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待機電力

待機電力(2)-エネルギー消費機器のまとめ

 電気料金の高騰が続く中で、気が付かないうちに消費されている待機電力について気になっている方も多いと思います。待機電力については、家電業界等においてはこれまで自主基準等によりその消費電力の削減に努めてきましたが、その安全性や利便性の機能を維持するために電力を必要とするため、完全にゼロとすることはできない機器もあるようです。

 資源エネルギー庁の調査によれば、一般世帯の待機電力量は全消費電力量の5.1%と推計されています。この待機電力については、電気機器だけでなくガス温水器などのガス機器や石油ファンヒーターなどの石油機器なども電気を使っているため、それらの機器についても注意する必要があります。政府の調査によると、待機電力の最も多いのはガス温水器であるということが報告されています1)

 一般的に、待機電力とはスイッチを切っても電源に接続している場合に消費されるわずかな電力を指します。一方、稼働中ではあるが(スイッチON状態)、操作が行われない場合に流れる電気を縮小するという機能が付いた機器もあります。これは操作待ちのアイドリングモードからスリープモードに移行することによって節電するという機能です。

 この例がパソコンや複合機(プリンター)等の電子機器です。この操作待ちの電力も待機電力の一種としてとらえて良いと思われます。これらの機器でスリープモードの使用を許可することで節電が実現します。ただし、スリープモードにすると操作を再開した時に大きな電力を消費してしまうので、アイドリングモードからスリープモードに移行する時間設定に注意が必要です。

 今回は、まずエネルギー消費機器全般について待機電力を調査した報告書を基に、機器毎の平均的な待機電力についての比較や待機電力の経年的な傾向を整理します。ただし、これらは様々な機種の平均的な傾向を示すものなので、個別の機種毎の待機電力については把握することができません。

 一方、本サイトでは各種のエネルギー消費機器の電力消費量も分析してきましたので、今回は待機電力のテーマに沿ってそれらを取りまとめまます。また、待機電力については、ハードディスクが録画用に接続されたテレビシステムの待機電力を測定した結果(「待機電力(1)-テレビとハードディスク」)を報告しました。その後、測定対象のテレビの待機電力はスイッチOFF後の時間の経過によって変わることが明らかになりましたので、その測定結果についても報告します。

既存調査による待機電力の整理

(1)待機電力とは

 初めに待機電力とは以下のものを指します2)。待機電力が生じるのは、リモコン操作を行うテレビやエアコン、受信の待ち受けを行う電話、FAXなどです。

●電源プラグをコンセントに差し込んだだけで表示部などが消費する電力。
●電源スイッチを切り(OFF)にしていても表示部やタイマー機能が消費する電力。
●製品の本体でリモコンからの操作信号を待ち受けするために消費する電力。
●留守番電話やファクシミリの受信を常に待ち受けするために消費する電力。
●充電式製品注)の充電中以外で消費する電力。

注)「充電式製品」は「充電器」のことを指すのではないかと思われます。

(2)待機電力量の割合

 資源エネルギー庁は2012年度に1999年度から実施してきた一般家庭における待機電力測定調査の結果を取りまとめています1)。本調査は、ストックベース調査とフローベース調査の2種の調査を行っています。ストックベース調査は世帯にある機器の待機電力を実際に測定したものです。一方フローベース調査は、メーカーなどに対して販売されている機器の待機電力(カタログ値)を聞き取り調査したものです。

 右図に一般家庭の全消費電力量と待機電力量を示しています。ここに示した待機電力量は、ストックベース調査を基にして、機器の保有率、待機時間、待機時消費電力を基に1世帯当りの待機電力量を推計したものです。世帯当りの全消費電力量は4, 432kWh/年・世帯、待機電力は228kWh/年・世帯であり、待機電力の全消費電力量に占める割合は5.1%でした。

 この結果より、待機電力量は1日当りわずかに0.6kWh(=228/365)ですが、年間の電気代にすると、7,500円程度になり、馬鹿にできない金額です(電気代単価を33円/kWhと仮定しています)。この待機電力の推計値は2012年の調査結果に基づいており、現在はやや低減している可能性があります。

(3)機器別の待機電力の構成比

 次に、機器別の待機電力の構成比を下図に示します。ガス温水器が全体の19%を占め最も多くなっています。次いでテレビ(10%)、エアコン(8%)、電話機(8%)などとなっています。テレビは近年の画面サイズの大型化、エアコンは定格消費電力が大きいこと、電話機はFAX等の受信による待ち受け電力の影響があるものと思われます。

出所)資源エネルギー庁:2012年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業
(待機時消費電力調査)報告書概要

(4)機器区分別の待機電力の経年変化

 さらに、機器の区分別に待機電力を時系列的に見たものが下図です。待機電力は2002年をピークに減少しており、2012年の待機電力はピーク時の1/2程度まで減少しています。ほとんどの機器区分が減少しており、特に映像・音響機器が2002年の7割程度減少したほか、家事・調理機器も6割程度減少しています。一方、給湯機器は2005年、2008年は増加していましたが、2012年は2002年レベルに戻っています。

出所)資源エネルギー庁:2012年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業
(待機時消費電力調査)報告書概要

(5)機器別の平均待機電力

 個別の機器の待機電力についてストックベース調査とフローベース調査による平均待機電力を比較したものが下表です。ストックベース調査は現在世帯が保有している機器の実測値であるため、フローベース調査(メーカーのカタログ値に近い)よりも大きい値になる傾向があります。

表-1 機器別の平均待機電力

  分 類エネルギー使用機器A.ストック
ベース調査
B.フロー
ベース調査
 B/A  備 考
映像・
音響機器
ビデオデッキ2.271.280.56BD・HDDレコーダ
一体型オーディオ(ミニコンポ等)1.910.430.23
HDD・DVDレコーダー1.771.280.72
DVDプレーヤー0.440.25
テレビ(高速起動設定時を含む)1.663.041.83
ポータブルオーディオシステム1.480.510.34
テレビ(高速起動設定時を除外)0.380.370.97
情報・
通信機器
外付けモデム、DSU、ホームゲートウェイ機器等7.345.720.78回線終端装置
外部記憶装置2.33
パソコンネットワーク機器5.922.480.42
FAX付電話またはFAX専用機3.431.000.29
その他の電話機(本体)2.461.440.59
プリンタ1.480.620.42
パソコン1.220.410.34
パソコン用モニター0.960.390.41
家事・
調理機器
食器洗乾燥機1.350.930.69
電子レンジ・オーブンレンジ1.090.010.01
電気炊飯器1.000.630.63
クッキングヒーター0.390.160.41
洗濯機0.210.010.05
コーヒーメーカー0.040.276.75
オーブントースター、トースター0.040.051.25トースター
ミキサー0.020.168.0
電気ケトル0.010.044.0
給湯機器ガス瞬間湯沸器7.053.890.55
ガス給湯付ふろがま6.652.120.32ガスふろがま
石油給湯付ふろがま6.303.150.5
冷暖房・
空調機器
冷暖房兼用エアコン1.740.550.32
可搬式ストーブ1.630.620.38
空気清浄機0.990.460.46
加湿器0.270.431.59
扇風機・サーキュレーター0.260.41.54
ホットカーペット0.110.00.0
電気毛布0.030.00.0
電気こたつ0.030.00.0
充電機器充電式電気シェーバー2.340.190.08
ビデオカメラ1.680.280.17
電話機子機1.280.590.46
デジタルカメラ1.190.410.34
携帯電話/PHS/スマートフォン0.830.340.41
照明・
その他機器
温水洗浄便座2.211.080.49
健康器具0.710.220.31美容器具
電子楽器0.400.220.55
電気スタンド0.050.204.0
ドライヤー0.010.022.0
注)機器名はストックベース調査による。フローベース調査の機器名と異なる場合は備考に記載。
出所)資源エネルギー庁:2012年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書概要

 ストックベース調査で待機電力が大きいのは、外付けモデム(7.34W)、ガス瞬間湯沸器(7.05W)、ガス給湯式ふろがま(6.65W)、パソコンネットワーク機器(5.92W)でした。最新の機器のスペック値であるフローベース調査の待機電力は外付けモデム(回線終端装置5.72W)、ガス瞬間湯沸器(3.89W)、ガス給湯式ふろがま(2.12W)、パソコンネットワーク機器(2.48W)と大きく減少しています。このように待機電力が大幅に減少している機器は買い換えによって消費電力量を低減できる可能性があります。

 これらの中でテレビ(高速起動設定時を含む)はストックベース調査で1.66W、フローベース調査で3.04Wとなっていますが、近年は画面サイズの大型化が進んでいるためと想定されます。また、コーヒーメーカーや加湿器なども増加していますが、これも方式の変更など(例えば加湿器は4つの方式があり、消費電力は大きく異なる)が原因と考えられます。

本サイトで取り上げた機器の待機電力

(1)本サイトで取り上げた機器の待機電力一覧

 前述した調査結果は2012年の調査結果であることから10年前の傾向を示すものであり、機種によってはさらに待機電力が低減しているものもあります。また機種が異なるものを平均した結果であるため、機器によっては待機電力の傾向が分かりにくいものがありました。そこで個別の機種毎の比較的新しい製品についての待機電力も知りたいところです。本サイトでは、これまでいろいろな機器の消費電力を分析してきましたので、その結果を待機電力に焦点を絞ってまとめていきます。

 下表に本サイトで取り上げた機器の待機電力のカタログ値と実測値を示しています。同表には機器の型式、メーカー、機種の特徴、購入年についても示しています。購入年はほぼ製造された年ととらえることができます。消費電力の測定は全ての機器では行っていませんが、測定したもののみを記載しています。

表-2 本サイトで取り上げた機器の待機電力

家電機器 型 式 メーカー 特 徴 定格電力
W
購入年カタログ
値 W
実 測 値
W
  コメント
液晶テレビREGZA 50BM620X東芝50inch,
4K
15020180.3
(0.3)
約20
(1未満)
カタログ値のカッコ内は主電源OFF時
実測値の1時間後は1W未満に減少。
REGZA 32RI東芝32inch11520100.1
(0.09)
約20
(1未満)
カタログ値のカッコ内は主電源OFF時
実測値の25分後は1W未満に減少。
VIERA TH24C6Panasonic24inch3820130.1
(0.1)
1未満カッコ内は主電源OFF時
エアコンMSZ-ZW403S三菱電機14畳用,
APF6.3
1,095
冷房時
20120.04
(0.9)
カッコ内はタイマー設定時
AN40ZRBKP-Wダイキン工業14畳用,
APF7.1
800
冷房時
20210.04
(0.5)
カッコ内はタイマー設定時
ノクリアAS-Z22K富士通ゼネラル6畳用,
APF6.9
390
冷房時
20200.11未満
(0.5)
カタログ値はタイマー設定無しの値
パソコン
(コンピュータ)
LAVIE PC-NX850LABNEC液晶,
15.6inch
90201812
(0.4)
15
(1未満)
Idling mode
(Sleep mode)
LAVIE PC-GN18634AENEC液晶,
13inch
4520195.9
(0.5)
Idling mode
(Sleep mode)
磁気ディスクSGD-NY020UBKElecom2TB20181未満Idling mode
HDL-LA2.0IO-DATA2TB7.820144.6
(1.5)
Idling mode
(電源OFF時)
Hard drive classic 2Freecom1TB2.3テレビ接続時の主電源OFF時5.3W
複合機PRIVIO MFC-J6995CDWブラザーA3,
インクジェット
2920187
(1.7)
約6
(1.4)
Idling mode
(Sleep mode)
温水洗浄便座TCF8FM65TOTO瞬間式1,27220204.5(夏)
7.5(冬)
9月 室温23℃
12月 室温19℃ 
加湿器HD-RX319ダイニチ工業温風気化式1612019116カタログ値はエコモード、実測値は湿度が目標値に達した時
SRD-BK801siroca超音波式
4L, 8畳用
2520201.3実測値はLED点灯時
電子レンジRE-F23A-Bシャープオーブン
レンジ
1,460
(レンジ部)
20200
(0.0kWh/年)
1未満
(2.5)
実測値のカッコ内は加熱終了後30分間の消費電力、冷却ファン稼働時は15W
IH調理器IH-2028JPT fal卓上型1,40020191未満冷却ファン稼働時4.8W、10分間継続
オーブン
トースター
ET-GS30-TM象印庫内内寸
25.5×25.5cm
1,30020151未満
電気ケトルBF806170T fal容量 0.8L1,25020151未満
食器洗い
乾燥機
RSW-F402Cリンナイ庫内容量
66L
93020221.0
ガス温水器RUF-VS2005SAUリンナイ出湯能力
水温+40℃
12.2L/min
ヒータ
98
20173.0リモコン2か所
石油ファンヒータFH-G3215Yコロナ強制通気形
開放式
2020160.8
注)実測で使用した電力計はラトックシステムRS-WFWATTCH1、測定範囲は1W~1,500Wまでのため、表示値が0Wでも1未満とした。

(2)テレビ

 テレビの待機電力を下図に示します。本サイトで消費電力を実測した3種のテレビ(REGZA 50BM620X、REGZA 32RI、VIERA TH24C6)のカタログ値(青色)と実測値(褐色)を示しています。下図を見るとカタログ値と実測値は大きく異なっています。

 以前にも報告した通り、東芝REGZAの待機電力は約20Wと測定されていました(「待機電力(1)-テレビとハードディスク」を参照ください)。今回、この待機電力の時間的な推移を見たところ、REGZA 50BM620Xの待機電力はスイッチOFF後60分後に0になり、REGZA 32RIは同じく25分後に0になっていました。測定した結果の詳細を付録に示しておきます。

 なぜ、このように長い時間大きな待機電力になっているのかは不明ですが、テレビは録画予約や番組情報の収集のため、一時的に消費電力量が多くなる場合があるようです。しかし、その消費電力が1時間継続する必要はないと思われます。

注)REGZA 50BM620Xの待機電力はスイッチOFF後60分間の電力、REGZA 32RIは同じく25分間の電力
フロー調査、ストック調査は2012年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書

 一方、PanasonicのVIERAはカタログ値も実測値も小さい値となっています。同社のWebサイトでは、「最近のテレビは待機時に最低限の回路しか通電させない工夫がされており、ほとんどのテレビで0.1W~0.3Wである」と記載されています3)

 上図には資源エネルギー庁の報告書に示されたストック調査とフロー調査の待機電力も示しています。既存調査では高速起動設定を含む場合と除く場合の2つの値が示されています。あまり聞かれない言葉ですが、テレビの起動を早くしたい場合にこのモードを利用するようです。高速起動を用いない場合はストックベース、フローベースともに0.4W程度であり、50インチのREGZAのカタログ値と同程度の値(0.3W)です。32インチのREGZAのカタログ値と24インチのVIERAはこれらよりもかなり少ない値となっています。画面サイズが小さいテレビは待機電力も小さいようです。

(3)磁気ディスク(外部記憶装置)

 磁気ディスクの待機電力はメーカーではカタログ値を公表していないため、実測値のみを下図に示します。SDG-NY020UBK(Elecom製2TB、2018年製)は0(1未満)ですが、HDL-LA2.0(IO-DATA製、2TB 、2014年製)はそれよりも多い1.5Wです。また、Hard drive classic2 (Freecom製、1TB、製造年不明、かなり古い)は2.3Wで、フロー調査の2.33Wと同程度の値となっています。

 購入年の古いHDL-LA2.0やHard dirive classic2はかなり大きな値となっていますが、近年の製品は待機電力は小さくなっているものと思われます。なお、HDL-LA2.0の待機電力は、テレビ(REGZA 32RI)に接続して、テレビの電源をOFFにした状態で測定したものです。詳細は「磁気ディスク(2)-消費電力の測定」を参照ください。

出所)フロー調査は2012年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書

(4)エアコン

 エアコンの待機電力のカタログ値を下図に示します(200Vの電圧のため計測できないためです)。三菱電機のMSZ-ZW403Sは2012年製ですが待機電力は0.04W(タイマー設定なし)です。同じく、ダイキンAN40ZRBKP-Wは2022年製で0.04(タイマー設定なし)、ノクリアAS-Z22Kも2021年製で0.1Wです。タイマーの設定時の待機電力は三菱電機0.9W、ダイキン0.5Wですので、タイマーを使って節電するときには注意が必要です。

出所)ストック調査、フロー調査は2012年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書

 一方、既存調査のストックベース調査では1.74Wと大きな値を示しています。過去にはエアコンの待機電力は大きいとされていましたのでそのことがこの結果に表れています。この待機電力が1年間続くと、年間15kWhの消費電力を使用することになります。フロー調査では0.55Wですので、近年は大きく低減してきたことが分かります。

 この例から分かるように、タイマーをセットしていると、エアコンを使用していなくても、タイマー等を稼働させる必要があるため待機電力が大きくなります。タイマーの設定は主として節電を目的とすることが多いと思いますので、タイマー設定の時間を考慮しておくことが必要です。

 なお、エアコンの詳細な仕様については、以下のサイトを参照ください。
 ●三菱電機 MSZ-ZW403S:「エアコン(4)-暖房時の消費電力」
 ●ダイキン工業 AN40ZRBKP:「エアコン(9)-冷房時の消費電力」
 ●富士通ゼネラル AS-Z22K:「エアコン(3)-消費電力の測定」

(5)パソコン、複合機

 パソコンと複合機は以前の報告にも示したように、アイドリングモードからスリープモードへの移行によって省エネを実現しています。下図にパソコン(NEC製LAVIE PC-NX850LAB)のアイドリングモードとスリープモードの時の消費電力を示します。

 下図に示す通り、入力待ちの状態がアイドリングモードです。操作されない時間が長く続くとディスプレイの電源を切る(ロング)アイドリングモードになりますがこれは15W程度です。そしてその後何も操作されないとスリープモードになり、消費電力は1W未満となります。スリープモードのカタログ値は0.4Wですが、電力計の測定範囲外であるため、実測値は1W未満としています。

 そして、スリープ状態から復帰させる際には比較的大きな消費電力が生じています(15Wから40Wの範囲で変動)ので、頻繁にスリープモードからの復帰を行う場合には注意が必要です。各モードに変わる時間設定が自由にできますので、上手に時間設定を行うようにしてください(詳細は「コンピュータ(2)-消費電力の測定」を参照ください)。

 次に、複合機(ブラザー製PRIVIO MFC-J6995CDW)の消費電力を測定した結果を下図に示します。複合機もアイドリングモードとスリープモードが設定されています。アイドリングモードの消費電力は6W(カタログ値は7W)、スリープモードは1.4W(カタログ値は1.7W)です。アイドリングモードからスリープモードへの移行時間を短くすることによって節電を実現できます(詳細は「複合機(2)-消費電力の測定」を参照ください)。

(6)ガス・石油機器

 資源エネルギー庁の調査ではガス温水器の待機電力が最も多くなっていました。日本ガス石油機器工業会では2006年に自主基準を設け、2008年に目標を達成したと公表しています4)。同工業会の自主基準は以下の通りであり、2008年以降に販売された機種であればこの数値以下になっているはずです。

 ①暖房機器(ガス・石油)
  a)ファンヒータ:1W以下
  b)密閉式(FF式)・半密閉式:3W以下
 ②温水機器(ガス・石油)でリモコンの電源が本体から供給されるもの。
  a)本体:2W以下
  b)本体+リモコン1台:3W以下
  c)本体+リモコン2台:4W以下
  d)本体+リモコン3台:5W以下
 ③ガス調理機器:1W以下

 表-2に示した石油ファンヒータ、ガス温水器のカタログ値とストック調査、フロー調査の平均待機電力を比較したものを下図に示します。石油ファンヒータのFH-G3215Y(コロナ製、2016年購入)の待機電力は0.8Wであり、業界の自主基準の1W以下を満たしています。ストック調査とフロー調査の待機電力はそれぞれ1.63W、0.62Wでした。

 ガス温水器RUF-VS2005SAU(リンナイ製、2017年購入)の待機電力3.0Wは、リモコンが2か所ついているので業界の自主基準4W以下を満たしています。ストック調査とフロー調査の待機電力はそれぞれ7.05W、3.89Wでした。ストック調査の数値は2008年以前に販売された製品も多いと想定されることから大きな待機電力になっているものと思われます。

 なお、石油ファンヒータとガス温水器の詳細については、以下を参照ください。
●コロナ FH-G3215Y:「ストーブ(3)-エアコンとの併用」
●リンナイ RUF-VS2005SAU:「ガス温水器(2)-ガス消費量の測定」

待機電力の削減による節電

 待機電力は省エネ基準の改定や業界の指導などにより大きく削減されてきました。そのため、最近購入した製品では待機電力をあまり気にしなくても良いと思われます。古い機器の待機電力が気になる方は、以下の方法に留意することで節電が可能です。

● 長年使っている待機電力が大きな機器(表-1を参照)はスイッチを切るだけでなく電源コードを抜いておくことで節電ができます。電源コードを抜き差ししなくても電源を停止できるテーブルタップ(写真参照)を使用することも有効です。

●ただし、電源を切るとテレビの番組表の受信のような維持管理のための操作が行えなくなる場合もあるので注意が必要です。また、電子レンジやIH調理器などはスイッチOFF後に冷却ファンが回っているので、直ぐに電源を抜くことはやめた方が良いです。
●家電製品は年々省エネ基準が厳しくなっており、新しい製品ほど待機電力が小さくなっていますので、機器を買い換えると待機電力が改善されます。特に、パソコンや複合機などの電子機器は省エネの効果が大きいと思われます。
●エアコン、テレビのようにリモコンを使って操作するものはスイッチOFFにしても待機電力は生じます。また、タイマーセットをする場合も待機電力は生じますので、主電源を切ったり、タイマー機能を使わないことも節電につながります。
●ガス温水器は複数のリモコン(浴室、キッチン等)によって操作されますが、現状でも比較的待機電力が大きいため、使用後はリモコンのスイッチをOFFにしておく(液晶表示部を表示させない)ことが節電につながります。
●パソコンや複合機はスリープモードへの移行を許可し、アイドリングモードからスリープモードへの移行時間を変えることで節電が可能になります。ただし、あまり短時間に設定すると復帰の際に電力が多くかかるので注意が必要です。

【付録】テレビの待機電力の測定結果

 以前、東芝REGZA(50インチと32インチの2種類)の待機電力を測定した結果を示しましたが、時間が経過するにつれて待機電力が変化することを発見しましたので、再度測定してみました。下図にその結果を示します。まず、REGZA 50BM620X(50インチ、4Kテレビ)はスイッチOFF後1時間程度20Wの待機電力が続き、その後0となりました。

 また、REGZA 32RI(32インチ)は下図に示す通りスイッチOFF後、25分程度20Wの待機電力が続き、その後0となりました。なお、ここでの測定は録画用のハードディスクは外して計測しています。また、録画予約は行っていない状態で計測しています。

 以前の報告(「液晶テレビ(2)-意外に大きい待機電力」)で、待機電力も含めた年間消費電力量を計算した結果を示しましたがそれは修正が必要になります。この報告ではテレビを使用していない時間を15時間とし、待機電力を26W(録画用ハードディスクの電力を含む)として計算しており、年間消費電力量569kWh、そのうち待機電力量は142kwhと計算されていました。

 今回の測定結果より年間の待機電力量を計算します。今回の計算では、ハードディスクの電力は含まないことにします。テレビを1日9時間視聴し(待機時間は15時間)、1日3回スイッチをON/OFFして、OFF後に1時間はテレビをつけない場合を想定します。スイッチOFF1時間後の待機電力をカタログ値の0.3Wと仮定すると、年間の待機電力量は以下となります。

 年間待機電力量=(20×3+0.3×12)×365=23,214Wh≒23kWh

<参考文献>
1)資源エネルギー庁:平成24年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書概要
2)関東電気保安協会:公式Webサイト、電気のお役立ち情報、待機時消費電力について
3)パナソニック:公式Webサイト、よくあるご質問、テレビの待機電力は?
4)日本ガス石油機器工業会:公式Webサイト、待機時消費電力削減目標を2008年度末に達成しました、2009年12月15日