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洗濯乾燥機

洗濯乾燥機①-高い省エネ性能のドラム式

最新の洗濯乾燥機の省エネ性能

 洗濯機は、今は乾燥機がついたドラム式洗濯乾燥機が売れているようです。様々な機能が付いていて、節水、節電を謳っています。節電を考慮すると洗濯だけをしてあとは洗濯物を自然乾燥させればよいのですが、梅雨の季節に乾かないとか、狭いアパートだと干す場所がないなど、乾燥機付きのものが便利なことも多いのです。それと何といっても、乾燥機で仕上げたタオルの肌触りは自然乾燥に比べものになりません。一度バスタオルを洗濯乾燥機にかけたら、手放したくなくなるでしょう。

 しかし、洗濯乾燥機を電器店で見て驚くのはその価格の高さです。洗濯機単体に比べて5倍以上ということもあります。便利さや快適性だけで購入することは結構勇気がいることでしょう。一方、この洗濯乾燥機と同じ機能を持つものとして洗濯した後に乾燥だけさせる衣類乾燥機があります。洗濯機と衣類乾燥機の組み合わせは価格的には洗濯乾燥機の1/2から1/3です。
 というわけで、今回は洗濯乾燥機の省エネ性能について見ていきますが、比較対象は洗濯乾燥機及び洗濯機+衣類乾燥機の組み合わせについて検討します。

 ところで、 洗濯乾燥機(洗濯機と衣類乾燥機を含む) は省エネ法の特定エネルギー消費機器(29製品)には含まれておりません。省エネ法における特定エネルギー消費機器の対象として「我が国において大量に使用され、かつ、その使用に際し相当量のエネルギーを消費するエネルギー消費機器であつてそのエネルギー消費性能の向上を図ることが特に必要なもの」とありますので、洗濯乾燥機(洗濯機と衣類乾燥機を含む)はこのような機器ではない(大量に使用されていないか、相当量のエネルギーを消費しない)と判断されているものと思われます。

 ここでの検討においては、 洗濯乾燥機(洗濯機と衣類乾燥機を含む) について複数のメーカーの具体的な機種を対象として消費電力量(洗濯1回当り)を整理します。

 まず、日立の2020年製の洗濯機について、当時のカタログを用いて比較することにします。下表に①ドラム式洗濯乾燥機、②タテ型洗濯乾燥機、③洗濯機+衣類乾燥機の3種のスペック比較を示します。洗濯・乾燥の容量は6kgを想定しています。

表-1 洗濯乾燥機の省エネ特性(日立)

ドラム式洗濯乾燥機タテ型先約乾燥機全自動洗濯機+衣類乾燥機
型番BD-NX120ELBW-DX120FBW-V70FDE-N60WV
洗濯物容量
(kg)
洗濯・脱水12127
洗濯~乾燥666
目安時間(分)洗濯334432
洗濯・乾燥165170120 注)
消費電力
(W)
洗濯160380160
乾燥1,1301,1801,180
消費電力量
(Wh)
洗濯729845
乾燥2,360
洗濯~乾燥9701,8902,405
出所)日立:洗濯機・衣類乾燥機総合カタログ、2020年夏
注)衣類乾燥機の実際の消費電力量の測定結果より目安時間を設定


 まず、洗濯だけの場合はドラム式洗濯乾燥機72Wh、タテ型洗濯乾燥機98Wh、全自動洗濯機+衣類乾燥機のうちの洗濯機のみが45Whです。ドラム式洗濯乾燥機、タテ型洗濯乾燥機の洗濯槽の容量が12kg用のものであるため、全自動洗濯機(7kgの洗濯物の容量)のみの場合よりも多くなっています。洗濯機の消費電力については他のエネルギー消費機器に比べて、それほど大きな消費電力量ではないと言えます。

 一方、乾燥を加えた電力消費量についてはドラム式洗濯乾燥機970Wh、タテ型洗濯乾燥機1,890Wh、全自動洗濯機+衣類乾燥機2,405Whとなっています。ドラム式洗濯乾燥機の電力消費が少ないのは、カタログによるとドラム式はヒートリサイクル乾燥方式を採用しており、運転時に発生する熱を回収して乾燥時の温風に再利用するためということのようです。一方、タテ型洗濯乾燥機と一般の衣類乾燥機はヒーター乾燥方式のため電力が2倍以上かかるようです。洗濯と乾燥までを含めると消費電力量は少ないとは言えません。

 次に、パナソニックの洗濯乾燥機の消費電力量についても下表に示します。日立製と同様の結果となっていますが、パナソニック製はドラム式洗濯乾燥機に省エネモードがありさらに消費電力量が低減しています(省エネモードで洗濯~乾燥まで620Wh)。

表-2 洗濯乾燥機の省エネ特性(パナソニック製)

ドラム式洗濯乾燥機タテ型先約乾燥機全自動洗濯機+衣類乾燥機
型番NA-VX900BLNA-FW120V5NA-FA70H9NH-D603
洗濯物容量
(kg)
洗濯・脱水11127
洗濯~乾燥666
目安時間(分)洗濯324136
洗濯・乾燥標準165/省エネ98235120 注)
消費電力
(W)
洗濯230495280
乾燥1,0001,2701,390
消費電力量
(Wh)
洗濯689852
乾燥2,780
洗濯~乾燥標準890/省エネ6202,5502,832
出所)パナソニックのWebサイト(https://panasonic.jp/wash/comparison.html)
注)衣類乾燥機の実際の消費電力量の測定結果より目安時間を設定

 なぜ、ドラム式と他の方式ではこれほど消費電力に差があるのでしょうか。カタログにあるドラム式とタテ型の違いを下表に示します。この表にあるように、ドラム式はヒートリサイクル方式を採用しており、運転時に発生する熱を回収して乾燥時の温風に再利用することで省エネを実現しているようです。

表-3 洗濯乾燥機の乾燥方法の比較

項目ドラム式タテ型
乾燥方式
ヒートリサイクル乾燥方式(衣類温度約65℃)
運転時に発生する熱を回収して乾燥時の温風に再利用する

ヒーター乾燥方式
ヒーターで温めた空気を衣類に充てて乾かします
衣類の仕上がり・ドラムを回転させ、衣類を大きく広げて乾かす
・衣類に高速風を吹きかけてしわを伸ばしながら乾かす
・底にある羽を回転させて衣類を舞い上げて乾かす
省エネ機能、扉の開閉・運転時に発生する熱を再利用するのでヒーター式よりも大幅に省エネ
・ドラム内の温度が上がりすぎないので、乾燥中でもドア開閉ができる
・ヒーターで空気を温めるので電気代がかかる
・槽内の温度が高いので乾燥中にふたの開閉ができない
出所)日立:洗濯機・衣類乾燥機総合カタログ、2020-夏

まとめ

 洗濯乾燥機(洗濯機と衣類乾燥機を含む)は省エネ法の特定エネルギー消費機器には含まれていません。これは、省エネ法の対象となる要件に該当しない、すなわち「大量に使用されていないか、相当量のエネルギーを消費しない」と判断されているものと思われます。

 洗濯機は洗濯だけの場合は1回当り70Wh(6~12kg程度の洗濯)程度ですが、乾燥機を使うと大きな電力を使用してしまいます。節電を考慮すると自然乾燥を用いるのが望ましいと思われます。しかし、乾燥機を使わざるを得ない場合はドラム式の乾燥機を使うことでタテ型洗濯乾燥機や衣類乾燥機を使うよりも1/3から1/4程度に消費電力を減らすことができます。また、メーカーによっては節電モードを設定している機種(6kgの洗濯に対して620Whの消費電力量)もあり、これらを参考にして製品を選択することも重要と思われます。

 しかし、価格面で手が出せないという方は、洗濯機と衣類乾燥機を使い、衣類乾燥機の使い方を工夫することで、省エネを実現させることを考えることも必要かもしれません。これは利便性を多少犠牲にしても省エネを実現したい人に有効と思います。その実験結果については、別の報告で示したいと思います。