2020年、2021年8月の消費電力量の比較
本サイトの投稿の第1回目(「家庭の省エネ対策(はじめに)」)に示したX氏宅の2020年8月の消費電力量が、1年たってどのくらい変わったのか(2021年8月との比較)を報告したいと思います。電力量データは東京ガスの会員サイト「myTOKYOGAS」から取得しています。
下図に2020年及び2021年8月の1日の消費電力量の推移を示しています。2021年は2020年と比較すると大きく減少しています。2020年8月は622.5kWhでしたが、2021年8月は394.8kWhとなり、前年から227.7kWh減少し、前年の63.4%となっています。
また、同種世帯平均との比較では下図のように消費電力量がやや少なくなっています(同種世帯平均の消費電力量が422.2kWhなので、93.5%です)。2020年8月は同種世帯平均より3割程度多かったので、2021年は同種世帯と比べても節電できていたと考えられます。
2021年における省エネの要因分析
2021年における省エネ(節電)の要因を以下で考察していこうと思います。下表に2020年から2021年にかけて買い換えた家電製品による節電量の推計値を示します。エアコンは6畳の洋室にある2000年頃に購入した製品を買い換えました。また、冷蔵庫も15年前の465Lのものを同じ容量の製品に買い換えています。さらに、温水洗浄便座も貯湯式から瞬間式の機種に変えています。これらの買い換え前後の製品性能を下表に示しています。新製品は取扱説明書にある製品スペックから、買い換え前の製品は買換えナビゲーション「しんきゅうさん」1)から年間消費電力量を把握しました。
この3種のエネルギー消費機器の年間消費電力量の総和は1,687kWhから950kWhまで737kWh減少しました。この値から8月の消費電力量を推計すると細かな説明は省略しますが、2020年は約216kWh、2021年は121kWhで95kWhの節電になっています(推計方法は下表の欄外に示しています)。
表-1 省エネ型機器買い換え前後の消費電力量の比較
年 | 家電製品 の性能等 | エアコン | 冷蔵庫 | 温水洗浄便座 | 合 計 |
---|---|---|---|---|---|
2020年 (買い換え前) | 機種名 | 2000年製 2.2kWエアコン | 2005年製 465L冷蔵庫 | 2000年製 貯湯式機種 | |
定格消費電力(W) | 2,200 注1) | 102 | 400 | 2,702 | |
年間消費電力量(kWh) | 869 | 515 | 303 | 1,687 | |
8月消費電力量(kWh) | 104.6 注2) | 86.0 注3) | 25.7 注4) | 216.3 | |
2021年 (買い換え後) | 機種名 | 富士通Nocria AS-Z22K | 東芝GR- S470-GZ | TOTO製 TCF8FM65 | |
定格消費電力(W) | 2,200 注1) | 86 | 1,272 | 3,558 | |
年間消費電力量(kWh) | 603 | 235 | 112 | 950 | |
8月消費電力量(kWh) | 72.6 注2) | 39.2 注3) | 9.5 注4) | 121.3 | |
2020年と2021年の差(節電量) | 32.0 | 46.8 | 16.2 | 95.0 |
注2)エアコンの8月消費電力量の算出方法は以下の通り。
エアコンの年間消費電力量に対する冷房消費電力量の割合を29.5%と仮定(AS Z22Kの製品スペックより)
冷房期間(5月23日~10月4日)の冷房負荷を(1日最高気温-冷房設定温度27℃)を指標とし、毎日の積算値で算定。
8月の冷房負荷を上記の方法で算出して、8月分の積算値を算定。
8月の冷房期間における冷房負荷の割合=8月冷房負荷/冷房期間の冷房負荷
2011年から2020年までの10年間の平均の冷房期間における8月冷房負荷割合を算定=40.8%
8月の消費電力量=年間消費電力量×年間冷房負荷率×(8月の冷房負荷/冷房期間の冷房負荷)
<計算例>
AS Z22Kの8月消費電力量=603×0.295×0.408=72.6kWh
注3)冷蔵庫の8月消費電力量の算出方法は以下の通り。
冷蔵庫の年間冷蔵負荷に対する8月の冷蔵負荷の割合を以下の通り算出
年間冷蔵負荷を(日平均気温-冷蔵庫内設定温度4℃)で指標化しし、毎日の総和により年間の積算値を算出
8月の冷蔵負荷を上記の方法で算出して、8月分の積算値を算出
8月の冷蔵負荷の割合=8月冷蔵負荷/年間冷蔵負荷
2011年から2020年までの10年間の平均8月冷蔵負荷割合を算定=16.7%
<計算例>
GR S470GZの8月消費電力量=235×0.167=39.2kWh
注4)温水洗浄便座の8月消費電力量の算出方法は以下の通り。
温水洗浄便座の電力は洗浄水や便座の保温の他に、ふたや便座の開閉などの動力等に使われている。
そのため、保温負荷の計算は行わずに日数比で8月消費電力の割合を算定する。
8月の温水便座の消費電力の割合=31/365=8.5%
<計算例>
TCF8FM65の8月消費電力量=112×0.085=9.5kWh
これだけでは、さきほどの227.7kWhの節電の説明にはなりません。そこで、2021年に行った家電機器に関する省エネ行動について以下に示しています。テレビについては、32インチのテレビは普段見ていないので待機電力を防止するためにコンセントを抜くようにした結果、待機電力22Wの節電、1日で0.53kWh、1か月では16.4kWhの節電となります。
表-2 省エネ行動による節電量の推計
家電製品 | 節電方法 | 1時間当り 節電効果 (Wh) | 効果時間 (h) | 1日当り 節電効果 (kWh) | 日数 (日) | 1月節電 効果 (kWh) |
---|---|---|---|---|---|---|
32インチテレビ | 待機電力防止 | 22 | 24 | 0.53 | 31 | 16.4 |
50インチテレビ | 節電1モード | 50 | 9 | 0.45 | 31 | 14.0 |
衣類乾燥機 | 部屋干し後に乾燥 | 1.285 | 12 | 15.4 | ||
合 計 | 45.8 |
また、普段見ている50インチのテレビは節電モードを「節電1」に変更することで、「標準」で130Wだった消費電力を80Wに減少して50W節電できました。テレビの視聴時間を1日9時間と仮定し0.45kWh、1か月で14.0kWhの節電になります。テレビの節電効果については、本サイトの「液晶テレビ②-意外に大きい待機電力」に詳しく記載していますので、ご確認ください。
さらに、衣類乾燥機についてはいろいろな節電の検討を行いましたが、簡単のため部屋干し後に乾燥機にかけるという方法での節電量を計上します。測定結果より1回の洗濯(洗濯物重量3.2kg)における節電量は1.285kWhの節電になり、1か月の洗濯回数を12回として節電効果は15.4kWhになります。衣類乾燥機の節電対策についても、本サイトの「洗濯乾燥機②-衣類乾燥機の省エネ活用」に記載していますので、ご確認ください。
これらの節電行動で約45.8kWhの節電になり、機器の買い替えの95.0kWhと合わせて、合計で140.8kWhの節電になります。しかし、冒頭で示した227.7kWhの節電量にはまだ説明できない部分があり、現状では想定できない他の要因があるものと思われます。特に、夏場の消費電力量はエアコンによるものが大きいのですが、それは気温と大きな関係があると思われ、2020年と2021年8月の気温の差も影響しているものと思われます。気温と消費電力の関係については、また機会を改めて考察した結果を示したいと思います。
<参考文献>
1)環境省、COOLCHOICE、省エネ製品買換ナビゲーション、「しんきゅうさん」
https://ondankataisaku.env.go.jp/shinkyusan/
2)東京ガス、会員サイト「myTOKYOGAS」