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国の方針・計画

日本のGHG排出量の5%を占め、年率5%増加している温室効果ガスとは?

 日本国内の温室効果ガスの5%に相当する二酸化炭素(換算値)を排出し、近年でも年率5%増加している温室効果ガスをご存知でしょうか。脱炭素化に向けて省エネやリサイクルを進めて少しずつ排出量を削減しているのに、これはその努力を水の泡にしているとも言える現象なのです。

 その温室効果ガスとはフロンガスの一種であるHFCs(ハイドロフルオロカーボン)です。これは冷蔵庫やエアコンに使われる冷媒の成分です。多くは業務用の冷凍空調機などで使われていますが、家庭用の冷蔵庫やエアコンにも使われており、家庭生活に関係がないわけではありません。

 今回は、このHFCsの排出がなぜ増加し、なぜ排出されるのを防止できないのか、日本政府がどのような対策をとろうとしているのか、そして私たちは何をしなければならないのかを解説していきます。

<本報告のコンテンツ>

フロン類の排出量の現状
(1) フロン類の規制の経緯
(2) 代替フロンの排出量の推移

HFCs排出量の増加の要因と対策
(1)冷凍空調機器の冷媒としての利用
(2)代替フロン冷媒の対策

2030年に向けた代替フロンの対策
(1)2030年の代替フロンの削減目標
(2)政府、自治体による代替フロン管理
(3)グリーン冷媒の開発状況
(4)一般の家庭で行うべきこと

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フロン類の排出量の現状

(1)フロン類の規制の経緯

 フロンは当初オゾン層を破壊するガスとして認識され、1985年のウィーン条約でその対策が協議され、1987年のモントリオール議定書でオゾン層を破壊する物質(特定物質)として指定されました1)。日本では1988年に成立したオゾン層保護法(特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律)によってその製造と輸入が規制されることになりました。

 その特定物質はCFC(特定フロン、トリクロロフルオロメタンなど)、ハロン(ブロモクロロジフルオロメタンなど)、HCFC(ジクロロフルオロメタンなど)など多数に上り、これらを総称してフロン類とされます。これらのガスの特徴は、炭素に塩素、フッ素、臭素などのハロゲンが結合したものです。

 日本では使用中の冷凍空調機の廃棄の際にフロンが排出されることが報告されたため、2001年に新たにフロン回収・破壊法(特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保に関する法律)を制定して冷凍空調機の廃棄時におけるフロンの回収と破壊を義務付けることになりました2)

 さらに、冷凍空調機の使用時にもフロンが排出されていることや代替フロンであるHFCs等への規制の動きもあることを受けて、2013年にフロンのライフサイクル全般にわたる規制を行うフロン排出抑制法(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律)が制定されました(2015年施行)。

 一方、世界的には特定物質のフロンを代替するフロン(HFCs等)が使用されてきましたが、この物質はオゾン層の破壊の影響は少ないものの、地球温暖化への影響は変わらないということが明らかになり、2016年にルワンダのキガリでモントリオール議定書が改正され、代替フロンも規制の対象となりました(2019年発効)。

 キガリ改正の代替フロン削減の目標を表-1に示します3)。同表によると、先進国はHFC及びHCFCの排出量を基準年(2011~2013年)に対して2024年には40%、2036年には85%削減することが求められています。これは各国が提出している温室効果ガス排出に係るNDC(国の決定した貢献)の脱炭素化の動きと連動するものです。

表-1 キガリ改正の代替フロン削減の目標値

先進国注1)途上国第1グループ注2)途上国第2グループ注3)
基準年2011-2013年2020-2022年2024-2026年
基準値
(HFC+ HCFC)
各年のHFC生産・消費量の平均+HCFCの基準値×15%各年のHFC生産・消費量の平均+HCFCの基準値×65%各年のHFC生産・消費量の平均+HCFCの基準値×65%
凍結年なし2024年2028年注4)
削減スケ
ジュール注5)
2019年:▲10%2029年:▲10%2032年:▲10%
2024年:▲40%2035年:▲30%2037年:▲20%
2029年:▲70%2040年:▲50%2042年:▲30%
2034年:▲80%2045年:▲80%2047年:▲85%
2036年:▲85%
注1)先進国に属するベラルーシ、露、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタンは、規制措置に差異を設ける(基準値について、HCFCの参入量を基準値の25%とし、削減スケジュールについて第1段階は2020年5%、第2段階は2025年に35%削減とする)。
注2)途上国第1グループは開発途上国であって、第2グループに属さない国
注3)途上国第2グループは印、パキスタン、イラン、イラク、湾岸諸国
注4)途上国第2グループについて、凍結年(2028年)の4~5年前に技術評価を行い、凍結年を2年間猶予することを検討する。
注5)すべての締約国について、2022年及びその後5年ごとに技術評価を実施する。
出所)環境省フロン対策室、経済産業省オゾン層保護等推進室:代替フロンに関する状況と現行の取組について、2021年4月26日

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(2)代替フロンの排出量の推移

 日本における温室効果ガス(GHG)の排出量(二酸化炭素換算値)を図-1と表-2に示します4)。図-1で二酸化炭素は右軸であり、他の温室効果ガスは左軸であることに注意してください。ほとんどの温室効果ガスは減少していますがHFCs(図-1の赤線)だけは増加を続けています。

 表-2に示すように、1990年比では二酸化炭素は-8.2%、メタンは-38.6%、亜酸化窒素は-39.6%と減少していますが、HFCsは236%です。さらに、前年度比では二酸化炭素は2.1%(コロナ感染症の終息による経済活動の拡大による)、メタンは-0.1%、亜酸化窒素は-1.1%に対して、HFCsは2.6%増加しています。HFCsはパリ協定以後では年率5%で増加しています。

 そして、2021年のHFCsの排出量は53.6百万t-CO2/年と、日本の全GHG排出量約10億t-CO2/年の約5%に達しています。これは現状においても決して少ないという数字ではなく、さらに将来の脱炭素化を目標とする際にも大きな問題となる値です。

注)HFCs:ハイドロフルオロカーボン, PFCs:パーフルオロカーボン, SF6:六ふっ化硫黄, NF3:三ふっ化窒素
出所)温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)編、環境省地球環境局総務課脱炭素社会移行推進室 監修:日本国温室効果ガスインベントリ報告書(2023年版)
図-1 日本の温室効果ガスの種別の排出量

表-2 日本の温室効果ガス排出量 (単位:百万t-CO2/年)

CO2CH4N2O HFCsPFCsSF6NF3
19901,157.244.532.215.96.612.90
19911,168.943.931.917.47.514.20
19921,178.743.832.117.87.615.60
19931,171.742.932.018.11115.70
19941,226.742.933.221.113.515.00.1
19951,239.041.833.525.217.716.40.2
19961,251.540.534.624.618.317.00.2
19971,244.340.035.424.420.114.50.2
19981,204.438.333.823.716.613.20.2
19991,241.037.927.724.413.29.20.3
20001,263.837.330.222.911.97.00.3
20011,249.236.126.619.59.96.10.3
20021,278.835.326.016.29.25.70.4
20031,287.334.425.816.28.95.40.4
20041,282.734.125.712.49.25.30.5
20051,290.134.125.312.88.65.01.5
20061,267.133.525.214.69.05.21.4
20071,302.832.924.716.77.94.71.6
20081,232.032.123.819.35.84.21.5
20091,163.131.523.220.94.12.41.4
20101,214.731.122.723.34.32.41.5
20111,264.629.922.326.13.82.21.8
20121,305.929.222.029.43.52.21.5
20131,315.229.121.932.13.32.11.6
20141,264.128.621.535.83.42.01.1
20151,223.228.321.239.33.32.10.6
20161,202.528.220.642.63.42.20.6
20171,186.828.020.945.03.52.10.4
20181,141.727.720.447.13.52.10.3
20191,104.527.520.050.03.42.00.3
20201,039.827.419.752.23.52.00.3
20211,062.127.419.553.63.22.00.4
1990年度比-8.2%-38.6%-39.6%236.0%-51.9%-84.1%1065.6%
前年度比2.1%-0.1%-1.1%2.6%-0.9%0.9%12.8%
注)HFCs:ハイドロフルオロカーボン、PFCs:パーフルオロカーボン、SF6:六ふっ化硫黄、NF3:三ふっ化窒素
出所)温室効果ガスインベントリオフィス編、環境省地球環境局総務課脱炭素社会移行推進室 監修:日本国温室効果ガスインベントリ報告書(2023 年版)

 次にHFCsのGHG排出量のうちエアコンと冷蔵庫からのものを排出源別に示すと図-2の通りです。これらの合計は2021年で49.5百万t-CO2/年と全体の9割以上(92.3%=49.5/53.6)を占めています。

 そのうち、業務用の冷凍空調機からのHFCsの排出量(二酸化炭素換算値)は36.6百万t-CO2/年、家庭用のエアコンは10.0百万t-CO2/年です。家庭用のエアコンからのHFCsの排出量は日本のGHG排出量(約10億t-CO2/年)の1%を占めています。

注)図中の冷蔵庫、エアコン機種の英訳は以下の通り。
(1) Household refrigerator, (2) Commercial refrigerator and Air Conditioner(AC), (3) Vending machine, (4) Railway/ship refrigerators, (5) Household AC, (6) Car AC, (7) Railway/ship AC
出所)温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)編、環境省地球環境局総務課脱炭素社会移行推進室 監修:日本国温室効果ガスインベントリ報告書(2023年版)
図-2 エアコン、冷蔵庫からのHFCs排出量の推移

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HFCs排出量の増加の要因と対策

(1)冷凍空調機器の冷媒としての利用

 フロン類は当初普及していたCFC、HCFCのオゾン層破壊の影響が大きいことから特定フロンに指定され、オゾン層破壊の影響が低い代替フロンHFCsに移行していきました。その結果、オゾン層破壊への影響は軽減しましたが、HFCsの温室効果は当初の物質と同様高いものであり、その影響は継続しています。

 HFCsは冷凍空調機器(エアコン、冷蔵庫、冷凍庫)の冷媒や発砲、エアゾールなどに使われています。左図にHFCsの排出の内訳(構成比)を示しています5)。総排出量の92%が冷媒からの排出量となっています(2020年の実績)。

 家庭用冷蔵庫とカーエアコンにはHFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、家庭用エアコンにはHFC-32が使われています。また、自動販売機はHFC-134a、業務用エアコンにはHFC-404A 、HFC-410A、超極温冷凍冷蔵庫にはHFC-23が使われています(後述の表-3参照)。

 家庭用並びに業務用エアコンの販売は地球温暖化による平均気温の上昇とともに拡大しており、今後もさらに販売台数は増加していくものと考えられます。また、エアコンの使用時や買い替え等の廃棄時にも冷媒が漏洩されており、HFCs排出の増加傾向を抑えることはできていません。

 図-3にいくつかのHFCsと他の温室効果ガス(メタン、亜酸化窒素)の地球温暖化係数(GWP)を示します6)。GWPは二酸化炭素を1とする温室効果の影響度合を示します。HFCsのうち主流のHFC-134aは1,430HFC-32は比較的小さく675ですが、HFC-23は14,800と非常に高い数値です。HFC404A、HFC407C、HFC410Aは、HFC-32、HFC-134a等の混合ガスで1,400以上の大きな値を示します。

注)HFC-23:トリフルオロメタン、HFC-32:ジフルオロメタン、HFC-134a:1,1,1,2-テトラフルオロエタン、HFC-404A:HFC-125、143a、134aの混合冷媒(44:52:4)、HFC-407C:HFC-32、125、134aの混合冷媒(23:25:52)、HFC-410A:HFC-32、125の混合冷媒(1:1)
出所)2023年環境省、経済産業省告示第3号:フロン類の地球温暖化係数
図-3 HFCsと他の温室効果ガス(メタン、亜酸化窒素)の地球温暖化係数

(2)代替フロン冷媒の対策

 代替フロン冷媒の対策として、それに代わるグリーン冷媒を使用することが検討されています。表-3にその冷凍空調機種ごとに使われている現行の冷媒と、代替するグリーン冷媒の開発、導入状況を示します3)

表-3 代替フロン冷媒及びグリーン冷媒の導入状況

  領  域  分  野  現行の代替フロン冷媒
   (GWP)
代替フロン冷媒に代わる
 グリーン冷媒(GWP)
 備 考
①代替が進んでいる、自動販売機又は進む見通し家庭用冷凍冷蔵庫(HFC-134a(1,430))イソブタン(3)新規出荷分は、全てグリーン冷媒に転換済
自動販売機(HFC-134a(1,430))
(HFC-407C(1,770))
CO2(1)
イソブタン(3)
HFO-1234yf(1未満)
カーエアコンHFC-134a(1,430) HFO-1234yf今後代替が進む見通し
②代替候補はあるが、普及には課題超低温冷凍冷蔵庫HFC-23(14,800)空気環境省が導入支援
大型業務用冷凍冷蔵庫HFC-404A(3,920)
HFC-410A(2,090)
アンモニア、CO2
中型業務用冷凍冷蔵庫(別置型ショーケース)CO2
③代替候補を検討中小型業務用冷凍冷蔵庫HFC-404A(3,920)
HFC-410A(2,090)
代替冷媒候補を検討中経済産業省が開発支援
業務用エアコンHFC-410A(2,090)
HFC-32(675)
家庭用エアコンHFC-32(675)
注)赤:可燃性青字:微燃性
出所)環境省フロン対策室、経済産業省オゾン層保護等推進室:代替フロンに関する状況と現行の取組について、2021年4月26日

 現行の代替フロン冷媒のGWPは大きな値ですが、徐々にGWPの小さなグリーン冷媒に移行しています。具体的には、家庭用冷凍冷蔵庫はイソブタン(可燃性)、自動販売機は二酸化炭素、イソブタン、HFO-1234yf(微燃性)、カーエアコンはHFO-1234yf、業務用冷凍冷蔵庫は空気、アンモニア、二酸化炭素などです。

 このように冷凍冷蔵庫についてはイソブタン、アンモニア、二酸化炭素等のグリーン冷媒に移行してきており、家庭用冷凍冷蔵庫と自動販売機は既に新規出荷分はこれらに転換されているということです。また、超低温冷凍冷蔵庫、大型、中型の業務用冷凍冷蔵庫も空気、アンモニア、二酸化炭素という冷媒はあるものの、普及には課題があるとされています。

 それは、二酸化炭素は運転圧力が高いため、コンプレッサーの能力や配管の強度を高める必要がありコストに影響するためです。さらにアンモニアはその毒性や可燃性に関するリスクがあります。グリーン冷媒の導入を促進するため、環境省は「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」において導入する事業者への助成(補助率1/3)を行ってきました。

 一方、小型の業務用冷凍冷蔵庫、家庭用・業務用エアコンは代替冷媒候補を検討中です。これらの機器は低価格と安全性が確保されることが最も重要です。そのため、様々な環境条件でも安定的な性能を有する安価な冷媒の開発が待たれます。

 このように次第に低GWPの冷媒が普及していく一方で、既に普及している高GWPの冷媒が使われた冷凍冷蔵庫やエアコンが買い替えられるにはさらに時間がかかるというのがHFCsの排出量が大きく減少しない原因のようです。

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2030年に向けた代替フロンの対策

(1)2030年の代替フロンの削減目標

 日本の地球温暖化対策計画は2021年5月に改訂されました。その計画に記載されたのはHFCsの排出量は2013年の32.1百万t-CO2/年に対して2030年に14.5百万t-CO2/年を目指す(55%の削減)というものでした(図-4、左)。改訂前の計画に対しては33%の削減に当たります。

 しかし、現在の排出量は53.6百万t-CO2/年と2013年から大きく増加し、その削減量は39.1百万t-CO2/年と実に73%を削減しなければなりません(図-4,右)。しかも2030年まで7年足らずしかありません。これまでの対策を強化してこの削減目標を達成することが求められます。

(2) 政府、都道府県による代替フロン管理

 政府は2030年に向けた制度的な管理の強化や冷媒の技術的な開発を進めています。まず、制度的な管理面の対策については以下の通りです。

・フロン排出抑制法に基づく指定製品制度
・業務用冷凍空調機器における使用中の漏洩対策
・機器廃棄時のフロン回収の向上

 フロン類製品のGWPの低減、ノンフロン化を進めるため、指定製品の製造・輸入業者に製品区分ごとにGWP低減の目標値、目標年を定め、出荷台数の加重平均で目標達成を求めます。目標値は省エネ法と同様のトップランナー方式を採用します。

 また、業務用冷凍空調機器におけるフロンの漏えい量の約7割は機器の使用時に発生しています。そのため、使用時における漏えいの早期発見のために、空調機器企業がセンサとネット回線、データセンターを組み合わせた遠隔監視サービスの提供を促進します。

 さらに、廃棄時のフロン回収を確実にするために、改正フロン排出抑制法を2020年4月から施行し、都道府県の指導監督の実効性向上(直接罰則化)、廃棄時の立ち入り検査、確認記録の保存の義務化を行いました。

(3) グリーン冷媒の開発状況

 2030年の目標を達成するためには、現在検討中である小型業務用冷凍冷蔵庫、家庭用・業務用エアコンの代替冷媒の開発が最も重要であると思われます。グリーン冷媒である二酸化炭素、アンモニアは普及の促進に向けて課題が残されており、新たな冷媒の開発が必要です。

 新たに公表された経済産業省の資料による代替冷媒の開発状況は以下の通りです7)

 まず、NEDOプロジェクトでは、キガリ改正の最終削減目標を達成するためにはGWP10以下の冷媒開発が必要であることから、その開発のターゲットをHFO(ハイドロフルオロオレフィン)に定めて開発を進めています。HFO冷媒には安全性や省エネ性の低下等の課題が残っているため、それを利用した適用機器の開発・上市の更なる加速化に向けて、2023年度以降も技術開発支援を継続予定とのことです。

 次にグリーン冷媒の開発として、ダイキン工業はGWP10以下の新たな混合冷媒を開発し、R474Aとして国際規格に登録し、空調機の基礎検討を行い、可能性を確認しました。今後、新たなグリーン冷媒として、幅広く適用を検討していく予定です。

 ダイキン工業のWebサイトよりR474Aの性能を整理すると以下の通りです8)

<特徴>
・地球温暖化係数が小さい:GWP <1
・安全性に優れる:微燃性(R-1234yf 同等)
・現行比+ 40%の暖房および冷房能力
・外気温度-30℃以下における暖房能力に優れる
・全ての動作温度範囲でR-1234yfと同等の効率(COP)

 ダイキン工業によれば、R474Aは現在カーエアコン用の冷媒として提供する予定のようです。現在使用されている冷媒 R-1234yfは低圧で沸点が比較的高いため、外気温度が低い条件での暖房性能に限界があります。冷媒 R474Aは沸点が低く、圧力が高いため、必要とされる温度範囲で暖房能力が向上するとされています。

(4)一般の家庭で行うべきこと

 一般の家庭では、エアコン(カーエアコンを含む)、冷蔵庫、電気温水器(エコキュート)、全自動洗濯乾燥機(ヒートポンプタイプ)などで冷媒を使用しています。これらの機器に対する3つの時点での対策を心掛けることが必要です。

 ・製品購入:グリーン冷媒を使用した機器を選択する
 ・使用中:故障等による冷媒の漏洩を防止する
 ・廃棄時:適切な処理を行う廃棄、リサイクル業者に依頼する
 
 製品購入時には省エネタイプの製品を選択するのと同じようにグリーン冷媒を採用している機器を選択します。電気温水器は既に冷媒に二酸化炭素を使用しているようですので問題ありません。

 冷蔵庫は最新のものはイソブタンに代わっていますので、古い機器は早めに買い替えるのが良いです。エアコンは多くの製品が比較的GWPが小さな冷媒HFC-32に移行していますが、今後開発されるさらなる低GWPのグリーン冷媒の機器を選択するよう心がけましょう。

 さらにカーエアコンではGWPの大きなHFC-134aを使用した古い機器は買い替えの対象となります。またHFC-32ではない冷媒を使用したエアコンも残っているはずですので、故障時や廃棄時の漏洩には注意が必要です。故障した際には修理を迅速に行い、買い替える際には廃棄した機器の適切な処理を委託することが必要です。

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<参考文献>
1)環境省:特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律概要、https://www.env.go.jp/council/06earth/y066-01/ref03.pdf
2)産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会(フロン類等対策WG)、中央環境審議会地球環境部会(フロン類等対策小委員会):2013年改正フロン排出抑制法の施行状況の評価・検討に関する報告書、2022年6月
3)環境省フロン対策室、経済産業省オゾン層保護等推進室:代替フロンに関する状況と現行の取組について、2021年4月26日
4)温室効果ガスインベントリオフィス編、環境省地球環境局総務課脱炭素社会移行推進室 監修:日本国温室効果ガスインベントリ報告書(2023 年版)
5)環境省:国内のフロン類排出抑制施策の現状とフルオロカーボン・イニシアティブの国際展開、温室効果ガス“ネットゼロ”セミナー、2022年7月28日
6)2023年環境省、経済産業省告示第3号:2014年環境省、経済産業省令第7号「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則」に関するフロンの地球温暖化係数、2023年3月31日
7)経済産業省 製造産業局、化学物質管理課 オゾン層保護等推進室:新たな冷媒・機器開発プロジェクトについて、2023年3月24日
8)ダイキン工業:公式Webサイト、開発品紹介、自動車用冷媒 R-474A(開発品)
https://www.daikinchemicals.com/jp/magazine/automotive-refrigerant-under-development.html

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