LED照明の仕組み
高い省エネ性能として良く宣伝されているのが、LED照明です。LEDとは発光ダイオード(light emitting diode: LED)のことで、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子のことです1)。これを照明として利用したのがLED照明です。
LEDの発光の仕組みを下に示します。LEDの発光部には半導体(電気を通す導体と、通さない絶縁体の間に位置するもの)が使われており、電気の(+)が動くp型半導体と(-)が動くn型半導体を合わせて通電することで(+)と(-)が衝突し接合面が発光します(下図)。
p-n接合部では電子がエネルギーの高い伝導帯からエネルギーの低い価電子帯に落ちることによっておこります。このエネルギー差が大きいほどよりエネルギーの高い光(波長の短い光)が放出されます。エネルギー差は半導体の材料で異なっていますので発光させたい色に合うエネルギー差の材料を選んで発光ダイオード(LED)を作ります。
LEDの開発の歴史を以下に示します。赤色LEDや黄色LEDは1972年ころまでに開発され、主として信号などの明かりとして利用されてきました。1990年代に入って青色LEDや緑色LEDが開発され、光の三原色がそろうことで白色LEDが実用化されたのは1997年です。そのため、比較的新しい照明材料ということができます。
表-1 LED開発の歴史
西暦年 | 開発内容 |
---|---|
1962年 | 赤色LEDの開発 |
1972年 | 黄色LEDの開発 |
1993年 | 青色LEDの開発 |
1995年 | 緑色LEDの開発 |
1997年 | 白色LEDの開発 |
LED照明の省エネ性能
下に様々なLED照明の製品を示しています。白熱電球を代替するLED電球に加えて、円形の蛍光灯に代わってLEDシーリングライトが、直管の蛍光灯に代わってLED直管蛍光灯などが開発されてきました。
LED電球と白熱電球、蛍光灯の比較をする際に、これまで使われていた40W、60W電球という「明るさを示していた言葉」は、消費電力が異なる製品間では比較にならないので、現在は全光束(lm:ルーメン)という言葉で表されます。ルーメンはある面を通過する光の明るさを表す物理量です。これまでの一般的な白熱電球とLED電球の全光束との関係を下表に示します。これまで使ってきた40形(W)は485lm、60形(W)は810lm、100形(W)は1,520lmの明るさに対応しています。
表-2 一般電球とLED電球の全光束の関係
No. | 一般電球 | LED電球の全光束 |
---|---|---|
1 | 20形 | 170lm以上 |
2 | 30形 | 325lm以上 |
3 | 40形 | 485lm以上 |
4 | 60形 | 810lm以上 |
5 | 80形 | 1,160lm以上 |
6 | 100形 | 1,520lm以上 |
同じ全光束を持つ3種の照明について、エネルギー効率、寿命、価格を比較したものを下表に示しています3)。810lmの明るさのLEDの消費電力は7.2W、白熱電球(54W)の約13%、蛍光灯(12W)の60%となっています。下表ではエネルギー消費効率として全光束を消費電力で除した値を使っています(単位はlm/W)。白熱電球のエネルギー消費効率は15lm/Wに対してLED電球のそれは112.5lm/Wです(後に示すようにこれは参考文献に示された当時の値であり、現在はこれより大きな消費効率を示すLED電球もあります)。
また、LEDは長寿命と言われており、白熱電球の約1,000~2,000時間、蛍光灯の約6,000~12,000時間に対し約40,000時間とされています。LEDの欠点として価格が高いことが挙げられていましたが、近年では価格も低下してきており、買い替えるのに抵抗は少なくなっています。
表-3 LED電球と他の電球との比較
白熱電球 | 電球形蛍光ランプ | LED電球 | |
---|---|---|---|
写真 | |||
エネルギー消費効率 | 15 lm/W (54W、810lm) | 67.5 lm/W (12W、810lm) | 112.5 lm/W (7.2W、810lm) |
寿命 | 1,000~2,000時間 | 6,000~12,000時間 | 40,000時間 |
価格帯 | 100円~200円 | 700~1,200円 | 900~1,700円 |
このほかにLEDの特徴として、電圧の変動に対する光束、消費電力、寿命への影響が少ないこと、蛍光灯と違って点灯後すぐに100%の光束となることが挙げられています。また、LEDの光は指向性があるため光の広がりは比較的狭くなること、周囲温度が高くなるとLEDの光束が低下するなどの特徴も有しているようです2)。
政府は新成長戦略(2010年6月18日閣議決定)及びエネルギー基本計画(2010年6月18日閣議決定)で、グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略の柱の一つとして、高効率次世代照明(LED照明、有機EL照明)を2020年までにフローで100% 、2030年までにストックで100%普及させる目標を掲げています3)。つまり、2030年には日本中にある全ての照明がLED等の高効率次世代照明に置き換わることを意味します。既に白熱電球の生産は中止しており、蛍光灯の生産を中止したメーカーもあります。
また、産業用・業務用等を中心として普及していた水銀灯も2021年の水俣条約の批准により生産と輸出入を中止することになりましたので、水銀灯も急速にこれらに置き換わっていくことでしょう。
LED電球の価格も2009年の販売価格約6,000円から3年で1/3以下になり、現在では1,000円以下の低価格LED電球も販売されています。
LED電球の省エネ基準
LED電球については、2013年度にトップランナー制度の対象機種となりました(目標年度2017年度)。この時は一部の種類、形状が対象でしたが、その後2019年に新たな省エネ基準が施行され(目標年度2027年度以降)、特殊なものを除いてほぼ全部のLED照明が対象になりました。
LED電球のエネルギー消費効率は先程説明した「全光束を消費電力で除した値(lm/W)」を使っています。そして、経済産業省の告示で示されたエネルギー消費効率の基準は下表の通りです4)。下表に示す通り、LED電球の光源色によって基準エネルギー消費効率が異なっていることは注意が必要です。区分番号1の「昼光色・昼白色・白色」は基準エネルギー消費効率は110lm/Wですが、 区分番号2の「温白色・電球色」のそれは 98.6lm/Wです。
表-4 光源色区分別の基準エネルギー消費効率
区分番号 | 光源色区分 | 基準エネルギー 消費効率(lm/W) | 目標年度 |
---|---|---|---|
1 | 昼光色・昼白色・白色 | 110.0 | 2027年度以降の各年度 |
2 | 温白色・電球色 | 98.6 | 2027年度以降の各年度 |
また、省エネ基準達成率は製品のエネルギー消費効率を基準エネルギー消費効率で除して算定されます。この式から、光源色によりこの数値は異なってくることが想定されます。
省エネ基準達成率=エネルギー消費効率/基準エネルギー消費効率×100
販売されている製品の省エネ評価
次に、現在販売されているLED電球について資源エネルギー庁の省エネ型製品情報サイトのデータから省エネ基準の達成状況を整理してみました5)。
まず、代表的な5つの全光束(440lm、485lm、760lm、810lm、1520lm)の製品について、光源色区分を区別せずに、エネルギー消費効率の階級別の製品数を集計したものが下図です。
この図からエネルギー消費効率が「110以上120lm/W未満」の製品が最も多い傾向にあります。ただし、全光束760lmは「120以上130lm/W未満」が最も多く、全光束1520lmは「130lm/W以上」が最も多くなっています。全光束810lm及び1520lmの製品の中にはエネルギー消費効率が130lm/Wを超えている製品が18製品あります。
次に、最も製品数が多い全光束810lmの製品について、光源色区分別の集計をしたものを下図に示します。光源色区分1「昼光色・昼白色・白色」はエネルギー消費効率が「110以上120lm/W未満」が最も多いですが、光源色区分2「温白色・電球色」はエネルギー消費効率が「100以上110lm/W未満」が最も多くなっており、「130m/W以上」の製品はありません。
さらに、エネルギー消費効率を基準エネルギー消費効率で除した省エネ基準達成率の製品数を集計したものが下図です。これを見ると、ほとんどの製品は100%以上であり、100%未満の製品は27製品のみで、全体(352製品)の8%程度ですので2027年には達成できるものと思われます。
まとめ
本報告では、省エネ性能が高いと言われるLED照明についてとりまとめを行いました。LED電球は白熱電球の約13%、蛍光灯の約60%の消費電力となっています(全光束810lmの電球を比較)。寿命も長く(40,000時間)、最近は価格も低下してきているため、費用効果は非常に高いものがあります。そのため、国としても照明をLEDに移行していく計画を持っており、2030年にはストックとして100%を目指しています。
現在、販売されているLED電球の省エネ基準は光源区分1「 昼光色・昼白色・白色 」はエネルギー消費効率110lm/W、 光源区分2「 温白色・電球色 」はエネルギー消費効率98.6lm/W です。製品によっては大きなばらつきがあり、エネルギー消費効率が 130lm/W以上を示すものがあるなど、省エネ性能が向上してきています。
そのため、LED照明についても製品ごとの省エネ性能が異なることを認識して、製品に記載された情報を基に選ぶことが必要です。その場合、より正確に省エネ性能を把握するには、省エネ基準達成率を見るときは同じ光源色のものを比較するときにすべきであり、異なる光源色のものの比較はエネルギー消費効率を見ることが重要です。
<参考文献>
1)フリー百科事典「ウィキペディア」(LED照明), https://ja.wikipedia.org/wiki/LED%E7%85%A7%E6%98%8E
2)一般社団法人日本照明工業会、電球形LEDランプガイドブック、第2版
3)経済産業省、商務情報政策局 情報通信機器課、LED照明産業を取り巻く現状、2012年11月29日
4)2003年経済産業省告示第235号(制定)「電球のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最新改定2019年経済産業省告示第46号
5)経済産業省、資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、「電球」(閲覧日2021年8月12日)、https://seihinjyoho.go.jp/