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国の方針・計画

2050年カーボンニュートラルへの取り組み

地球温暖化対策計画、改定NDCの閣議決定

 去る10月22日に、「地球温暖化対策計画」及び「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定され、また「日本のNDC(国が決定する貢献)注)」が地球温暖化対策推進本部において決定されています。本計画については、本サイトの「国内の地球温暖化対策に関する情報」の「地球温暖化対策計画の改定」に概要を示しましたので、ご確認ください。これらにより、2050年のカーボンニュートラルに向けて、2030年の地球温暖化対策に関する方針が決定されたことになります。

注)NDC= Nationally Determined Contribution (国が決定する貢献):パリ協定第4条に基づく自国が決定する温室効果ガス削減目標と、目標達成の為の緩和努力のことを指します。NDCはUNFCCC(国連気候変動枠組み条約)事務局のWebサイトに登録されており、すべての締約国の最新の情報を見ることができます1)

2050年カーボンニュートラルへの取り組み

 2021年12月中旬の環境省のWebサイトの「トピックス」に「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明自治体が人口1億人を超えました!」という記事が載っています2)

 記事によると、「東京都・京都市・横浜市を始めとする492自治体(40都道府県、295市、14特別区、119町、24村)が『2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ』を表明。表明自治体の総人口は約1億1,227万人(2021年11月30日時点)」と記載されています。これまでの表明自治体の推移は下図のようになっています。わずか2年余りで日本の人口の90%程度の自治体が表明したことになります(日本の12月1日現在の人口は1億2,547万人)。

原文注)実質排出量ゼロ:CO2などの温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成すること。
注)ここでは、カーボンニュートラルと表現します。

出所)環境省、ゼロカーボンシティ一覧図(表明都道府県地図、表明自治体数・人口グラフ他)(2021.11.30)から作成

 2020年10月26日の我が国の首相の所信表明演説において、「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」として、国をあげてカーボンニュートラルにとり組むことが表明されました。そして、「地球温暖化対策の推進に関する法律」では、「都道府県及び市町村は、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとする」とされており、自治体においても同様の表明が求められていたともいえるでしょう。

 ところで、この「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明」という表現は、必ずしも計画的に2050年にカーボンニュートラルが実現できる計画値(予測値)を示したということではないようです。長期計画目標値というよりも、自治体の姿勢として積極的に取り組むといった意味合いが強いように思われます。自治体の首長のメッセージから受ける印象では、この表明を通してカーボンニュートラルへの取り組みを「街づくりや地域経済の振興に役立てていく」という意気込みを示したものが多いと思われます。

 一方、この実現のために国は多くの財政的支援策や各種の情報を提供しています。財政的支援内容を下表に示します。

表-1 2021年度予算における脱炭素化の支援策

予算名称予算の内容2021年予算(千円)
ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業自治体における脱炭素化(ゼロカーボンシティの実現)のための基礎情報を整備・提供します。800,000
再エネの最大限導入の計画づくり及び地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域社会実現支援事業再エネの最大限の導入と地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域づくりを支援します。1,200,000
地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業感染症対策を推進しつつ災害・停電時にも避難施設等へのエネルギー供給が可能な再生可能エネルギー設備等の導入を支援します。5,000,000
PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業再エネ・蓄電池の導入及び価格低減促進と調整力の確保等により、再エネ主力化とレジリエンス強化を同時に図ります。5,000,000
脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業2050年カーボンニュートラルの実現に向けた、ローカルSDGs(地域循環共生圏)の構築を目指します。8,000,000
浮体式洋上風力発電による地域の脱炭素化ビジネス促進事業ポテンシャルを有する地域等を対象として、浮体式洋上風力発電による地域の脱炭素化ビジネスを促進します。400,000
廃棄物処理施設を核とした地域循環共生圏構築促進事業自立・分散型の「地域エネルギーセンター」の整備を支援します。25,950,000
脱炭素社会構築のための資源循環高度化設備導入促進事業リサイクル設備・再生可能資源由来素材等の製造設備の導入を支援します。4,300,000
廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業廃棄物エネルギーの有効活用等により、地域循環共生圏構築に資する廃棄物処理事業を支援します。2,000,000
「脱炭素×復興まちづくり」推進事業福島での「脱炭素社会」の実現と福島の「復興まちづくり」の両方の着実な実現を支援します。500,000
廃熱・未利用熱・営農地等の効率的活用による脱炭素化推進事業廃熱・未利用熱等を有効活用し、地域の脱炭素社会づくり・分散型エネルギー活用を推進します。1,391,000
再生可能エネルギー資源発掘・創生のための情報提供システム整備事業再生可能エネルギーの導入を促進するための情報提供システムを整備します。539,000
バッテリー交換式EVとバッテリーステーション活用による地域貢献型脱炭素物流等構築事業配送需要増加、防災性向上、地域資源である再エネ有効活用等の課題を同時解決する地域貢献型脱炭素物流モデルの構築を図ります。1,200,000
建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業業務用施設のZEB化・省CO2化に資する高効率設備等の導入を支援します。6,000,000
集合住宅の省CO2化促進事業集合住宅の省エネ・省CO2化、断熱リフォームを支援するとともに、災害時のレジリエンスを強化します。4,450,000
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業戸建住宅の高断熱化による省エネ・省CO2化を支援します。6,550,000
地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく普及啓発推進事業温対法に基づき、全国地球温暖化防止活動推進センター及び地域地球温暖化防止活動推進センターの調査・情報収集・提供・普及啓発・広報活動等を委託・補助により実施します。328,370
ライフスタイルの変革による脱炭素社会の構築事業ライフスタイルの変革により地球温暖化対策の行動変容を促します。700,000
地方と連携した地球温暖化対策活動推進事業市町村や地域の企業・民間団体等の非政府主体(ノンステートアクター)が実施する、各地域における持続可能な脱炭素社会づくりに向けた効果的かつ自発的な行動変容やライフスタイルの選択を促す取組を支援します。500,000
脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業先進技術を利用した省エネ型自然冷媒機器の導入を支援します。7,300,000
省エネ型浄化槽システム導入推進事業浄化槽の改修又は更新による低炭素化を支援します。1,800,000
出所)環境省、Webサイト、「脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)」
注)PPA(Power Purchase Agreement): 電力購入契約の意味、現在注目されている「オンサイトPPAモデル」は発電事業者が需要家の敷地内に太陽光発電設備を発電事業者の費用により設置し、所有・維持管理をした上で発電設備から発電された電気を需要家に供給する仕組みのことです。

 自治体への支援の一例として、「ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業」については、ゼロカーボンシティに向けた以下の支援を行うとされています。
 1.地方自治体の気候変動対策や温室効果ガス排出量等の現状把握の支援
 2.ゼロカーボンシティの実現に向けた計画策定、具体的対策・施策の検討支援
 3.ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の合意形成等の支援

 これらのカーボンニュートラルに関する情報については「脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)」において、予算の仕組みや、財政支援を受ける申請方法並びに事業の活用事例が記載されています3)ので、参考にしてください。

<参考文献>
1)UNDCCC、NDC掲載サイト、https://www4.unfccc.int/sites/NDCStaging/Pages/Home.aspx
2)環境省、Webサイト「トピックス」、「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明自治体が人口1億人を超えました!」、http://www.env.go.jp/policy/zerocarbon.html
3)環境省、Webサイト、「脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)」
https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/