エコキュートのエネルギー消費効率

 電気をエネルギー源とした温水器は、省エネ法の対象となっているのはヒートポンプ給湯器(エコキュート)のみです。これは、水の潜熱を利用した熱効率の高い温水器です。潜熱を利用した電気機器にはエアコンがありますが、その原理は電気温水器と同じ原理です。

 エコキュートの省エネ基準を規定しているのは、2013年経済産業省告示第38号「電気温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」(制定)、2021年告示第115号(最終改定)です。ここでは、この告示に基づいて省エネ基準、エネルギー消費効率の測定方法等について解説します。

 なお、告示ではヒートポンプ給湯器という言葉を使用しているため、以下ではこの言葉を用います。

基準エネルギー消費効率

(1) 対象範囲

 対象とするヒートポンプ給湯器は、二酸化炭素を冷媒とする家庭用ヒートポンプ給湯器全ての製品とする。ただし、ヒートポンプ給湯器からの温水を暖房に利用する製品は数が少ないため除外する。

(2) 目標年度

  <旧告示>
  ・2017年度
  <新告示>
  ・2025年度

(3)目標基準値

 目標年度が2017年度の製品の省エネ基準を下表に示します。2017年度が目標の省エネ区分は、想定世帯(標準、少人数)、貯湯容量(4区分)、仕様(寒冷地、それ以外)、保温機能(有無)、貯湯缶(1缶、複数缶)によって区分されています。標準世帯が32区分、少人数世帯は4区分(貯湯容量、貯湯缶数の区別なし)で全部で36区分です。

表-1 電気温水器の省エネ基準(目標年度2017年度の製品)

区分基準エネルギー
区分名想定世帯 貯湯容量 仕 様 保温機能貯湯缶数消費効率(%)
1標 準240L未満寒冷地仕様以外のもの一缶2.8
2多缶2.4
3一缶3.0
4多缶2.6
5寒冷地仕様一缶2.3
6多缶2.0
7一缶2.6
8多缶2.3
9240L以上320L未満寒冷地仕様以外のもの一缶2.8
10多缶2.8
11一缶3.2
12多缶2.8
13寒冷地仕様一缶2.3
14多缶2.0
15一缶2.7
16多缶2.3
17320L以上550L未満寒冷地仕様以外のもの一缶3.3
18多缶2.8
19一缶3.2
20多缶2.8
21寒冷地仕様一缶2.7
22多缶2.3
23一缶2.7
24多缶2.3
25550L以上寒冷地仕様以外のもの一缶2.9
26多缶2.5
27一缶2.9
28多缶2.5
29寒冷地仕様一缶2.4
30多缶2.1
31一缶2.5
32多缶2.2
33少人数寒冷地仕様以外のもの2.4
342.8
35寒冷地仕様2.0
362.4
備考1 「貯湯容量」とは、日本産業規格(以下「JIS」という。)C9220(2011)「家庭用ヒートポンプ給湯機」に規定する湯水を貯蔵できるタンクの容量を指す。
備考2 「寒冷地仕様」とは、JIS C9220(2011)に規定する冬の寒さが厳しい地域での使用を想定した仕様を指す。
備考3 「保温機能」とは、ふろの湯を循環加温する機能を指す。

 なお、電気温水器のエネルギー消費効率の指標は年間の給湯パターンに基づく給湯熱量と年間消費電力量の比で、下の式で表されます。

<ふろ保温機能のあるもの>
 年間給湯保温効率=(1年間に使用する出湯水が得た熱量+保温のために浴槽水が得た熱量)/1年間に必要な消費電力量×3.6
<ふろ保温機能のないもの>
 年間給湯効率=1年間に使用する出湯水が得た熱量/1年間に必要な消費電力量×3.6

 この指標は外気温に影響を受けるため、寒冷地か否か(仕様)による省エネ基準の差が大きくなっています。目標値は2.0から3.3までの範囲となっています。この数字は投入した電力量の2.0倍から3.3倍の熱量が得られることを意味しており、非常に高い熱効率を持つことが分かります。

 目標年度が2025年度の製品の省エネ基準を下表に示します。2025年度が目標の省エネ区分は、想定世帯(標準、少人数の2種)、貯湯数(1缶、多缶)、貯湯容量(3区分)、仕様(寒冷地、それ以外)によって区分されています。2017年度の省エネ区分で設定していた保温機能での区分はなくなり、貯湯容量の区分も3区分となり、全区分数は10区分と少なくなりました。

 省エネ基準の目標値は最低でも2.7、最大で3.5と厳しくなっています。2017年度の目標基準値に比べて、寒冷地仕様の目標基準値が大きく改善したことを意味します。

表-2 電気温水器の省エネ基準(目標年度2025年度の製品)

     区   分基準エネルギー消費効率
区分名想定世帯貯湯缶数貯湯容量 仕  様(%)
 A 少人数寒冷地仕様以外のもの3.0
 B 寒冷地仕様2.7
 C 標 準一缶320L未満寒冷地仕様以外のもの3.1
 D 寒冷地仕様2.7
 E 320L以上550L未満寒冷地仕様以外のもの3.5
 F 寒冷地仕様2.9
 G 550L以上寒冷地仕様以外のもの3.2
 H 寒冷地仕様2.7
 I 多缶寒冷地仕様以外のもの3.0
 J 寒冷地仕様2.7
備考1 「貯湯容量」とは、JIS C9220(2018)「家庭用ヒートポンプ給湯機」に規定する湯水を貯蔵できるタンクの容量を指す。
備考2 「寒冷地仕様」とは、JIS C9220(2018)に規定する冬の寒さが厳しい地域での使用を想定した仕様を指す。

(4)製品への表示事項

 エネルギー消費効率に関し、製造事業者等は、次の事項を表示することとされています。
 (1)品名及び形名
 (2)区分名
 (3)エネルギー消費効率
 (4)製造事業者等の氏名又は名称

エネルギー消費効率の測定方法

 エネルギー消費効率は、ヒートポンプを運転しているときに、循環する湯水に与える単位時間当たりの熱量と消費する電力量との比を用いることとし、ふろ保温機能の有無に応じ、次の算定式により算出します。この際、表-1のエネルギー消費効率を算出する場合には、JIS C 9220(2011)に規定する方法により測定した数値を用い、表-2のエネルギー消費効率を算出する場合には、JIS C9220(2018)に規定する方法により測定した数値を用います。

①ふろ保温機能を有するもの
 CMA1=QMA1/(PMA1×3.6)
 この式において、CMA1、QMA1及びPMA1は、それぞれ次の数値を表すものとします。

 CMA1:給湯保温モードで給湯保温した場合の年間給湯保温効率
 QMA1:給湯保温モード熱量(MJ)
 PMA1:給湯保温モード消費電力量(kWh)

②ふろ保温機能を有しないもの
 CMA2=QMA2/(PMA2×3.6)
 この式において、CMA2、QMA2及びPMA2は、それぞれ次の数値を表すものとします。

 CMA2:給湯モードで給湯した場合の年間給湯効率
 QMA2:給湯モード熱量(MJ)
 PMA2:給湯モード消費電力量(kWh)

<参考文献>
1)2013年経済産業省告示第38号「電気温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」(制定)、2021年告示第115号(最終改定)
2)経済産業省:総合資源エネルギー調査会、省エネルギー基準部会、ヒートポンプ給湯器判断基準小委員会、最終取りまとめ、2012年9月
3)経済産業省:総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会、エアコンディショナー及び電気温水機器判断基準ワーキンググループ、電気温水機器の取りまとめ、2021年3月