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LED照明②-照明器具の省エネ性能

LED照明器具で暮らしを豊かに

 ここで対象とするLED照明器具とはLED電球とは異なるものです。シーリングライトやペンダントなどの部屋全体を照らすものを指します。資源エネルギー庁の告示でも、「電球」と「照明器具」を分けて基準エネルギー消費効率を設定しています(本サイトの「エネルギー消費機器のトップランナー制度と省エネラベリング制度」を参照してください)ので、ここではその「照明器具」を対象とします。LED電球については、前回の報告(「LED照明①-省エネ性能」)に示していますので 今回は省エネ法に言う「照明器具」の省エネ性能を見ていきます。

 日本照明工業会では「あかりの未来へ」とのキャッチ・フレーズで「LED照明によって暮らしを良くする」ことを謳っています1)。同工業会によると、LED照明によって、居住空間の快適性、利便性、安全性、さらには人の健康を向上させることもできると書かれています。省エネを離れて少しその内容について説明してみます(以下日本照明工業会からの引用です)。

 まず「快適性」については、現代人は屋内で過ごす時間が長くなり、自然な光を受けることが少なくなっています。そのため自然の光に近い刺激に近づけることが快適性につながると考えられているそうです。人間は朝太陽の光で目覚め、夜暗くなると眠るという生活を続けてきたことで、目から入った光が脳に信号を送り、人のリズムを形成し、それがホルモン分泌や体温調節、代謝など身体全体の機能維持に関わるとともに、その乱れは睡眠や認知能力にも影響を及ぼすとのことです。

 この自然の光を再現するために、朝は「明るめの昼光色を全身に浴びて爽やかな気分で起床」、午前~午後は「昼光色や昼白色ですっきりした気分の中で仕事や・勉強」を、夕方~夜間は「温白色から電球色へ調色・調光し、くつろぎ感を」、就寝前は「電球色で明るさを抑え、落ち着いた感じ」がおすすめとのこと。

出所) 一般社団法人日本照明工業会ホームページ、「明かりの未来へ」、LED照明ナビ
https://www.jlma.or.jp/led-navi/index.htm

 次に、「利便性」ですが、最近では音声を認識して点灯・消灯するLED照明やスマートスピーカー等と連携することで利便性を高めます。また、人感センサー付きのLEDは公共のトイレなどに設置されることが多くなってきましたが、家庭の玄関、廊下、トイレ、キッチン、ガレージなどに設置して、消し忘れを防止することで節電機能を高めます。

 さらに、「安全性」については、災害時の停電時に照明がつく設備が開発されており(住宅用非常灯)、平常時は消灯して充電し、停電時に点灯して安全な生活を守るのだとか。また、最近のコロナ感染症蔓延の時代において、光による消毒機能を持たせるということも議論され始めています。現在のところ、UVの人間への安全性を第一にすべきとの議論されているようであり、安全で効果的なUV-LEDやUVを用いない一般光の利用など、今後効果的な機器への模索が進められていくものと思われます。

LED照明器具の省エネ基準

 LED照明器具は、2019年度に省エネ法施行令が改正になり、それまで蛍光灯のみの対象となっていたトップランナー制度に対象として加わりました(LED電球については2013年度以降に対象)。そして、省エネ指標としてのエネルギー消費効率を、これまで消費電力量あたりの「照明器具の光源の明るさ(全光束)」としていましたが、新たな基準では消費電力量あたりの「照明器具の明るさ(照明器具全光束)」に変更になりました2)3)。これを固有エネルギー消費効率と呼んでいます。

 具体的には蛍光灯の場合のみ「照明器具の明るさ」は、「照明器具の光源の明るさ(全光束)」に「器具効率」を乗じて算定することになりました。LED照明器具はこれまで通り、光源の明るさ(全光束)を消費電力で除して算定されます。光源色の区分別の基準固有エネルギー消費効率は以下の通り、光源色により基準値が大きく異なっています。電球色や温白色は基準固有エネルギー消費効率 が50lm/Wであり、他の光源色は100lm/Wとなっています。

表-1 光源色区分別の基準固有エネルギー消費効率(省エネ基準)

区分番号  光源色区分基準固有エネルギー
消費効率(lm/W)
目標年度
  1昼光色・昼白色・白色  100.02020年度以降の各年度
  2温白色・電球色   50.02020年度以降の各年度
出所)1999年通商産業省告示第191号(廃止・制定)「照明器具のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号

 照明器具の種類は、シーリングライト、ペンダント、ダウンライト、スポットライトなど多数がありますが、中心はシーリングライトとペンダントです。

 省エネ基準達成率は製品のエネルギー消費効率を基準固有エネルギー消費効率で除して算定されます。この式から、光源色によりこの数値は大きく異なることが想定されます。

  省エネ基準達成率=エネルギー消費効率基準固有エネルギー消費効率×100

 一方、多段階評価点は下表のように計算されます4)。この算定式にある通り、多段階評価比率は製品ごとのエネルギー消費効率を光源色に関わらず50で割って求めた値であるため、これを用いて算定される多段階評価点は光源色に関係なく評価できるものになっています。

表-2 照明器具の多段階評価点の算定方法

多段階評価点の算定方法多段階評価比率の算定方法
(1)多段階評価比率が100未満の場合
 Y=2+1/13×(X-100)
 Y:1未満の場合は1.0とする
 X=E/EM×100
 EM:50(単位:lm/W)
(2)多段階評価比率100以上の場合
 Y=2+2.5/164×(X-100)
 Y:5を超える場合は5.0とする
E=測定したエネルギー消費効率(lm/W)、EM:50(lm/W)、Y:多段階評価点、X:多段階評価比率
出所)2006年経済産業省告示第258号「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」(制定)、最終改定2020年経済産業省告示第243号

 そのため、省エネ基準達成率と多段階評価点とが若干異なる傾向にあることに留意しましょう。具体的な例として、下表に示す2つの製品を比較してみました。電球色の機種名AH48943Lはエネルギー消費効率は101.6lm/W、省エネ基準達成率は203%、多段階評価点は3.5です。一方、昼光色の機種名CL8D-TOはエネルギー 消費効率は111lm/W、省エネ基準達成率111%、多段階評価点3.8です。両者を比較すると、省エネ基準達成率は前者の方が大幅に高いのに、多段階評価点は低くなっています。その理由は前述の通りです。

表-3 省エネ基準達成率と多段階評価点の具体例

メーカー機種名光源色全光束
(lm)
消費電力
(W)
エネルギー消費
効率(lm/W)
省エネ基準
達成率(%)
多段階
評価点
コイズミAH48943L電球色4,02539.6101.62033.5
アイリス
オーヤマ
CL8D-TO昼光色4,00036.0111.01113.8
出所)経済産業省資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(2021年8月14日閲覧)

販売されている製品の省エネ評価

 ここでは、資源エネルギー庁の「省エネ型機器情報サイト」からLED照明器具の製品のデータを整理しました5)。まず、シーリング製品について、全光束別の製品数を下図に示します。なお、全光束の大きさと対応する部屋の広さの目安は下表の通りです。

表-4 全光束と部屋の広さの目安

2700lm未満2700lm以上
3300lm未満
3300lm以上
4300lm未満
4300lm以上
4900lm未満
4900lm以上
5600lm未満
5600lm以上
7000lm未満
7000lm
 以上
 4.5畳  6畳  8畳  10畳  12畳  14畳  16畳
出所)一般社団法人日本照明工業会、「LED照明器具の適用畳数について」を参考に設定。

 この図から、全光束「3300以上4300lm未満」(8畳の広さが目安)の製品数が最も多く、次いで「4900以上5600未満」(12畳が目安)が次に多いことが分かります。また、光源色区分では、昼光色が最も多く、次いで昼白色、電球色、白色の順です。ただし、多くの製品が調色機能を有していますので、光源色区分が「昼光色」であったとしても、調色機能がついていれば、電球色や昼白色などにも調整ができるものと思われます。

出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(2021年8月14日閲覧)より、シーリング製品を集計。

 そこで、調色機能の有無を光源色別に整理したのが下図です。光源色が白色のものは全ての製品で調色が可能であり、他の光源色についても全光束が「2700lm未満」は調色ができない製品ばかりですが、全光束が大きくなると調色が可能な製品が多くなっています。

出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(2021年8月14日閲覧)より、シーリング製品を集計。

 販売されているシーリングライトの全光束ランク別の平均エネルギー消費効率を下図に示します。電球色のエネルギー消費効率が若干低い傾向にありますが、どの光源色も概ね100から140lm/Wの範囲にあり、全光束が大きくなると平均エネルギー消費効率が大きくなるような傾向にあります。

出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(2021年8月14日閲覧)より、シーリング製品を集計。

 同様にペンダントについても、全光束ランク別の製品数を下図に示します。電球色は全光束が「2700lm未満」がほとんどで、他の光源色はシーリングライトと同じで全光束が「3300以上4300未満」(8畳の広さが目安)の製品数が最も多くなっています。

出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(2021年8月14日閲覧)より、ペンダント製品を集計。

 次に、最も製品数の多い昼光色の全光束ランク「3300以上4300lm未満」(8畳の広さが目安)の製品について、メーカー別のエネルギー消費効率を比べてみました。全体的にエネルギー消費効率が「110-120lm/W」、「120-130lm/W」、「130-140lm/W」の製品が多い傾向にあります。特に、パナソニックは150lm/W以上の製品を18種類もラインナップしていて、省エネタイプに力を入れているように思われます。

表-5 メーカー別のエネルギー消費効率別の製品数

出所)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(2021年8月14日閲覧)より、シーリング製品で、昼光色、全光束が「3300以上4300lm未満」の製品について集計。

まとめ

  LED照明器具はシーリング、ペンダント、ダウンライトなどの生活空間の役割に応じて異なった種類の照明が販売されています。部屋の広さと部屋の役割によって全光束(明かりの強さ)や光源色を選ぶことが大切です。現在販売されている製品には光源色を変えることができるものも多く、生活のリズムに合わせた調光も可能です。

 省エネ性能については、製品によってエネルギー消費効率が40%程度の幅があるため、高い省エネ性能をもつ製品を選ぶことも重要です。また、電球色は若干エネルギー消費効率が低い傾向にありますので、寝室などのように明かるい光を要しない部屋で電球色のLED照明を選ぶことが有効です(寝室はあまり長時間の点灯はないものと思われます)。

 また、電球色や温白色は基準固有エネルギー消費効率 が50lm/Wであり、他の光源色は100lm/Wとなっています。そのため、光源色別に省エネ基準達成率は大きな相違が出てきます。一方、多段階評価値は基準固有エネルギー消費効率には関係なく算出されるため、光源色に関係なくエネルギー消費効率がそのまま反映される数値になっています。従って、これらの点に注意して省エネ製品を購入するようにしてください。

<参考文献>
1)一般社団法人日本照明工業会ホームページ、「明かりの未来へ」、LED照明ナビ
https://www.jlma.or.jp/led-navi/index.htm
2)1999年通商産業省告示第191号(廃止・制定)「照明器具のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
3)資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、機器・建材トップランナー制度について、日本語版パンフレット
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/equipment/toprunner/03_shoumeikigu.html
4)2006年経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」、最終改定2020年経済産業省告示第243号
5)経済産業省資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「照明器具」(2021年8月14日閲覧)、https://seihinjyoho.go.jp/