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【家庭の省エネ対策】冬季にエネルギー消費が急増する給湯の省エネ対策 5選

 前回は炊事のための電気とガスのエネルギー代を分析し、省エネ対策を検討しました。今回は冬季におけるエネルギー消費量が急増する給湯を取り上げ、これまで本サイトで分析してきた結果を基に省エネ対策をまとめます。冬季においては、水道水の水温が低くなっているため、所定の水温まで上げるための多くのエネルギーを消費します。

 給湯にも電気とガスの両方が使われています。暖房にはあまり使われないガスが、冬季にガス料金が非常に高くなるのは給湯による影響が大きいためです。また、電気も給湯用に使われていますが、エコキュートなど限られたものでしか使われていません。それでも図-1に示すように、冬季においては家庭の電気消費量の第3位にランクされています1)

出所)資源エネルギー庁:省エネポータルサイト、家庭でできる省エネ、家電製品別の電力消費割合を知ろう!
 図-1 家電製品の電力消費割合

 給湯エネルギーは風呂の湯はりやシャワーなどの入浴のために消費されるほか、調理、食器洗い、洗顔、手洗いなどにも使われています。ガス料金が高騰している中では、何とかガス料金の上昇を抑えたいと考えている方も多いと思われます。

 ここでは、まず給湯のための電気温水器とガス温水器について整理します(本サイトでは「給湯器」ではなく、省エネ法で使われている「温水器」を使います)。前回の炊事における電気とガス器具の経済性については、ガス器具の方に優位性がありました。しかし、電気温水器はエアコンで使われているヒートポンプの原理が使用されており、ガス温水器より省エネ性能は高いのです。

 それらの特徴を整理したうえで、今回のテーマである給湯のためのエネルギー代について、現状の料金単価を用いて比較します。続いて、給湯の用途である入浴(湯はり、シャワー)、手洗い・洗面、食器洗いのそれぞれの用途について省エネ方法を検討していきます。したがって今回の省エネ対策は以下の5項目です。
 
 ① 省エネ型の温水器の使用
 ② 風呂の湯はりにおける省エネ
 ③ 入浴時のシャワー・水栓での省エネ
 ④ 手洗い・洗面、炊事の省エネ
 ⑤ 食器洗いでの省エネ(食器洗い乾燥機の使用)

(1)省エネ型の温水器の使用

(a)ガス温水器 

 温水器はエネルギー源としてガスと電気の両方を使います。ガス温水器、電気温水器ともに省エネ法の対象機器とされています。まずガス温水器の省エネ性能について説明します。ガス温水器は種々のタイプがあり、タイプ別の異なる省エネ基準が決められています。

 ガス温水器は2002年に省エネ法の対象になり、2006年度を目標年度とする省エネ基準が設定されました。その後、2021年に改訂され2025年度を目標とした新基準に変わりましたが、現状では両方の目標年度の製品が販売されています。旧基準の製品に比べて、新基準の製品は高い熱効率を求められています。

 図-2、図-3に新旧省エネ基準を示します(省エネ区分の具体的内容は本記事の末尾に付録として示しています)。新旧の基準はガス温水器の区分が変わっているため単純な比較はできませんが、以下のような改善がみられています。

 すなわち、2006年度目標の省エネ基準(図-2)では80%を下回る機器タイプが多くありましたが、2025年度目標の新しい省エネ基準(図-3)では一部(自然通気式、レンジフード一体型)を除いて80%以上の熱効率を目標としています。同じガス器具であるガスコンロの熱効率が50%台であることを考えると、比較的高効率と言えます。

出所)2002年経済産業省告示第434号(制定)「ガス温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」、最終改定2021年経済産業省告示第97号
図-2 ガス温水器の省エネ基準(目標年度2006年度)
出所)2002年経済産業省告示第434号(制定)「ガス温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」、最終改定2021年経済産業省告示第97号
図-3 ガス温水器の省エネ基準(目標年度2025年度)

 従って、ガス温水器を買い替える際には新しい目標年度に対応したものを選択すると良いでしょう。最近では特に高効率のガス温水器であるエコジョーズが登場しています。これは図-4に示すように熱交換器を2つ設置して、排熱も利用して温水を供給するものであり、熱効率は95%程度と言われています。価格は高いですが、ガス消費量は10%以上低減できると想定されます。

出所)日本ガス協会:公式Webサイト、ガスの利用、省エネ型高効率給湯器(エコジョーズ)
図-4 エコジョーズの原理と装置構成

(b)電気温水器(エコキュート)

 電気をエネルギー源とした電気温水器はエコキュート(エコ給湯にひっかけているのでしょう)と呼ばれています。エコキュートはエアコンと同じヒートポンプの原理を利用した電気機器であり、熱効率は100%を上回ります。

 その装置構成は、ヒートポンプと比較的大きな貯湯槽からなり、夜間電力を利用して温めて昼間使うという特徴があります(図-5参照)。また、貯湯槽の設置場所を確保する必要があるため集合住宅での設置は非常に難しいとされてきました。そのためエコキュートは2019年の調査で戸建住宅では24.4%普及していますが、集合住宅では3.0%となっています2)

図-5 電気温水器(エコキュート)の原理と装置構成

 ヒートポンプで使われるのは圧縮機での機械的な動力とポンプやファンの電力のみであり、得られる熱のエネルギーよりも少ないエネルギー(電力)であるため、熱効率は100%を超えることができます。

 エコキュートの省エネ基準は年間給湯保温効率で表されます。すなわち、下の式で表される年間の給湯パターンに基づく給湯熱量と年間消費電力量(熱量換算値)の比になります。年間給湯保温効率は1年間のエネルギー消費効率を示すものですが、ここでは一般的な熱効率と同様とみなします。

<ふろ保温機能のあるもの>

 年間給湯保温効率=(1年間に使用する出湯水が得た熱量+保温のために浴槽水が得た熱量)/(1年間に必要な消費電力量×3.6)

<ふろ保温機能のないもの>

 年間給湯効率=1年間に使用する出湯水が得た熱量/(1年間に必要な消費電力量×3.6)

 これらの指標は外気温に影響を受けるため、寒冷地か否か(仕様)による省エネ基準の差が大きくなっています。初期の省エネ基準(目標年度2017年度)の目標値は2.0から3.3までの範囲となっていました。この数字は投入した電力量の2.0倍から3.3倍の熱量が得られることを意味しており、非常に高い熱効率を持つことが分かります。

 電気温水器は2013年に省エネ法が初めて適用されてから、2021年に改訂されて新たな省エネ基準(目標年度2025年度)が策定されています。図-6に省エネ基準の新旧比較を示します。新基準では省エネ区分は、想定世帯、貯湯缶数、貯湯容量、仕様(寒冷地か否か)によって区分されています(区分の詳細は付録の省エネ基準を確認ください)。

注1) Nomal:寒冷地仕様以外、Cold:寒冷地仕様、注2)旧基準の保温機能なしのものは比較対象外。旧基準の貯湯缶数が多缶のものは貯湯缶容量別の基準の平均値を算定。
出所)2013年経済産業省告示第38号「電気温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」(制定)、2021年告示第115号(最終改定)
図-6 電気温水器の新旧省エネ基準の比較

 図-6より、どの区分も新基準の熱効率は高くなっていますが、旧基準の2017年基準値より平均0.4ポイント高い基準値になりました。そのため、新しい目標年度の製品を購入することが望まれます。

(c)ガス温水器と電気温水器の比較

 ここではガス温水器と電気温水器(エコキュート)のエネルギーコストを比較します。

 計算の前提条件として、4人家族を想定し1日500Lの温水を使用すると仮定します。冬季を想定して、水温10℃から40℃まで加温して使用します。ガス温水器の場合はその都度加温して使用し、電気温水器の場合は加温と保温を行いながら温水を供給します。

 表-1にガス温水器と電気温水器のエネルギー代を比較した結果を示します。ガス温水器は省エネ区分Ⅱ-6、エコジョーズ(高効率ガス温水器)の2種を示しています。また、電気温水器は省エネ区分Fと区分Eの2種を示しています。いずれも新基準(目標年度2025年度)の熱効率を用います。

 それぞれの温水器の性能は表-1の欄外に記載のある通りで、区分Ⅱ-6の熱効率は84.4%(省エネ基準値)、エコジョーズの熱効率はスペック値より95%です。また、電気温水器の区分F(寒冷地仕様)の熱効率は2.9、区分E(寒冷地以外)のそれは3.5です(図-6参照)。

表-1 ガス・電気温水器のエネルギー代比較

機 種熱効率 注1)投入熱量(MJ) 注2)エネルギー消費量 注3)エネルギー代(円) 注4)
ガス温水器区分Ⅱ-684.4%74.61.67m3368
エネジョーズ95.0%66.31.48m3326
電気温水器区分F2.921.76.03 kWh270
区分E3.518.05.00 kWh224
注1) ガス温水器の区分Ⅱ-6は瞬間湯沸器、強制通気式、「その他」であり、熱効率は84.4%(省エネ基準値)、エネジョーズは高効率ガス温水器で熱効率はスペック値より95%、電気温水器の区分Eは標準世帯、貯湯容量が「320以上550L未満」、寒冷地仕様以外のもので熱効率3.5、区分Fは区分Eと同じ容量の寒冷地仕様のもので熱効率2.9。
注2) 冬季を仮定して、給水水温10℃から40℃まで500Lの水を昇温、保温を行う。水の比熱容量を4.2J/(g・K)と設定。加える熱量は63MJ(=0.5×30×4.2)となるため、これを熱効率で除して算定。
注3)ガスの単位熱量は44.8MJ/m3、電気の単位熱量は3.6MJ/kWh
注4)ガスの料金単価は220円/m3(東京ガスの2023年1月単価)、電気の料金単価は44.8円/kWh(東京電力EPの2023年1月料金)

 得られたエネルギー代を比較すると図-7の通りです。ガス温水器の区分Ⅱ-6、エコジョーズはそれぞれ368円/日、326円/日でした。一方、電気温水器の区分F、区分Eはそれぞれ270円/日、224円/日でした。この結果から電気温水器のコストがガス温水器のコストを下回っており、ヒートポンプを用いた省エネ性能の高さが確認されました(本計算では電気温水器の年間給湯保温効率を熱効率として計算しています)。

注)それぞれの熱効率はガス温水器の区分Ⅱ-6は84.4%、エコジョーズは95%、電気温水器の区分Eは3.5、区分Fは2.9。電気温水器の熱効率は年間給湯保温効率を指すが、熱効率と近似するとして算定。
図-7 ガス・電気温水器のエネルギー代の比較

 なお、この計算は電気の夜間電力料金を考慮していませんので、夜間電力を使って電気温水器で加温する場合はさらに安くなります。さらに、最近では自宅で太陽光発電を行って電気温水器の電源とする設備も普及し始めており、それを用いればさらに省エネとなります。

 ガス温水器、電気温水器の区分別の熱効率などの省エネ性能については以下を参照ください。電気温水器は熱効率が高いですが、デメリットもありますので、下記のサイトを確認してください。

 ガス温水器の省エネ性能:ガス温水器のエネルギー消費効率
 ガス温水器の製品の省エネの状況:ガス温水器(1)-省エネ性能
 電気温水器の省エネ性能:エコキュートのエネルギー消費効率
 電気温水器の製品の省エネの状況:エコキュートの省エネ性能

(2) 風呂の湯はりにおける省エネ

 日本では入浴は浴槽に湯をためて体を温め、浴槽外で洗髪や体を洗うことが多いと思われます。体を洗う際にはシャワーを使うことが多いと思われますので、浴槽を持たない欧米と比べると浴槽の湯はりに余計なエネルギーを消費します。

 浴槽の湯はりのエネルギー消費量(ガス消費量)を測定した結果を図-8に示します。使用したガス温水器はリンナイ製RUF-VS2005SAUで、給湯能力20L/分です。給湯部の熱効率は81%であり、給水温度23℃から40℃に加温して温水を供給しました。200Lの湯はりに要したガス消費量は488Lでした。これは6月末に測定したものですので冬季にはさらに多くのガス消費量になると想定されます。

出所)本サイトの「ガス温水器(2)-ガス消費量の測定」
図-8 ふろの湯はりのガス消費量

 日本においては上記のように風呂の湯はりに多くのエネルギーを消費します。そこで、湯はりをせずに24時間風呂や追い焚きをすることを考える人もいるかもしれません。この場合は水道代は減らせますが、ガス代を減らすことはできません。24時間風呂は、人が入らない時間も温度を保つエネルギーが必要であり、最も無駄なエネルギーを使う方法です。

 一方、追い焚きは一般的には追い焚きの熱効率は給湯に比べて低いので、省エネのためにはあまり推奨されていません。上記のガス温水器の場合、給湯の熱効率は81%ですが、追い焚きの熱効率は78.6%です。2.4%低い熱効率で湯を沸かすので、ガス消費量は増えるのです。

 追い焚きのガス消費量の測定の一例を図-9に示します。1人が入浴後3時間経って別の人が入浴するために冷めたお湯を追い焚きをしたものです。この追い焚きに要したガス消費量は50Lでした。これは夏季に測定した結果なので、冬季にはさらにガス消費量は増えるはずです。もし、2人が続けて入浴すれば追い焚きのガス消費量を少なくできたはずです。

出所)本サイトの「ガス温水器(2)-ガス消費量の測定」
図-9 追い焚きのガス消費量

 入浴のための根本的な省エネ対策はこの湯はりの回数を減らすのが最も効果的です。湯はりはせずにシャワーのみで済ませることや、フィットネスジムに通っている人は、ジムで入浴を済ませるなどの工夫も必要です。

 それでも風呂の回数を減らしたくない人は、浴槽の水量を減らすか、温度を下げる方法があります。例えば、42℃で設定しているのに対して、温度を2℃下げる場合を計算すると以下の通りです。

給湯温度を2℃下げた場合のガス消費量の変化率=(40℃-10℃)/(42℃-10℃)=93.8%

 つまり、ガス消費量は6.2%低減することになり、同様にガス代も同じだけ低減します。また、水をためる容量を200Lから10%低減させる場合も、湯はりのガス消費量を10%低減させることができます。

(3)入浴時のシャワー、水栓での省エネ

 入浴時にシャワーと水栓による洗髪と体洗いに要したガス消費量を測定した結果を図-10に示します。風呂の湯はり後に2人が時間をおかずに順番に入り、風呂に浸かった後にシャワーで洗髪等を行っています。その結果、ガス消費量は2人分で250Lでした。

 入浴時のシャワーと水栓の使用によるガス消費量は、湯はりに要したガス消費量(488L)の半分程度です。一般的にシャワーの水量は10L/分と言われています。シャワーを10分間行うと水を100L使用することになります。一般的な家庭用の浴槽は200L程度の容量であるため、湯はりに要したものの半分程度のガス消費量となります。

出所)本サイトの「ガス温水器(2)-ガス消費量の測定」
図-10 2人の入浴時のガス消費量

 これは6月末に測定したものですので冬季にはさらに多くのガス消費量となっていると想定されます。そこで、冬季の入浴に要するガス消費量を試算してみます。測定時(夏季)の給水温度は23℃であり、冬季の給水温度を10℃とすると、冬季のガス消費量は夏季に比べて以下の倍率で多くなります。

 冬季と夏季のガス消費量の比率=冬季と夏季の昇温温度の比率=(40℃-10℃)/(40℃-23℃)=1.76

 これを基に湯はりとシャワーに要する冬季のガス消費量を算定すると、それぞれ859L、440Lとなります。このガス消費量にガス料金単価(220.5円/m3)を乗じると、それぞれ189.4円、97.0円となり、1回の入浴に286円のガス代がかかっていることになります。もし毎日入浴すると1ヶ月で実に8,580円のガス代となります。

 洗髪や体洗いの時間を短縮するのはかなり難しいので、シャワーの湯量を調節できるのであれば湯量レベルを下げる方法もあります。また、サーモスタットによって温度を下げることも対策の一つです。

 また、節水型のシャワーを使用することも1方法です。左写真に小流量吐水のシャワーヘッドを示します。これらは泡沫タイプで、水に空気を含ませることで吐水量を減らして快適性を維持しようとするものです(出所:バルブ工業会、公式Webサイト、節湯水栓)。

 (4)手洗い、洗面、炊事の省エネ

 洗面、手洗い、炊事などにおいて、水栓の開度や温度設定により、省エネが可能となります。台所や洗面所ではシングルレバー混合水栓(1つのレバーで湯の水の調節が可能な水栓)を使っているところも多いと思いますが、その吐水量と温度設定を変えた場合のガス消費量の測定を行いました。測定したケースは表-2の通りです。

 ●ガス温水器のメニューで温度設定を変える:設定温度を40℃、38℃とする
 ●水量の調整:レバーの上下による「全開」と「中間」にして吐水量を調節
 ●水温の調節:レバーの左右による「全湯」、「中間」、「全水」にして水温調節

表-2 測定における設定ケース

 調 節 項 目ケース1ケース2ケース3
ガス温水器の設定温度  40℃  38℃
水量レバー:水量開度「全開」
「中間」
水温レバー:水温開度「全湯」左レバー
「中間」中央レバー
「全水」右レバー

 まず、ガス温水器の設定温度を変えて、キッチンにおける水量を「全開」と「中間」の場合を比較すると、図-11の結果を得ました。温度設定が40℃と38℃の比較では「全開」の場合は約2割、「中間」の場合は6%のガス消費量の削減となりました。吐水量が多いほどガス消費量を削減できることが分かります。

出所)本サイトの「ガス温水器(3)-炊事・洗面のガス消費量」
図-11 ガス温水器の温度設定、混合水栓の水量開度によるガス消費量

 また、温度設定が40℃の場合、水量開度を「中間」に設定した結果、吐水量は4.7L/分となり、「全開」の約6割(58%)となりました。この時のガス消費量は10.1L/分であり、「全開」と比べると約6割(61%)となり、吐水量の比率がそのままガス消費量の低減率になることを確認できました。

 一方、温度設定を38℃にした場合は、水量の出方は温度設定40℃の時と同じであるにもかかわらず、ガス消費量は13L/分から9.5L/分と約3割程度の削減にとどまりました。温度設定が低いと、水栓の吐水量の削減によるガス消費量の削減効果が低くなる可能性がありました。

 また、シングルレバーでの温度調節による効果は以下の通りです。キッチンでは温度開度を「中間」に設定することで「全湯」時のガス消費量を46%削減できました(図-12)。また洗面所でも同様の方法でガス消費量が32%削減されています。

出所)本サイトの「ガス温水器(3)-炊事・洗面のガス消費量」
図-12 混合水栓の温度調節によるガス消費量

 このように、ガス温水器の設定温度、水栓の開度(吐水量の調節)、水栓での温度調節により、ガス消費量を削減することができました。これらのことを意識することでガスの消費量を軽減でき、ガス代も低減できるものと思われます。

 なお、無意識のうちに水栓からの省エネができる節湯水栓、自動水栓なども販売されていますので、本サイトの「ガス温水器(3)-炊事・洗面のガス消費量」を参照ください。

(5)食器洗いでの省エネ(食器洗い乾燥機)

 食器洗いについても水栓の開度、温度設定などにより省エネが可能ですが、ここでは食器洗い乾燥機の省エネ効果について解説します。結論を言うと、食器洗いにおいて現状でどのような洗い方をしているかによってその効果が変わります。

 まず、温水を使わずに食器を洗っている人には全く省エネの効果はありません。逆に、温水を使って水を出しながら食器洗いをしている人はガス消費量の削減効果があります。しかし、食器を浸け洗いをしている人は効果が少なくなります。食器洗い乾燥機は大幅なガス消費量の削減ができますが、電気消費量が増えるので、現状の水の使い方を確認することが必要です。

 本サイトで、食器洗い乾燥機のエネルギー消費量の測定を行っていますので、そのデータを用いてエネルギー代の比較検討を行います。表-3に食器洗い乾燥機を使用した場合と手洗いの場合のエネルギー、水道、洗剤の消費量の比較結果を示します。

 測定した食器洗い乾燥機は、リンナイ製RSW-F402Cです。これは庫内容積が66Lの大容量タイプで、標準収納食器数は56点です。測定において収納した食器数は42点であり、収納能力の3/4を洗ったことになります。また、運転メニューはスピーディコースで所要時間95分でした。手洗いの場合のエネルギー消費量の計算方法は表の欄外に示しています。

表-3 食器洗い乾燥機と手洗いのコスト比較

  項  目 電気ガス電気+ガス水道洗剤合計
食器洗い
乾燥機 注1)
消費量730Wh30L16L10g
料金単価 注3)44.8円/kWh220.5円/m3
262円/m30.7円/g
料 金32.7円6.6円39.3円4.2円7.0円50.5円
手洗い 注2)消費量0186.6L82.1L10.1mL
料金単価 注3)220.5円/m3262円/m30.68円/mL
料 金041.1円41.1円21.5円6.9円69.5円
注1)リンナイ製食器洗い乾燥機RSW-F402Cを使用。温水を供給するガス温水器はリンナイ製のRUF-VS2005SAU。
 食器洗いの食器点数42、小物点数28。運転コース「スピーディコース」
注2)手洗いのエネルギー消費量は以下の計算によります(日本電機工業会の自主基準)。
・水温20 ℃として給湯40 ℃のお湯を使用。流量は6 L/分(0.1 L/秒)
・水道使用量算出式:つけ置き洗い用10 L+(食器点数×1.35 L)+(小物点数×0.55 L)
・ガス使用量算出式:(40〔給湯〕-20〔水温〕)×上記算出水道使用量÷0.80〔熱効率〕÷11,000〔発熱量〕
・台所用洗剤使用量:標準食器点数×0.24mL
注3)エネルギー代の計算根拠
・電気の料金単価:44.8円/kWh(東京電力EP、スタンダードS、関東地区、400kWh/月使用時、2023年1月料金)
・ガスの料金単価:220.5円/m3(東京ガス、一般料金、東京地区、50m3/月使用時、2023年1月料金)
・水道代、洗剤代はメーカーカタログ値
出所)本サイトの「食器洗い乾燥機(2)-エネルギー消費量の測定」

 表-3から食器洗い乾燥機は手洗いと比較して水使用量が大幅に少なくなっていることが分かります。ガス消費量は水使用量と連動して大きく減少しています。食器洗い乾燥機の特徴は手洗いに比べて水使用量とガス消費量が大幅に減少し、逆に手洗いでは消費しなかった電気を消費することです。

 エネルギーと水道、洗剤の消費によるコストの比較結果を図-13に示します。電気代とガス代の総和を比較すると、1回の食器洗いで食器洗い乾燥機を使った場合は39.3円(電気代32.7円、ガス代6.6円)、手洗いの場合は41.1円(ガス代のみ)とあまり大きな差はありません。

注1)リンナイ製RSW-F402C(標準収納食器数56点)の「スピーディコース」で42点の食器を洗浄・乾燥の場合を比較。
注2)電気料金単価:44.8円/kWh、ガス料金単価:220.5円/m3、台所用洗剤代0.68円/mL、食洗器用固形洗剤0.7円/g
出所)本サイトの「食器洗い乾燥機(2)-エネルギー消費量の測定」
図-13 食器洗い乾燥機と手洗いのコスト比較

 これは洗った食器数が本機の収納能力の3/4であったためであり、能力と同じ食器数であればエネルギー代の差は大きくなったはずです。このことから、食器洗い乾燥機の経済効果は洗う食器数に依存することが分かります。

 毎日使用する食器数に照らしてその機種が効率的に食器洗いできるかを確認して購入することが必要です。最近では食器数やよごれをセンサーで感知して洗い方を制御する省エネ機種も登場しています。また、食器洗い乾燥機の場合は水道使用量が大幅に減るのでその経済的な効果はあるものと思われますので、これらを考慮して購入を検討することが必要です。

 食器洗い乾燥機はタイマーでの運転も可能ですので、夜間電力を使用した節電も可能です。ここでは説明しなかった食器洗い乾燥機のメーカー別製品の省エネ性能や手洗いとの比較の詳細や省エネ運転方法などは以下に記載していますので、参考にしてください。

 食器洗い乾燥機の省エネ性能:「食器洗い乾燥機(1)-省エネ性能」
 食器洗い乾燥機の省エネ効果:「食器洗い乾燥機(2)-エネルギー消費量の測定」

<参考文献>
1)資源エネルギー庁:省エネポータルサイト、家庭でできる省エネ、家電製品別の電力消費割合を知ろう!
2)環境省:公式Webサイト、2019年度の家庭のエネルギー事情を知る〜給湯機器について〜
3)2002年経済産業省告示第433号(制定)「ガス調理機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
4)2013年経済産業省告示第38号「電気温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」(制定)、2021年告示第115号(最終改定)

付録

付表-1 ガス温水器の省エネ基準(目標年度2006年)

   区 分基準エネルギー
種別通気方式循環方式給排気方式区分名消費効率(%)
ガス瞬間湯沸器自然通気式開放式 A 83.5
開放式以外のもの B 78.0
強制通気式屋外式以外のもの C 80.0
屋外式 D 82.0
ガスふろがま
(給湯付のもの以外)
自然通気式自然循環式半密閉式又は密閉式 (給排気部
が外壁を貫通する位置が半密閉
式と同程度の高さのもの)
 E 75.5
密閉式(給排気部が外壁を貫通
する位置が半密閉式と同程度
の高さのもの以外)
 F 71.0
屋外式 G 76.4
強制通気式自然循環式 H 70.8
強制循環式 I 77.0
ガスふろがま
(給湯付のもの)
自然通気式自然循環式半密閉式又は密閉式(給排気部
が外壁を貫通する位置が半密閉
式と同程度の高さのもの)
 J 78.0
密閉式(給排気部が外壁を貫通
する位置が半密閉式と同程度
の高さのもの以外)
 K 77.0
屋外式 L 78.9
強制通気式自然循環式 M 76.1
強制循環式屋外式以外のもの N 78.8
屋外式 O 80.4
ガス暖房機器
(給湯付のもの以外)
 P 83.4
ガス暖房機器
(給湯付のもの)
 Q 83.0

付表-2 ガス温水器の省エネ基準(目標年度2025年度)

    区  分  基準エネルギー
区分用途通気方式区分名消費効率(%)
ガス瞬間湯沸器自然通気式77.5
強制通気式壁貫通型Ⅱ-184.4
壁組込型Ⅱ-283.3
強制給排気式Ⅱ-383.5
強制排気式(従来型に限る。)Ⅱ-481.5
レンジフード一体型(従来型に限る。)Ⅱ-571.0
その他Ⅱ-684.4
ガスふろがま壁貫通型Ⅲ-185.8
壁組込型(従来型に限る。)Ⅲ-283.5
その他Ⅲ-387.2
ガス暖房機器90.3
「壁貫通型」とは、日本産業規格S2092(2010)の4の表2-屋内式機器の給排気方式による区分に規定する密閉式かつ自然給排気式(BF)の機器の給排気筒トップに置き換えて設置する機器であって日本産業規格S2092(2010)の屋内外設置による区分に規定する屋外式の機器をいう。
「壁組込型」とは、壁組込型取付ボックスと一体の機器としてガス機器防火性能評定試験により評定された機器であって日本産業規格S2092(2010)の表2-屋内外設置による区分に規定する屋外式の機器をいう。
「強制給排気式」とは、日本産業規格S2092(2010)の4の表3の屋内式機器の給排気方式による区分に規定する密閉式かつ強制給排気式(FF)の機器をいう。
「強制排気式」とは、日本産業規格S2092(2010)の4の表3の屋内式機器の給排気方式による区分に規定する半密閉式かつ強制排気式(FE)の機器をいう。
「レンジフード一体型」とは、日本産業規格S2092(2010)の4の表3の屋内式機器の給排気方式による区分に規定する密閉式かつ強制給排気式の強制給排気外壁式(FF-W)の機器であって操作部がレンジフードに内蔵されており給気管及び排気管の直径が40ミリメートル以下の機器をいう。
「従来型」とは、日本産業規格S2091(2013)の4.4のa)の燃焼機器の種類に規定する潜熱回収型燃焼機器以外の機器をいう。

付表-3 電気温水器(エコキュート)の省エネ基準(2017年度)

区分基準エネルギー
区分名想定世帯 貯湯容量 仕 様 保温機能貯湯缶数消費効率(%)
1標 準240L未満寒冷地仕様以外のもの一缶2.8
2多缶2.4
3一缶3.0
4多缶2.6
5寒冷地仕様一缶2.3
6多缶2.0
7一缶2.6
8多缶2.3
9240L以上320L未満寒冷地仕様以外のもの一缶2.8
10多缶2.8
11一缶3.2
12多缶2.8
13寒冷地仕様一缶2.3
14多缶2.0
15一缶2.7
16多缶2.3
17320L以上550L未満寒冷地仕様以外のもの一缶3.3
18多缶2.8
19一缶3.2
20多缶2.8
21寒冷地仕様一缶2.7
22多缶2.3
23一缶2.7
24多缶2.3
25550L以上寒冷地仕様以外のもの一缶2.9
26多缶2.5
27一缶2.9
28多缶2.5
29寒冷地仕様一缶2.4
30多缶2.1
31一缶2.5
32多缶2.2
33少人数寒冷地仕様以外のもの2.4
342.8
35寒冷地仕様2.0
362.4
備考1 「貯湯容量」とは、日本産業規格(以下「JIS」という。)C9220(2011)「家庭用ヒートポンプ給湯機」に規定する湯水を貯蔵できるタンクの容量を指す。
備考2 「寒冷地仕様」とは、JIS C9220(2011)に規定する冬の寒さが厳しい地域での使用を想定した仕様を指す。
備考3 「保温機能」とは、ふろの湯を循環加温する機能を指す。

付表-4 電気温水器(エコキュート)の省エネ基準(2025年度)

  区  分基準エネルギー
区分名想定世帯貯湯缶数貯湯容量 仕 様消費効率(%)
 A少人数寒冷地仕様以外のもの3
 B寒冷地仕様2.7
 C標 準一缶320リットル未満寒冷地仕様以外のもの3.1
 D寒冷地仕様2.7
 E320リットル以上550リットル未満寒冷地仕様以外のもの3.5
 F寒冷地仕様2.9
 G550リットル以上寒冷地仕様以外のもの3.2
 H寒冷地仕様2.7
 I多缶寒冷地仕様以外のもの3
 J寒冷地仕様2.7