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温水洗浄便座

温水洗浄便座①-省エネ性能

温水洗浄便座の仕組み

 温水洗浄便座(シャワートイレ、ウォシュレットなどの呼称がある)については、経済産業省の特定エネルギー消費機器に「電気便座」が含まれており、省エネ型機器のトップランナー制度の対象です。相当量の電力を消費し、かなり普及してきているためと思われます。資源エネルギー庁の「省エネポータルサイト」では、温水洗浄便座の世帯普及率が80%に達していると書かれています。

 同ポータルサイトの「省エネ性能カタログ(家庭用)2020年版」には最近の温水洗浄便座の省エネルギー性能が示されています1)。温水洗浄便座には貯湯式と瞬間式の2種類があり、その特徴を下表に示します。貯湯式は貯湯タンクにためた水をヒーターで温める方式であり、瞬間式は瞬間湯沸かし器で温める方式です。

表-1 温水洗浄便座の種類と特徴

 項 目    貯湯式   瞬間式
イメージ図
特  徴タンクの中の水をヒーターで温める方式で、一度にたっぷりの温水で洗浄することができますが、温水を保温するための電力が必要となります。タンクがなく、使用の度に水を瞬間湯沸器で温めます。温水を保温する電力は不要のため、"貯湯式"より消費電力は小さくなりますが、温水の量が限られます。また瞬間的に大きな電力を必要とします。
出所)資源エネルギー庁、省エネ性能カタログ(家庭用)、2020年版

 資源エネルギー庁の資料より温水洗浄便座の消費電力量の推移を以下に示します。この10年間でどの機種も10~15%程度の省エネが行われていることが分かります。最新の温水洗浄便座の年間消費電力量(全製品の平均値)は貯湯式は165kWh/年(節電使用時)ですが、瞬間式は88kWh/年と約半分の電力量となっています。ただし下図の通り、ここ5年程度は瞬間式の消費電力量の省エネ化はかなり難しくなっているように思われます。

出所)2010年から2019年までは省エネ性能カタログ(家庭用)2020年版、2020年は省エネ性能カタログ電子版2020年12月1日版を使用
出所)2010年から2019年までは省エネ性能カタログ(家庭用)2020年版、2020年は省エネ性能カタログ電子版2020年12月1日版を使用

温水洗浄便座の省エネ基準

 省エネ法の施行規則で決められている温水洗浄便座(省エネ法では「電気便座」と呼んでいます)のエネルギー消費効率は、年間消費電力量です。そして、省エネルギーの判断基準は経済産業省の告示(「電気便座のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」)に示されています2)。詳細は本サイトの「温水洗浄便座のエネルギー消費効率」に示していますので、ここでは基準エネルギー消費効率(年間消費電力量)が、貯湯式は183kWh/年、瞬間式は135kWh/年であることのみを記載しておきます(目標年度が2012年度以降のもの)。

 <電気便座の基準エネルギー消費効率:基準年間消費電力量>
 ・貯湯式:183kWh/年
 ・瞬間式:135kWh/年

この基準に基づいて製品別の省エネ基準達成率が算定されます。

 省エネ基準達成率=基準年間消費電力量/当該製品の年間消費電力量×100

 なお、製品の年間消費電力量の測定方法についても詳細は省略しますが、概略は以下の3種類の電力消費箇所における消費電力量を、節電した場合の消費電力量を加味して年間消費電力量が計算されています。
① 温水加熱部
② 便座部
③ 制御及び操作部

 次に、エネルギー消費機器の多段階評価点の算定方法は経済産業省の告示(「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」)に示されており、温水洗浄便座の 多段階評価点の算定方法は 以下の通りです3)

 下表に示すように、多段階評価比率を基に多段階評価点を算出するのですが、多段階評価比率は183kWh/年(貯湯式の基準年間消費電力量と等しい値)を当該製品の年間消費電力量で除して算定することになっており、省エネ基準達成率とは異なる評価方法になっています。すわなち、貯湯式、瞬間式の区別はせずに、多段階評価点を計算する方式となっています。

表-2 多段階評価点の算出方法

多段階評価点の算定方法多段階評価比率の算定方法
(1)多段階評価比率が100未満の場合
 Y=2+1/10×(X-100)
 Y:1未満の場合は1.0とする
 X=EM/E×100
 EM:183(単位:kWh/年)
(2)多段階評価比率100以上の場合
 Y=2+2.5/173×(X-100)
 Y:5を超える場合は5.0とする
E=測定したエネルギー消費効率(kWh/年)、EM:183(kWh/年)、Y:多段階評価点、X:多段階評価比率
出所)2006年経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」、最終改定2020年経済産業省告示第243号

 具体的には、例えばTOTOの型番「TCF8FM66」の省エネ性能を算定すると以下の通りです。省エネ基準達成率及び多段階評価点は節電機能を使用した場合の年間消費電力量を用いて計算されます。

・定格消費電力:1,268W
・年間消費電力量:112kWh/年(節電機能使用しない場合)、90 kWh/年(節電機能使用した場合)
・基準消費電力量:135 kWh/年 (瞬間式のため)
・省エネ基準達成率:150%(=135/90)
・多段階評価比率:203%(=183/90×100)
・多段階評価点:3.4(=2+2.5/173×(203-100))
・年間電気代:2,430円(=90×27)

販売されている製品の省エネ評価

 次に、現在販売されている温水洗浄便座の製品について、資源エネルギー庁の省エネサイトからデータを収集し、多段階評価点の集計を行いました4)。なお、登録データのうち、2020年と2021年にデータの更新を行っている製品を対象としています。下図に多段階評価点別の製品数の分布図を示します。

出所)資源エネルギー庁、「省エネ型製品情報サイト」、「電気便座」、2021年9月7日閲覧、https://seihinjyoho.go.jp/より、2020年と2021年に更新している製品を用いて集計

 貯湯式は多段階評価点が2.0から2.5の間に分布しており、また瞬間式は2.6から5.0の間に分布しています。両方式は完全に分離しており、瞬間式の評価点が高いことが分かります。貯湯式はほとんどの製品(113製品、全体の78%)が多段階評価点が2.0であり、最大得点は2.5(4製品)でした。一方、瞬間式は多段階評価点が3.5が最も多く(30製品)、最大得点は5.0(2製品)でした。

 この多段階評価点のメーカーの分布をみると下表のとおりです。貯湯式はLIXILとTOTOは2.0または2.1のみですが、東芝は2.5を4製品提供しています。また瞬間式はTOTO、パナソニックが評価点4.0以上の製品を提供しています。

表-3 メーカー別、多段階評価点別の製品数(貯湯式)

出所)資源エネルギー庁、「省エネ型製品情報サイト」、「電気便座」、2021年9月7日閲覧、https://seihinjyoho.go.jp/より、2020年と2021年に更新している製品を用いて集計

表-4 メーカー別、多段階評価点別の製品数(瞬間式)

出所)資源エネルギー庁、「省エネ型製品情報サイト」、「電気便座」、2021年9月7日閲覧、https://seihinjyoho.go.jp/より、2020年と2021年に更新している製品を用いて集計

まとめ

 温水洗浄便座は既に80%の普及率を達成しており、省エネ法のトップランナー制度の対象となっています。貯湯式と瞬間式の2種類がありますが、瞬間式の消費電力量が貯湯式の半分程度と省エネ性能が高くなっています。

 しかし、ここ5年程度は瞬間式の製品の平均消費電力量は横ばいとなっており、さらなる省エネ化はかなり難しくなっているように思われます。ただし、個別の製品を見ると瞬間式の多段階評価点は幅が広く(2.6から5.0)、製品によって省エネ性能が異なることから、多段階評価点(年間消費電力量と直接的な相関があります)を確認して製品を購入することをお勧めします。

<参考文献>
1)経済産業省資源エネルギー庁、省エネ性能カタログ(家庭用)、2020年版
2)2002年経済産業省告示第436号(制定)「電気便座のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第68号
3)2006年経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」、最終改定2021年経済産業省告示第194号
4)経済産業省資源エネルギー庁、「省エネ型製品情報サイト」、「電気便座」、2021年9月7日閲覧、https://seihinjyoho.go.jp/