ガスコンロのエネルギー消費効率

基準エネルギー消費効率

 ガスコンロ(省エネ法ではガス調理機器)は省エネ法の特定エネルギー消費機器29品目のうちの1つです。省エネ基準等は2002年経済産業省告示第433号(制定)「ガス調理機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」、最終改定2019年経済産業省告示第46号によって規定されています。

(1) 対象範囲

 ガス調理機器の適用範囲は、ガスを燃料とする家庭用調理機器すべての製品とするが、以下のものを除外しています。

 ● ガス炊飯器
 ● 業務用のもの
 ● 都市ガス13Aのガスグループに属するもの及び液化石油ガス以外のガスを燃料とするもの
 ● ガスグリル
 ● ガスクッキングテーブル
 ● カセットこんろ

 除外された調理機器のうち、ガス炊飯器についてはジャー炊飯器として省エネ法の対象となっており、独自の基準が定められています。除外された機器の除外理由は、エネルギー消費効率の測定方法が確立されていないこと(ガスグリル)や出荷台数がガス調理機器全体に占める割合が少ないこと、エネルギー消費量が少ないことなどです。

(2)目標年度

〈こんろ部〉
 ● 2006年度以降の各年度
〈グリル部及びオーブン部〉
 ● 2008年度以降の各年度

(3)目標基準値

 ガス調理機器のこんろ部、グリル部、オーブン部の種類別に下表のような基準が設定されています。各部によってエネルギー消費効率が以下のように異なっています。

 (1)こんろ部:熱効率
 (2)グリル部:ガス消費量
 (3)オーブン部:ガス消費量

 まず、こんろ部については、JIS S2103(2019)の測定方法に基づいて熱効率を測定します(JIS S2103の内容については、「IH調理器(2)-消費電力の測定」に概要を記載していますので参照ください)。こんろが複数ある機器については、そのこんろの熱量のランク別に設定された重みを乗じた平均値を算定することになっています。

 グリル部のガス消費量は、「アジ(魚)と同程度の熱容量を有する銅製のブロックの温度を100K上昇させるためのガス消費量」です。また、オーブン部のガス消費量は「ガスオーブンの庫内を初温より180K上昇させるためと、その後継続してその状態を20分間保持するためのガス消費量」です。

表-1 ガス調理機器の省エネ基準(こんろ部)

ガス調理機器の種別 設置形態 バーナの数区分名こんろ部基準エネルギー消費効率
ガスこんろ卓上形51.0
組込形48.5
ガスグリル付こんろ卓上形2口以下56.3
3口以上52.4
組込形2口以下53.0
3口以上55.6
キャビネット形又は据置形49.7
ガスレンジ48.4
備考1 「ガスレンジ」とは、ガスオーブンとガスこんろを組み合わせたものをいう。
2 「卓上形」とは、台の上に置いて使用するものをいう。
3 「組込形」とは、壁又は台に組み込んで使用するものをいう。
4 「キャビネット形」とは、専用のキャビネットの上に取り付けて使用するものをいう。
5 「据置形」とは、台又は床面に据え置いて使用するものをいう。

表-2 ガス調理機器の省エネ基準(グリル部)

燃焼方式調理方式区分名グリル部の基準エネルギー消費効率
片面焼き水あり E=25.1V+123
水なし E=25.1V+16.4
両面焼き水あり E=12.5V+172
水なし E=12.5V+101
備考1 E及びVは、次の数値を表すものとする。
 E:グリル部基準エネルギー消費効率(Wh)
 V:庫内容積(L)
2「片面焼き」とは、食材の片側から加熱調理する方式のもの。
3「両面焼き」とは、食材の両面から加熱調理する方式のもの。
4「水あり」とは、グリル皿に水を張った状態で調理する方式のもの。
5「水なし」とは、グリル皿に水を張らない状態で調理する方式のもの。
6「庫内容積」とは、焼網面積にグリル皿底面から入口上部までの高さを乗じた数値を小数点以下2桁を四捨五入した数値。

表-3 ガス調理機器の省エネ基準(オーブン部)

設置状態区分名オーブン部基準エネルギー消費効率
卓上形又は据置形E=18.6Vo+306
組込形E=18.6Vo+83.3
備考1 E及びVoは、次の数値を表すものとする。
 E:オーブン部基準エネルギー消費効率(Wh)
 Vo:庫内容積(L)
2「卓上形」とは、台の上に置いて使用するものをいう。
3「組込形」とは、壁又は台に組み込んで使用するものをいう。
4「据置形」とは、台又は床面に据え置いて使用するものをいう。
5「庫内容積」とは、庫内底面積に庫内高さを乗じた数値を小数点以下2桁を四捨五入した数値。

(4)製品への表示事項

 製造事業者に求められている表示事項は以下の通りです。

 (1)区分名
 (2)こんろ部エネルギー消費効率(こんろ部を有するものに限る)
 (3)グリル部エネルギー消費効率(グリル部を有するものに限る)
 (4)オーブン部エネルギー消費効率(オーブン部を有するものに限る)

エネルギー消費効率の測定方法

 こんろ部のエネルギー消費効率及びグリル部エネルギー消費効率並びにオーブン部エネルギー消費効率は、それぞれ次に定めるところによるものとする。

(1)こんろ部

① こんろ部エネルギー消費効率は、日本産業規格(JIS)S2103(2019)の7試験方法に規定する方法により測定したこんろの熱効率とする。
② ①において、バーナーの数が2口以上のものにあっては、バーナーの表示ガス消費量(JIS S2103(2019)の1.適用範囲に規定する表示ガス消費量をいう。以下同じ)が2.02kW以下のもの、表示ガス消費量が2.02kWを超え、3.49kW以下のもの及び表示ガス消費量が3.49kWを超え、5.80kW以下のものの区分ごとに(1)に定める方法により測定した熱効率をそれぞれ1対2.1対3.5の比率により加重して平均した数値とする。

(2)グリル部及びオーブン部

 グリル部エネルギー消費効率及びオーブン部エネルギー消費効率は「ガス消費量」とし、次の式により算出するものとする。

 E=(1000/3.6)×V×Q×{(B+P-S)/101.3}×273/(273+t

 この式において、V、Q、B、P、S及びtは、それぞれ次の数値を表すものとする。

 E:ガス消費量(Wh)
 V:実測ガス消費量(m3
 Q:使用ガスの総発熱量(MJ/m3
 B:測定時の大気圧(kPa)
 P:測定時のガスメータ内のガス圧力(kPa)
 S:温度tにおける飽和水蒸気圧(kPa)
 t:測定時のガスメータ内のガス温度(℃)

① V:実測ガス消費量(m3
 グリル部エネルギー消費効率の測定における実測ガス消費量は、②に定める方法により測定したブロックを100K上昇させるためのガス消費量とする。また、オーブン部エネルギー消費効率の測定における実測ガス消費量は、③に定める方法により測定したガスオーブンの庫内を初温より180K上昇させるためと、その後継続してその状態を20分間保持するためのガス消費量とする。

② ①のグリル部エネルギー消費効率の測定は、以下の条件の下で行うものとする。
ア. ブロックの仕様は次のとおりとする。
 1)材料はJIS H3100(2000)のC1020相当とする。
 2)寸法は180±0.1mm、70±0.1mm、20+0.15mmとする。
 3)表面につや消し黒色耐熱塗料を塗布すること。
 4)ブロックの表面にその幾何学的中心まで溝幅1.0mm、深さ1.1mmの溝を掘り、その溝に熱電対を埋め込み、上面をはんだでろう付けすること。熱電対の先端は、ブロックの幾何学的中心点に直径1.1mm、深さ10mmの穴を掘り、その孔底に達するように埋め込み、はんだでろう付けすること。なお、熱電対は、JIS C1602(2015)の種類K、素線径1.00mmのものを使用すること。

イ. ブロック及びグリル庫内の試験開始前温度は20±5℃とすること。
ウ. ブロックは焼き網の幾何学的中心に1個設置すること。ただし、機器の取扱説明書で魚1匹を焼く場合の位置を指定している場合は、指定された位置にブロックを設置すること。
エ. ガス量の調節状態は最大とすること。

③ ①のオーブン部エネルギー消費効率の測定は、以下の条件の下で行うものとする。
ア. オーブン庫内の試験開始前温度は20±5℃とする。
イ. 庫内の幾何学的中心にJIS S2103(2019)の表5に規定するオーブン温度測定用熱電対を取り付けること。

④ ①のグリル部及びオーブン部エネルギー消費効率の測定は、次の条件の下で行うものとする。
ア. 試験室の温度は20±5℃、試験室の湿度は65±20%とすること。なお、試験室の雰囲気、試験室の温度の測定については、JIS S2093(2019)の4.1試験室の条件の規定に準拠すること。
イ. ガス消費量の測定は、JIS S2093(2019)の9ガス消費量試験の1.ガス消費量の測定a)機器の状態及びb)試験の条件に規定される状態とすること。
ウ. 機器の設置状態は、JIS S2103(2019)の表5性能及び試験方法の平常時温度上昇(機器の各部)に規定される状態とすること。

<参考文献>
1)2002年経済産業省告示第433号(制定)「ガス調理機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」、最終改定2019年経済産業省告示第46号