Categories
情報通信機器

コンピュータ②-消費電力の測定

測定したパソコンの性能仕様

 今回は、パソコンの消費電力を測定してみましたので報告します。測定したパソコンはノートパソコンで下表の仕様となっています。Pスコア(動作周波数とコア数を乗じたもの)が8以上なので省エネ法の告示の区分は「区分12」になります(省エネ法告示の内容については、本サイトの「コンピュータのエネルギー消費効率」を参照ください)。

表-1 消費電力を測定したパソコンの仕様

    項  目  性 能 、 仕 様
メーカー名NEC
型番NX850/LAB (2018年発売モデル)
プロセッサ仕様インテルR Core i7-8750H
動作周波数2.2GHz(最大4.1GHz)
コア/スレッド数6コア/12スレッド
メインメモリ標準/最大容量8GB(4GB×2)/32GB
表示機能内蔵ディスプレイ15.6型ワイド フルフラットスーパーシャインビューLED IPS液晶
解像度1920×1080ドット
グラフィックプロセッサインテルR UHD グラフィックス 630
グラフィックメモリ約4GB
ストレージSSD/HDDSSD 約128GB(PCIe)+HDD 約1TB
BD/DVD/CDドライブブルーレイディスクドライブ(DVDスーパーマルチドライブ機能付き)
電 源リチウムイオンバッテリ(48Wh)またはACアダプタ
消費電力:標準/最大/スリープ時約12W/約90W/約0.4W
エネルギー消費効率12区分70.3kWh/年
出所)NEC LAVIE公式サイト、LAVIE Note NEXT(カタログモデル)の仕様について

消費電力の測定結果

 パソコン稼働時の消費電力の推移を下図に示します。最初の10分間はワードで文章の入力作業を行っており、平均して30W程度の電力を消費していますが、その変動幅は他に比べて小さくなっています。その後、30分程度休止した状態(アイドリング)では、電力消費量はやや少ないものの、15~35W程度の範囲で大きく変動していることが分かります。測定開始40分後からDVDの視聴を行うと、平均35W程度に上昇し変動幅も小さくなっています。その後、CDの視聴においてもDVDと同様のレベルの電力が消費されています(2分30秒程度の視聴)。その後は、ネットサーフィン(アイドリングも含む)を行っていますが、その変動幅は非常に大きくなっています。このようにアイドリングの状態でも比較的大きな電力を消費していることが分かります。スペックでは標準時消費電力12Wとなっているのでこの相違に注意が必要です。

NEC ノートパソコンNX850/LABを使ってワットチェッカーRS-WATTCH1で計測

 さらに、スイッチOFF後でも2.5~2.7W程度の電力を消費しています。本パソコンのスリープ時の消費電力は0.4W(表-1を参照)ですので、これはバッテリーを充電させるための電力かもしれません。また、電源のON、OFFの時の一時的な消費電力は非常に大きいものがあります。

 次に、パソコンのアイドリング、スリープ時の電力を計測しました。まずアイドリング状態が1分以上継続するとディスプレイの電源を切り、その後2分経過するとスリープ状態にする設定にして消費電力を測定した結果を下図に示します。1分経過後にディスプレイの電源が切れて画面が真っ黒になりますが、消費電力はやや低下したもののまだ10~20W程度で変動しています。さらに2分経過後にスリープ状態となり消費電力はほぼ0Wとなりました(スペックでは0.4Wと記載されていますが、本計測機器の測定範囲外です)。そして、スリープ状態から復帰させる際には比較的大きな消費電力が生じています(15Wから40Wの範囲で変動)。

NEC ノートパソコンNX850/LABを使ってワットチェッカーRS-WATTCH1で計測

省エネへの留意点

 これらの結果から分かることは、パソコンで作業をしていて席を離れるときは、ディスプレイの電源停止、スリープモード等を活用することで省エネを実現することができます。ただし、これらの作動時間までの間隔を短くすると、頻繁にディスプレイ電源が切れたり、スリープ状態になって作業が非効率的になりますので、適切な時間設定を行うことが必要です。

 また、さらに長時間席を外す場合は、スイッチOFFにした方が良いと思われますが、初めの図にもあったようにスイッチON、OFFには最大50~70W程度の電力を消費していました。このため、こまめに電源をON、OFFを繰り返すと、返って電力を消費してしまう可能性もあります。文献では90分以内であればスリープモードを使い(スイッチを切らない)、90分を超えるとスイッチを切ることが目安と書かれていますので、これも参考にしてください(マイクロソフト、Windows PCの節電方法)。

 ところで、ディスプレイの電源停止やスリープモードの設定もテレビの節電モードと同様大変分かりにくいものです。参考のため、私が使っているパソコンOSのwindows10の設定方法を以下に示します。画面左下「Windowsのマーク」→「設定」→「個人用設定」→「ロック画面」→「スクリーンタイムアウト設定」をクリックした後に出てくる「電源とスリープ」画面で、ディスプレイの電源停止とスリープまでの時間を設定することになります(下図)。

③設定画面で「個人用設定」をクリック
④個人用設定画面で「ロック画面」をクリック
⑤ロック画面で「スクリーンタイムアウト設定」をクリック
⑥電源とスリープ画面でディスプレイの電源を切る時間とスリープ状態にする時間を設定

測定した消費電力を用いた年間消費電力量の算定

 なお、今回の消費電力の測定結果を使って、経済産業省の告示に示されたJIS C 62623:2014「パーソナルコンピュータの消費電力測定方法」に記載されている方法3)でこのノートパソコンの年間消費電力量を計算してみます。以下の計算はJIS C 62623: 2014、「5.6.2 推定値による年間消費電力量の計算式(推定有効作業負荷)」を用いて簡易的に計算したものです。JISでは厳格に測定条件を定めていますので、ここでは算定方法のみを参考にしてください。なお詳細については本サイトの「コンピュータのエネルギー消費効率」をご参照ください。

 年間消費電力量は以下のように算定されます。下の式のPxはパソコンの各モード時の消費電力、Txは各モード別の使用時間の年間比率です。

 E=(8760/1000)×[Poff×Toff+Psleep×Tsleep+Pidle×Tidle+Psidle×(Tsidle+Twork)]
 100%=Toff+Tsleep+Tidle+Tsidle+Twork
 E:年間消費電力量(kWh/年)
 Toff :製品がオフモードに費やす時間の年間比率
 Tsleep:製品がスリープモードに費やす時間の年間比率
 Tidle:製品がオン状態でありロングアイドルモード(画面表示なし)である時間の年間比率
 Tsidle:製品がオン状態でありショートアイドルモード(画面表示あり)である時間の年間比率
 Twork:製品がオン状態でありアクティブモード(画面表示あり)である時間の年間比率
 Poff:オフモードにおける平均消費電力測定値(W)
 Psleep:スリープモードにおける平均消費電力測定値 (W)
 Pidle:ロングアイドルモードにおける平均消費電力測定値 (W)
 Psidle:ショートアイドルモードにおける平均消費電力測定値 (W)

 ここで、JIS 62623:2014ではTxの比率の推奨値を設定しており、それを使うと算定式は以下となります。

 E=8.76×(Poff×25%+Psleep×35%+Pidle×10%+Psidle×30%)

 この式に、今回測定したPxを入れることでEが以下のように算定されます。 

 Poff=0 (想定値)
 Psleep=0.4 (スペック値)
 Pidel=15 (上図の「測定開始1分後から2分後まで」の概算平均値)
 Psidle=20 (上図の「測定開始2分30秒から4分30秒後まで」の概算平均値)

 E=8.76×(0×25%+0.4×35%+15×10%+20×30%)
  =66.9 kWh/年≒70.3 kWh/年 (スペック値)

 Pxについては、かなり簡易な測定による消費電力値を用いましたが、算定結果は66.9kWh/年となり、スペック値の70.3kWh/年(表-1参照)と近似した値となっています。JISの規格ではPxを与えられた条件で正確に測定したものを用いるのですが、今回の簡易的な測定方法でも比較的近い値が得られるということが分かります。

まとめ

 今回はパソコンの消費電力を実際に測定しました。対象としたパソコンはNECのノートパソコンNX850/LAB(2018年発売モデル)です。スペックでは標準消費電力が12Wとされているのですが、実際の稼働中の消費電力は、ワード入力作業では30W前後、 DVDやCDの視聴では35W程度の電力を消費しています。

 また、アイドリング時でも15~30 W程度の電力消費となっていますので、注意が必要です。そのため、作業を中断する場合にはスリープモードなどを活用することが有効です。スリープモードはスペックに示されている通り、非常に低い消費電力となっています(このパソコンでは0.4W)。ただし、これらの作動時間までの間隔を適切な時間設定を行うことが必要です。

 なお、パソコンのスイッチON、OFF時には比較的大きな電力を消費するので、席を離れている時間が90分以内であればスリープモードを使い(スイッチを切らない)、90分を超えるとスイッチを切ることが省エネの目安とのことです。

<参考文献>
1) NEC LAVIE公式サイト、LAVIE Note NEXT(カタログモデル)の仕様について
https://shop.nec-lavie.jp/navigate/products/pc/183q/10/lavie/nx/spec/
2)マイクロソフト、WindowsPCの節電方法
https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/windows-7/guide/setsuden02.aspx
3)日本工業規格JIS C 62623:2014「パーソナルコンピュータの消費電力測定方法」