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エアコン(4)-暖房時の消費電力

 エアコンは季節的に家庭の消費電力量の多くを占める家電製品です。冷房時の消費電力の測定結果については既に「エアコン③-消費電力の測定」に示しています。冷房よりも暖房の方が消費電力が大きいのが一般的ですが、今回はこれまで測定できなかったリビングルームのエアコンの暖房時の消費電力を測定してみましたので報告します。

消費電力の測定方法

 今回測定したエアコンの仕様を下表に示します。本エアコンは三菱電機のMSZ-ZW403Sで、冷房能力4.0kW、暖房能力5.0kW(標準、部屋の広さの目安14畳、約23.1m2)、通年エネルギー消費効率(APF)が6.3の製品です(エアコンの通年エネルギー消費効率については「エアコンのエネルギー消費効率」を参照ください)。リビングルームに設置してあり、家族2人がこの部屋にいることが多いため、毎日の稼働率は非常に大きいものです。この仕様にあるように冷房の期間消費電力量は333kWh、暖房のそれは939kWh(標準)、1,272kWh(低温)です。したがって冷房に比べて非常に大きな消費電力量となっていることが分かります(期間消費電力量の算定方法は表の備考を確認ください)。

表-1 測定対象のエアコンの仕様

項  目  内 容  
メーカー三菱電機
型 番MSZ-ZW403S
電 源単相200V
冷房能力(kW)4
消費電力(W)1095
冷房期間消費電力量(kWh)333
面積の目安(m2鉄筋アパート南向洋室28
木造南向和室18
暖房能力(kW)標準5
低温7.1
消費電力(W)標準1130
低温2750
暖房期間消費電力量(kWh)標準939
低温1272
面積の目安(m2鉄筋アパート南向洋室23
木造南向和室18
通年エネルギー消費効率(APF)6.3
出所)三菱電機、三菱ルームエアコン、カタログ
資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、エアコン、2021年11月13日閲覧
備考)消費電力量の算定の仮定条件は以下の通りです。本製品の発売は2012年であるため、JIS規格はJIS C9612:2005に基づいています。
冷房:室内27℃、室外35℃の温度環境で最大風量における仕様値。
暖房:室内20℃、室外7℃(標準)、2℃(低温)の温度環境で最大風量における仕様値。
運転停止中の消費電力は0.04Wです(日本電機工業会自主基準による待機時消費電力測定値「0.0W」を示す)。

 本製品の電源は200Vですので、これまで使っていたワットチェッカーは使えません(100V用のワットチェッカーについては、「家庭の省エネ対策(はじめに)」で説明しています)。そのため200V対応のワットチェッカーを購入しました。その製品の仕様を下表に示します(表-2中の製品名をクリックするとメーカーのホームページにリンクできます)。この製品は株式会社カスタムのEC-200で、定格電圧AC100~240V、消費電力の測定可能範囲は1W~3,000Wですので、このエアコンの消費電力も測定可能です。表示項目は使用時間、積算電力料金、1時間当たりの電気料金、瞬時電力、積算電力量、CO2排出量の6種類です。データの記録機能はないため、時刻ごとに読み取り、記録していくことにしました。

表-2 200V電源対応のワットチェッカー(カスタム社EC-200)

 項  目   仕  様    写  真 
メーカー名株式会社カスタム
製品名・型番エコキーパー、EC-200
定格電圧AC100~240V、50/60Hz
消費電力0.5W以下
測定可能範囲1W~3,000W
測定精度±10%以内
使用温度範囲0~50℃
表示項目使用時間、積算電力料金、1時間当りの電気料金、瞬時電力、積算電力量、CO 2排出量
✳︎積算電力量は10kWhまでは0.01kWh、それを超えると0.1kWhで表示。
注)メーカーホームページでは、本製品は既に生産終了となっていますが、ネット上では販売はされています。

 なお、エアコンは外気温に影響を受けることや運転の目標となる温度設定をおこなうため、消費電力の測定と同時に室内温度と室外気温を測定しました。使用した温度計データロガの仕様を下表に示します。センサは2つあり、2チャンネルのデータを保存することができますので、これを用いて室内と室外の温度を記録、保存しました。1分ごとのデータを保存できますが、ここでは30分ごとで記録しました。

表-3 温度計の仕様(A&D社の温度データロガ)

  項  目          内   容   写   真  
メーカー名株式会社エー・アンド・デイ
製品名・型番温度データロガー、D-5326TT
電源CR2032(ボタン電池)×2個
表示項目温度(CH1/CH2)、時刻
温度CH1
(内蔵温度
 センサ)
測定範囲0.0~60.0℃
測定精度±1.0(40℃未満)、±2.0(40℃以上)
センササーミスタ
温度CH2
(外部温度
 センサ)
測定範囲-40.0~90.0℃
測定精度±1.0(40℃未満)、±2.0(40~69.9℃)、±3.0(70℃以上)
センササーミスタ
測定間隔30秒毎
データロガ
 機能
データ数最大525,600
記録間隔1分~12時間の間隔で設定可能
出力形式CSV形式

消費電力の測定結果

 測定したエアコンの1日の消費電力量(1時間単位)の推移を下図に示します。稼働時間は5時半から22時までです。また、エアコンの設定温度は24℃運転メニューは全て標準設定としています。消費電力量はスイッチON直後の立ち上がりが最も高く、室外気温の上昇とともに下降し16時を境に逆転して上昇していきます。なお、スイッチOFF時の消費電力はモニターでは1Wと表示されますが、実際には1W未満のようであり(1W未満は本機の測定範囲外です)、スペックの通りであれば、0.04Wと非常に小さな値です。

 

 室温、外気温の推移を下図に示します。室温は朝方を除いて22℃から23℃で概ね推移しています。外気温の最低値は8℃(6時30分)で、その後上昇して23℃(14時)で最大となり、その後は下降に転じます。外気温の上昇と下降はエアコンの消費電力量と正反対の傾向になっています。この日の平均外気温は14.1℃、平均室温は22.2℃でした。

 外気温の最高の時刻(14時)と室温の最高の時刻(15時)、消費電力量の最低の時間帯(15時~16時)が一致しないのは、測定対象の部屋に西日がさしており、日射が部屋を暖めているためです。また、室温の測定値が設定温度24℃にならないのは温度測定の高さの違いと思われます(温度計の設置は高さ1m程度、エアコンは2.5m程度の高さです)。

 この日の総消費電力量は2.64kWhであり、世帯の全消費電力量(8.1kWh)の1/3程度でした。これは、外気温がまだ8℃程度とそれほど低くなっていない時期(日平均気温は14.1℃)での値ですので、今後はさらに割合が増加していくものと思われます。

 スイッチON時の消費電力を細かく見たもの(1分間隔)が下図です。立上りの最も高い電力は1,680Wであり、その後は500W前後になり、30分後には300W程度になっています。よく言われるようにエアコン起動時の電力量が最も大きいため、電源のON、OFFを頻繁に行うことは避けなければなりません。しかし、上図の室温にみられるように14時~16時までは外気温と同程度になっておりエアコンの必要がないように思われます(15時には室温が24℃まで上昇)。

 そこで、次の日は14時~17時までエアコンの運転を停止し、17時からONにして測定しました。その結果を下図に示します。室温はエアコンをOFFにしても外気温が高いため、22℃よりも下がることはありませんでした。12時~20時までの平均室温は22.7℃と連続運転に比べて0.5℃ほど低くなっています。なお、この時間帯での外気温の平均値はどちらも18.9℃でした。

 17時の再起動時の消費電力は大きいですが朝方の起動時ほどではありません。しかし下表に示すように連続して運転している場合と比較してその節電量はわずかです(12時~20時までの比較では4%程度の節電)。このことから、エアコンの間欠運転の効果を上げるためには、エアコンOFFの時間をさらに長くとる必要があると言えます。

表-4 エアコンの連続運転と間欠運転の消費電力量の相違

消費電力 (Wh)室温(℃)外気温(℃)
12~14時14~17時17~20時12~20時12~20時12~20時
連続運転28028040096023.218.9
間欠運転3200600920(4%減)22.718.9
注)間欠運転は14時から17時まで3時間運転停止。

 以上の結果から、エアコンの消費電力は外気温と深く関係していることが分かります。これは温度の高い室内から壁や窓などを通して温度の低い室外に熱が流出しているためです。外気温が低いほどその流出する熱も大きく、そのため設定温度にするためにエアコンが消費する消費電力量も増加することになります。

 また、エアコンのスイッチをONにした時の立上りの消費電力量はエアコンの設定温度(本調査の場合は24℃)と室内気温の差に関係すると想定されます。エアコンは設定温度にするために出力を自動で調整するため、温度差が大きいほど大きな出力すなわち消費電力を生じると考えられます。このエアコン初動時における設定温度と室温との差を「必要上昇温度」と称することにします。そこで、「必要上昇温度」と「初動30分間の消費電力量」の関係を見たものが下図です。これをみると、「必要上昇温度」と「初動30分間の消費電力量」は概ね線形の関係であることが分かります。


 以上のことから、エアコンの消費電力は以下の2つの温度と強い関係があるようです。
 (1)外気温
 (2)設定温度と室温との差(必要上昇温度)

 エアコンの暖房時の消費電力量の節電を検討するために、次回以降でこれらの関係をさらに定量化していくことにします。

まとめ

 今回はエアコンの暖房時の消費電力量を測定しました。エアコンの暖房時消費電力量は標準(外気温7℃を仮定)でも冷房の2.8倍、低温(外気温2℃を仮定)では3.8倍となっており、大きな電力を消費しますので冬の省エネに留意することが必要です(三菱電機の14畳用エアコンのスペック値です)。

 電源が200V対応のエアコンであるため、電圧が200Vのもとで消費電力の測定が可能なワットチェッカーを購入して測定しました。エアコン起動時の消費電力は最大で1,600Wを超え設定温度近くになるまで上昇しますが、外気温が上がるにつれて消費電力量は低下していき、午後の外気温の下降にあわせてまた上昇していきます。外気温が最大となるのは14時ですが、消費電力の最小時間帯は15時~16時と時間遅れがあります。

 測定した時期が11月中旬で室外の最低気温が8℃程度であるため、1日の消費電力量は2.6~2.7kWhと少ないものでした。この日の世帯全体の消費電力量は約8kWhであり、エアコンの消費電力量の割合は約1/3でした。最低気温がさらに下がる場合にはより大きな消費電力量となるものと思われます。

 昼間の外気温が高い時間帯に、スイッチをOFFにして完結運転(3時間の停止)した場合の測定も行いましたが、起動時の消費電力量が大きいため、大きな節電効果はありませんでした。今回のような気温のレベルでは、停止している時間をさらに長くとらなければ(4時間以上)効果は少ないといえます。なお、エアコンOFF時の待機電力は1W以下であり、非常に少ないことが分かりました。録画機能を持ったテレビなどのようにコンセントを抜いておくということは心配しなくて良いようです。

 エアコンの消費電力量と気温の関係では、「外気温」と「設定温度と室温の差」(必要上昇温度)との関係が深いと考えられます。この関係については、次回の報告でさらに詳細な分析を行っていきたいと考えております。