水素の活用等による製油所の脱炭素化などに取り組む。
 地域のエネルギー供給を担うSSについて、石油製品の供給を継続しながらEVやFCVへのエネルギー供給等も担う「総合エネルギー拠点」化や、地域ニーズに対応したサービス提供も担う「地域コミュニティインフラ」化などに取り組む。
 熱需要の脱炭素化に大きな役割を果たす、需要サイドにおける天然ガスシフトや、メタネーション等によるガスの脱炭素化などを追求する。また、更なるガスのレジリエンス強化に取り組む

2030年度におけるエネルギー需給の見通しのポイント①

●今回の見通しは、2030年度の新たな削減目標を踏まえ、徹底した省エネルギーや非化石エネルギーの拡大を進める上での需給両面における様々な課題の克服を野心的に想定した場合に、どのようなエネルギー需給の見通しとなるかを示すもの。
●今回の野心的な見通しに向けた施策の実施に当たっては、安定供給に支障が出ることのないよう、施策の強度、実施のタイミングなどは十分考慮する必要。(例えば、非化石電源が十分に導入される前の段階で、直ちに化石電源の抑制策を講じることになれば、電力の安定供給に支障が生じかねない。)

2030年度におけるエネルギー需給の見通しのポイント②

●野心的な見通しが実現した場合の3E
 エネルギーの安定供給(Energy Security)
エネルギー自給率(1) ⇒ 30%程度(旧ミックス:おおむね25%程度)
 環境への適合(Environment) 温室効果ガス削減目標のうちエネルギー起源CO2の削減割合 ⇒ 45%程度(旧ミックス:25%)
 経済効率性(Economic Efficiency) ①コストが低下した再エネの導入拡大や②IEAの見通し通りに化石燃料の価格低下(2)が実現した場合の電力コスト
⇒ 電力コスト全体 8.6~8.8兆円程度 (旧ミックス:9.2~9.5兆円)(3) kWh当たり 9.9~10.2円/kWh程度 (旧ミックス:9.4~9.7円/kWh)(4)
*1 資源自給率に加え、サプライチェーンの中でコア技術を自国で確保し、その革新を世界の中でリードする「技術自給率」(国内のエネルギー消費に対して、自国技術で賄えているエネルギー供給の程度)を向上させることも重要である。
*2 世界銀行やEIA(米国エネルギー情報局)は、直近の見通しにおいて、化石燃料の価格が上昇すると見込んでいる。
*3 発電コスト検証WGを踏まえ(IEA「World Energy Outlook 2020」の公表済政策シナリオ(STEPS)の値を採用)、FIT買取費用、燃料費、系統安定化費用についてそれぞれ約5.8~6.0兆円、約2.5兆円、約0.3兆円と試算(系統安定化費用には変動再エネの導入に伴う火力発電の熱効率低下による損失額及び起動停止コストのみ算入。実際の系統の条件によって増加する可能性がある。)。
*4 「電力コスト」÷「発電電力量から送電によるロス等を除いた電力需要量」により機械的に算出。電気料金とは異なる。実際の電気料金は、託送料金なども含まれ、また、電源の稼働状況、燃料価格、電力需要によって大きく左右されるため正確な予測は困難。

<参考文献>
1) 経済産業省Webサイト、ニュースリリース、ニュースリリースアーカイブ、2021年度10月一覧、「第6次エネルギー基本計画が閣議決定」
https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005.html