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【家庭の省エネ対策】数が多くて管理がしにくい照明の節電対策 6選

 前回に引き続き家庭の電気代削減のための省エネ対策として、今回は照明器具を取り上げます。資源エネルギー庁の調査では、照明の消費電力量は夏季ではエアコン、冷蔵庫に次いで3番目、冬季では給湯設備に次いで4番目に多いことが分かっています。照明は図-1の通り、夏季と冬季においては家庭の消費電力の約1割を占めています1)

出所)資源エネルギー庁:省エネポータルサイト、家庭でできる省エネ、家電製品別の電力消費割合を知ろう!
図-1 家電製品別の電力消費割合

 照明器具は家庭内に意外とたくさんあり、その管理に目が届かないことも多いと思います。照明は1つの部屋に少なくとも1個以上はあり、玄関、廊下、トイレ、キッチン、浴室、洗面所、納戸など、一般的に部屋数に含まれないところにも必ず存在します。さらに、読書用のスタンドや玄関ポーチなどの屋外灯などもありますので、その数は他の家電機器に比べて非常に多くなってしまいます。

 照明は以前の報告にも示したように、白熱電球から蛍光灯、LEDに代わってきており、その消費電力も大きく改善されてきました。1か所当たりの消費電力は最大でも100W程度ということもあり、省エネに関する意識が低くなっていることもあると思われます。

 対策としては蛍光灯からLEDへの交換や省エネ性能の高いLEDを選択することが重要です。そして、その照明機器の省エネモードを利用することやこまめに消灯するなどの配慮も必要です。また最近では自動制御(調光、ON/OFF)が可能な照明も出てきています。以上のことから、照明に関する省エネのポイントは以下の6点です。

 ① 既存の蛍光灯をLEDに交換
 ② 省エネ性能の高いLEDの選択
 ③ こまめに消灯を心がける
 ④ 省エネモードの利用
 ⑤ 自動制御型の照明器具の利用
 ⑥ 自然採光を取り入れた家づくり

 最後の自然採光を取り入れた家づくりは、昼間の時間帯での照明エネルギーを低減するためのものですが、簡単にできるものではありません。家づくりには日射遮蔽、断熱、気密など配慮すべきことが多いので、自然採光については優先順位が低いかもしれません。しかし、近年ZEH(net Zero Energy House)への期待も高まってきており、照明のためのエネルギー消費の少ない家づくりについても、住み替え時の参考になると思いその状況を整理します。

(1) 既存の蛍光灯をLEDに交換

 照明の種類は、白熱電球、蛍光灯、LEDの3種類です。白熱電球は既に生産が終了し、蛍光灯も終了しつつありますが、これらをLEDに交換することが必要です。LED電球の消費電力は表-1に示すように白熱電球の13%、蛍光灯の60%となっています(白熱電球60Wの明るさである810lm(ルーメン)の消費電力の比較)。

表-1  LED電球と白熱電球、蛍光灯の比較

白熱電球電球形蛍光ランプLED電球
写真
エネルギー消費効率15 lm/W
(54W、810lm)
67.5 lm/W
(12W、810lm)
112.5 lm/W
(7.2W、810lm)
寿命1,000~2,000時間6,000~12,000時間40,000時間
価格帯100円~200円700~1,200円900~1,700円
出所)LED照明産業を取り巻く現状(2012年11月29日、商務情報政策局 情報通信機器課)を基に、LED電球を最新情報に修正。LED電球はパナソニック製LDA7LHEW2 のスペック、価格を掲載。

 LEDはその寿命も40,000時間(蛍光灯は最大でも12,000時間)と長期化しており、価格も低下してきていますので、取り換えても損をすることはありません。図-2にLED電球と蛍光灯(電球形蛍光ランプ)の使用時間による総コスト(製品購入費用と電気代)の推移を示しています。LEDは3,000時間を超えた時点で総コストが蛍光灯のそれを下回っています。蛍光灯はLEDの寿命の40,000時間までに3回買い換えが必要になっており、使用時間が長くなるほどコストの差が広がっていきます。

注)表-1より蛍光灯の価格を950円、LEDのそれを1300円、蛍光灯の寿命を12,000時間、LEDのそれを40,000時間と仮定。電気従量料金31円/kWhと設定。
図-2 照明器具の使用時間による総コスト(イニシャル+ランニングコスト)

 政府はLEDを2020年までにフローで100%、2030年までにストックで100%普及させる目標を掲げていますので、2030年までには蛍光灯はなくなっていると考えられます。蛍光灯の製品を購入することができなくなりつつありますので、蛍光灯とLEDのコスト比較は既に意味がなくなっているといっても良いでしょう。

 家庭の照明の省エネを検討するには表-2に示したような部屋ごとの照明を書き出して、その定格消費電力を整理すると良いでしょう。分かれば部屋の面積も調べて、面積当りの消費電力を整理してみると、その特徴が分かります。

 表-2の事例では、住居全体で照明の定格消費電力の総和が327Wであり、その面積当り消費電力の平均値は4.5W/m2です。そして、個別の部屋ごとに面積当り消費電力を見ると、キッチンと玄関がかなり大きな数値になっています。

 部屋の用途によって必要な照明による明るさは異なりますが、この2部屋は特別に明るさを必要としている部屋ではありません。これらの部屋にはまだ蛍光灯が残っていて、これらのLED化を進めることが必要であることが分かります。

表-2 部屋別の照明の消費電力の事例

部屋メーカー種別型番定格消費
電力 W
数量部屋合計
電力 W
部屋面積
m2
面積当り
電力W/m2
リビング日立LEDシーリングライトLEC-AHS1210K32.2176.220.263.8
ODELICLEDシーリングライトSH-8268LDR441
キッチンPanasonic蛍光灯FL40SS-ENW/3737155.06.178.9
DAIKO蛍光灯FL20SSN/18181
和室Panasonic蛍光灯FCL32EL/30LS30158.09.726.0
Panasonic蛍光灯FCL30EL/28LS281
洋室1PanasonicLEDシーリングライトHH-LC564A37143.010.714.0
KOIZUMILEDスタンドPCL-316WT61
洋室2PanasonicLEDシーリングライトHH-CD0823A31.1141.611.963.5
OHMLEDスタンドDS-LE94AG10.51
玄関Panasonic蛍光灯FHT24EX-L24124.01.4316.8
廊下アイリスオーヤマLED電球LDA5L-G-E 4.6313.84.283.2
洗面所PanasonicLED電球LDR4L-W-E17/RF43.929.73.922.5
E-brightLED電球LDA2L-G AG221.91
トイレE-brightLED電球LDA2L-G AG221.911.91.351.4
浴室E-brightLED電球LDA2L-G AG221.923.83.51.1
住居合計2032773.34.5

 なお、東京都では「家庭のゼロエミッション行動推進事業」において、設置済みのエアコン・冷蔵庫・給湯器・照明器具を、省エネ性能の高い製品に買い換えた都民に対して、東京ゼロエミポイントを付与し、ポイント数に応じた商品券とLED割引券(LED割引券はどの場合も1000円分です)を交付しています。

 また、2022年度から照明器具についても対象が拡大され、照明器具と取替作業費についても商品券が交付されています(最大5000円の商品券)。これらを活用して、LEDに交換されてはいかがでしょうか。東京都ゼロエミポイントについては以下を参照ください(東京都ゼロエミポイント)。

(2) 省エネ性能の高いLEDの選択

 同じLEDでもどの製品も消費電力は同じではありません。同じ明るさでもエネルギー消費効率が異なる製品があることに留意してください。ただ、分かりにくいのは色調(光源色)によりエネルギー消費効率が異なるので、まず色調を選択したら同じ色調での効率を比較することが必要です。

 光源色には、昼光色、昼白色、白色、温白色、電球色の5種類があります。光源色別のイメージを図-3に示します。昼光色は正午の太陽光のように明るい光、昼白色は日の出の2時間に近く、電球色は日の出、日の入りに近い光です2)

出所) 一般社団法人日本照明工業会ホームページ、「明かりの未来へ」、LED照明ナビ
図-3 光源色の自然光との対応

 好みの光源色を選んだらその色別に定められた省エネ基準に応じた省エネ基準達成率を調べることが必要です。法令は蛍光灯も含みますが、ここではLED照明のみについて示します。LED照明の省エネ基準はLED電球とLED照明器具の2つに分かれています。

 現在販売中のLED電球は白熱電球と同一の規格化された口金(E17、E26など)に差し込むだけで利用できる照明であり、最も交換しやすくコストも安い照明です。一方、LED照明器具とは照明だけでなく照明に電気を供給する装置も含んだものです。

 照明器具はシーリングライト、ペンダント、ダウンライト等の種類がありますが、これをLEDに交換するには蛍光灯だけでなく照明器具全体を交換する必要があります。多くは工事なしで交換できますが、工事を必要とするものもあります。

 以前に報告したコンパクト蛍光灯FH24EXL(パナソニック製)は口金がGX24q-3であり、この口金に対応できるLED照明は発売されておりません。そのため、この蛍光灯をLEDに交換するためには照明器具全体を交換する(工事を伴う)ことが必要でした。

 LED電球とLED照明器具の省エネ基準をまとめて示すと表-3の通りです3)4)。照明器具についてはLEDに限らず蛍光灯も対象にしています。照明の省エネ基準の指標は明るさ(全光束)を消費電力で除したエネルギー消費効率です。

 照明のエネルギー消費効率(lm/W)=全光束(lm)/消費電力(W)

 どちらも光源色区分が「昼光色・昼白色・白色」(区分1)と「温白色・電球色」(区分2)によって異なる省エネ基準値となっています。LED電球の省エネ基準は区分1が110.0lm/W、区分2は98.6lm/Wであり、照明器具のそれはそれぞれ100.0lm/W、50.0lm/Wです。どちらも区分1の方がエネルギー消費効率が高いことが分かります。

表-3 電球と照明器具の省エネ基準

種類区分番号光源色区分省エネ基準(lm/W)目標年度
LED電球 1昼光色・昼白色・白色 1102027年度
 2温白色・電球色 98.62027年度
照明器具 1昼光色・昼白色・白色 1002020年度
 2温白色・電球色 502020年度
注)照明器具のエネルギー消費効率は基準固有エネルギー消費効率です。
出所)2003年経済産業省告示第235号(制定)「電球のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最新改定2019年経済産業省告示第46号
出所)1999年通商産業省告示第191号(廃止・制定)「照明器具のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号

 LED電球について、メーカー毎にエネルギー消費効率別の製品数を集計したものを図-4(1)、図-4(2)に示します(2023年1月時点)5)。ここでは、省エネ区分ごとに、製品の中心である全光束485lm(白熱電球40W相当)と810lm(白熱電球60W相当)の2種類の製品数を集計しています。

 LED電球の製品のほとんどが省エネ基準(110lm/W)を満たしていますが、まだ1割程度が省エネ基準未満となっています。製品の中心はエネルギー消費効率が110~120lm/Wの範囲ですが、メーカーによっては140lm/W以上の省エネ型製品を提供しています(東芝、OHM)。

注)省エネ区分1の全光束485lmと810lmの製品数を集計
出所)資源エネルギー庁、省エネ型製品情報サイト、電球、閲覧日2023年1月10日
図-4(1) エネルギー消費効率別のLED電球の製品数(区分1)
注)省エネ区分2の全光束485lmと810lmの製品数を集計
出所)資源エネルギー庁、省エネ型製品情報サイト、電球、閲覧日2023年1月10日
図-4(2) エネルギー消費効率別のLED電球の製品数(区分2)

 メーカー別の照明器具のうち、シーリングのエネルギー消費効率別の製品数を表-4に示します(省エネ区分1、全光束が「3300lm以上4300lm未満」の製品)6)。シーリングとは天井に直接設置される照明器具です(下の写真参照)。このほかにペンダント、ダウンライト、ブラケットなどがあります。

 表-4を見ると、製品のエネルギー消費効率の分布には非常に幅があることが分かります。照明器具の区分1の省エネ基準は100lm/Wですので、製品の95%が基準を達成しています。これだけエネルギー消費効率に幅があることから、省エネのために慎重に製品を選ぶことが必要と思われます。

表-4 メーカー別のエネルギー消費効率別の製品数

メーカー<100100≦x
<110
110≦x
<120
120≦x
<130
130≦x
<140
140≦x
<150
150≦x
<160
160≦x
<170
170≦xTotal
OHM213116
SHARP44
TAKIZUMI6164126156110
YAZAWA22
アイリスオーヤマ43638131861116
オーデリック2812141
コイズミ3924238
ドウシシャ410103330
パナソニック322306785112148
ホタルクス5410501171
山善112
大光電機11182211264
東芝5246897
日立312772123
合計381462052051132810143762
出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(2023年1月10日閲覧)より、シーリング製品で、省エネ区分1、全光束が「3300以上4300lm未満」の製品について集計。

 メーカーのうち、パナソニック、ホタルクス、日立は省エネ基準を160%以上達成している製品を提供しています(図-5参照)。特にパナソニックは高い省エネ性能を有した製品を多数提供しており、省エネタイプの製品開発を積極的に行っていると想像されます。

注)表-4のメーカー毎の集計のうち、製品数10以上を提供しているメーカーのみ表示。
出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」より、シーリング製品で、省エネ区分1、全光束が「3300以上4300lm未満」の製品について集計。
図-5 エネルギー消費効率別のLED照明器具の製品数(区分1)

 なお、照明についても省エネ基準達成率を製品に表示するように定められています。また、小売事業者に対しても多段階評価点を表示するように義務付けられていますが、その具体的な内容については、本サイトの以下を参照ください。

 LED電球の性能と省エネ基準:LED照明(1)-省エネ性能
 LED照明器具の性能と省エネ基準:LED照明(2)-照明器具の省エネ性能
 LED照明への交換の実例:LED照明(3)-自宅照明のLED化 

(3) こまめに消灯を心がける

 特にトイレや洗面所などは使用するときだけ点灯することが多いと思いますが、うっかり消し忘れてしまうことが良くあります。そのためこまめに消灯することを心がけましょう。

 資源エネルギー庁では、9WのLED電球1灯の点灯時間を1日1時間短縮した場合、年間で3.29kWhの省エネ、CO2削減量1.6kg-CO2、約100円の節約になるとしています。消費電力が少ないLED照明でもうっかり消し忘れるとこの程度の電力消費になるということです。白熱電球はこの約7倍、蛍光灯は約1.8倍となります。照明の数が多いと、これが何倍にもなるので、注意が必要です。

(4) 省エネモードの利用

 照明器具の中では省エネモードを有する機種もあります。多くは調光機能により明るさを落として節電します。三菱電機の説明によると、図-6のように全光束5200lm、定格消費電力26.5Wを、70%まで調光して全光束3,670lm、消費電力18.7Wにすることで、30%の節電ができるようです7)。この調光によって、エネルギー消費効率は192.4lm/Wから196.2lm/Wまで向上するとされています。

出所)三菱電機、LEDライトユニット形ベースライト、Myシリーズ、段調光機能
図-6 調光による節電の事例

 このような調光は部屋の広さの割に能力が高い照明器具を設置した場合に有効な方法です。部屋の広さに対応した明るさ(全光束)の目安は表-5の通りです。同表に示すように6畳(9.7m2)では2,700~3,300lm、8畳(13.0m2)では3,300~4,300lmが目安とされています。

表-5 部屋の広さと標準的な明るさ(全光束)の目安

全光束2700lm
未満
2700-
3300lm
3300-
4300lm
4300-
4900lm
4900-
5600lm
5600-
7000lm
7000lm
以上
広さ4.5畳6畳8畳10畳12畳14畳16畳以上
面積(m2)7.39.71316.219.422.725.9
注)1畳を1.62m2として計算。
出所)一般社団法人日本照明工業会、「LED照明器具の適用畳数について」を参考に作成。

 また、昼間も照明をつける必要がある部屋では、時間帯によって調光を変えることも有効と思われます。昼と夜では室内の明るさが違うので、昼間は照明の明るさを抑えて省エネを図ることができます。

(5)自動制御の照明設備の利用

 自動調光機能を有した照明設備を活用すると、天候や周囲の光の量によって以下のような制御が可能であり、最適な省エネが可能となります(日本照明工業会のサイトから引用)。

●7時:朝日が差し込むときは明るさを抑えて15%点灯
●12時:太陽が昇り晴れているときは自動的に消灯
●17時:暗くなりすぎないように半分の明るさで
●20時:団らんの時間は明るくお部屋を照らします

 また、こまめに消灯することを忘れてしまう方に人感センサー付き照明が有効です。公共施設などでは比較的普及していますが、家庭内ではまだそれほど普及していません。赤外線センサーで人を感知して自動的に点灯、消灯を行いますので、消し忘れはなくなります。価格も非常に安価になっており、工事が不要のものもあります。

 さらに、自動制御ではありませんが、ソーラーライトという主に屋外で使用する照明の省エネ型の製品もあります。昼間に太陽電池パネルで発電した電気を内蔵バッテリーに蓄電し、夜間照明に利用します。住宅では玄関ポーチや縁側などの屋外灯への利用が考えられます。

(6)自然採光を取り入れた家づくり

 自然採光とは、室内の照明のために屋外から自然光を取り入れることをいいます。昼間の明るい時に室内に明かりを取り入れることで、照明に費やすエネルギーを減らすことができます。

 自然採光は日本の建築様式に取り入れられており、ひさしや障子がそれにあたります。障子(木枠に紙を貼った明障子)は視界を遮って、プライバシーを保つことができ、自然光を取り入れることができます。しかし、日射が直接入り込むと冷房負荷を上昇させ、障子は紙のため冷気を防ぐことができないため、窓ガラスなどに変わっていきました。

 自然採光を取り入れた居室の一例を写真に示します。開口部を上部に設けて明りが入るようにしています。自然採光の難しさは、特に日射のような熱を伴う光をどのように防ぐかという点にあります8)。日射に対しては、季節や時間帯によってひさしやブラインドを使用することが有効となります。

 日本の建築基準法では「住宅の居室においては床面積の7分の1以上の採光に有効な開口部を設けなければならない」とされており、基準に定められた開口部のない部屋は居室ではなく納戸、サービスルームとされます。この場合、採光は日照ではなくあくまでも光を取り入れることを言いますので、北向きの日射がない部屋でも採光はできます9)

 自然採光の設計をする場合には、室内の照度を均一にするためできるだけ上部に開口部(窓)を設け、直射日光が入らないよう拡散ガラスなどを用いることが必要です。和風建築における欄間(写真参照)はこのような配慮をした手法とされています8)

 窓がない場合でも鏡やガラスの反射等を利用して採光する方法があります。表-6に人工的な自然採光の方法とその特徴を示しています10)。光を集め、反射体を用いて導光ダクトにより室内に光を取り入れます。これらの方法は多くはオフィスビル等に適用されていますが、マンションや病院に設置される事例もあるようです。

表-6 人工的な自然採光の方法

 採 光 方 法   特  徴晴 天曇天有効な採光時間
トップライト方式採光装置(透過利用)・屋根に取り付けた透明のドームにより天空光を導入する。直上階に使用する場合に適します。8~12時間
ダクト方式採光装置(反射利用)・採光口より入射した光を、高反射体で形成した導光ダクトで室内に導入する方式。地下室に適します。8~12時間
太陽光自動追尾方式採光ダクト(集光・反射利用)・太陽の位置変化に合わせ反射ミラーを制御し、導光ダクトを利用して室内に導入する方式。マンション、病院の居室の採光に適します。×8~12時間
光ファイバー方式採光装置(集光・光ファイバー伝送)・太陽光を集光し、光ファイバーケーブルにより導入する方式。地下室等に適します。×8~12時間
屈折方式採光装置(屈折利用)・太陽直射光を窓面から、レンズ、ブラインドの屈折反射を利用して導入する方式。オフィスビル等の室内の採光に適します。×8~12時間
建築化方式採光装置(透過利用)・建築構造的に太陽光を導入する方式。最もダイナミックな方式で、オフィスビル等のアトリウム、吹抜等に適します。8~12時間
出所)パナソニック、照明設計資料、人工的自然採光

 その採光から放光までの建築構造における仕組みを図-7に示します11)。太陽光を採光部から取り入れ、反射鏡を用いて光ダクトを使って導光することにより、室内に光を導きます。このような方法により昼間の自然光が届かない室内での照明電力を低減することができます。

出所)古河電工、CSR活動、環境調和製品、 地球温暖化防止自然採光システム「光ダクト」
図-7 人工的自然採光の仕組み

 近年は省エネルギーを徹底的に進めて、エネルギー収支をゼロとすることを狙いとした住宅ZEH(net Zero Energy House)を目指す動きもあります。改定されたエネルギー基本計画にはZEHの導入についても推奨されており、今後は冷暖房エネルギーに加えて、照明エネルギーについても省エネ化が求められていくものと思われます。

<参考文献>
1) 資源エネルギー庁:省エネポータルサイト、家庭でできる省エネ、家電製品別の電力消費割合を知ろう!
2) 日本照明工業会:LED照明ナビ、https://www.jlma.or.jp/led-navi/contents/cont11_dimming.htm
3) 2003年経済産業省告示第235号(制定)「電球のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最新改定2019年経済産業省告示第46号
4) 1999年通商産業省告示第191号(廃止・制定)「照明器具のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
5) 経済産業省:資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「電球」(閲覧日2023年1月10日)、https://seihinjyoho.go.jp/
6) 経済産業省:資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(閲覧日2023年1月10日)、https://seihinjyoho.go.jp/
7) 三菱電機:LEDライトユニット形ベースライト、Myシリーズ、段調光機能
8) 海宝幸一:自然採光をもっと積極的に、照明学会誌、第87巻、第9号、2003年
9) 建築基準法:制定1950年法律201号、最終改定2022年法律第4号、第28条1
10)パナソニック:照明設計資料、人工的自然採光、https://www2.panasonic.biz/jp/lighting/plam/knowledge/document/0304.html
11)古河電工:CSR活動、環境調和製品、 地球温暖化防止自然採光システム「光ダクト」