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温水洗浄便座

温水洗浄便座②-消費電力の測定

温水洗浄便座の消費電力量の測定条件

 本報告では温水洗浄便座の消費電力量を実際に測定した結果を報告します。実際に測定した温水洗浄便座(TOTO製TCF8FM65)の仕様を下表に示します。定格消費電力は1,272W、年間消費電力量は節電モードで90kWh/年、標準モードで112 kWh/年です。定格消費電力が大きいのは、温水を作るヒーターの定格消費電力が1,200Wであるためです(下表参照)。本製品の省エネラベリング制度における省エネ基準達成率は150%、多段階評価点は3.4です(省エネ基準達成率、多段階評価点の算定方法は「温水洗浄便座①-省エネ性能」を確認ください)。

表-1 測定した温水洗浄便座の仕様

メーカー 型 番定格消費
電力(W)
年間消費電力
量(kWh/年)
洗浄装置ヒーター
容量(W)
便座ヒーター
容量(W)
脱臭消費
電力(W)
TOTOTCF8FM651,27290節電/112標準1,200501.7標準/5.3強力
出所)TOTOウォシュレットの取扱説明書(2020/3/11)、TOTO株式会社

 また比較のため同じメーカーの貯湯式の温水洗浄便座と2000年頃の同種の製品の仕様を下表に示します。貯湯式の製品(TCF8FK56)は定格消費電力は321Wと小さいですが、年間消費電力量は節電モードで163kWh/年、標準モードで225 kWh/年と測定対象の機器 (TCF8FM65) とは1.8倍から2倍程度の年間消費電力量となっています。省エネ基準達成率は112%、多段階評価点は2.1となっています。

 そして、2000年頃の温水洗浄便座(一体型なので便器と称するべきでしょうか)については年間消費電力量が231~303kWh/年(省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」1)より)であり、本製品の2倍から3倍の年間消費電力量となっています。

表-2 測定対象機器と他の機器との消費電力量比較

メーカー型番省エネ法の区分定格消費
電力(W)
年間消費電力量(kWh/年)省エネ基準
達成率(%)
多段階
評価点
TOTOTCF8FM65瞬間式1,27290節電モード/112標準1503.4
TOTOTCF8FK56貯湯式321163節電/225標準1122.1
2000年頃の製品貯湯式231~303791.0
出所)TOTOのTCF8FK56は資源エネルギー庁「省エネ型機器」より、2000年頃の製品は環境省、省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」よりデータ取得。

 本製品の運転方法の設定オプションは下表のようなモードがあります。温度設定は、便座と温水の水温を3段階に調整します。自動設定は便座やふたの開閉と便器の洗浄を自動化するものです。さらに、節電設定は表にある「標準」、「おまかせ節電」、「スーパーおまかせ節電」の3つのモードで運転するものとタイマー節電があります。タイマー節電とは、夜間時などの使用しない時に便座の保温を停止する機能です。

 本測定においては温度設定は便座、温水共に「中温」、自動設定は便座等の開閉はON、洗浄はOFFで設定し、節電モードは3種類毎に測定を行いました。

表-3 測定対象機器の運転設定のオプションと測定条件

運転設定内容設定の種類オプションの内容測定条件
温度設定便座低温、中温、高温の3種類中温
温水低温、中温、高温の3種類中温
自動設定便座等開閉ON/OFFの2種類ON
便器洗浄 注)ON/OFFの2種類OFF
節電設定節電モード標準、おまかせ節電、スーパーおまかせ節電の3種類3種類設定して測定
タイマー節電6時間停止、9時間停止設定せず
注)自動設定の便器洗浄とは、便器から離れると洗浄する機能のこと。
出所)TOTOウォシュレットの取扱説明書(2020/3/11)、TOTO株式会社

消費電力量の測定結果

 まず、「標準」モードで運転した場合の1日の消費電力量の推移を下図に示します。この図はワットチェッカーRS-WATTCH1 で測定した1分毎の消費電力量を10分単位に集計したものを表示しています。これを見るとどの時間帯もわずかな消費電力が生じています。これは、便座を温めるためのヒーターの消費電力と思われます。電力量が大きく立ち上がっているときはトイレを使用しているときで、蓋の開閉や便座の保温、温水ヒーターの稼働などの消費電力です。「標準」モードで使用したときの1日の消費電力量は122.5Wh/日でした。

 また、3種類の節電モード(「標準」、「おまかせ節電」、「スーパーおまかせ節電」)のもとで測定した1日の消費電力量を比較したものを下表に示します。参考に、測定した日の室外、室内温度なども示しています。これより「おまかせ節電」は標準の86%、「スーパーおまかせ節電」は71%程度であることが分かります。なお、これは室外気温が9月上旬の比較的温暖な気温の場合であることを考慮する必要があります。

表-4 消費電力量の測定結果(3節電モード)

節電モード室外最高
気温(℃)
室外最低
気温(℃)
室内気温
(℃)
日消費電力量
(Wh/日)
タイマー節電時
消費電力量(Wh/日)
標準25.016.923~25 122.596.9(79%)
おまかせ節電22.518.323~25 105.383.8(80%)
スーパーおまかせ節電30.020.624~28 86.681.6(94%)
注)タイマー節電時消費電力量欄の( )内数字は、タイマー節電していない日消費電力量に対する割合。

 本製品の年間消費電力量のスペックは90kWh/年(節電モード)ですので、1日平均消費電力量は246Wh/日となり、本測定結果よりかなり大きな値となっています。これはスペックの消費電力は冬期の使用も想定して計算されていることによる差異と考えられます。冬期の気温が低い時は便座の保温のために消費電力量は増加するためです。そのため、機会があれば冬期の測定も実施したいと思っております。

 本製品にはタイマー節電の機能がついており、上記に示した便座の保温を停止させることができます。そこで、夜間の22時から4時までの6時間、タイマー節電により保温を停止させる場合の推計も行いました(上の表の最右欄)。「標準」モードでは96.9Wh/日となり、タイマーを使わない場合に対して21%の節電となっています。一方、「スーパーおまかせ節電」の場合は81.6Whとなり、6%しか節電できないことが分かります。これは本節電モードが夜間に保温を停止して節電しているため、タイマー節電による効果は他の節電ケースほど大きくないためです(下図参照)。

 また今回の測定では、便座や温水の水温の設定は全て「中温」を設定していますが、これを変えるなど他にもさまざまな節電方法があると思われます。しかし、せっかくの温水洗浄便座なので、快適性を損なうことのない節電方法を選択していくことが必要です。

まとめ

 実際の温水洗浄便座の消費電力量を測定しました。測定したのは9月上旬で比較的温暖な気候(外気温の最高気温は23~30℃)の時期です。測定した温水洗浄便座は定格消費電力は1,272W、年間消費電力量は節電モードで90kWh/年、標準モードで112 kWh/年です。省エネラベリングにおける多段階評価点は3.4の製品です。

 本製品は3種類の節電モード( 「標準」、「おまかせ節電」、「スーパーおまかせ節電」 )があり、「標準」モードの1日の消費電力量は122.5Whでした。ヒーターの定格消費電力が1,200Wであることを考えると非常に小さな消費電力と言えます。また、「おまかせ節電」は標準の86%、「スーパーおまかせ節電」は71%程度であることが分かりました。

 本製品の年間消費電力量のスペックは90kWh/年(節電モード)ですので、1日平均消費電力量は246Wh/日となり、本測定結果よりかなり大きな値となります。これはスペックの消費電力は冬期の使用も想定して計算されていることによる差異と考えられます。そのため、この点を考慮して上記の計測値を確認いただくようお願いいたします。

 どの節電モードも便座を温めるため、多くの時間帯で電力を消費しています。そのため、旅行などで長期間家を離れるときはコードを抜いておくのが良いと思われます。また、タイマーで夜間の電力の消費を停止させることも節電につながるでしょう。各種の節電モード、タイマー節電を組み合わせて、快適さを失わない節電の方法を検討してみてください。

<参考文献>
1)環境省、COOLCHOICE、省エネ製品買換ナビゲーション、「しんきゅうさん」
https://ondankataisaku.env.go.jp/shinkyusan/