テレビシステムの消費電力、待機電力の測定結果
地球温暖化防止の第一歩は家庭での省エネルギーです。特に電力の省エネができれば、電力会社からの供給電力が減り、火力発電が中心の日本では化石燃料の消費量が低減、そして温室効果ガスの低減につながります。
家庭での省エネルギーの基本は、生活の快適性や利便性を失うことなく楽に省エネできることでなければなりません。生活の質を落として省エネルギーを行うことは長続きしないからです。そこで、ここでは無理しない省エネの方法として、気が付かないうちに消費されている待機電力への対策について検討します。今回は液晶テレビの待機電力について実際に消費電力を測定して検討します。
前回の報告の通り(液晶テレビ①ーサイズと画素数の拡大)、最近大型の液晶テレビが普及して電力の消費量も増加してきています。液晶テレビの説明書には必ず待機電力が記載してありますが、これはテレビ単体の待機電力です。多くの家庭では、録画のために外付けのハードディスクを接続しているのではないでしょうか。今回の測定では外付けのハードディスクや他の機器(Amazon Fire TVなど)の接続のもとで、テレビシステム全体の消費電力を測定することにします。
X氏宅にある3種のテレビの定格消費電力と待機電力(仕様)及び実測消費電力を下表に示します。どのテレビも外付けのハードディスクが接続されており、ここに示す実測の消費電力はハードディスクの消費電力も含まれています。
24インチのパナソニックのVIERAは定格消費電力が38Wに対し、テレビのON時の実測消費電力は36W、テレビOFF時の実測消費電力は2.4W程度でした。計測された消費電力はテレビとハードディスクの両方を計測したものであり、このテレビの待機電力は説明書に0.1Wと記載されていますのでその差(2.3W)は接続されているハードディスクに関係した消費電力と思われます。
一方、32インチの東芝のREGZAは定格消費電力115Wに対し、テレビON時の実測消費電力80W、OFF時22~23Wでした。これも説明書には待機電力0.1Wと記載されていますので、この差はハードディスクに関係するものでしょう。24インチに比べて大きな待機電力になっています。
さらに、50インチの東芝のREGZAは定格消費電力 150W、待機電力0.3Wの仕様に対し、実測消費電力はテレビON時130W、OFF時26Wでした。これも単体の待機電力に対して非常に大きな待機電力になっています。
表-1 画面サイズ別の液晶テレビの消費電力
サイズ | メーカー | 製品名 | 型番 | 消費電力の仕様 | 実測消費電力(W) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
(インチ) | 定格消費 電力(W) | 待機電力 (W) | スイッチ ON | スイッチ OFF |
|||
24 | Panasonic | VIERA | TH24C6 | 38 | 0.1 | 36 | 2.4 |
32 | 東芝 | REGZA | 32RI | 115 | 0.1 | 80 | 22~23 |
50 | 東芝 | REGZA | 50BM620X | 150 | 0.3 | 130 | 26 |
少し具体的に消費電力の測定結果を説明します。
まず、24インチテレビについて計測した消費電力(外付けハードディスク含む)の推移を下図に示します。テレビOFF時は消費電力2.4W、テレビON時に一時40Wを超えますがその後は平均36Wの消費電力が続きます。この間、テレビ録画のために録画メニューになったことで若干減少しています。ただビデオ録画や再生時点では大きな変動はありませんでした。その後テレビのOFF時にはまた2.4Wとなり、さらにハードディスクをOFFとしたら0Wとなりました(スペックの待機電力0.1Wは使用した電力測定機の測定範囲ではありません)。
下図は32インチテレビの消費電力の計測結果を示しています。計測を始めるとテレビのスイッチが入っていない状態で22W程度の電力消費があることが分かります。これがこのテレビとそれに接続されたハードディスク全体の待機電力です。その後テレビをつけると一時的に高い電力が消費された後、平均して約80Wの電力が消費されていることが分かります。スイッチOFFで22Wの待機電力に戻ります。
最後に、50インチテレビの消費電力の推移を下図に示します。50インチテレビには、録画するための外付けハードディスク、Amazon Fire TVのアダプタ、ビデオレコーダが接続されています(ビデオレコーダの消費電力は下図の電力には含まれません)。
テレビのスイッチがOFFの状態で26W程度の電力が消費されており、これがこのテレビ・システム全体の待機電力です。スイッチONの状態で130W程度の電力が消費されています。スイッチONの3分後にビデオのチューナでテレビを見たので、60W程度に電力が低下しています(ビデオの電力はこれには含まれていません)。
その後の電力の一時的な減少は、Amazon Fire TVに接続したり、テレビの録画や再生を行ったりしているため、その切り替え時に電力が変動しているものです。しかし、テレビがONの状態では概ね130Wの電力が消費されています。
なお、今回の待機電力の測定結果とテレビの主電源をOFFにしている時の待機電力とは同じ結果になることを確認しています。ハードディスクの消費電力はたかだか10W程度のはずですが、なぜこれほど大きな待機電力になっているか不明です。この件については、今後詳細な測定を行って原因を調べてみるつもりです。
このように、テレビがOFFの状態でも比較的大きな待機電力が生じていることは省エネのために頭に入れておく必要があるでしょう。テレビの録画予約をしている場合は見ていない時でもコンセントを抜くわけにいきませんが、全く見ておらず録画もしていないテレビはコンセントを抜いておくことで、このような待機電力の削減につながります。特に大型のテレビを持っている家庭ではその効果が大きいと思います。
説明書とこんなに違う実際の年間消費電力量
液晶テレビを購入する際には、カタログや説明書に書いてある年間消費電力量や年間の電気代を参考にしている方もいるでしょう。しかし、その計算法はあまり気にしてない方が多いと思います。ここでは、前述のテレビのON、OFF時の消費電力の測定結果を用いて、年間消費電力量を計算してみます。
省エネ法のもとでは年間消費電力量の測定及び計算方法が決められています(詳細は本サイトの「液晶テレビのエネルギー消費効率」に記載してありますので参考にしてください)。実際には節電機能を使った場合の計算が行われますが、基本的な計算法は以下に示すとおりです。テレビを見るときに節電機能を使わない場合はこの式で算定できます。
E=(動作時消費電力×1,642.5+待機時消費電力×7,117.5)/1,000
ここで、1,642.5、7,117.5という数字は、1年間の動作時間数と待機時間数を指します。1日の平均動作時間を4.5時間としこれに365日を乗じて1,642.5時間、待機時間は自動的に19.5時間(=24-4.5)なのでこれに365日を乗じて7,117.5時間です。
テレビの動作時間4.5時間は、テレワークが多くなった現状では比較的少ないように感じられます。そのため、実態に合わせて動作時間を9時間に想定して年間消費電力量を計算してみます(省エネ法での計算方法の2倍の動作時間)。
E=(動作時消費電力×年間動作時間+待機時消費電力×年間待機時間)/1,000
=(130×9×365+26×15×365)/1,000
=(427,050+142,350)/1,000
= 569.4 kWh/年
上記の計算では、50インチのテレビシステムにおける実測された動作時消費電力130W、待機時消費電力26Wを使用しています。計算の結果、年間消費電力量は約570kWh/年となりました。単純に電気料金を計算すると約15,400円となります(27円/kWhを仮定)。
本テレビ(東芝REGZA 50BM620X)の年間消費電力量を資源エネルギー庁のデータから見ると97kWhとなっており、電気代も2,620円とされています。今回計算した年間消費電力量はこの6倍弱となっており、スペックの数値と比べて非常に大きな差になっています。
※その後、本テレビの待機電力が時間によって変化することが分かりました。具体的にはこの待機電力が1時間継続し、1時間後にほぼゼロとなっていました。そのため、上記の計算は修正が必要です。詳細は「待機電力(2)-エネルギー消費機器まとめ」に示しましたので、参考にしてください。
まとめ
テレビの待機電力はスペックにも書いてある通り、1Wにも満たない小さな値です。しかし、テレビに録画用のハードディスクを接続したテレビシステム全体の待機電力を測定した結果、待機電力は説明書に載っている何十倍~何百倍も多く消費していることが分かりました。
また、説明書に載っている年間消費電力量は、1日動作時間を4.5時間と仮定し節電機能を使った場合も考慮しているので、非常に少ない消費電力になっているように感じます。テレワークが進み家庭にいる時間が増えている状況では、この仮定に合わない世帯も多いと考えられます。
そのため、1日動作時間を9時間と仮定し、ここで測定したテレビシステム全体の消費電力量を基に年間消費電力量を算定した結果、スペックの数値の6倍弱の消費量となりました。家庭のテレビ視聴状況によっては、説明書の年間消費電力量の何倍も消費しており、電気代もそれに比例して大きくなっている可能性があることに留意する必要があります。
これらのことから、大画面で画素数の大きい液晶テレビはなるべく見ていない時は消しておくこと、待機電力を消費しないよう通常見ないテレビのコンセントは抜いておくことが必要と思われます。