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熱負荷

エアコン(14)-冷房負荷の低減(3)

 前回まで冷房負荷のうち、日射熱負荷、貫流熱負荷への影響要因と熱負荷を低減する対策を整理し、冷房負荷との関係を定量化してきました。今回は、すきま風熱負荷を取り上げます。

 今回とりあげる熱負荷は、すきま風による熱の流入(暖房の場合は流出)です。建築物の計画、設計の段階では、断熱性と同程度に重要な要素として気密性という要素があります。これは建材のすきまからの空気の流入にともなう熱移動のしにくさを表すものであり、本報告でとりあげるすきま風と同じことを対象としています。

 建築物省エネ法においては1999年以降2009年の改正までは気密性を表すC値(床面積当り相当すきま面積)という指標が使われていました。これは、室内のすきまの面積の総和を意味しており、実際に測定装置を使って測定することができます。現在は、この指標は基準には使われていませんが、建築設計においては現在も有効な設計指標として使用されています。

 C値を低下させると、冷暖房の燃費を向上させ、結露を防止でき、風に依存しない換気ができると言われてきました。気密性の向上には建材の適切な選択と周到な施工が重要です。このC値のレベルが建築費用に影響してきますので、建築物を設計・施工する際に、設計・施工者と依頼主の間で協議が行われます。

 一方、気密性を向上させると自然換気が減少しますので、十分な換気が行えるよう換気設備の設計、施工が必要になります。2003年の建築基準法改正により、機械換気設備の導入が義務化されていますので、気密性の向上と換気設備は一体のものとして計画されているようです。

 今回は、このすきま風熱負荷と気密性を表すC値との関係を明らかにし、気密性を向上させることによる冷房エネルギーの低減効果について分析しましたので、報告します。

すきま風熱負荷の影響要因

 すきま風熱負荷の算定式を再掲します。すきま風熱負荷(qf)は顕熱負荷(qs)と潜熱負荷(qL)があり、次式によって計算します1)

 qs=cp・ρ・Δt・Qi
 qL=γ・ρ・Δx・Qi÷1000

  qs:顕熱負荷 (W)
  qL:潜熱負荷 (W)
  cp:空気の定圧比熱(=1) (J/(g・K))
  ρ:空気の密度(=1.2)(g/L)
  γ:水の蒸発潜熱(=2,500)(J/g)
  Δt:室内外乾球温度差(K)
  Δx:室内外絶対湿度差(g/kg(DA))
  Qi:すきま風の風量(L/s)

 上記の通り、顕熱負荷は室外から流入する空気の質量と比熱に室内外温度差を乗じたものであり、室外から流入する空気の熱量のうちのエアコンが除去すべき熱量を意味しています。一方、潜熱負荷は室外から流入する空気の質量と水の蒸発潜熱に室内外の絶対湿度差を乗じたものです。これは、室外から流入する空気の水蒸気を室内で設定された湿度にするためにエアコンに求められるエネルギー(熱量)を意味しています。

 潜熱とは熱量の増減があっても温度変化が潜んで現れない熱を言い、水の相変化(気体から液体、液体から固体など)が生じている際に発生します。エアコンは室内の空気中の水蒸気を熱交換器で凝縮する(水に相変化させる)ことで除湿を行います(凝縮した水は室外に排除されます)。その際に凝縮熱が発生する(放出される)ため、エアコンはこの分の熱を除去する必要があり、それが潜熱負荷として加わるのです3)。なお、水の蒸発潜熱とは気化熱と凝縮熱(同値です)の両方を指して用いられています。

 すきま風熱負荷に関連し制御が可能な要因はすきま風の風量です。すきま風の風量と、外気及び室内の温度、湿度によって顕熱と潜熱の量が決定されます。すきま風の風量を低減するためにはすきまを小さくして住居の気密性を向上させることが必要です。

(1)気密性指標に基づくすきま風量の算定

 先に示したように、気密性を表す指標としてC値(床面積当り相当すきま面積)が使われてきました。このC値は以下の式で表されます。

 C値(床面積当り相当すきま面積)=相当すきま面積/床面積 (cm2/m2

 C値に床面積を乗じると相当すきま面積が得られます。なお、ここで単にすきま面積ではなく「相当」という言葉がつけられているのはすきま面積にすきま部の形状により変わる流量係数というもの(一般に0.7程度)を乗じたものだからです。

 日本では、C値は気密に配慮していない一般的な木造住宅では10cm2/m2程度と言われています。次世代省エネ基準(1999年に定められた省エネ性能基準)において、東北、北海道での基準は2 cm2/m2、東北、北海道以外の地域では5 cm2/m2が設定されていました。一般的に高い気密性を有するとされるのは1 cm2/m2以下とされています。

 すきま風量はこのすきま相当面積を用いて計算できます。すきま風量の算定式は以下の通りです3)

 Q=A・v=α・A・(2・Δp/ρ)0.5 (1)

  Q:すきま風量 (m3/s)
  α:すきま部の流量係数 (-)
  A:すきま面積 (m2
  Δp:圧力差(部屋の内外)(Pa=N/m2=kg/ms2
  ρ:空気の密度 (1.2 kg/m3=g/L)
  v:すきま風の風速(m/s)

 ここで、αの持つ意味は以下に示した通りです。相当すきま面積はすきま面積(A)に流量係数αを乗じたものです。

 すきま部での流れは右図に示すように圧力の損失があり、その損失の式は以下で表されます。

 Δp=ξρv2/2   (2)
 

 上記はエネルギー保存則である下のベルヌーイの式から導かれます。

 ρv12/2+ρgh1+p1=ρv22/2+ρgh2+p2 (3)

 壁体のすきまを流れる間に急縮小、摩擦損失、急拡大するため、その損失を考慮すると(3)式は以下となります(fは各種の損失係数を総合したもの)。

 ρv12/2+ρgh1+p1=ρv22/2+ρgh2+p2+f・ρv22/2  (4)

 上記の式にh1=h2、v1=v2を入れ、式を変形することで(2)式となります。そして(2)式からvを求めると以下となります。

v=(2・Δp/ξ・ρ)0.5
  =α(2・Δp/ρ)0.5 (5)
 ここで、α=(1/ξ)0.5であり、αを流量係数と言うのは前述した通りです。すきまの形状により右図のような数値をとります。

 一般に換気が行われる場合には複数のすきまがあり、空気の流れによって下図のような2パターンがあります。下図の左側を並列結合、右側を直列結合といいます。並列結合、直列結合の相当すきま面積(α・A)の算定方法を以下に示します。

<並列結合の場合の相当すきま面積>
 各すきまの上流側と下流側の圧力差は同じであり通過する風量は各すきまを通過する風量の和に等しいので、次式が成り立ちます。

 Q=Q1+Q2=α1A1(2Δp/ρ)2+α2A2(2Δp/ρ)2α・A(2Δp/ρ)2 (6)

 この時の並列結合の相当すきま面積α・Aは次式で表せます。

 α・A=α1A1+α2A2  (7)

<直列結合の場合の相当すきま面積>
 上図右側のようなすきまを通過する風量は同じであり各すきまの上流側と下流側の圧力差の和を全体の圧力差であると考えると次式が成り立ちます。

 ΔP=Δp1+Δp2=(Q/α1・A1)2・ρ/2+(Q/α2・A2)2=(Q/α・A)2・ρ/2 (8)

 この時の相当すきま面積α・Aは以下で表せます。

  (1/α・A)2=(1/α1・A1)2+(1/α2・A2)2 (9)

 すきま風量はα・Aを用いて、計算式(1)式より算定されます。次に、外部風圧による換気量(すきま風量)を求める式を示します。外部風圧によって外壁への圧力(pw)は以下で表されます。

p=cw・ρ・vw2/2    (10)
  pw:外壁の風圧 (Pa=N/m2
  ⅽw:風圧係数 (-)
  vw:風速 (m/s)
  ρ:空気の密度 (1.2 kg/m3=g/L)

 風圧係数は上図に示すように、風の吹いている壁ではプラス、反対側の壁ではマイナスの値をとり、一般的に0.5から0.9程度の数値の範囲にあります。

 一例として、以下の条件ですきま風量を算定します。

<すきま風量の算定条件>
C(C値)=5 cm2/m2
S(床面積)=30m2
w1=0.5、cw2=-0.4
w=2m/s
ρ=1.2 kg/m3

<すきま風量の算定>

 C値に床面積を乗じてすきま風面積を算定し、すきまの流入面積A1と流出面積A2が等しいと仮定して以下を得ます。
 A1=A2=C×S/2=5・30/2/10,000=0.0075m2
 本例題は直列結合なので(9)式より、以下となります。
 (1/α・A)2=(1/0.7・0.0075)2+(1/0.7・0.0075)2=72,562
 α・A=(1/72,562)0.5=0.00371m2=37.1cm2
 直列結合の圧力差は、(10)式及び流入と流出の圧力差より、
 Δp=p1-p2=0.5・1.2・22/2-(-0.4・1.2・22/2)=0.9・1.2・22/2=2.16 Pa
 すきま風量Qは(1)式を用いて以下となります。 
 Q=0.00371・(2・2.16/1.2)0.5=0.00371・1.897=0.007m3/s=7 L/s

 下図にC値別のすきま風量の変化を示します。下図では、風速を2m/s、3m/s、4m/sと変化させた場合の計算結果について示しています。これを見ると、C値が大きくなるとそれに比例してすきま風量も増加していきます。風速2m/sで、C値が1 cm2/m2の時のすきま風量は1.4L/sですが、C値が10 cm2/m2の場合のそれは10倍の14.1L/sとなっています。

 また、風速が速くなると風速に比例してすきま風量も増加していきます。風速が2m/sでC値が5 cm2/m2のすきま風量は7L/sですが、風速が4m/sではすきま風量はその2倍の14.1L/sとなっています。

(2)換気等によるすきま風量

 意図しないすきま風に加えて、意図的な換気も行われます。2003年の建築基準法改正によって主としてシックハウス症候群の対策から機械換気設備の設置が義務付けられました。これは、機械換気設備によって自動的に換気されるものであり、標準的な換気回数は下表とされています1)。換気回数からすきま風風量を算定すると以下の通りです。

表-1 換気回数による換気風量

建築種別換気回数 N(回/時間)
冷房時暖房時
戸建て住宅0.1~0.60.2~1.0
集合住宅0.1~0.30.1~0.6
出所)空気調和・衛生工学会編:試して学ぶ熱負荷HASPEE-新最大熱負荷計算法-改訂第2版、2022年6月

 Q=N・V・1,000/3,600=0.28・N・V

  Q:すきま風量(L/s)
  N:換気回数(回/h)
  V:室容積(m3

 この式より、冷房時に0.3回/hの換気を行う室容積75m3の室のすきま量は以下のように6.3L/sと算定されます。

 Q=0.28・0.3・75=6.3L/s

 換気回数ではなく別の方法で算定する方法としてアルミサッシのすきま風量を算定する方法を下表に示します。この方法では、風速(または風圧)、サッシの種類(引き違い、BL形)、気密性(ABCの3段階)を設定することですきま風量を得ることができます。

表-2 アルミサッシのすきま風の量

風速(m/s)246810
風圧(Pa)1.87.2162945
引き違い A0.310.640.941.31.6
 B0.781.82.94.05.3
 C1.42.94.46.17.5
BL形、防音 A0.0170.0310.0420.0560.067
 B0.0360.0780.130.180.24
 C0.310.640.941.31.6
注)A,B,Cは気密性の度合いを示し、Aは良好、Bは中程度、Cは不良。数値の単位はL/m2・s。
出所)空気調和・衛生工学会編:試して学ぶ熱負荷HASPEE-新最大熱負荷計算法-改訂第2版、2022年6月

(3)すきま風熱負荷の顕熱負荷

 ここでは、顕熱負荷のうちすきま風のみ(換気による熱負荷は省略)についての熱負荷の計算事例を示します。先に計算した風速2m/sでのすきま風量において、室内外気温差をパラメータとした熱負荷の計算結果を下図に示します。

 上図に示すようにすきま風熱負荷は室内外温度差に比例して増大していきます。旧基準のC値が5.0 cm2/m2では室内外温度差が6K(室内温度を26℃とした場合室外温度は32℃)の場合、すきま風熱負荷の顕熱負荷は約50Wです。この熱負荷が1日中継続するとエアコンの消費電力量1.2kWhとなり、かなりの消費電力となります。一方、C値が1.0の場合は温度差が10Kの場合でも17Wですので、1日継続しても400Whにしかなりません。気密性が高い建築物の省エネルギー性が良く分かると思います。

(4)すきま風熱負荷の潜熱負荷

 これまで計算してきたC値別のすきま風量に、絶対湿度差を乗じて潜熱負荷を算定した事例を以下に示します。風速を2m/s、室温を26℃、外気温を32℃と仮定し、室内と室外の相対湿度を40%~70%まで変動させた場合の絶対湿度差の計算結果を下表に示します。

 下表で例えば室外の相対湿度が50%の時の絶対湿度は15.32g/kg(DA)であり、室内の相対湿度が50%の時の絶対湿度は10.68g/kg(DA)です。これらから両者の絶対湿度差は4.64g/kg(DA)となります。

 同表に示すように、室内の相対湿度が小さく室外の相対湿度が大きいと絶対湿度差は大きくなります。その逆に室内の相対湿度が大きく室外の相対湿度が小さいと絶対湿度差は小さくなります。例えば、室外の相対湿度が40%で室内の相対湿度が60%以上は絶対湿度差がマイナスとなり、すきま風の潜熱負荷は生じません。

表-3 室内外の絶対湿度差

室外空気の室内の相対湿度
絶対湿度40%50%60%70%
室内空気の絶対湿度8.5410.6812.8114.95
室外の相対湿度 40%12.263.721.58-0.55-2.69
 50%15.326.784.642.510.37
 60%18.399.857.715.583.44
 70%21.4512.9110.778.646.5
注)室温26℃、外気温32℃を仮定。絶対湿度の単位はg/kg(DA)、飽和水蒸気量は26℃の時21.353 g/kg(DA)、32℃のとき30.649 g/kg(DA)です。

 外気温が32℃、室温が26℃、室内の相対湿度が50%とした時の、すきま風熱負荷の潜熱負荷の計算結果を下図に示します。下図ではC値の範囲を0.5~10.0 cm2/m2とし、室外の相対湿度を40%から70%まで10%刻みで変化させた場合の計算結果を示しています。

 室外の相対湿度が70%の時は、絶対湿度差が10.77g/kg(DA)と大きくなり、C値が5.0 cm2/m2では潜熱負荷は228Wです。この状態が1日続くと潜熱負荷だけでエアコンの消費電力量は5.5kWhとなります。気密性の低い住居で外気温が高く、相対湿度も高い場合には、室温と相対湿度に注意しなければ、極めて大きなエアコンの消費電力量となることが分かります。

気密対策のすきま風熱負荷への低減効果

(1) 気密性の向上対策

 これまでの検討で気密性の向上によりすきま風熱負荷が低減することが分かりました。それでは、気密性を向上させる方法はどのようなものがあるのでしょうか。
 気密性を高める家づくりを行っている一条工務店のWebサイトからその対策をまとめます。同社のサイトには、同社の高気密構造により、提供された建築物の平均実測C値が0.59cm²/m²をマークしていると記載されています4)
 その対策として以下が挙げられています。

(1) 屋外の空気を室内の温度に近づけて取り込める「熱交換型」の換気システムを採用。高性能フィルターにより、花粉などの粉塵の侵入も防ぐ。
(2) 工場であらかじめ窓や断熱材などの部材を隙間なく組み込み、また接合部には気密パッキンを施すことで、現場による施工精度のムラをなくす。
(3) 気密性能を万全にするため、現場では部位や場所に合わせた気密施工(シーリングや気密シールなどの施工)も徹底して行う。
(4) 建設中、建設後に専用の測定機器を使って気密測定を実施し、高い自社基準をクリアしていることを必ずチェックする。

 このように、換気口に着目して計画的に換気する設備を整備することや工場での部材製作時での気密対策現場施工時の対策などが含まれています。なお、上記に記載された気密測定については日本産業規格において測定方法が決められており、気密測定の資格制度なども整備されています。規格については下のコラムに概要を示します。

JIS A 2201(2017) 送風機による住宅等の機密性能試験方法
 (本規格はISO9972、2015年第3版を基としている)
●測定原理
 送風機を用いて室内外の圧力差が生じたとき、外皮または部位のすきまを通して通気が発生する。この時の通気量及び室内外の圧力差を測定し、建物および建物の部位における機密性能を測定する。測定対象は1住戸を対象とする場合と部位(個別の室など)を測定する場合がある。
●測定装置の構成
 送風機、流量調整器、流量測定装置、圧力差測定器(差圧計)、温度計
●測定
 室内外温度の測定
 圧力差ΔPの測定
 圧力差の異なる時の通気量(Q:送風機流量)の測定
●相当すきま面積の算定
 Q=a(ΔP)1/n    (1)
 a:通気率(室内外圧力差が1Paの時の1時間当りの通気量)
 n:すきま特性値(1~2の範囲であり、すきまが小さい時は1に、すきまが大きい時は2に近づく)
 測定した複数のΔPとQより(1)式の対数値を用いて、回帰式を当てはめる。回帰式よりaとnを求め、ΔPが9.8Paの時のαAを以下の式から算定する。
 αA=α・(9.8)1/n・b=Q9.8・b (2)
 b=0.627・ρ1/2
 ρ:空気の密度
 なお、ρ、Qは温度による補正を行う。
●C値の算定
 C値=αA/S 
 S:対象住戸または部位の延べ床面積

(2)気密対策後のすきま風熱負荷の低減効果

 ここでは、以前熱負荷計算を行った対象室に、気密性を向上させた場合のすきま風熱負荷の軽減効果を分析します。
 前回の計算においては、すきま風はサッシの大きさと気密性のレベルから大まかにすきま風量を計算していました。窓の面積8.71m2、「引き違い」サッシの気密度「中程度」、風速2m/sとして、計算したすきま風量は6.8L/sでした(詳細は「エアコン(10)-冷房時の熱負荷計算」を参照ください)。

 今回は、この部屋の気密度をC値2.0 cm2/m2とした場合を計算します。
 A1=A2=C×S/2=2・30/10,000/2=0.003m2
 (1/αA)2=(1/0.7・0.003)2+(1/0.7・0.003)2=453,515
 αA=(1/453,515)0.5=0.00148m2=14.8cm2
 ΔP=0.5・1.2・22/2-(-0.4・1.2・22/2)=0.9・1.2・22/2=2.16 Pa
 Q=0.00148・(2・2.16/1.2)0.5=0.00148・1.897m3/s=0.0028m3/s=2.8L/s

 この計算結果は、前回のすきま風量(6.8L/s)の4割程度となっています。

 このすきま風量を用いて、すきま風熱負荷を計算したものを下図に示します。顕熱負荷、潜熱負荷ともにすきま風量の比と同じ割合で減少しています。潜熱負荷のピークは以前は350Wでしたが改善後は145Wです。潜熱負荷もすきま風量と同じ比率で減少しています。このことから、気密度を向上させることによるすきま風熱負荷の改善効果も大きいことが分かりました。

 これらの結果から分かることは、建築物省エネ法の旧基準であるC値5.0(北海道、東北以外)は省エネの観点からは十分とは言えず、より気密性を高めることが必要ということです。

まとめ

 今回は冷房負荷のうちのすきま風熱負荷について取り上げ、その熱負荷算定の理論とそれに関係する気密性との関係を明らかにし、気密性向上対策の効果を分析しました。

 すきま風熱負荷は建物の壁や窓からのすきま風による熱取得や熱損失による熱負荷です。また、換気による人為的なものも含まれます。すきま風熱負荷は顕熱負荷と潜熱負荷から構成されます。

 顕熱負荷は室外から流入する温度の高い空気の熱量のうちのエアコンが除去すべき熱量を意味しています。潜熱負荷は室外から流入する空気中の水蒸気を室内で設定された湿度にするためにエアコンに求められるエネルギー(熱量)を意味しています。

 すきま風熱負荷の算定に用いられるすきま風量は住居のすきま面積から室外の風速などをもとに算定されます。すきま面積を求める際に使われるのがC値(床面積当り相当すきま面積)です。C値は実測によって求めることができ、これに床面積を乗じて相当すきま面積を算定することができます(相当という言葉はすきま風量を求める際のすきま形状を考慮していることを意味します)。

 C値は過去には(1999年以降)、住宅省エネ法において基準として用いられ2009年の省エネ法改正により使用されなくなりましたが、建築業界では現在もよく使われています。C値が基準として採用されていた時期は5.0cm2/m2が東北、北海道地域、それ以外の地域では2.0 cm2/m2を目標とすることが決められていました。

 本報告では、C値を用いてすきま風量を算定し、それに基づいて顕熱負荷、潜熱負荷の計算の事例を示しました。計算の結果、旧基準のC値5.0 cm2/m2の時、室内外温度差が6K(室内温度を26℃とした場合室外温度は32℃)の場合は、顕熱負荷が50Wであり、この状態が1日続く場合1.2kWhとなり、エアコンの消費電力は大きなものとなりました。

 また、潜熱負荷については室外の相対湿度が高い時(70%)、C値が旧基準の5.0 cm2/m2では228Wとなり、これが1日続くと5.5kWhとなることが分かりました。潜熱負荷は外気の湿度が高い時に顕熱負荷以上に大きくなることに留意する必要があります。

 このように旧基準のC値5.0 cm2/m2の気密性は十分に高いとは言えず、省エネを目指す場合にはより低いC値(例えば1.0以下)を目指す必要があると思われました。気密性を高めるには、建築設備の計画時点、建築部材を工場で製作する時点、施工の時点などでの配慮が必要であり、気密性の測定も行って確認しながら建設していくことが必要です。

 次回は、残された室内発熱負荷を整理し、最後に適用できる全ての熱負荷対策を実施した場合の冷房負荷に与える影響を分析します。

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<参考文献>
1) 空気調和・衛生工学会編:試して学ぶ熱負荷HASPEE-新最大熱負荷計算法-改訂第2版、2022年6月
2) 空気調和・衛生工学会編:空気調和設備計画設計の実務の知識、オーム社、2017年3月
3) 宇田川光弘、他:建築環境工学―熱環境と空気環境、改訂版、2020年4月
4) 一条工務店:公式Webサイト、テクノロジー、高気密構造