エネルギー消費機器のトップランナー制度と省エネラベリング制度

トップランナー制度と省エネラベリング制度の関係

 トップランナー制度は省エネ法1)(正式には「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」です)に基づき、エネルギー消費機器を製造事業者(及び輸入事業者)に対して、国がエネルギー消費性能の向上の判断基準を示して製品開発の方向性を指導し、消費者でのエネルギーの使用の合理化を図るものです。そして、製品にはこの省エネ性能を示すエネルギー消費効率等の情報を表示し、消費者に対しても購入の際に参考にしてもらって省エネ型機器を選択できるようにしたものです。このエネルギー消費効率の基準の設定において、国はトップランナー制度といわれる方式を採用しています。

 一方、省エネラベリング制度とは、消費者の購入時に省エネ情報をより明確にするために、小売事業者に対して省エネのラベルを表示させるものです。ここでは、省エネの状況を多段階評価値などで表すなど、分かりやすい記号や表示方法を提示することになっています。

 この両制度で行う内容やその法律等の根拠を下図に示します。同図には製造事業者等へのエネルギー消費機器に関するエネルギー消費性能の向上の指導やその表示内容について省エネ法、同法施行令、同法施行規則、関連する告示などの法制度の根拠を示しています。そしてそれを受けて、小売り事業者へのエネルギー消費量に関する情報の表示内容とその法制度の根拠についても示しています。さらに同図では、冷蔵庫を例にとり、実際の省エネ基準の達成率や多段階評価点(41段階)を計算する過程についても記載しています。

トップランナー制度

 省エネ法では、エネルギー消費機器等の製造事業者(及び輸入業者)がエネルギー消費性能の向上を図ることにより、消費者においてエネルギー使用の合理化ができるように定めています(第144条)。
 そして、同法では第145条で相当量のエネルギーを消費するエネルギー消費機器を特定し(特定エネルギー消費機器)、そのエネルギー消費性能の向上に関して製造事業者等の判断の基準(省エネ基準)となるべき事項を定め、これを公表するとされています。
 特定エネルギー消費機器は同法施行令第18条に示されています2)。特定エネルギー消費機器は以下に示す29製品です。

表-1 特定エネルギー消費機器

No.エネルギー消費機器名No.エネルギー消費機器名
1乗用自動車 16電気便座
2エアコンディショナー17自動販売機
3照明器具18変圧器
4テレビジョン受信機19ジャー炊飯器
5複写機20電子レンジ
6電子計算機21DVD レコーダー
7磁気ディスク装置22ルーティング機器
8貨物自動車23スイッチング機器
9ビデオテープレコーダー 24複合機
10電気冷蔵庫25プリンター
11電気冷凍庫26電気温水機器(ヒートポンプ式給湯器)
12ストーブ27交流電動機
13ガス調理機器28電球
14ガス温水機器29ショーケース
15石油温水機器
出所)省エネ法施行令第18条、特定エネルギー消費機器

 なお、日本におけるエネルギー消費機器の省エネ基準の設定方法はトップランナー方式と呼ばれています(これを基に基準を決める制度をトップランナー制度と言っています)。トップランナー制度というのは、現在商品化されている製品のうち最もエネルギー効率が優れた製品をベースに基準(トップランナー基準)を定めて、それに基づいた製品開発を指導していくという制度です。

 そして、これらの製品に対して消費者が購入する際にエネルギー消費効率に関する情報を取得できるように指定された表示(品名、エネルギー消費効率、製造事業者名等)をすることが法律において規定されています(省エネ法第147条)。

 製品ごとのエネルギー消費効率の具体的な指標を規定しているのが同法施行規則第93条別表第4です3)。なお、ここでは先に示した29製品のうち、24製品のみの指標が示されています。

表-2 エネルギー消費効率の具体的な指標

No.エネルギー
消費機器
エネルギー消費効率の具体的な指標
1エアコン
ディショナー
1. 冷房エネルギー消費効率は、(経済産業大臣が定める方法により)測定した冷房能力(W)を、測定した冷房消費電力(W)で除して得られる数値
2. 暖房エネルギー消費効率は、測定した暖房能力(W)を、測定した暖房消費電力(W)で除して得られる数値
3. 冷暖房平均エネルギー消費効率は、冷房エネルギー消費効率と暖房エネルギー消費効率との和を2で除して得られる数値
4. 通年エネルギー消費効率は、測定した年間の冷房負荷(W)及び暖房負荷(W)の和を、測定した年間の冷房消費電力量及び暖房消費電力量(W)の和で除して得られる数値
※測定したの前の( )内の文章は以降の記述では省略
2照明器具1. エネルギー消費効率は、測定したランプの全光束(lm)を、測定した消費電力(W)で除して得られる数値
2. 固有エネルギー消費効率は、以下の数値とする。
(1) 蛍光灯器具にあつては、測定したランプの全光束(lm)を、測定した消費電力(W)で除し、測定した器具効率の数値を乗じて得られる数値
(2) LED電灯器具にあつては、測定した定格光束(lm)を、測定した定格消費電力(W)で除して得られる数値
3複写機測定した一時間当たりの消費電力量をW/hで表した数値
4電子計算機1. サーバ型電子計算機のエネルギー消費効率は、測定した中央演算処理装置、主記憶装置及び補助記憶装置の性能を、測定した消費電力(W)で除して得られる数値
2. クライアント型電子計算機(サーバ型電子計算機以外の電子計算機をいう)のエネルギー消費効率は、年間消費電力量をkWh/年で表した数値
5磁気ディスク装置測定した消費電力(W)を、記憶容量(GB)で除して得られる数値
6ビデオテープ
レコーダー
測定した消費電力(W)
7電気冷蔵庫年間消費電力量をkWh/年で表した数値
8電気冷凍庫年間消費電力量をkWh/年で表した数値
9ストーブ測定した熱効率(%)
10ガス調理機器1. こんろ部エネルギー消費効率は、測定した熱効率(%)
2. グリル部エネルギー消費効率及びオーブン部エネルギー消費効率は、測定したガス消費量(W)
11ガス温水機器測定した熱効率(%)
12石油温水機器測定した熱効率(%)
13電気便座測定した年間消費電力量をkWh/年で表した数値
14自動販売機測定した年間消費電力量をkWh/年で表した数値
15変圧器測定した全損失をWで表した数値
16DVDレコ
ーダー
測定した年間消費電力量をkWh/年で表した数値
17ルーティ
ング機器
測定した年間消費電力量をkWh/年で表した数値
18スイッチ
ング機器
測定した消費電力(W)を、測定した伝送速度(GB/秒)で除して得られる数値
19複合機測定した年間消費電力量をkWh/年で表した数値
20プリンター測定した年間消費電力量をkWh/年で表した数値
21電気温水機器測定した熱量(MJ)を、測定した年間消費電力量(kWh/年)を熱量に換算してMJで表した数値で除して得られる数値
22交流電動機測定した入力及び全損失をWで表した数値の差を、測定した入力(W)で除して得られる数値
23電球測定した全光束(lm)を、測定した消費電力(W)で除して得られる数値
24ショーケース測定した年間消費電力量をkWh/年で表した数値
出所)省エネ法施行規則第93条別表第4
注)上記は省エネ法施行令に示された29種の特定エネルギー消費機器のうち24種しか記載されていませんが、経済産業省の告示では全ての機種にエネルギー消費効率が定義されています。

 また、上記で設定されたエネルギー消費効率の基準(数値または計算式)を設定しているのは、経済産業省の告示です。例えば、冷蔵庫の場合は2019年経済産業省告示第46号「電気冷蔵庫のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」に示されています。これらの基準等は製品毎に個別の告示で詳細に示されています。告示は全て資源エネルギー庁の以下のサイトから入手できます4)。https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/equipment/

 この告示には、エネルギー消費機器の性能向上のための判断基準が示されているのですが、この基準は関係する専門家らの委員会やワーキンググループでの協議をもとに決定されます。そしてその協議においてどのように基準値を決めているのか、その原則を下表に示します。この原則には対象範囲、区分設定、目標基準値設定の考え方、現状の性能を分析するためのデータの扱い方、測定方法、目標年度の設定方法などが記載されています。トップランナー制度をより深く理解するために巻末の参考文献が分かりやすいので参考にしてください5)。この資料を読むと日本の省エネ対策への強い思いが理解できると思います。

表-3 省エネ基準を設定する原則

No.  概 要  内  容
原則1 対象範囲対象範囲は、一般的な構造、用途、使用形態を勘案して定めるものとし、①特殊な用途に使用される機種、②技術的な測定方法、評価方法が確立していない機種であり、目標基準値を定めること自体が困難である機種、③市場での使用割合が極度に小さい機種は、原則として対象範囲から除外する。
原則2 基本指標特定エネルギー消費機器等はある指標に基づき区分を設定することになるが、その指標(基本指標)は、エネルギー消費効率と関係の深い物理量、機能等の指標とし、消費者が製品を選択する際に基準とするもの(消費者ニーズの代表性を有するもの)等を勘案して定める。
原則3 目標基準値
の設定
目標基準値は、同一のエネルギー消費効率を目指すことが可能かつ適切な基本指標の区分ごとに、1つの数値又は関係式により定める。
原則4 区分の設定区分設定にあたり、付加的機能は、原則捨象することとする。ただし、ある機能のない製品のエネルギー消費効率を目標基準値として設定した場合、その機能を有する製品が市場ニーズが高いと考えられるにもかかわらず、目標基準値を満たせなくなることにより、市場から撤退する蓋然性が高い場合には、別の区分(シート)とすることができる。
原則5区分の限定高度な省エネ技術を用いているが故に、高額かつ高エネルギー消費効率である機器等については、区分を分けることも考え得るが、製造事業者等が積極的にエネルギー消費効率の優れた製品の販売を行えるよう、可能な限り同一の区分として扱うことが望ましい。
原則6特殊品の
除外
1つの区分の目標基準値の設定にあたり、特殊品は除外する。ただし、技術開発等による効率改善分を検討する際に、除外された特殊品の技術の利用可能性も含めて検討する。
原則7待機電力
の考慮
家電製品、OA機器においては、待機時消費電力の削減に配慮した目標基準値とする。
原則8目標年度
の設定
目標年度は、特定エネルギー消費機器等の製品開発期間、将来技術進展の見通し等を勘案した上で、3 ~ 10年を目処に機器等ごとに定める。
原則9目標達成の
判断方法
目標年度において、目標基準値に達成しているかどうかの判断は、製造事業者等ごとに、区分ごとに加重平均方式により行う。
原則10測定方法測定方法は、内外の規格に配慮し、規格が存在する場合には、可能な限りこれらとの整合性が確保されたものとすることが適当である。また、測定方法に関する規格が存在しない場合には、機器等の使用実態を踏まえた、具体的、客観的かつ定量的な測定方法を採用することが適当である。
出所)「トップランナー制度-世界最高の省エネルギー機器等の創出に向けて-」、2015年3月版、経済産業省・資源エネルギー庁

省エネラベリング制度

 省エネラベリング制度とは省エネ法で定めた省エネ性能の向上を促すための目標基準の達成度合いをラベルに表示するものです。省エネラベルは、カタログや製品本体、包装など、見やすいところに表示されます。

 表示内容は、①省エネ性マーク、②省エネ基準達成率、③エネルギー消費効率、④目標年度が記載されています。省エネ性マークは省エネ基準達成率が100%を超えている製品にグリーンのマーク、未達成の製品にオレンジ色のマークがつけられます。

 ここで、省エネ基準達成率とは当該製品の基準エネルギー消費効率に対する達成率を言います。具体的には以下の通りです。

 <数字が大きいほどエネルギー消費効率が高い場合>① 
 省エネ基準達成率=当該製品のエネルギー消費効率/基準エネルギー消費効率

 <数字が小さいほどエネルギー消費効率が高い場合>② 
 省エネ基準達成率=基準エネルギー消費効率/当該製品のエネルギー消費効率   

 上記の計算式で、「数字が大きいほどエネルギー消費効率が高い場合」とは、照明のエネルギー消費効率(lm/W)やエアコンのAPF(通年エネルギー消費効率)のような場合を指します。また、「数字が小さいほどエネルギー消費効率が高い場合」 とは、冷蔵庫、テレビの年間消費電力量などの場合を指します。

統一省エネラベル

 小売事業者に対して、製品の省エネ性能を表示させる制度が統一省エネラベルです。この法的根拠は、2006年経済産業省告示第258号「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」です6)。複数回の改正が行われ最新の改正は2021年経済産業省告示第194号です。

 小売事業者に対して販売する製品に関する多段階評価、省エネラベル、年間電気代の目安を表示することが定められています。詳細の内容については本サイトの「小売事業者の省エネラベル表示制度」をご確認ください。

 多段階評価については、2020年以前までは、エアコン、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、液晶テレビ、電気便座、照明器具(家庭用)の6製品が「5つ星」による評価をしていましたが、2020年の改正により4製品( 電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気便座、照明器具 )が41段階評価(1.0から5.0までの0.1ポイント刻み)になりました。そして、さらに2021年8月の改正でテレビと温水器が、2022年5月の改正でエアコンが41段階評価に変更になっています。

 多段階評価値の5つの星による評価は下図のように表されます。かつてのエアコンの例では、5つ星は省エネ基準達成率が121%以上、4つ星は114以上121%未満などとなっていました(下図)。現在は41段階の多目的評価点になっています。

 2020年10月の改正で追加されたされた5.0~1.0までの41段階の多段階評価の結果(多段階評価点)は以下のように表示されることになりました(下図)。なお、多段階評価点の算定方法については 「小売事業者の省エネラベル表示制度」をご確認ください。

<参考文献>
1)1979年法律第49号「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」
2)1979年政令第267号「エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令」
3)1979年通商産業省令第74号「エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行規則」
4)製品別の「エネルギー消費機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」は以下の通り(主なものを示しています)。

  1. 1999年通商産業省告示第190号(廃止・制定)「エアコンディショナーのエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
  2. 1999年通商産業省告示第191号(廃止・制定)「照明器具のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
  3. 1999年通商産業省告示第192号(廃止・制定)「テレビジョン受信機のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2021年経済産業省告示第111号
  4. 1999年通商産業省告示第704号(制定)「電気冷蔵庫のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
  5. 1999年通商産業省告示第704号(制定)「電気冷凍庫のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」(制定)、最終改定2019年経済産業省告示第46号
  6. 2002年経済産業省告示第436号(制定)「電気便座のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第68号
  7. 2003年経済産業省告示第235号(制定)「電球のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
  8. 1999年通商産業省告示第194号(廃止・制定)「電子計算機のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最新改定2019年経済産業省告示第69号

5)経済産業省・資源エネルギー庁、「トップランナー制度-世界最高の省エネルギー機器等の創出に向けて-」、2015年3月版
6)2006年経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」、最終改定2020年経済産業省告示第243号