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洗濯乾燥機

洗濯乾燥機②-衣類乾燥機の省エネ活用

衣類乾燥機の消費電力

 前回の報告「洗濯乾燥機①-高い省エネ性能のドラム式」では洗濯乾燥機はドラム式の省エネ性能が高いことを報告しました。ここでは、ドラム式の洗濯乾燥機は高額すぎて手が出せないという方のために、洗濯機と衣類乾燥機を組み合わせた場合の消費電力を検討します。

 まず、衣類乾燥機の消費電力をワットチェッカー(電力モニター)を用いて測定して、その実態を把握します。今回測定に用いるのは、日立製の衣類乾燥機(乾燥容量6kg、型番DE-N60WV)です。この乾燥機は運転モード(標準、除菌)、ヒーターモード(強弱の2段階)、ふんわりガードなどの各種のオプションがありますが、ここでは運転モード(標準)、ヒーターモードを「強」(ケース3のみ「弱」)で運転させます。乾燥重量別の乾燥時間と消費電力量を下表に示します。

 これを見ると、消費電力量は通常の洗濯に要する消費電力量に比べて、非常に大きな電力量を要していることが分かります。また、洗濯物重量によって乾燥時間、消費電力量ともに大きく変動していることが分かります。

表-1  洗濯物重量別の乾燥時間と消費電力量

No.洗濯物重量
(kg)
運転モードヒーター
モード
運転時間
(min)
消費電力量
(Wh)
11.7標準
1181,669
21.8標準1311,768
32.4標準1821,956
42.8標準1412,088
53.4標準1582,413

 衣類乾燥機がどのような運転過程を経て乾燥を仕上げるのかを見るために、ケース2(洗濯物重量1.8kg)の場合の消費電力の推移を下図に示します。

 運転開始直後に瞬間的に1,500Wを超えていますが、その後減少して1,000W程度を長時間継続しています。開始後1時間33分に600W程度まで減少しその後定常運転を継続、さらに開始後1時間55分に100W程度まで減少して、開始後2時間で終了しています。乾燥終了後「ふんわりガード」運転に入っていますが、既にふんわりした乾燥状態になっているため、「ふんわりリガード運転」を途中で終了し、測定は2時間11分で終了しました。この消費電力の推移は、本衣類乾燥機がセンサーにより衣類の乾燥度合いを測定して消費電力を自動的に制御している結果と言うことができます。他のケースにおいても本ケースと同様の結果が得られています。

 洗濯物の重量と消費電力量の関係をグラフにしたものが下図です。洗濯物重量と消費電力量は完全に線形の関係になっており、直線の近似曲線で表すことが可能です。この近似曲線にはヒーターモード「強」と「弱」の両方が同じ直線上に乗っており、消費電力はヒーターの強弱には関係がないことが分かります。

 このことから、乾燥を行う際に、洗濯物全てを乾燥させるのではなく、必要なものだけを乾燥機にかけ、他は部屋干し(または天日干し)などを行えば、消費電力量を軽減できることが分かります。例えば、3.4kgの洗濯物のうち、その半分を乾燥機にかける場合は、消費電力量を30%程度(節電量744Wh)節電できることが分かります(上の表のケース1とケース5の比較より)。

 しかし、この近似曲線から分かる通り、乾燥させる洗濯物の重量を0に近づけても1,000Wh程度の消費電力量は避けられないことが分かります(近似曲線y=408.97x+989.08のy切片が約1,000Whであるため)。

 そのため、今度は洗濯物を洗濯後に、一度部屋干ししてある程度乾かしてから乾燥機にかけてみます。この時の部屋干し時間、洗濯物重量、乾燥時間、消費電力の計測結果を下表に示します。同表には、部屋干ししない場合の消費電力量の推計値と節電量についても示しています。 

表-2 部屋干し後の乾燥による消費電力量

部屋干し
時間(hr)
洗濯物重量
(kg)
運転時間
(min)
消費電力
(Wh )
部屋干し無し
の消費電力(Wh)
節電量
(Wh)
22.1781,0881,848760
33.2751,0132,2981,285
注)部屋干ししない場合の洗濯物重量による消費電力の推計式は以下の通り。y = 408.97x + 989.08

 洗濯後に2時間部屋干ししてから乾燥機にかけた場合の消費電力を下図に示します。この時の洗濯物重量は2.1kgですが、乾燥にかかった消費電力量は1,088Wh、乾燥時間は78分(1時間18分)でした。これは、2.1kgの洗濯物をそのまま乾燥させる場合に比べて760Wh 少ない結果(40%以上の節電)となっています。もちろんタオル等の乾燥後の仕上がりは部屋干しせずに乾燥機にかけたものと同じ品質(ふわふわ感)でした。

 なお、洗濯と乾燥に要した時間は部屋干しに2時間、乾燥機での乾燥時間が1時間18分ですので、全体の洗濯乾燥時間は3時間18分、洗濯物を部屋で干す作業時間も考慮すると3時間半程度になります。前回の報告でドラム式の洗濯・乾燥時間は日立のカタログでは6kgの洗濯の場合で165分(2時間45分)でしたので、洗濯重量が約1/3となっていることを考慮して、ドラム式の2倍程度の時間を要すると考えるのが妥当でしょう。

 同様に、 洗濯後に3時間部屋干ししてから乾燥機にかけた場合の消費電力も下図に示します。この時の洗濯物重量は3.2kgですが、乾燥にかかった消費電力量は1,013Wh、乾燥時間は75分(1時間15分)でした。これは、3.2kgの洗濯物をそのまま乾燥させる場合に比べて1,285Wh 少ない結果(56%程度の節電)となっています。

 このように、洗濯後に衣類乾燥機にかける洗濯物の量を調節したり、部屋干し後に乾燥させることによって節電を達成することができると思われます。この方法は洗濯物を選んだり、部屋干しするという手間をかけて節電するというものですが、ドラム式洗濯乾燥機の購入を躊躇している方は、この方法も可能ではないかと思います。

まとめ

 前回の報告で洗濯乾燥機の省エネ性能について検討し、ドラム式の洗濯乾燥機が高い省エネ性能を有していることが分かりました、今回は高額なドラム式洗濯乾燥機の購入を躊躇する場合に、洗濯機と衣類乾燥機の組み合わせで、乾燥重量を調節したり部屋干し後に乾燥機にかけるなどした場合の消費電力量の変化を調べました。

 その結果、洗濯物のうち乾燥機にかける量を減らすことによって節電効果が期待できます。3.4kgの洗濯物のうち、その半分を天日干しに回し半分を乾燥機にかけた場合の消費電力量は30%ほどの節電になりました。しかし、乾燥重量を0に近づけても消費電力量が1kW程度は必要になり、その効果は限定的であると分かりました。

 また、2時間部屋干ししその後全てを乾燥機にかけた場合、40%以上の節電が可能、3時間の部屋干しの場合は56%の節電ができることが分かりました。しかしこの場合は洗濯と乾燥に2倍程度の時間を要することになりそうです。

 これらの方法は、洗濯や乾燥にかける時間や手間が多くなることと引き換えに節電を実現するものとなっており、快適性と利便性が損なわれることになりますが、その手間によって節電による電気代の軽減と温室効果ガス排出量の削減を獲得できることになり、そのバランスによって判断されていくものと考えられます。