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エアコン②-製品の省エネ評価

エアコン製品の多機能化

 エアコンは近年の需要者のニーズの多様化に対応して、機能の高度化、多機能化が進んできました。単に冷暖房の効果(エネルギー消費効率)だけでなく、フィルターの自動洗浄などのメンテナンスフリーや、PM2.5や花粉などの浮遊粒子の除去(吸着、排出)または無害化、換気しながらの冷暖房、さらにセンサーを利用して人体、部屋全体の温度を感知しながら快適な温度、湿度を保つ機能などがあります。

 エアコンは稼働しているうちにフィルターが目詰まりしてくるためその除去が必要になり、目詰まりしたままの状態で運転すると冷暖房効率が悪くなり、電力費が無駄にかかってくることになります。そのため、フィルターの目詰まりを防止する機能を付加するエアコンも出ています。また、単に目詰まり防止だけでなく、凍結して付着した菌やウイルス、ほこり、カビを溶かして洗い流すものもあります。

 また最近ではエアコンに空気清浄装置や除菌といった機能を付加しているものも多くなりました。PM2.5のような浮遊粒子や花粉(0.1μmの粒子)も除去できるものや、健康イオンを出して美肌・美髪効果をうたう機器もあるようです。さらに、換気しながら冷房、除湿できるものもあります。

 センサーを用いた快適性の向上を図る機能もあります。これは、複雑な温度と湿度の制御になるため、どのメーカーもAIを用いたソフトを利用しているようです。この快適性の機能については、前回の報告(エアコン①-省エネ性能)に示していますので、参考にしてください。このようにエアコンの多機能化が進んでいますが、快適性や利便性と省エネ性能の両方を賢く判断しながら製品を選択していくことが必要です。

販売されている製品の省エネ評価

 本サイトは省エネを目的としたサイトなので、エアコンの消費電力に着目して、実際に製造、販売されている製品の省エネ性能を評価していこうと思います。資源エネルギー庁の省エネポータルサイトからエアコン製品毎の消費電力についての情報を以下に整理します。このサイトには2007年から2021年に製造・販売されたエアコン製品の省エネ情報が記載されていますが、ここでは2020年と2021年に登録された製品を対象に集計します。

 エアコンの種類は冷房の能力に応じて、2.2kWから9.0kWまで10段階ごとに製品がラインナップされています。エアコンの冷房能力別APF(通年消費効率)別の製品数の割合を下表に整理しました。APFはエネルギー消費の効率性を表し、数値が大きいほど効率的な機器を示します(APFの説明については、前回の報告「 エアコン①-省エネ性能」 を参照してください)。

 下表には冷房能力APF値製品数の割合を示しています。同表の最下欄に能力別の製品総数を示していますので、APF値ごとの製品数も計算することができます。同表を見ると、エアコンの冷房能力が低いほどAPF値は高い傾向があります。冷房能力2.2から2.8kWの機種では、APFが5.8が最低で、そのうえ最も製品数が多くなっています(どの能力も5割以上)。冷房能力3.6から6.3kWはAPFが4.9が最低ラインであり、冷房能力7.1kWの機種は4.5まで低下している製品があります。前回の報告にも示したAPFの省エネ基準値以上にするように製品をラインナップしているようです。

 一方、各冷房能力においてAPFが非常に高い製品もあります。APFが7を超える製品が全部で147製品あり、特に冷房能力4.0kWが57製品(このランクの18%)と最も多くそろえています。トップランナー制度のAPF基準値が最も低い4.0kWの冷房能力において、APFの値が高い製品をそろえていることに少し違和感を覚えます。

表-1 エアコンの冷房能力別、APF値別の製品数

出所)資源エネルギー庁 、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「エアコン」(閲覧日2021年7月30日)の登録データから集計

 次に、2020年と2021年に登録されたエアコンを対象に、2.2kW(鉄筋コンクリートの住居で6畳間用)と5.6kW(18畳間用)の2種類のエアコンについて各メーカーの製品の省エネ性能(ここでは多段階評価値)をまとめます。多段階評価の星の数が示す省エネ基準達成率は省エネラベリング制度で統一基準が示されており、下表に示すとおりです(省エネラベリング制度についてはこのサイトの「小売事業者の省エネ表示制度」を参考にしてください。なお、省エネ基準達成率は以下のように算定されます。

  省エネ基準達成率=当該エアコンのAPF/エアコンの能力別基準APF×100

表-2 エアコンの多段階評価値の省エネ基準達成率

  多段階評価省エネ基準達成率
★★★★★121%以上
★★★★114%以上121%未満
★★★107%以上114%未満
★★100%以上107%未満
100%未満
出所)2006年経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」、最終改定2020年経済産業省告示第243号

 2.2kWエアコンについて多段階評価別(5つの星で評価)の製品数をメーカー別に集計したものを下表に示しています。この表からは、例えばアイリスオーヤマは全ての製品が2つ星であることが分かります。他のメーカーも2つ星、4つ星が多くなっています。パナソニックと日立は5つ星の製品も提供しています。

表-3 2.2kWエアコンの多段階評価別の製品数

出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「エアコン」(2021年7月30日閲覧)のデータより2.2kWエアコン製品を集計

 下表は5.6kWエアコンについての多段階評価別製品数の集計結果です。こちらは、2つ星の製品の数が最も多いものの、2.2kWのエアコンではあまりなかった5つ星の製品も多くのメーカーから提供されています。これは、エアコンの能力によって省エネ基準が異なっているためと考えられます。すなわち、2.2kWのエアコンの省エネ基準はAPFが5.8に対して、5.6kWのそれは5.0と設定されています(詳細は「エアコン①-省エネ性能」を確認ください)。そのため、同じAPFの場合でも、能力の小さなエアコンの省エネ基準達成率は小さくなり、その結果多段階評価値も低くなってしまうのです。

表-4 5.6kWエアコンの多段階評価別の製品数

出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「エアコン」(2021年7月30日閲覧)のデータより5.6kWエアコン製品を集計

省エネエアコンの購入補助

 省エネ性能の高い製品は高額である場合が多いですが、高い省エネ製品に対して補助金を出して購入を促進している場合があります。

 東京都では省エネタイプの家電製品を普及させるため、「家庭のゼロエミッション行動推進事業」を実施しています。これは 、設置済みのエアコン・冷蔵庫・給湯器を、省エネ性能の高い製品に買い換えた都民に対して、東京ゼロエミポイントを付与し、ポイント数に応じた商品券とLED割引券を交付する事業です3)

 この事業では4つ星以上のエアコンに対してゼロエミポイントを付与しており(例えば冷房能力2.2kWの場合は12,000ポイント、2.4kW~2.8kWは15,000ポイントなど)とLED割引券(1,000円分)を提供しています(本事業は2022年3月まで延長されています)。

まとめ

 エアコンは需要者のニーズの多様化によって高機能化、多機能化されてきています。自動洗浄などのメンテナンスフリーや、PM2.5や花粉などの除去機能、換気しながらの冷暖房、センサーによる快適な温度、湿度を保つ機能などです。快適性や利便性と省エネ性能の両方を賢く判断しながら製品を選択していくことが必要です。

 エアコンの省エネ性能はAPF(通年エネルギー消費効率)によって判断できます。エアコンの基準エネルギー消費効率は能力(処理できる熱量負荷で、kWで表される)によって変わっていますので、多段階評価値はその影響を受けて変化することに留意する必要があります。そのため、購入にあたっては多段階評価値は同種の能力を持つ機種の比較に用いるべきで、異なる能力の機種の省エネ性の比較にはAPFを参考にすべきです。

 エアコンは高価な家電製品ですので、省エネ家電機器の購入補助制度も利用することをお勧めします。東京都では省エネタイプの家電製品を普及させるため、「家庭のゼロエミッション行動推進事業」を実施し 、設置済みのエアコン・冷蔵庫・給湯器を、省エネ性能の高い製品に買い換えた都民に対して、東京ゼロエミポイントを付与し、ポイント数に応じた商品券とLED割引券を交付する事業を実施中です( 本事業は2022年3月まで延長されています) 。

<参考文献>
1)経済産業省資源エネルギー庁、「省エネ型製品情報サイト」、「エアコン」、2021年7月30日閲覧、https://seihinjyoho.go.jp/
2)経済産業省資源エネルギー庁、家庭向け省エネ関連情報、統一省エネラベル、https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/replacement/enelabel/
3)東京都、東京ゼロエミポイント、
https://www.zero-emi-points.jp/system/index.html