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断熱建材

建築材料(3)-内窓の設置と補助申請

 エアコン等の暖房エネルギーを低減させるためには高い断熱性の住居にすることが重要です。また、冷房エネルギーを低減させるにはそれに加えて日射熱取得が少ない住居にすることが有効です。壁と窓の断熱性、遮熱性については過去に報告して、エネルギー消費量に影響があることを示してきました。

 これから冬に向かって暖房エネルギーの低減が重要になります。電気代や燃料代が高騰しており、エアコンやストーブのエネルギー消費量を低減したい家庭も多いことでしょう。しかし、住居の断熱性を高めると言っても、簡単にできることではありません。特に集合住宅においては、リフォームは室内のみに限定されており、外壁の断熱化は困難です。

 窓の断熱性を高める方法として内窓の取り付けがあります。内窓とは、既存の窓の内側に窓を設置することです。内窓は集合住宅でも施工が可能であり、窓の材質を複層ガラスにすることで高い断熱効果が得られます。過去の報告において、複層ガラスの断熱性についても分析しており、冷房時における省エネ効果を試算しています(「エアコン(13)-冷房負荷の低減(2)」を参照ください)。今回は複層ガラスを内窓として施工しましたので、その効果を具体的に報告していきたいと思います。

 近年、国や自治体が住居の省エネ性の向上に対して各種の助成を行っています。国(窓口は国土交通省)は、省エネ型の住宅リフォームに対して補助を行っています。具体的には「こどもみらい住宅支援事業(リフォーム工事)」において、内窓を含む省エネに関連したリフォーム工事費用に助成されます。

 また、東京都は「既存住宅における省エネ改修促進事業」において、高断熱窓・高断熱ドア、太陽光発電設備に助成を行っています。東京都は都民が実施する地球温暖化対策への支援に多くの予算を充当しており、HTT(電力をH減らす・T創る・T蓄める)の標語のもとに、太陽光発電や充電器の設置などにも助成が行われています。

 ところで、国や自治体からの助成を受けるにはその手続きが面倒だと思う方も多いと思います。国や自治体は大切な公費を助成するため、不正が無いようにその支出内容についての詳細な書類の提出を求めます。その結果、助成の申請や工事後の施工報告などの書類の作成は非常に面倒な作業になります。しかし、省エネを効率的に実現するためには、この難関を越えていかなければなりません。

 そのため今回は、内窓設置に関する国と自治体からの補助申請手続きに関しても、分かりやすく解説していきます。前述の国土交通省と東京都の内窓設置は補助の併用が可能です。現在(2022年11月中旬)は工事の申請を行ってその申請が承認され、施工が終了した段階です。

 そこで、今回は内窓設置に関する補助申請や内窓の施工までの状況について、説明していこうと思います。なお施工後の内窓の断熱効果についてはデータの収集・分析後に報告する予定です。

設置した内窓の仕様

 今回内窓を設置した場所は、以前冷房負荷の削減の検討で対象としたリビングと寝室です。下図に内窓を取り付けた窓の図面を示します。対象の窓はリビング(窓面積約5.6m2)と寝室(同約3.1m2)の2つです。壁全体に対して窓の面積が大きいため、これらの窓の断熱性を高めることで、部屋の断熱性が向上すると考えられます。

 内窓の材料はLIXIL製のものを採用しました。LIXILはリフォーム用の内窓(製品名インプラス)として、下表のような複層ガラスを提供しています。下表には製品毎のガラス構成、光学的性能、熱的性能を示しています。また、複層ガラスの概念図も下図に示します。

表-1 複層ガラスの光学的・熱的性能(LIXIL製インプラス)

Low-E 色ガラス構成光学的性能(%)熱的性能
室外側中空層
mm
室内側可視光日射紫外線熱取得率遮蔽係数熱貫流率
透過率反射率透過率反射率カット率(η)(SC)W/(m2・K)
Low-E
複層C
透明312LowE
3-C
78.912.450.932.968.50.580.661.7
Low-E
複層G
透明312LowE
3-G
72.415.235.544.180.00.460.521.6
Low-E
複層G
(高遮熱)
LowE
3-G
12透明372.414.335.542.180.00.390.441.6
一般
複層
透明312透明382.214.875.713.440.20.800.912.9
注)透明3: 透明3mmガラス、LowE3:Low–E 3mmガラス、LowE3-Cはクリア、LowE3-Gはグリーンの製品名で、光学特性が異なるLow-E薄膜を貼ったガラスです。グリーンのLow-E膜は可視光、日射の反射率が高く、紫外線カット率が高くなっています。なお可視光は波長380~780nm、日射は波長2500nmまでの光を指します。
出所)株式会社LIXIL、窓リフォーム(内窓インプラス)、カタログ、2022年6月
出所)経済産業省:総合資源エネルギー調査会、省エネルギー小委員会、建築材料等判断基準ワーキンググループ、「サッシ及びガラスに関するとりまとめ」、2014年11月6日

 選択した複層ガラスはLow-E複層グリーン(高遮熱仕様)です。これは、室外側が厚さ3mmのLow-E(グリーン)ガラス、中空層12mm、室内側が透明ガラス3mmです。Low-Eグリーンとは光の透過を防ぐ金属膜のことであり、これを室外側のガラスに蒸着することで透過率を低減させます。

 その光学性能は可視光透過率が72.4%、日射透過率が35.5%、紫外線カット率80%です。ここで、可視光とは下図に示すように波長が380~780nmの光であり、紫外線は同じく波長300~380nmの光、日射とは2,500nm以下の波長の光を指します。可視光の透過率をなるべく大きくして光を室内に取り入れ、波長の長い熱線(赤外線)の透過率を小さくすることで熱を遮断します。

出所)産業技術総合研究所:公式Webサイト、研究成果記事一覧、2007年、日射熱を反射するクールなガラス

 また、熱的性能は熱取得率0.39、遮蔽係数0.44です。これらの数値が小さいほど日射を遮る効果が高いことになります。通常の3mm単板ガラスは遮蔽係数は1.0ですので現状の2倍以上の遮熱効果があります。この窓は西向きであり午後の日射が強く冷房負荷が大きくなるため、熱取得率が小さい複層ガラスを選びました。ただし、冬は熱を室内に取り入れた方が暖房負荷を低減できるので、内窓を開けて熱を取り込むようにします。

 さらに、熱貫流率は1.6(W/m2・K)です。熱貫流率は熱の伝わりやすさを示すもので、この値が小さいほど断熱効果は高くなります。内窓のみの熱貫流率がこの値ですので、既設の窓との併用で2枚の窓の総合熱貫流率はさらに小さな値となるはずです。現状の窓の熱貫流率は6.0(W/m2・K)ですので、内窓取り付けの断熱効果は非常に高いと考えられます。

国土交通省「こどもみらい住宅支援事業」の補助申請

(1)補助の要件

 国土交通省の「こどもみらい住宅支援事業」は、⼦育て⽀援及び2050年カーボンニュートラルの実現の観点から、(1)新築、(2)分譲住宅の購入、(3)リフォーム工事を対象としています。事業の内容を下のコラムに示します1)。補助の対象者は新築、購入は⼦育て世帯や若者夫婦世帯ですが、リフォームは全ての世帯が対象です。

 下のコラム内の記述にあるように交付申請者はリフォームを施工する工事請負業者です。そして、その工事請負業者は予め本事業に登録をしたものでなければなりません。登録事業者の検索サイトを参考文献に示していますので参考にしてください2)。また、リフォームの実施者(所有者)と工事請負業者との間に工事請負契約等が結ばれていなければなりません。 

「こどもみらい住宅支援事業」の概要
●目的・趣旨
 こどもみらい住宅⽀援事業は、⼦育て⽀援及び2050年カーボンニュートラルの実現の観点から、⼦育て世帯や若者夫婦世帯による⾼い省エネ性能を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等に対して補助することにより、⼦育て世帯や若者夫婦世帯の住宅取得に伴う負担軽減を図るとともに、省エネ性能を有する住宅ストックの形成を図る事業です。
●事業名称
 こどもみらい住宅支援事業
●予算額
 542億円(2021年度補正予算)、600億円(2022年度予備費等)
●補助事業と対象者
 ① 注文住宅の新築:建築主
 ② 新築分譲住宅の購入:購入者
 ③ リフォーム:工事発注者
※ただし、①注文住宅の新築および②新築分譲住宅の購入については、子育て世帯又は若者夫婦世帯が取得する場合に限ります。
●補助額
 ①注文住宅の新築、②新築分譲住宅の購入
 住宅の省エネ性能等に応じて60万円から100万円
 ③リフォーム
 実施する補助対象工事および発注者の属性等に応じて5万円から60万円

●交付申請者
 こどもみらい住宅事業者として予め事務局に登録した者
  [補助事業」      [契約]     [こどもみらい住宅事業者(交付申請者)]
 ① 注文住宅の新築   工事請負契約   建築事業者(工事請負業者)
 ② 新築分譲住宅の購入 不動産売買契約  販売事業者(販売代理を含む)
 ③ リフォーム     工事請負契約   施工業者(工事請負業者)
●対象期間
 契約期間 2021年11月26日 ~ 遅くとも2023年3月31日
※「こどもみらい住宅事業者」とは、工事発注者に代わり、交付申請等の手続きを代行し、交付を受けた補助金を工事発注者に還元する者として、予め本事業に登録をした施工業者です。
工事請負契約等が結ばれていない工事は対象となりません
●リフォーム補助額

(1)補助額の算定方法
 補助額は、次の(2)①~③のいずれかに該当するリフォーム工事を実施する場合に、対象となるリフォーム工事等に応じて、次の(2)①~⑧における補助額の合計とします。ただし、同一のリフォーム工事が、(2)①~⑧の複数に該当する場合、いずれか高い補助額のみを合算します。
 また、複数回の申請を行う場合でも、1戸あたりの補助額の上限は、リフォームを行う者の属性及び既存住宅購入の有無に応じて下表に示すとおりとし、1申請あたり①~⑧の合計補助額が5万円未満の場合は申請できません
(2)対象工事内容
 ① 開口部の断熱改修
 ② 外壁、屋根・天井又は床の断熱改修
 ③ エコ住宅設備の設置
 ④ 子育て対応改修
 ⑤ 耐震改修
 ⑥ バリアフリー改修
 ⑦ 空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
 ⑧ リフォーム瑕疵保険等への加入
 ここで、①開口部の断熱改修とはガラス交換、内窓設置・外窓交換、ドア交換があります。
 また、③エコ住宅設備の設置内容と補助額は以下の通りです。
 ・太陽熱利用システム:24,000円/戸
 ・節水型トイレ 掃除しやすい機能を有するもの:19,000円/台、上記以外:17,000円/台
 ・高断熱浴槽:24,000円/戸
 ・高効率給湯機:24,000円/戸
 ・節湯水栓 5,000円/台
 さらに、④子育て対応改修の内容と補助額は以下の通りです。
 ・ビルトイン食器洗機:19,000円/戸
 ・掃除しやすいレンジフード:10,000円/戸
 ・ビルトイン自動調理対応コンロ:13,000円/戸
 ・浴室乾燥機 20,000円/戸
 ・宅配ボックス:住戸専用の場合10,000円/戸、共用の場合10,000円/ボックス

 リフォームの対象は開口部の断熱改修など8種類の工事があります(詳細は上のコラムを参照ください)。内窓の取り付けはこの開口部の断熱改修に該当します(開口部とはドアや窓を指します)。またリフォーム工事と言っても、食器洗機やガスコンロなどの購入、設置も含まれます。

 それぞれの工事別に補助額が決まっています。食器洗機は19,000円、ガスコンロは13,000円などです。ただし、補助の対象となるには、リフォーム工事内容が①から③(①開口部の断熱改修、②外壁、屋根・天井又は床の断熱改修、③エコ住宅設備の設置)のいずれかを行うことが必須であり、8種類の補助額合計が5万円以上でなければ申請ができません。

(2)補助額の計算

 開口部の断熱改修の補助額は、開口部の大きさの区分及び改修方法に応じて変わります。下表にその補助額を示します。同表に示す補助額に、施工箇所数を乗じて合計補助額が算定されます。

 今回の内窓工事に関しては、2つの窓共に面積2.8m2以上であるため、補助額は表-2にある通り1ヵ所21千円であり、2か所で42千円です。ただし、これでは補助要件の「合計補助額5万円以上」を満たしませんので、他にビルトイン自動調理対応コンロ(補助額13千円)を加えて補助申請(合計補助額55千円)を行いました。

表-2 開口部の断熱改修の補助額

大きさ  ガラス交換 注1)  内窓設置 注2)・外窓交換    ドア交換
面積 注3)1枚当りの補助額面積 注4)1箇所当りの補助額面積 注4)1箇所当りの補助額
 大1.4 ㎡以上 8,000円2.8 ㎡以上 21,000円開戸:1.8 ㎡以上
引戸:3.0 ㎡以上
 32,000円
 中0.8 ㎡以上1.4 ㎡未満 6,000円1.6 ㎡以上2.8 ㎡未満 16,000円
 小0.1 ㎡以上0.8 ㎡未満 2,000円0.2 ㎡以上1.6 ㎡未満 14,000円開戸:1.0 ㎡以上1.8 ㎡未満
引戸:1.0 ㎡以上3.0 ㎡未満
 28,000円
注1) ガラス交換は、箇所数ではなく、交換するガラスの枚数を乗じて算出。ドアに付くガラスのみ交換の改修は対象外となります。
注2)内窓交換を含む。
注3)ガラスの寸法とする。
注4)内窓若しくは外窓のサッシ枠又は開戸若しくは引戸の戸枠の枠外寸法とする。
出所)国土交通省:こどもみらい住宅支援事業、公式Webサイト

(3)補助申請書の作成

 補助申請者は前述の通り工事請負業者ですが、申請書類は以下のものと記載があります1)。特に注意すべきことは、工事実施前の写真を撮り忘れないようにすることです。

 ① こどもみらい住宅支援事業補助金 共同事業実施規約(リフォーム用)
 ② リフォーム工事請負契約書
 ③ 工事前写真(補助対象の箇所すべて)
 ④ 着工写真(補助対象のいずれかの工事の着工が確認できるもの、1枚)

東京都「既存住宅における省エネ改修促進事業」の補助申請

(1)補助の要件

 東京都の「既存住宅における省エネ改修促進事業」の補助については、都内の既存住宅における断熱性能向上及び再エネ設備導入促進のために行っているものです。断熱性能向上については、高断熱窓と高断熱ドアを対象にしています。高断熱窓とは、「国の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金において、補助対象となる製品として登録されている窓及びガラスをいう」とされており、今回の内窓はその対象となっています。

 下のコラムに本事業の補助の内容を示します。高断熱窓については、補助金は助成対象経費の3分の1以内となっています。助成対象経費とは設備の設置に係る材料費及び工事費を含みます。なお、この補助対象経費は消費税を除いた費用になります。また、内窓設置の補助額の上限は1住戸当り100万円です。ただし、他の補助を充当した場合の上限も決められています。詳細は補助金の計算において説明します。

<東京都「既存住宅における省エネ改修促進事業」の概要>
1.助成対象者
 助成金の交付対象となる者(以下「助成対象者」という。)は、次の(1)又は(2)のいずれかに該当するものであって、別に定める要件を満たすものとする。ただし、国及び地方公共団体を除く。
(1) 2に規定する助成対象設備を設置する住宅の所有者又は管理組合
(2) 前号に掲げる者に対し、自らが所有する助成対象設備に係るリース等の契約を締結したリース事業者(前号に掲げる者と共同で助成金の交付に係る申請を行うリース事業者に限る。)
2. 助成対象設備
 助成対象設備は、設備の種別ごとに定める次の全ての要件を満たすものとする。
(1)高断熱窓
一 未使用品であること。
二 都内の住宅(既存住宅に限る。)に新規に設置されたものであること。
(2)高断熱ドア
一 未使用品であること。
二 都内の住宅(既存住宅に限る。)に新規に設置されたものであること。
(3)太陽光発電システム
一 未使用品であること。
二 太陽光発電システムを構成するモジュールが、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)が定めるJETPVm認証のうち、モジュール認証を受けたものであること若しくは同等以上であること又は国際電気標準会議(IEC)のIECEE-PV-FCS制度に加盟する認証機関による太陽電池モジュール認証を受けたものであること(認証の有効期限内の製品に限る)。
三 当該太陽光発電システムにより供給される電気を、当該太陽光発電システムを設置する助成対象住宅の居住の用に供する部分で使用するものであること。
四 次のいずれかの要件を満たす都内の住宅に新規に設置されたものであること。
ア (1)又は(2)の助成対象設備と併せて当該太陽光発電システムが導入される既存住宅
イ 2023年3月31日までに最低一つの居室において窓を全て複層ガラス又は二重窓にしている既存住宅
五 太陽光発電システムの発電出力(kWを単位とし、太陽光発電システムを構成する太陽電池モジュールの日本産業規格若しくは国際電気標準会議(IEC)の国際規格に規定されている公称最大出力の合計値又はパワーコンディショナーの日本産業規格に基づく定格出力の合計値の小数点以下第3位を四捨五入した値のうち、いずれか小さい値とする。以下同じ)が50kW未満であること。
3.助成対象経費
 本事業の助成金の交付対象となる経費(以下「助成対象経費」という。)は、高断熱窓及び高断熱ドアにおいては、助成対象設備の設置に係る材料費及び工事費、太陽光発電システムにおいては、助成対象設備の設置に係る機器費及び工事費とする(消費税及び地方消費税は除く)。
4.助成金額
 本事業の助成金の交付額は、助成対象設備の種別ごとに次のとおりとする。
また、助成対象経費に国及び他の地方公共団体による補助金が含まれる場合にあっては、助成金の交付額と当該補助金の額の合計額が助成対象経費を超えない範囲において交付するものとする。
(1)高断熱窓
 助成金の交付額は、助成対象経費の3分の1以内であって、次の各号のいずれか小さい額を上限とする。
1住戸当たり 1,000,000 円
助成対象経費に国からの補助金を充当する場合にあっては、助成対象経費の3分の2の額から当該補助金の額を控除した額
(2)高断熱ドア
 助成金の交付額は、助成対象経費の3分の1以内であって、次の各号のいずれか小さい額を上限とする。
ア 1住戸当たり 160,000 円
イ 助成対象経費に国からの補助金を充当する場合にあっては、助成対象経費の6分の5の額から当該補助金の額を控除した額
(3)太陽光発電システム
ア 太陽光発電システムの発電出力が3.75kW以下の場合
次の(ア)又は(イ)のいずれか小さい額。ただし、太陽光発電システムの助成対象経費の合計金額を上限とする。
(ア) 1棟当たり450,000円(太陽光発電システムの発電電力を各住戸が戸別の契約により受電する場合は、受電する1住戸当たり450,000円)
(イ) 太陽光発電システムの発電出力に150,000円を乗じて得た額
イ 太陽光発電システムの発電出力が3.75kWを超える場合
 太陽光発電システムの発電出力に120,000円を乗じて得た額。ただし、太陽光発電システムの助成対象経費の合計金額を上限とする。

(2)補助額の計算

 今回の内窓の工事費(材料費含む)から補助金の算定額を計算すると以下の通りです(分かりやすい数字で示します)。

(1)内窓設置費 360,000円(消費税抜き)、396,000円(消費税込み)
(2)補助金額の計算 360,000/3=120,000円
(3)補助上限の計算
  ・助成対象経費の3分の2の額から国の補助金の額を控除した額
   360,000×2/3-42,000=198,000円
  ・120,000<198,000 より補助額の計算値は補助上限を超えていない。
   したがって、補助額は120,000円です。

(3) 補助申請から補助金を受けるまでの流れ

 補助申請から補助金の支払いまでの流れを下図に示します。補助金の申請はリフォームの施工前に行い、交付決定を受けることが必要です。交付決定前に工事が終了したものは補助を受けることができません。

出所)東京都:既存住宅における省エネ改修促進事業、助成金申請の手引

 まず、申請者は申請書を作成し、それを東京都に提出して審査を受けなければなりません。東京都は申請書の審査後に交付決定を申請者に通知します。そして申請者はリフォーム工事を実施、その報告書を作成し、それを東京都に提出します。東京都はその報告書を審査し、補助金の確定通知書を送付するとともに補助金の支払いを行います。なお、交付申請受付期間は2022年6月22日から2025年3月31日までです。

(4) 補助申請書の作成

 補助申請には以下の資料を提出することが必要です。①から⑤までは内窓工事に関する内容やその設置工事費に関する内容です。ここで最も重要なのは⑤の助成対象経費の積算に関する根拠書類(見積書等)です。これは工事業者からもらった見積書のことです。見積書がなければ費用の計算ができませんので、必ず工事前に施工業者から社判を押した見積書をもらっておく必要があります。

 ① 助成金交付申請書(原本)
 ② 費用総括表(原本)
 ③ 費用明細書(原本)
 ④ 助成対象住宅の写真
 ⑤ 助成対象経費の積算に関する根拠書類(見積書等)(コピー)
 ⑥ 平面図(コピー)
 ⑦ 姿図もしくは立面図(コピー)
 ⑧ 助成対象住宅の写真(原本若しくはコピー)
 ⑨ 建物の登記事項証明書(原本、若しくはコピー(3か月以内に発行されたもの))
 ⑩ 本人確認書類(コピー)
 ⑪ 提出書類チェックリスト(原本)

 ⑥から⑧は図面と写真です。部屋の間取りを示してどこを施工するかを示します。⑨は建物の登記事項証明書で住宅の所在地や申請者が所有者であることを証明します。これは法務局から取り寄せます。⑩は本人確認書類であり、免許証やパスポートのコピーを添付します。

 なお、③の費用明細書には補助対象となる窓ガラス等の登録番号を記載する必要があるのですが、これは国土交通省が決めた番号を記入します。その番号を検索するサイトを文献に示しておきます5)。このサイトにある製品が補助対象になります。

補助申請による費用軽減額とスケジュール

 以上のことから、国と東京都の補助金を引いた実質の内窓設置の費用は以下の通り234千円となります。補助を受けることで約4割の費用軽減になりました。この費用効果については、暖房と冷房の電気代と燃料代の削減額を基に今後検討していきます。

 実質の内窓設置費用=396,000-120,000-42,000=234,000円

 ところで、この東京都の補助申請から施工までには時間がかかります。施工業者に見積を依頼することや補助申請書の作成は申請者側の努力で早くできますが、補助申請後に交付決定通知が届くまで3か月がかかるとされています。そして、交付決定後に施工するまで、複層ガラスの製作にも時間がかかるため、その後さらに1か月以上はかかることになります。そのため、この計画を立ててから施工完了まで半年はかかると想定しておくと良いと思います。

 また、施工が終了しても補助金の振り込みまではさらに時間がかかります。というのは、国と東京都の補助を併用する場合は、東京都に補助申請をするときに国の補助金の確定通知書を施工報告書に添付する必要があるからです。国の補助金の申請は施工後に工事請負業者が行い、さらに国の審査が終わるまで時間がかかります。これらのスケジュールを理解したうえで、補助申請するかどうか検討していただきたいと思います。

内窓取り付けの様子

 内窓取り付けの工事の写真を以下に示します。取り付けは窓枠を取り付けてから複層ガラスをはめ込むだけの簡単な工事であり、1時間程度で終了しました。リビングの窓は長さが3mあるので、窓枠の設置の時にたるみがでてしまわないように2人で施工しています。

取り付け前           施工中           取り付け後 

 内窓のサッシは樹脂製です。これはアルミサッシに比べて1/1000の熱伝導率とされ、高い断熱効果と防露効果があるとされています。複層ガラスのガラス1枚の厚さは3mm、中間の空気層が12mmであるため、窓ガラス全体の厚さは18mmと厚みがあります。 

 内側と外側の窓を清掃できるように、全ての内窓をスライドできるように施工しています。また、内窓が目立たないよう、サッシの色は外窓と同系色にしています。施工後の窓ガラスの透明度は特に違和感がなく、二重窓による室内の圧迫感は意外と少ないようです。

 今回は、内窓の取り付けに関する補助申請手続きと施工後の状況について説明しました。内窓の効果は夏は日射による熱取得を低減させること、冬は断熱性を向上させることにより、冷房と暖房の消費エネルギーを低減させることです。次回以降で冬の断熱効果について報告していく予定です。

<参考文献>
1)国土交通省:こどもみらい住宅支援事業、公式Webサイト、
https://kodomo-mirai.mlit.go.jp/
2)国土交通省:こどもみらい住宅支援事業、公式Webサイト、こどもみらい住宅事業者の検索、https://kodomo-mirai.mlit.go.jp/search-for-manufacturer/
3)東京都:クールネット東京、公式Webサイト、既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア)、https://www.tokyo-co2down.jp/subsidy/ene_reform
4)東京都:クールネット東京、既存住宅における省エネ改修促進事業、助成金申請の手引、https://www.tokyo-co2down.jp/wp-content/uploads/2022/10/reform_tebiki_20221104.pdf
5)北海道環境財団:既存住宅における断熱リフォーム支援事業、補助対象製品一覧、https://ekes.jp/