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待機電力

待機電力①-テレビとハードディスク

テレビとハードディスク単体の待機電力

 家電機器の省エネでは待機電力への対策が大きな効果を生むことがあります。以前の記事「液晶テレビ②-意外と大きい待機電力」で報告した外付けハードディスクを接続したテレビの待機電力について、さらに検討を進めてみました。液晶テレビの待機電力を測定した時の報告では、テレビシステム全体(テレビ、ハードディスク、その他)をまとめて測定していました。そのため、今回は機器単体の待機電力を測定しましたので以下に示します。

 下表にテレビ、ハードディスク等の個別の消費電力の測定結果を示します。3つのテレビシステムの構成は全てテレビの外付けハードディスクが接続されていますが、テレビシステム1にはそれに加えてAmazon Fire TV stickが接続しています。同表には、測定したそれぞれの機器の待機電力(テレビのリモコンOFF、主電源OFFの両方)と参考のためテレビがONの時のレディアイドル時の消費電力も示しています。

表-1  テレビ、ハードディスク単体の待機電力

 機器(メーカー)  型  番リモコンOFF主電源OFFテレビON
テレビ
システム1
テレビ(東芝, 50inch)REGZA 50BM620X19-2019-20130
HD(Elecom)SDG-NY020UBK0.90.93.4
映像出力装置(Amazon) Fire TV stick
W87CUN(第一世代)
2.02.02.0
システム全体2424133
テレビ
システム2
テレビ(東芝, 32inch)REGZA 32R120-2120-2195
HD(IO-DATA)HDL-LA2.01.51.54.6
システム全体22-2322-2398-99
テレビ
システム3
テレビ(Panasonic, 24inch)VIERA TH-24C60030.8
HD(Freecom)Hard drive classic 22.35.35.5
システム全体2.35.336
注1)リモコンOFFとはリモコンでテレビのスイッチをOFFにした場合、主電源OFFとは主電源のスイッチをOFFにした場合です。
注2)テレビONのハードディスクの消費電力はレディアイドル時のものです。
注3)テレビONのテレビの消費電力は標準モード(節電無し)、バックライト100%の時のものです。
注4)HDはハードディスクの略です。映像出力装置とはインターネットを介してテレビで番組を視聴する装置です。
注5)東芝 REGZA(50BM620X)は2018年、REGZA(32R1)は2010年、Panasonic VIERA(TH-24C6)は2013年の製品です。
注6)東芝 REGZAの待機電力については、50BM620Xはスイッチを切って60分後に、32R1は25分後に0となることが後日の計測で確認されました。

 上表に示すように、テレビ単体の待機電力はREGZAの待機電力が20W前後と大きく、VIERAは0でした(スペックでは0.1Wで1W未満はがワットチェッカーの測定範囲外です)。この傾向はリモコンのスイッチOFFでも主電源OFFでも同じでした。REGZAのスペック上の待機電力は0.1~0.3Wですので、スペック値とは大きな違いがあります。

 次に、ハードディスク単体の待機電力(テレビをリモコンでOFFとした場合)は0.9~2.3Wとそれほど大きくなく、テレビ単体の待機電力と合計するとシステム全体の待機電力とほぼ等しくなります。ただし、特筆すべきことはテレビシステム3のハードディスク(Freecom製)の待機電力です。テレビのリモコンOFFの場合は2.3Wですが、テレビの主電源OFFの場合は逆に5.3Wと増加したことです。

 この値はテレビONでのアイドル時の消費電力とほぼ同じレベルです。これは主電源がOFFになるとテレビ側の録画機能が働かなくなるので、ハードディスク側でレディアイドル状態になったのかもしれません。しかし、この現象は東芝のREGZAに接続したハードディスクには見られませんでした。これが、REGZAとVIERAの待機電力の相違に関係があるのかもしれません(REGZAは主電源OFFでも録画が可能です)。

 次にAmazon Fire TV stickはREGZAのHDMI入力端子に接続してビデオ等を視聴します。この単体の待機電力は2W程度でした。これはテレビをONにして、Amazonの提供するビデオを見ても3~3.5W程度の電力しか消費していません。このことから、これがテレビシステム1の全体の待機電力を20W前後に増加させていた理由にはなりません。

 前回の報告では、REGZAのテレビシステム全体の待機電力がスペックの待機電力よりも大きい測定結果となった原因がハードディスクの接続にあるのではないかとしましたが、ハードディスクの接続とは関係なくテレビの待機電力が大きいことが分かりました。一方、VIERAのテレビ単体の待機電力は0でしたが、前回報告したテレビシステム全体の待機電力2.4Wは、ほとんどハードディスクの待機電力だと分かりました。

テレビの機能設定による待機電力の増加

 REGZAの待機電力が大きいことが不思議でしたので、いろいろなネット情報を探してみました。すると、以下の情報が見つかりました。すなわち、「番組情報取得設定による待機電力の増加」というものです。この情報は価格ドットコムやYahoo知恵袋などでも同じような相談と回答を目にすることができました。同じような悩みを持った方が結構いたのだと思います。

 測定対象にしたREGZAは、32R1 と50BM620Xの2つありますが、まず前者の方の設定を変えることにしました。REGZA 32R1の「機能設定」、「省エネ設定」の中に「番組情報取得設定」というものがあります。このメニューを選ぶと「電源待機状態のときにデジタル放送の番組情報を取得しますか?」という問いがあり、「取得する」を選んでいました。これを「取得しない」を選ぶと、見事に待機電力が0になりました。

 どうやらこの機能を選択していたために、待機時でも番組情報を取得するために電源が0になっていなかったもののようです。2台のREGZAともにこの選択になっていたということは、初期状態で「取得する」が標準になっていると思われます。

 次に、REGZA 50BM620Xを同様に「番組情報取得設定」を「取得しない」としましたが、待機電力は0にはなりませんでした。そのため、東芝のサポートセンターに連絡したところ、以下の設定に変えなければ待機電力を0にできないとのことでした。

●ソフトウェアの自動ダウンロードを「しない」にする
●HDMI連動設定を「無効」にする
●番組情報取得を「しない」にする
●地デジ自動スキャンを「しない」にする
●BS・110度CSアンテナ電源を「供給しない」にする
●ネットワーク接続設定で「有線LANにする」(無線LANにしない)
●外部機器連携→「サーバ機能を使わない」にする。
●リモート電源オン設定を「無効」にする。(レグザAppsコネクトを「利用しない」)。
●ネットワークサービス利用設定を「使わない」にする。
●USB汎用、録画用USBHDDやHDMI機器を接続しない。
〇視聴予約、録画予約を入れない。

 上記の黒丸の事項を設定して再度試み1時間以上待ちましたが、やはり待機電力は0になりませんでした。あとは、白丸の録画予約しなければ良いはずですが、録画の予約をしないのでは、テレビシステムの機能が達成できませんので、これ以上の測定をあきらめました。待機電力を回避するために録画機能を捨てることはできないからです。

 なお、REGZA 32R1は録画予約をしていても待機電力は0になっていました。同じメーカーのものでも、これらの機種では機能に相違があるためでしょう。なお、機種による消費電力測定の条件を同一にするために、VIERAの録画予約時の消費電力も測定して0であることを確認しました。これとREGZAの番組情報取得設定OFFで録画予約時の消費電力を再度修正して整理すると下表となります。

表-2 テレビの待機電力のまとめ

機種名型 番画面サイズ定格電力
(W)
ON時消費
電力(W)
待機時消費
電力(W)
録画予約時
待機電力(W)
REGZA50BM620X50インチ1501300.320
REGZA32RI32インチ115950.10.1
VIERATH-24C624インチ38310.10.1
注)待機時の消費電力「0.1」はワットチェッカーの計測範囲外であるためスペック値です。
待機時はテレビのリモコンOFF、主電源OFFの両方を含みます。
テレビON時の消費電力は節電設定「標準」、バックライト100%の場合のものです。

まとめ

 液晶テレビのところで報告したテレビの待機電力について、今回は機器単体の消費電力を測定してみたところ、テレビの機種によって異なる傾向になりました。

 REGZAはテレビ単体の待機電力が大きい(20W程度)のに対して、VIERAは待機電力は0に近い値が測定されました。しかし、VIERAに接続していたハードディスクは、主電源をOFFとした場合は、リモコンOFFとした場合の待機電力よりも大きくなり、主電源を切らない方が全体の消費電力を小さくできることが分かりました。

 次に、REGZAの待機電力についてネット情報から「電源待機状態のときにデジタル放送の番組情報を取得」すると待機電力が大きくなるという情報を得ました。それで、REGZA 32R1についてこの機能をOFFにした結果、待機電力は0(スペックでは0.1~0.3W)となりました。2台のREGZAがどちらもこの設定になっていましたので、標準で設定されている機能だと思われます。

 しかし、REGZA 50BM620Xについてはこの設定変更だけでは待機電力を0にすることはできませんでした。テレビのこの機種タイプの待機電力を0にするためには、種々の便利な機能の設定を解除することが必要なことが分かりました。しかし、これらの機能を解除する場合は、本来の録画機能などを使うことができなくなることが想定され、待機電力の低減をあきらめました。そのため、本来のテレビの機能を損なうことなく、テレビの機種に応じて設定を上手に変えながら待機電力を抑えていくことが必要と考えられます。