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再生可能エネルギー

バイオマス発電(1)-これで良いのか?日本のバイオマスエネルギー利用!

 再生可能エネルギー(再エネ)については、これまで一般家庭でも導入が可能な太陽電池(太陽光発電)を取り上げてきました。太陽光発電や風力発電は自然現象に左右されて発電電力量が安定しないという課題がありました。特に太陽光発電は夜間時は発電しないため、昼間の余剰な発電量が出力制御の対象となるという問題がありました。

 今回取り上げるバイオマス・エネルギーは燃料や発電に利用されており、再生可能でカーボンニュートラルという特性を有しています。さらに、発電の電源としては自然現象に左右されず発電電力量も安定しているという大きなメリットがあります。

 バイオマスとは、エネルギー・資源の分野では「再生可能な生物由来の有機性資源で、化石資源を除いたもの」と定義されています1)。バイオマスには、木質系、農業残渣、家畜排せつ物、食品廃棄物、下水汚泥など様々な種類があり、動植物を中心としたものであることから再生が可能なものであるとされます。

 またバイオマスのエネルギー利用がなぜカーボンニュートラルかというと、「バイオマスを燃焼させて発生する二酸化炭素は、植物が成長過程で光合成により大気中から吸収したものであり、ライフサイクルの中では大気中の二酸化炭素を増加させない」とされるからです。

 バイオマスは、燃焼による熱利用、発電利用、そしてバイオエタノールのような輸送燃料としての利用も可能です。このように化石燃料を代替できることから、バイオマスの活用には大きな期待が寄せられてきました。2002年のバイオマス・ニッポン総合戦略の閣議決定、2012年のバイオマス活用推進基本法の制定などで施策の導入を進めてきました。

 しかし日本におけるバイオマスの利用には課題が多いようです。2011年には総務省からバイオマス利用に関する施策実施の効果が不十分であるとの評価がなされました2)。FIT制度の導入後、木質系のバイオマス利用が進展しましたが、原料を海外からの輸入に頼るなど未利用材の利用は進んでいません。また、気体燃料や液体燃料としての利用はほとんど行われていません。

 なぜ、日本ではバイオマス利用が計画通りに進まないのか、その原因について明らかにすることが必要です。一般的にはバイオマスのうち食料となる部分は対象外とされ、主として廃棄物系のバイオマスが対象とされます。ここでは、日本におけるバイオマスを含む廃棄物の処理の実態を整理しながら、バイオマスの利用が進まない原因を整理していきます。

 そして、その原因を解消できる対策について、技術面、制度面からの分析を行ないます。さらに化石燃料を代替するバイオマスの利用で最も大きな効果を持つバイオマス発電に焦点を当てて、有望な利用技術の選定と導入に向けての対策を整理していく予定です。

 バイオマス発電の第1回目として今回はバイオマスのエネルギー利用全般について概説します。また特に課題となる廃棄物系バイオマスの利用における問題点とその解決の方向性について整理していきます。そして、今後の脱炭素化に重要な要素となるバイオマス発電の導入拡大に向けて、次回以降の分析への道筋を示していきたいと思います。

<本報告のコンテンツ>

バイオマスのエネルギー利用とは
(1) バイオマスの種類と利用用途
(2) バイオマスのエネルギー利用のための技術

バイオマスのエネルギー利用の現状
(1) バイオマスの種類別の発生量と利用率
(2) 生活系バイオマスのエネルギー利用の現状
 (a) ごみのエネルギー利用
 (b) 下水汚泥のエネルギー利用
(3) バイオマス発電の現状
 (a) バイオマスによる発電電力量
 (b) バイオマス種別の発電設備容量

バイオマスのエネルギー利用における課題と解決の方向性
(1) バイオマスのエネルギー利用における課題
(2) バイオマスのエネルギー利用の課題の解決策

バイオマスのエネルギー利用とは

(1)バイオマスの種類と利用用途

 さまざまなバイオマスがエネルギーとして利用されるイメージを図-1に示します。対象となるバイオマスは、木質、農業残渣、家畜排せつ物、下水汚泥、食品廃棄物などであり、廃棄物や未利用なまま残されているものが対象です3)

出所)NEDO再生可能エネルギー技術白書(第2版)、2014年2月
図-1 バイオマスの種類とエネルギー利用の用途

 これらの廃棄物等を固体、気体、液体の燃料に変換し、熱利用、発電、輸送燃料として使用していきます。バイオマスは再生が可能であり、バイオマスから製造される燃料は化石燃料を代替し、そのカーボンニュートラルの特性から、地球温暖化防止に貢献することができます。

 バイオマスを発生源とその特徴から分類すると図-2の通りです3)。農業系、建築系、食品加工系などの産業活動から生じる廃棄物系バイオマスと一般世帯の生活から発生する廃棄物系バイオマスがあります。今回は、特に生活系のバイオマスに着目して分析していきます。

出所)NEDO:再生可能エネルギー技術白書(第2版)、2014年2月
図-2 バイオマスの発生源と種類

(2)バイオマスのエネルギー利用のための技術

 バイオマスのエネルギー利用技術には、固体、気体、液体の燃料に変換する技術と、その燃料を熱や電気、動力に変換する技術の2種類があります。これらのエネルギー利用技術と種々のバイオマスとの関係をまとめると図-3の通りです。バイオマスの種類とエネルギー利用用途によってエネルギーの変換方法が異なります。

出所) NEDO再生可能エネルギー技術白書(第2版)を参考に作図
図-3 バイオマスの利用のための技術

 木質系であればペレットや炭化物のような固体燃料を製造して、バイオマスストーブやバイオマスボイラを用いて熱に変換します。また、家畜排せつ物、下水汚泥、食品廃棄物などはメタン化や水素化により気体燃料を取り出し、ガスタービンやガスエンジンを用いて電気に変換(発電)して利用します。

 さらに、食品廃棄物や廃食用油などはエタノール、BDF、BTLなどの液体燃料に変換して輸送機器の動力源として利用します。これらの技術の詳細は次回以降のテーマとし、ここでは説明は省略します。

バイオマスのエネルギー利用の現状

(1)バイオマスの種類別の発生量と利用率

 バイオマスの利用は日本では2002年12月にバイオマス・ニッポン総合戦略が閣議決定され、バイオマスの利活用に関する施策を推進してきました。しかし、2005年2月の京都議定書の発効により、バイオマス利用における地球温暖化対策により重きを置いた施策が必要になり、再度改正されて2006年3月に新たなバイオマス・ニッポン総合戦略が閣議決定されました。

 その後、2009年にバイオマス活用推進基本法が制定され、5年に1度程度バイオマス活用推進基本計画が策定されることになりました。その法律の下で2022年9月には第3次のバイオマス活用推進基本計画が策定されて公表されています。

 バイオマス活用推進基本計画(第3次)に示されたバイオマスの発生量と利用率の現状値、計画目標値を表-1に示します4)。同表に示すように、廃棄物系バイオマスの現状の利用率は黒液、製材工場残材、建設発生木材などは95%以上であり、家畜排せつ物、紙も80%以上です(この利用率はエネルギー利用だけでなくマテリアル利用も含みます)。

表-1 バイオマスの発生量、利用率の現状と目標

    バイオマスの種類現在の年間発生量注2)現在の利用率2030 年の目標
廃棄物系家畜排せつ物約 80,000 千トン約 86%約 90%
下水汚泥約 79,000 千トン約 75%約 85%
下水道バイオマスリサイクル注3)約 35%約 50%
黒液約 12,000 千トン約 100%約 100%
約 25,000 千トン約 80%約 85%注5)
食品廃棄物等注4)約 24,000 千トン約 58%約 63%
製材工場等残材約 5,100 千トン約 98%約 98%
建設発生木材約 5,500 千トン約 96%約 96%
未利用系農作物非食用部(すき込みを除く)約 12,000 千トン約 31%約 45%
林地残材約 9,700 千トン約 29%約 33%以上
原典注
注1) 現在の年間発生量及び利用率は各種統計資料等に基づき、2021年4月時点で取りまとめたもの(一部項目に推計値を含む。)。
注2) 黒液、製材工場等残材及び林地残材については乾燥重量。他のバイオマスについては湿潤重量。
注3) 下水汚泥中の有機物をエネルギー・緑農地利用した割合を示したリサイクル率。
注4) 食品廃棄物等(食品廃棄物及び有価物)については、熱回収等を含めて算定した利用率に改定。
注5) 本目標値は「資源の有効な利用の促進に関する法律」(平成3年法律第48 号)に基づき、判断基準省令において定めている古紙利用率の目標値とは異なる。
出所)バイオマス活用推進基本計画(第3次)、2022年9月6日

 一方、下水汚泥のバイオマス成分(下水汚泥には無機系と有機系の成分があり、有機系がバイオマス)は35%、食品廃棄物は58%程度です。これらは含水率が高く収集や運搬、保存がしにくいため資源利用がされにくいという特性があります。また、林地残材などの未利用系も30%程度の利用率となっています。

 なお、食品廃棄物等についてはここに示されているものは産業廃棄物であり、食品加工場などからの廃棄物です。食品廃棄物はこのほかに小規模な飲食店、小売店などや一般世帯の厨芥などの一般廃棄物があります。この計画ではこれらは含まれておらず注)日本のバイオマス量全体を対象としているわけではないのです。

注)産業廃棄物排出・処理状況調査報告書(環境省)によると食品廃棄物(動植物性残渣)がこの数値と一致します。

(2)生活系バイオマスのエネルギー利用の現状

 本サイトは一般家庭での地球温暖化対策を考えているため、ここでは生活系バイオマスのエネルギー利用について整理していきます(図-2の生活系の廃棄物系バイオマス)。日本における生活系バイオマスのエネルギー利用の現状を総合的に整理した統計はありません。ここでは、以下の統計により得られるデータをもとにエネルギー利用の現状を整理します。

 ・一般廃棄物処理事業実態調査(環境省)
 ・下水道統計(国土交通省)

(a)ごみのエネルギー利用

 まず、バイオマス活用推進基本計画では対象としていない一般廃棄物(一般世帯、小規模事業所)におけるバイオマスのエネルギー利用の状況を整理します。ここで、一般廃棄物には「ごみ」と「し尿」が含まれるので、以降は「ごみ」という言葉を使います。

 ごみを成分で分類すると以下の通りです(環境省通知5)の分類による)。

① 紙・布類
② プラスチック・合成ゴム・皮革類
③ 木・竹・ワラ類
④ 厨芥ごみ
⑤ 不燃物類(瓶、缶、金属類)
⑥ その他(廃食用油等)

 このうち、①から④までは可燃ごみ(焼却の対象となるごみ)ですが、この中にはプラスチックも含まれており、紙や布類も紙おむつや合成繊維などが含まれるため、全てがバイオマスではありません。そのため、③と④が純粋にバイオマス(化石燃料を原料としない)と考えられます。市町村ごとに分別収集するごみの種別が異なっており、ごみ種別毎に同じ処理をしているわけではありません。

 日本のごみ総排出量のうち、エネルギー利用量を推計したものを表-2に示します6)。ごみ量全体は41.0百万tであり、そのうち焼却処理をしているのは32.9百万tで約8割が焼却されています。焼却処理のうちエネルギー利用しているごみ量は31.1百万t、発電利用のそれは25.3百万t、ごみ量全体の約3/4がエネルギー利用され、発電利用は約6割です。

表-2  エネルギー利用されたごみ量

 項  目処理量 (千t)割合(%)備 考
(1)ごみ総排出量41,000100
(2)焼却処理32,90080.2
(3)焼却エネルギー利用31,10075.9温水、蒸気、発電利用含む
 焼却発電利用25,30061.7発電利用
(4)メタン化処理1030.3メタン発酵によるエネルギー利用
(5)ごみ燃料化処理5161.3固形燃料(RDF等)の製造
(6)廃食用油40.0集団回収分を含む
エネルギー利用合計31,72377.4(3)+(4)+(5)+(6)
出所)環境省:2021年度一般廃棄物処理事業実態調査の結果より集計

 また、表-2では焼却以外のメタン化処理、ごみ燃料化処理のごみ量も示しています。メタン化、ごみ燃料化は図-3に示したエネルギー利用技術を用いています。さらに、廃食用油はBDL(バイオディーゼル:軽油代替燃料)に変換されるため、その収集量を集計しています。

 メタン化処理は0.1百万t、ごみ燃料化処理は0.5百万t、廃食用油は4千tと非常に少ない量でした。メタン化処理は燃料としてメタン(気体燃料)、ごみ燃料化処理は固体燃料を製造します。なお、焼却されるごみはバイオマス以外にプラスチックも含まれており、全てがバイオマスではありません。

 これらの結果より日本で排出される総ごみ量の77%がエネルギー利用されていることが分かります。そのうちの98%が焼却処理によるものであり、メタン化処理は非常に少ないものでした。このように日本では焼却の割合が高いのですが、化石燃料を原料にしたプラスチックを焼却することによる二酸化炭素の発生が問題であることに留意しておく必要があります。

 ごみ焼却の余熱を利用した発電施設の諸元を表-3に示します。ごみ焼却による発電施設の数は396施設であり、総発電能力は2,149MW、発電電力量は10,452GWhでした。再エネのうち太陽光発電や風力発電と異なって、自然現象に左右されず施設の点検時以外は一定の出力を維持することができることが特徴です。

表-3 焼却施設に設置された発電施設の諸元

  項  目単位数値備考
発電施設数箇所396
総発電能力MW2,149平均発電能力5.4MW
発電効率(平均)14
総発電電力量GWh10,452
出所)環境省:2021年度一般廃棄物処理事業実態調査報告書、2023年3月

 表-3に示すように発電施設の平均発電能力は5.4MWであり、その平均発電効率は14%と非常に低い効率となっています。一般的な火力発電所の平均発電効率は40%程度であり、発電能力は1基当り100~1,000MWです。発電効率が低いのは、図-4に示すように発電能力の小さな施設が多いことが原因と考えられます。

図-4 ごみ焼却施設の発電能力別の施設数

(b)下水汚泥のエネルギー利用

 次に、下水道統計により下水汚泥のエネルギー利用の状況を整理します7)8)。下水汚泥(固形物分)は有機分が8割、無機分が2割です9)。有機分はエネルギー利用や緑農地利用に、無機分は建設資材に利用されます。エネルギー利用は主として炭化、造粒乾燥による固体燃料とメタンガス(気体燃料)の利用です。

 表-4に示すように下水汚泥のバイオマスのみ(有機分)のリサイクル率は37%、下水汚泥のエネルギー利用率は26.7%です(2020年度実績)。なお、下水汚泥リサイクル率、下水汚泥バイオマスリサイクル率は、バイオマス活用推進基本計画の内容と一致しています。

表-4 下水汚泥のエネルギー利用施設の諸元

   項  目単位数値備考
バイオガス発電施設数箇所118
固形燃料化施設箇所23炭化15、(造粒)乾燥8
下水汚泥リサイクル率75
下水汚泥バイオマスリサイクル率37
下水汚泥エネルギー利用率26.7
注)リサイクル率等の計算式は以下の通り。
下水汚泥リサイクル率=下水汚泥が最終的にリサイクルされた量[t-DS]/下水汚泥の重量[t-DS]
下水道バイオマスリサイクル率=下水汚泥中の有機物のうち、エネルギー化量+緑農地利用量[t-VS]/下水汚泥の有機物量[t-VS]
下水汚泥エネルギー化率=下水汚泥中の有機物のうち、エネルギー化量[t-VS]/下水汚泥の有機物量[t-VS]
出所)国土交通省:公式Webサイト、下水道データ室、資源エネルギー循環の形成、2020年度実績

 下水処理場では発生する汚泥を減量化するための汚泥処理施設を有しています。その方法は、濃縮、消化、脱水、乾燥、焼却といった手法ですが、消化方式が嫌気性消化の場合はメタンガスが発生しエネルギー利用が可能です。また、焼却でも余熱が利用できます。

 汚泥処理に消化プロセスを採用しているのは全処理施設の約16%、さらに発生するメタンガスを発電に利用しているのはそのうちの27%(メタンガス量ベース)とされています9)。このように下水汚泥の発電利用が少ないのは汚泥処理を減量化のみと捉えており、エネルギー利用や地球温暖化防止対策としての意識が低かったためと考えられます。

 政府の地球温暖化対策計画での2030年の目標では、下水汚泥のエネルギー利用率を37%に向上するとしており、今後はメタンガスによる発電も増加して行くものと思われます。なお、表-4に示すように発電施設数は最新のデータでは118か所となっています。

(3)バイオマス発電の現状

(a)バイオマスによる発電電力量

 バイオマスを利用した発電電力量はエネルギー需給実績報告書により把握することが可能です10)。また、FIT制度による認定された発電施設の買取電力量も把握することが可能です11)。図-5にFIT制度が始まった2012年以降のバイオマス発電電力量とFIT制度での買取電力量について示します。

 FIT制度が開始された初年度のFIT以外の発電電力量は、FIT制度以前のRPS制度(Renewables Portfolio Standard)の認定を受けた施設のものと考えられます(RPS制度は「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」、2002年法律第62号により制度化)。

出所)全体発電量:経済産業省:2021年度エネルギー需給実績(確報)、
FIT買取量:再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 情報公表用ウェブサイト
図-5 バイオマス発電電力量の推移

 RPS制度はFIT制度と同様の再エネ(当時は新エネ)電気の買取を義務付けた制度であり、FIT制度成立後に廃止されました。バイオマス発電の場合は廃棄物の焼却や木質バイオマスによる発電施設が多かったとされています。

 図-5に示すように、FIT制度移行後は特に2017年度から順調に増加していき、2021年度は332(x108kWh)と2012年度の2倍になりました。また、バイオマス発電の再エネ全体に対する割合は図-6に示すとおり、太陽光41%、水力37%に次いで16%を占めています。

出所)経済産業省ー庁:2021年度エネルギー需給実績(確報)
図-6 再エネ電気におけるバイオマス発電の割合

 これは、バイオマス発電による電力の買取価格が比較的高額であることが原因と思われます。表-5にバイオマス種別の買取価格を示します。厨芥や下水汚泥等のメタン化は2023年度で35円/kWhと非常に高額となっています。

表-5 バイオマス発電の買取価格

2021年度
(参考)
2022年度2023年度調達期間/
交付期間※2
メタン発酵ガス(バイオマス由来)39円35円20年間
間伐材等由来の木質バイオマス2,000kW以上32円
2,000kW未満40円
一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料10,000kW以上(入札制度適用分)入札制度により決定(第4回18.5円)入札制度により決定(第5回事前非公表)入札制度により決定
10,000kW未満24円
農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料(入札制度適用区分)入札制度により決定(第4回18.5円)入札制度により決定(第5回事前非公表)入札制度により決定
建設資材廃棄物13円
廃棄物・その他のバイオマス17円
注1)バイオマスの例
【メタン発酵ガス(バイオマス由来)】下水汚泥・家畜糞尿・食品残渣由来のメタンガス
【間伐材等由来の木質バイオマス】間伐材、主伐材※3
【一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料】製材端材、輸入材※3、剪定枝※4、パーム椰子殻、パームトランク
【農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料】パーム油
【建設資材廃棄物】建設資材廃棄物(リサイクル木材)、その他木材
【廃棄物・その他のバイオマス】剪定枝※4・木くず、紙、食品残渣、廃食用油、黒液
注2)
※1FIT制度(太陽光10kW未満及び入札制度適用区分を除く)は税を加えた額が調達価格、FIT制度の太陽光10kW未満は調達価格、FIP制度(入札制度適用区分を除く)は基準価格、入札制度適用区分は上限価格。
※2FIT制度であれば調達期間、FIP制度であれば交付期間。
※3「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(林野庁)に基づく由来の証明のないものについては、建設資材廃棄物として取り扱う。
※4一般廃棄物に該当せず、「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(林野庁)に基づく由来の証明が可能な剪定枝については、一般木質バイオマスとして取り扱う。
出所)経済産業省:公式Webサイト、なっとく!再生可能エネルギー、FIT/FIP制度、買取価格・期間等

 また、一般廃棄物(廃棄物・その他のバイオマス)の焼却発電の買取価格は17円/kWhとなっています。なお、一般廃棄物の焼却ではプラスチックを含んでいるため、バイオマスのみの発電量を計算してその分だけを買い取ることになっています。

(b)バイオマス種別の発電設備容量

 次にバイオマス種別の発電設備容量を集計したものを図-7に示します11)。図-7より最新のデータでは「一般木質・農作物残渣」による発電容量の割合が約6割であり、次いで「一般廃棄物」(バイオマス分のみ)が2割となっています。「未利用木質」や「建設廃材」は9%前後、「メタンガス」は2%程度と非常に少ないことが分かります。

出所)資源エネルギー庁:公式Webサイト, 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 情報公表用ウェブサイト
図-7 バイオマス種別の発電容量

 また、この間に最も増加してきたのは「一般木質・農作物残渣」であり2014年から30倍以上に増加してきました。この一般木質には海外から輸入したヤシ殻(PKS)やチップ・ペレットも含まれています。バイオマス発電事業を継続的に経営していく上で未利用木質や建設廃材を安定的に入手することが難しいことが想定されます。ただし、輸入による燃料消費の影響も考慮すべき大きな課題です。

 次に、このバイオマス種別の発電容量を諸外国と比較したものが図-8です。バイオマス発電の容量が最も大きいのは中国、次いで米国、ドイツ、インド、イギリス、日本の順です。バイオマスの種別については、この統計では「固体燃料」(図-7における建設廃材、一般木質、未利用木質を含む)、「再エネごみ」(同一般廃棄物)、「液体燃料」、「気体燃料」(同メタンガス)の4種に分類されています。

出所)International Renewable Energy Agency : Renewable Capacity Statistics 2023
図-8 バイオマス発電の諸外国との比較

 日本は「固体燃料」による発電がほとんどであるのに対してドイツは「気体燃料」(メタン)が7割を占めて最も多くなっています。「気体燃料」はイギリスでも27%、米国では18%を占めています。さらに、イタリアでは「気体燃料」が4割、「液体燃料」が3割を占めています。このように、欧米では「固体燃料」に偏らない発電を行っていることが分かります。

バイオマスのエネルギー利用における課題と解決の方向性

(1)バイオマスのエネルギー利用における課題

 バイオマスのエネルギー利用における課題を列挙すると以下の通りです。

 ① バイオマス活用推進基本計画では活用の対象とするバイオマスの範囲が狭い
 バイオマス活用推進基本計画は農業・林業・水産業・酪農の振興や、バイオマスリサイクルのための新たな事業の創出などが主目的であるため、産業系の廃棄物系バイオマスを中心に利用を進める計画です。一般世帯や小規模事業所の食品廃棄物や紙、木くずなどの生活系バイオマスは対象としていないため、一般世帯の関心が低いように思われます。そのため、これらも含めることでバイオマス活用を活発化することが必要です。

 ② 営利を目的とした事業化では小規模なバイオマス利活用の実現は困難
 未利用系バイオマスの林地残材の利用のように、もともと産業として採算がとれない分野に事業化を期待することは困難が伴います。木質バイオマスの利用による事業では、原料を確保するため輸入材(PKSを含む)を用いたものが多いのが実情です。仮に林地残材を用いて事業化を行っても小規模な経営とならざるをえず、採算性に課題が残ります。総務省の事業評価での指摘のように、補助金の利用だけで効果が出ない非生産的な事業が継続されることになります。

 ③ プラスチックを含む廃棄物の焼却によるエネルギー利用が多い
 廃棄物のエネルギー利用の中心は焼却によるものであり、プラスチックも一緒に焼却するため温室効果ガス(特に二酸化炭素)の排出を防止できません(後述の表-6参照)。世帯からの廃棄物(ごみ)を対象としたメタンガス化はこのような二酸化炭素の排出はありませんが、バイオマスの分別が困難なためその処理量は大変少ないというのが現状でした。しかし、欧米ではメタンガスを用いた発電設備が大きな割合を占めていることから、日本においてもごみ処理において二酸化炭素排出を軽減できるメタン化などの導入が可能と考えられます。

 ④下水汚泥のエネルギー利用も低いレベルにとどまっている
 下水汚泥の処理は、これまで減量化という視点のみで処理方式が決定されてきており、下水汚泥の持つエネルギーを活用することにあまり着目されてきませんでした。その結果、下水汚泥のエネルギー利用率は3割未満です。下水処理施設が非常に大きなエネルギーを消費することに留意して、今後は嫌気性消化処理方式への転換とメタンガスを用いたエネルギー利用施設の導入を推進することが必要です。

 ⑤ 事業化の効果として二酸化炭素排出削減の定量化が不十分
 これも総務省の事業評価で指摘されている事項であり、バイオマスの活用だけに注力して二酸化炭素排出量の軽減効果を分析することがほとんど行われていないとされています2)。事業の目的の一つが二酸化炭素排出の削減であることが伝えられず、計画段階からの適切な技術的指導が行われていないことが問題と思われます。

 ここで課題の解決策を検討する前に、日本で行われている廃棄物の焼却等によるプラスチック等からの二酸化炭素排出量(エネルギー回収の有無別)の実態を整理します13)。表-6に示すように、日本の温室効果ガス排出インベントリに記載された廃棄物の焼却等に伴う二酸化炭素排出量は2020年時点で約30百万t-CO2とされています。

 この値は、廃棄物の焼却(エネルギーの回収あり、なし)、廃棄物を原料として直接利用する場合、廃棄物を燃料に加工して焼却利用する場合の二酸化炭素排出量の合計値です。このうち廃棄物の焼却からだけでも約20百万t-CO2が排出されています。

表-6 廃棄物の焼却等に伴う二酸化炭素排出量(2020年度推計値)

項    目単位数値割合1(%)割合2(%)
廃棄物の焼却
(エネルギー回収なし)
一般廃棄物kt-CO22,485 8.20.2
産業廃棄物kt-CO27,400 24.30.7
特別管理産廃kt-CO21,606 5.30.2
廃棄物の焼却
(エネルギー回収あり)
一般廃棄物kt-CO26,954 22.80.7
産業廃棄物kt-CO21,148 3.80.1
廃棄物の焼却合計kt-CO219,59364.31.9
廃棄物を原料として直接利用一般廃棄物kt-CO2212 0.70
産業廃棄物kt-CO28,949 29.40.9
廃棄物が燃料に加工されて使用RDFkt-CO2321 1.10
RPFkt-CO21,410 4.60.1
合計一般廃棄物+RDF/RPFkt-CO211,382 37.31.1
産業廃棄物+特管産廃kt-CO219,103 62.71.8
合計kt-CO230,485100.02.9
日本国内の総二酸化炭素排出量kt-CO21,042,200 100.0
出所)地球環境センター、国立環境研究所:日本国温室効果ガスインベントリ報告書(環境省監修)、2022年版

 これは、日本全体の総二酸化炭素排出量1,042百万t-CO2の約2~3%を占めており、決して少ない量ではありません。また、ここで注目している一般廃棄物の焼却等による二酸化炭素排出量(RDF、RPF含む)は11百万t-CO2であり、日本全体のそれの1%を占めています。

 エネルギー回収による焼却からの二酸化炭素排出量はエネルギー回収分の二酸化炭素削減を考慮したものではありませんが、このようにプラスチックを含む廃棄物を分別せずに焼却することによって、二酸化炭素が比較的多く排出されることが分かりました。

 そのため、二酸化炭素を排出しないエネルギー回収方法(メタン化など)を考慮すべきということが分かります。日本では「サーマルリサイクルをすればプラスチックも焼却して良い」という論理が根強いですが、これは改める必要があります。このような二酸化炭素の排出をどのように防止すればよいのかが課題です。

(2)バイオマスのエネルギー利用の課題の解決策

 まず、(1)で挙げられた5つの課題の2番目については、林業や農業の経営体質を改善するという方法が優先されるべきです。日本において林業の健全な経営が困難になっていることは周知の事実であり、そのための対策を実施していくことが重要です。林地残材の利用はその次に解決すべき課題と言えます。

 次に5番目の課題は、そもそもバイオマス活用推進基本計画が農業系のバイオマスを対象にスタートしたバイオマス・ニッポン総合戦略であったため、地球温暖化の対策は二の次であったことがうかがえます。事業主体に対して温室効果ガスの削減を指導していたのか、総務省の指摘以後に改善されているかも疑問がありますが、主管省庁の指導を強化するしかないと思われます。

 次に、1番目と3番目の課題はほぼ同根の課題と言えます。バイオマス活用推進基本計画の対象バイオマスに一般廃棄物(ごみ)のバイオマスを含まないことは、計画の成果を出すために意図的に除外したとも考えられます。ごみにはバイオマスだけでなくプラスチックや可燃ごみ以外のものも含まれているため、その分別が非常に難しいと考えられたためです。

 しかし、その結果ごみのカーボンニュートラルなエネルギー利用が進まないことにつながっています。二酸化炭素排出を伴わないごみのメタン化は0.3%です(表-3参照)。そして、プラスチックの混入したごみの焼却処理(RDF、RPF含む)によって、11百万t-CO2(日本の総二酸化炭素排出量の1%)が排出されています。

 この問題は日本のごみ処理が焼却を中心としていることにあります。この背景には日本の湿潤温暖な気候がごみ(特に厨芥ごみ)を腐敗しやすくさせるため、ごみの処理として焼却を基本としたとされています。そして、焼却の余熱で発電してエネルギーが回収される(サーマルリサイクル)ことで満足しているのです。

 発電しないより発電したほうが良いですが、焼却による発電はどこでも可能なのでしょうか。ここで、ごみ焼却施設のうち発電施設を有する施設数を、焼却能力別に集計したものが図-9です6)。図-9より発電施設を有するのは焼却能力が概ね80t/日を超えるものであることが分かります。

出所)環境省:2021年度一般廃棄物処理事業実態調査報告書、2023年3月
図-9 焼却能力別の焼却施設数と発電施設数

 また、焼却能力が100t/日から200t/日でも発電施設を有するのは4割程度しかなく、300t/日以上でやっと9割の焼却施設で発電施設を有するようになります。この背景にはごみ処理量が多くなければ発電効率が小さくなり、その施設の投資効果が出ないことが挙げられます。また、焼却施設の稼働率が低いため(年間稼働日数280日14)程度)、売電におけるペナルティーが影響しているとも考えられます。

 このようなことを受け、廃棄物処理を所管する環境省はごみ処理の広域化を行って、焼却施設の大規模化を図り、サーマルリサイクルを行うことを推奨しています。しかし、広域化すればごみの輸送距離が長くなり、その燃料消費量が増加して輸送費用が上昇することになるでしょう。

 この解決策として、ごみのメタン化によるエネルギー利用が有効です。その理由は以下の通りです。

●メタン化による発電は小規模でも発電効率は一定(約40%)で、小規模なごみ処理施設での発電に効果的である。従って、まずごみ焼却では発電が困難な80t/日未満のごみ処理施設で導入を促進すべきである。
● メタン化のためにプラスチックは別に処理・リサイクルされることになり、プラスチックが混入したごみの焼却のように二酸化炭素排出がなくなり、地球温暖化防止につながり、プラスチックのリサイクルも向上する。
● メタン化によるFIT制度における売電価格は35円/kWhと非常に高額であり(表-5参照)、メタン化事業の採算性を向上させることが可能である。
● 最も困難とされているごみの分別(バイオマスの選別)は、自治体の積極的な働きかけと、住民の協力によって可能である。実際にメタン化を導入している地域では、20年以上稼働している施設もある。
● ごみ処理を所管する市町村(自治体)は利益を追求する私企業と違って利益にこだわる必要はなく、自治体の義務である温室効果ガスを低減させることに尽力しやすい。バイオマス活用推進基本計画においてごみを対象とし、自治体が主体となったメタン化によるエネルギー利用を促進すべきである。
● 近年、プラスチックの利用や廃棄への問題意識が高くなり、バイオプラスチックの普及が進みつつある。バイオプラスチックは生物分解が可能で分別する必要がないため、メタン化の効果が高くなる(メタン発生量の増大)。

 さらに、ごみに加えて生活系バイオマである下水汚泥もメタン化によるエネルギー利用が可能です(4番目の課題の解決)。そして、メタン化は日本政府が目指す水素社会への移行にも貢献するため、以下の効果が期待できます。

● 自治体が行う下水処理において、下水汚泥の処理に嫌気性消化を採用すればメタンガスのエネルギー利用が可能であり、ごみのメタン化と同様な効果(小規模でも発電効率が高い、高額の売電単価、自治体によるメタン化事業の安定な経営)が期待できる。
● メタン化は発電利用だけでなくメタンから水素への変換などの技術的な可能性があり、今後の日本が目指している水素社会を実現する有力なインフラになりうる。

 このような理由から生活系バイオマス(厨芥ごみ、紙ごみ、下水汚泥)のメタン化を進めることが、課題の多くを解決できることが分かります。次回以降、生活系バイオマスのメタン化の技術面、制度面での対策について検討していきます。

<参考文献>
1)日本政府(閣議決定):バイオマス・ニッポン総合戦略、2006年3月31日
2)総務省:バイオマス利活用に関する政策評価書、2011年2月
3)NEDO:再生可能エネルギー技術白書(第2版)、2014年2月
4)日本政府(閣議決定):バイオマス活用推進基本計画(第3次)、2022年9月6日
5)環境省:一般廃棄物処理実施計画に定めるべき事項について、ごみ質の分析方法、衛環22号、環境衛生局水道環境部環境整備課長通達、1990年2月1日
6)環境省:2021年度一般廃棄物処理事業実態調査報告書、2023年3月
7)国土交通省:公式Webサイト、下水道データ室、資源エネルギー循環の形成(2020年度実績)
8)国土交通省:資源の道の実現に向けて報告書、2007年3月
9)国土交通省:公式Webサイト、下水道データ室、消化プロセス導入の可能性調査
10)経済産業省:2021年度エネルギー需給実績(確報)、2023年4月21日
11)資源エネルギー庁:公式Webサイト、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 情報公表用ウェブサイト
12)International Renewable Energy Agency(IRENA) : Renewable Capacity Statistics 2023
13)地球環境センター、国立環境研究所:日本国温室効果ガスインベントリ報告書(環境省監修)、2022年版
14)全国都市清掃会議:ごみ処理施設の設備計画・設計要領、2017年版