複合機のエネルギー消費効率

複合機の省エネ基準

 複合機とは印刷(プリンター)、複写(コピー機)、画像の電子化(スキャナー)、FAXの機能を持った電子機器のことです。近年では画像の電子化(jpg、pdf化など)を行う機会が増えてきており、複合機の普及も増加しています。

 複合機に関する省エネ基準(基準エネルギー消費効率)を設定している経済産業省の告示は2013年告示第36号(制定)「複合機のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最新改正2019年告示第68号です。複合機のエネルギー消費効率は年間消費電力量です。下表に示すようにカラー印刷機能の有無、複写または印刷速度によって区分されており、複写または印刷速度の関数で算定されるようになっています。

表-1 複合機の省エネ基準

区分名カラー複写又はカラー
印刷機能の有無
複写又は印刷速度基準エネルギー
消費効率の算定式
a毎分43枚未満のものEs=2.17X+125
b毎分43枚以上のものEs=8.48X-140
c毎分50枚未満のものEs=4.86X-30
d毎分50枚以上のものEs=8.72X-223
備考1 「複写又は印刷速度」とは、A4判普通紙へモノクロームで連続複写又は印刷を行った場合の1分当たりの複写又は印刷枚数とする。
備考2 「Es」及び「X」は、次の数値を表すものとする。
Es :基準エネルギー消費効率(kWh/年)
X :複写又は印刷速度(ただし、複写又は印刷速度が下限値以下の機器にあっては、下限値の値を用いるものとする。)
下限値:区分c:22ipm(イメージ/分)

エネルギー消費効率の算定方法

 告示よるエネルギー消費効率(年間消費電力量)の算定方法を以下に引用します。

 当該製品の年間消費電力量は次の式により算出するものとする。
 E=WTEC×52/1,000
 この式において、E、WTECは、それぞれ次の数値を表すものとする。
 E:年間消費電力量(kWh/年)
 WTEC:1週間当たりの消費電力量(Wh/週)

 告示では、印刷機能があるものと印刷機能のないものにより算定方法を区別していますが、ここでは印刷機能があるものの算定方法を示します。

<印刷機能があるものについてのWTECの算定方法>

 WTECは、複合機(印刷機能があるものに限る。以下備考の3において同じ。)の1週間当たりの消費電力量(Wh/週)を表し、複合機が1週間に週5日稼働すると仮定し、下記の算式により、稼働する5日間の消費電力量と稼働しない2日間の消費電力量を合計することによって算出する。

  TEC=(WD×5)+(WS×48)
  WD:1日当たりの消費電力量(Wh/日)
  WS:1時間当たりのスリープ時の消費電力量(Wh/h)

(1)WDとは、複合機の1日当たりの消費電力量(Wh/日)を表し、下記の算式により、算出する。スリープ時への切り替え時は、1日のうち昼休みが始まる際(午前)と労働時間が終了した際(午後)の2回行われるものとする。

 D=WJ+(WT×2)+WDS

 WJ:印刷時に必要な1日当たりの消費電力量(Wh/日)
 WT:スリープ時への切り替え時の消費電力量(Wh)
 WDS:スリープ時の1日当たりの消費電力量(Wh/日)

①WJとは、別表3において機器の印刷速度に応じて定められた1日当たりの印刷回数の印刷を行うために必要な消費電力量を表し、下記の算式により算出する。

 WJ=(WJ1×2)+(WAJ×(J-2))

 WJ1:別表2の5)の試験(以下「印刷試験1」という。)において計測される消費電力量(Wh)
 WAJ:別表2の6)の試験(以下「印刷試験2」という。)、別表2の7)の試験(以下「印刷試験3」という。)及び別表2の8)の試験(以下「印刷試験4」という。)において計測される消費電力量の平均(Wh)
 J:1日当たりの印刷回数(回)
※Jとは、1日当たりの印刷回数(回)を表し、別表3において印刷速度に応じて定められたものをいう。

②WTとは、別表2の9)の試験で計測される消費電力量をいう。

③WDSとは、1日当たりのスリープ時の消費電力量(Wh/日)を表し、下記の算式により算出する。

 DS=(24-((J/4)+(T×2)))×WS

 J:1日当たりの印刷回数(回)
 T:スリープ時への切り替え時間(h:時間)
 WS:1時間当たりのスリープ時の消費電力量(Wh/h)

 ※Tとは、スリープ時への切り替え時間(h)を表し、別表2の9)の試験において測定される時間をいう。

(2)WSは、別表2の4)の試験において計測される消費電力量をいう。 

告示の別表2(印刷試験の手順等)

 試 験 手 順試験開始時
の機器の状態
試験によって
測定されるもの
試験中の
機器の状態
1)
  
機器と計測器を接続する。計測器の目盛りをゼロに合わせる。2)の開始まで待機する(5分以上)。オフ時オフ時の消費電力量及び機器のスイッチが入るまでの時間オフ時
2)機器のスイッチを入れる。機器が稼働準備時に移行したことを示すまで待機する。オフ時
3)別表3に定められた画像枚数の印刷を1回実行する。機器がスリープ時に移行したことを計測器が示すまで待機する。稼働準備時1枚目の用紙が機器から排出されるまでの時間
4)計測器の目盛をゼロに合わせる。1時間待機する。スリープ時スリープ時の消費電力量(WS)スリープ時
5)計測器と計時装置の目盛をゼロに合わせる。別表3に定められた画像枚数の印刷を1回実行する。計時装置が15分経過したことを示すまで待機する。スリープ時消費電力量(WJ1)及び1枚目の用紙が機器から排出されるまでの時間印刷時、稼働準備時、スリープ時
6)5)を繰り返す。稼働準備時消費電力量(WJ2)及び1枚目の用紙が機器から排出されるまでの時間同上
7)5)を繰り返す(稼働時間の測定なし)。稼働準備時消費電力量(WJ3)同上
8)5)を繰り返す(稼働時間の測定なし)。稼働準備時消費電力量(WJ4)同上
9)計測器と計時装置の目盛をゼロに合わせる。機器がスリープ時に移行したことを計測器又は機器が示すまで 待機する。稼働準備時スリープ時への切り替え時間(T)(印刷試験 4開始の15分後からスリープ時に入るまでの時間)及びスリープ時への移行時の消費電力量(WT)
備考1 2)において、機器の稼働準備インジケータが装備されていない場合、消費電力値が稼働準備水準に安定するまで待機する。
備考2 3)において、1枚目の用紙が機器から排出されるまでの時間を記録した後は、残りの印刷を中止することを可とする。
備考3 5)の試験は、印刷の開始から計測して15分間行う。機器は、計測器と計時装置の目盛をゼロに合わせてから5秒以内に、消費電力の増加を示さなければならない。これを確実にするために、目盛をゼロに合わせる前に印刷を開始してもよい。
備考4 印刷開始から15分経過しない間に稼働準備時からスリープ時へ移行する場合は、6)、7) 及び8)をスリープ時から開始してよい。
備考5 機器に複数のスリープ機能が装備されている場合は、最終スリープ時を除くすべてのスリープ時がスリープ時への切り替え時間に含まれるが、スリープ機能が1つしかない場合は、スリープ時への切り替え時間にスリープ時は含まれない。
備考6 印刷を実行する際には、各画像を別々に送信すること。

 別表2の印刷試験のイメージを下図に示します。下図では告示別表2の印刷試験の手順ごとの内容(黒字)とそこで測定する消費電力量等(青字)についても示しています。

告示の別表3(印刷速度別の印刷枚数) 

複写又は印刷速度(枚/分)1日当たりの複写又は印刷回数(回)複写又は印刷試験1回当たりの画像枚数(枚)
13136
14147
15157
16168
17178
18189
19199
202010
212110
222211
232311
242412
252512
262613
272713
282814
292914
303015
313115
323216
333217
343218
353219
363220
373221
383222
393223
403225
413226
423227
433228
443230
453231
463233
473234
483236
493237
503239
513240
523242
533243
543245
553247
563249
573250
583252
593254
603256
613258
623260
633262
643264
653266
663268
673270
683272
693274
703276
713278
723281
733283
743285
753287
763290
773292
783295
793297
8032100
8132102
8232105
8332107
8432110
8532112
備考13の方法により複合機のエネルギー消費効率を算定する際に用いる1日当たりの複写又は印刷回数、複写又は印刷試験1回当たりの画像枚数は、複写又は印刷速度に応じて上記の表中の数値を用いる。なお、1日当たりの複写又は印刷回数、複写又は印刷試験1回当たりの画像枚数は、製品に初期設定されている出力速度ではなく、A四判にモノクローム画像を生成する際の最大公称片面複写速度又は最大公称片面印刷速度の最も近い整数にしたものを用いる。
備考2 印刷機能のない複合機の試験用の画像は、上記の複写試験1回当たりの画像枚数毎に原本を用いる。ただし、複写速度が毎分20枚以上の印刷機能のない複合機は、原本の数が10以上であれば原本毎に複数枚複写することにより、上記の複写試験1回当たりの画像枚数としてもよい。

<参考文献>
1)経済産業省2013年告示第36号(制定)「複合機のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最新改正2019年告示第68号