エネルギー消費効率
エアコンのエネルギー消費効率は省エネ法施行規則によって「通年エネルギー消費効率」(APF)と決められています1)。APF(Annual Performance Factor)とは、「ある一定条件下でエアコンを使用したとき、1年間に必要な冷暖房負荷を、1年間でエアコンが消費する電力量(期間消費電力量)で割った数値」のことです。
APF数値が大きいほど、省エネ性が高くなります。ここで、冷暖房負荷とは部屋の広さ、外気温を条件として、設定された稼働時間において、設定された室内温度にするためにエアコンが除去する熱量(冷房の場合)と付加する熱量(暖房の場合)の合計のことを指しています。APFを式で表わすと以下となります。
APF=エアコンが稼働する期間の冷暖房負荷/当該エアコンの期間消費電力量
ここで、年間の冷暖房負荷は地域によって異なっているため、東京地区のある住環境を想定して冷暖房負荷を設定しています。それはJIS C 9612(2013)の規格によって設定されています2)。
―算出基準―
外気温度:東京をモデルとしています。
設定温度:冷房時27℃/暖房時20℃
期間:冷房期間(5月23日~10月4日)
暖房期間(11月8日~4月16日)
時間:6:00~24:00の18時間
住宅:JIS C9612(2013)による平均的な木造住宅(南向)
部屋の広さ:機種に見合った部屋の広さ
表-4に示すように2.2kWは6畳などのエアコンの能力にあった部屋の広さです。
※冷房期間とはエアコンを冷房運転する期間をいい、その期間は、標準気象データの日平均気温が22℃以上となる3回目の日から、日平均気温が22℃以上である最終日より2日前までとされています。また暖房期間とは、エアコンを暖房運転する期間をいい、その期間は、標準気象データの日平均気温が14℃以下となる3回目の日から、日平均気温が14℃以下である最終日より2日前の日までとされています。
JIS C 9612(2013)によると、年間の冷暖房負荷は以下の通りです。
定格冷房能力 (kW) | 2.2 | 2.5 | 2.8 | 3.6 | 4.0 | 5.6 | 6.3 | 7.1 | 8.0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
冷暖房負荷の 総和(kWh) | 4,161 | 4,729 | 5,296 | 6,809 | 7,566 | 10,592 | 11,916 | 13,430 | 15,132 |
一例として定格冷房能力2.8kWで、年間消費電力量が841kWhのエアコン製品のAPFは以下のように計算されます。
通年エネルギー消費効率(APF)= 5,296/841=6.3
基準エネルギー消費効率
省エネ法に基づく国が定めたエアコンの基準エネルギー消費効率について説明します。経済産業省の告示では家庭用のエアコンは2つの目標年度で分類されて目標基準値が決められています3)。
<エネルギー消費効率>
●「区分・目標基準値」の①及び②に示す基準
通年エネルギー消費効率(APF)とし、JIS C 9612(2005)に規定する方法で算出した数値
●「区分・目標基準値」の③に示す基準
通年エネルギー消費効率(APF)とし、JIS C 9612(2012)に規定する方法で算出した数値
<区分・目標基準値>
家庭に設置する一般的なエアコン「直吹き形で壁掛け形のもの」の目標年度と目標基準値を下表に示します。目標年度は2010年度以降の各年度(20206年度まで)と2027年度以降の2種類となりました。2026年度までの 4.0kW以下は①、4.0kW超は②の基準値を採用します。また、2027年度以降は③の基準値を採用します。
表-1 家庭用のエアコンの目標年度と目標基準値
ユニットの形態・機能 | 冷房能力 | 目標年度及び目標基準値 |
---|---|---|
直吹き形で壁掛け形のもの (マルチタイプのもののうち室内機の運転を個別に制御するものを除く) | 4.0kW以下 | 2010年度以降の各年度(2026年度まで)。 ①に示す目標基準値を遵守。 |
4.0kW超 | 2010年度以降の各年度(2026年度まで)。 ②に示す目標基準値を遵守。 |
|
該当する全てのもの | 2027年度以降の各年度。 ③に示す目標基準値を遵守。 |
|
その他のもの | 該当するすべてのもの | 2012年度以降の各年度(2028年度まで)。 ②に示す目標基準値を遵守。 2029年度以降の各年度 ③に示す目標基準値を遵守 |
① 目標年度が2010年度以降の各年度(2026年度まで)のもの
●冷房能力4.0kW以下であって直吹き形で壁掛け形のもの(マルチタイプのもののうち室内機の運転を個別制御するものを除く)
冷房能力 | 室内機の寸法タイプ | 区分名 | 基準エネルギー消費効率 |
---|---|---|---|
3.2kW以下 | 寸法規定タイプ | A | 5.8 |
寸法フリータイプ | B | 6.6 | |
3.2kW超4.0kW以下 | 寸法規定タイプ | C | 4.9 |
寸法フリータイプ | D | 6.0 |
出所)1999年通商産業省告示第190号「エアコンディショナーのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(廃止・制定)、最終改定2019年経済産業省告示第46号
② 目標年度が2012年度以降の各年度(2028年度)(区分E~Gにおいては2010年度以降の各年度(2026年度まで))のもの
●①に示す基準が適用されるもの以外のもの
ユニットの形態 | 冷房能力 | 区分名 | 基準エネルギー消費効率 |
---|---|---|---|
直吹き形で壁掛け形のもの (マルチタイプのもののうち室内機の運転を個別制御するものを除く。) | 4.0kW超5.0kW以下 | E | 5.5 |
5.0kW超6.3kW以下 | F | 5.0 | |
6.3kW超28.0kW以下 | G | 4.5 | |
直吹き形で壁掛け形以外のもの (マルチタイプのもののうち室内機の運転を個別制御するものを除く。) | 3.2kW以下 | H | 5.2 |
3.2kW超4.0kW以下 | I | 4.8 | |
4.0kW超28.0kW以下 | J | 4.3 | |
マルチタイプのものであって室内機の運転を個別制御するもの | 4.0kW以下 | K | 5.4 |
4.0kW超7.1kW以下 | L | 5.4 | |
7.1kW超28.0kW以下 | M | 5.4 |
出所)1999年通商産業省告示第190号「エアコンディショナーのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(廃止・制定)、最終改定2019年経済産業省告示第46号
これを分かりやすいように 「直吹き形で壁掛け形のもの」で「寸法規定タイプ」 のみのAPFをまとめると以下のようになります。本サイトの「エアコン②-製品の省エネ評価」では、現在製造、販売されているエアコン製品の省エネ基準達成度をまとめていますので、参考にしてください(2021年7月30日時点に資源エネルギー庁の省エネポータルサイトに登録している製品をもとに整理)。
表-2 一般的な家庭用エアコンの省エネ基準(2026年度まで)
能力(kW) | 部屋の広さの目安 | APF基準値 | 備 考 |
---|---|---|---|
2.2 | 6畳 | 5.8 | 告示第2表による |
2.5 | 8畳 | 5.8 | 〃 |
2.8 | 10畳 | 5.8 | 〃 |
3.2 | 12畳 | 5.8 | 〃 |
4.0 | 14畳 | 4.9 | 〃 |
5.0 | 16畳 | 5.5 | 告示第3表による |
5.6 | 18畳 | 5.0 | 〃 |
6.3 | 20畳 | 5.0 | 〃 |
7.1 | 23畳 | 4.5 | 〃 |
出所)1999年通商産業省告示第190号(制定・廃止)「エアコンディショナーのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
また、目標年度が2027年度以降の省エネ基準は下表の通りです。2027年度以降は冷房能力2.8kW以下はAPF6.6(寒冷地は6.2)、同じく2.8kW超はAPF6.6(同じく寒冷地は6.2)を上限とする冷房能力の関数で設定されます。
③ 目標年度が2027年度以降の各年度(区分Ⅰ~Ⅳ)
冷房能力 | 仕様 | 区分名 | 基準エネルギー消費効率又はその算定式 |
---|---|---|---|
2.8kW以下 | 寒冷地仕様以外のもの | Ⅰ | E=6.6 |
寒冷地仕様のもの | Ⅱ | E=6.2 | |
2.8kW超28.0kW以下 | 寒冷地仕様以外のもの | Ⅲ | E=6.84-0.210×(A-2.8) ただし、E = 6.6を上限、E = 5.3を下限とする。 |
寒冷地仕様のもの | Ⅳ | E=6.44-0.210×(A-2.8) ただし、E = 6.2を上限、E = 4.9を下限とする。 |
E:基準エネルギー消費効率(APF:通年エネルギー消費効率) A:冷房能力(kW)
注2)区分名「Ⅲ」であってその基準エネルギー消費効率が6.6以上又は5.3以下の場合は、それぞれ、6.6又は5.3とし、区分名「Ⅳ」であってその基準エネルギー消費効率が6.2以上又は4.9以下の場合は、それぞれ、6.2又は4.9とする。
出所)エアコンディショナーのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判
断の基準等、1999年3月31日通商産業省告示第190号(廃止・制定)、最新改定2022年5月31日、経済産業省告示第128号
<参考文献>
1)1979年通商産業省令第74号「エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行規則」
2) 日本冷凍空調工業会、Webサイト、家庭用エアコン、「エアコンの期間消費電力量について」、2021年8月15日閲覧、https://www.jraia.or.jp/product/home_aircon/e_saving_energy.html
3)1999年通商産業省告示第190号「エアコンディショナーのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(廃止・制定)、最終改定2022年経済産業省告示第128号