今回はガスコンロの省エネ性能を整理します。前回の報告で、電子レンジ、IH調理器、ガスコンロを対象にレトルト・カレーのあたためにおける消費エネルギー等の比較を行いました(「調理器具の比較(2)-レトルト食品のあたため」を参照ください)。
その結果、電子レンジが最もレトルト食品のあたためには効率的であることが分かりました。また、ガスコンロは電気を用いるIH調理器に比べて熱効率では劣るものの、熱量当りのコストや二酸化炭素排出量は少ないことが分かりました。これは、電力の電源構成が依然として化石燃料に多くを依存していることが原因でした。エネルギーを熱として利用するのであれば、化石燃料を原料として発電された電気よりも直接化石燃料を用いる方が効率的であるのは明らかです。
今回は、都市ガス(またはプロパンガス)を原料とするガスコンロについて、省エネ性能等を整理します。ガスコンロは省エネ法の特定エネルギー消費機器の対象となっており、省エネ基準も定められています。省エネ法では「ガス調理機器」と称し、こんろ、グリル、オーブンといった機能が組み込まれていますが、ここでは「ガスコンロ」の方が一般的に使われているため、この言葉を使います(なお、機能面の説明をするときは「コンロ」ではなく「こんろ」を用います)。
ガスコンロと比較されるものとしてビルトイン型のIHクッキングヒーターが売り出されています。オール電化の住宅ではIHクッキングヒーターが普及しています。ここでは、それとの比較も行いながら、その性能の違いなどにも触れます。
省エネ基準(基準消費エネルギー効率)
ガスコンロ(省エネ法ではガス調理機器)は省エネ法の特定エネルギー消費機器29品目のうちの1つです。省エネ基準等は2002年経済産業省告示第433号(制定)「ガス調理機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」、最終改定2019年経済産業省告示第46号によって規定されています。
ガスコンロにはこんろ、グリル、オーブンの3種類の調理機能が設置されているものがありますが、その調理機能別に省エネ基準(基準エネルギー消費効率)が設定されています。各部によってエネルギー消費効率の指標も以下のように異なります1)。
(1)こんろ部:熱効率
(2)グリル部:1回の調理に要するガス消費量
(3)オーブン部:1回の調理に要するガス消費量
まず、こんろ部については、JIS S2103(2019)の測定方法に基づいて熱効率を測定します(JIS S2103の内容については、「IH調理器(2)-消費電力の測定」に概要を記載していますので参照ください)。こんろが複数ある機器については、そのこんろの熱量のランク別に設定された重みを乗じた平均値を算定することになっています。
グリル部のガス消費量は、「アジ(魚)と同程度の熱容量を有する銅製のブロックの温度を100K上昇させるためのガス消費量」です。また、オーブン部のガス消費量は「ガスオーブンの庫内を初温より180K上昇させるためと、その後継続してその状態を20分間保持するためのガス消費量」です。それぞれのエネルギー消費効率の測定方法に関する詳細は、本サイトの「ガスコンロのエネルギー消費効率」を参照ください。
また、製造事業者に求められる表示内容は以下の通りです。
(1)区分名
(2)こんろ部エネルギー消費効率(こんろ部を有するものに限る)
(3)グリル部エネルギー消費効率(グリル部を有するものに限る)
(4)オーブン部エネルギー消費効率(オーブン部を有するものに限る)
目標年度は、こんろ部は2006年度以降、グリル部およびオーブン部は2008年度以降となっています。
(1)こんろ部
次に、それぞれのガスコンロの機能別の省エネ基準を表-1に示します。表-1に示すように、省エネ基準は調理機器の種別、設置形態、バーナの数により区分され、それぞれ省エネ基準が決められています。
表-1 ガス調理機器の省エネ基準(こんろ部)
ガス調理機器の種別 | 設置形態 | バーナの数 | 区分名 | こんろ部基準エネルギー消費効率 |
---|---|---|---|---|
ガスこんろ | 卓上形 | A | 51.0 | |
組込形 | B | 48.5 | ||
ガスグリル付こんろ | 卓上形 | 2口以下 | C | 56.3 |
3口以上 | D | 52.4 | ||
組込形 | 2口以下 | E | 53.0 | |
3口以上 | F | 55.6 | ||
キャビネット形又は据置形 | G | 49.7 | ||
ガスレンジ | H | 48.4 |
2 「卓上形」とは、台の上に置いて使用するものをいう。
3 「組込形」とは、壁又は台に組み込んで使用するものをいう。
4 「キャビネット形」とは、専用のキャビネットの上に取り付けて使用するものをいう。
5 「据置形」とは、台又は床面に据え置いて使用するものをいう。
こんろ部の基準エネルギー消費効率(省エネ基準)は最大でも56.3%であり、その値は大きくありません。IHクッキングヒーターとの性能比較の対象となる「区分F」(組込型(ビルトインタイプ)、バーナ数が3口以上)は、省エネ基準が55.6%となっています。
後に示すようにガスコンロ製品の多くが省エネ基準100%であるため、省エネ基準値が高い「卓上型、バーナ2口以下」(区分C)や「組み込み型、バーナ3口以上」(区分F)の製品を選ぶことが省エネにつながります。
(2)グリル部
グリル部の省エネ基準は表-2に示すように、燃焼方式(片面焼き、両面焼き)と調理方式(水あり、水なし)により区分され、グリル部の庫内容積の関数として基準値が決められています。下図に示すように、「片面焼き」の方が「両面焼き」に比べて庫内容積が大きくなると基準値が大きくなる傾向(傾きが大きい)があります。「水なし」の庫内容積が大きいグリルを求める場合(7L以上)は、「両面焼き」を選択する方が省エネになります(下図参照)。
表-2 ガス調理機器の省エネ基準(グリル部)
燃焼方式 | 調理方式 | 区分名 | グリル部の基準エネルギー消費効率 |
---|---|---|---|
片面焼き | 水あり | I | E=25.1Vg+123 |
水なし | J | E=25.1Vg+16.4 | |
両面焼き | 水あり | K | E=12.5Vg+172 |
水なし | L | E=12.5Vg+101 |
E:グリル部基準エネルギー消費効率(Wh)
Vg:庫内容積(L)
2「片面焼き」とは、食材の片側から加熱調理する方式のもの。
3「両面焼き」とは、食材の両面から加熱調理する方式のもの。
4「水あり」とは、グリル皿に水を張った状態で調理する方式のもの。
5「水なし」とは、グリル皿に水を張らない状態で調理する方式のもの。
6「庫内容積」とは、焼網面積にグリル皿底面から入口上部までの高さを乗じた数値を小数点以下2桁を四捨五入した数値。
また、「水あり」の方が「水なし」に比べて基準値が大きくなっています。これは水を蒸発させるための熱量を要するためです。省エネを求めるのであれば、基準値が小さい「水なし」を選ぶことが必要です(料理の種類によっては「水あり」を求めることがあると思いますが)。
(3)オーブン部
オーブン部の省エネ基準は下表に示す通りです。設置状態により区分され、庫内容積の関数で設定されています。組み込み型の方が基準値は小さくなっており、省エネの面では組み込み型を選択すると良いでしょう。
表-3 ガス調理機器の省エネ基準(オーブン部)
設置状態 | 区分名 | オーブン部基準エネルギー消費効率 |
---|---|---|
卓上形又は据置形 | M | E=18.6Vo+306 |
組込形 | N | E=18.6Vo+83.3 |
E:オーブン部基準エネルギー消費効率(Wh)
Vo:庫内容積(L)
2「卓上形」とは、台の上に置いて使用するものをいう。
3「組込形」とは、壁又は台に組み込んで使用するものをいう。
4「据置形」とは、台又は床面に据え置いて使用するものをいう。
5「庫内容積」とは、庫内底面積に庫内高さを乗じた数値を小数点以下2桁を四捨五入した数値。
省エネ技術
ガスコンロのこんろ部の省エネ基準(熱効率)は製品の主流である「区分C」、「区分F」では55%を超えています。しかし、一昔前のガスコンロの熱効率は40~50%と言われていました。省エネ法のトップランナー制度の適用によって熱効率の向上が図られてきたと言えます。
ガスコンロの省エネのための技術または工夫している点を以下に示します2)。
(1)バーナについて
● 炎が鍋の中心部に当たるようにする。
● 炎が横に広がらないように炎の出る角度を上げる。
● バーナキャップの径を小さくする。ただし、ガス消費量の大きいバーナでは炎の安定性が悪くなることもあるため、バーナの炎口形状に工夫をする。
(2)ごとく(五徳)について
● ごとくに奪われる熱を少なくするために、バーナ毎に独立した、熱容量の小さいごとく形状にする。
● バーナと鍋の距離を小さくするために、ごとくの高さを低くする。
(3)給排気面での構造について
● バーナと鍋の距離が小さいと、熱効率が高くなる反面、燃焼性が悪化(COの排出増)する。このため、効率良く炎に空気を供給したり、排気が抜けやすい構造にするためにバーナの炎口形状並びに汁受け皿及びごとくの形状を工夫する。
(4)Siセンサーコンロ
近年の省エネ対策は、これらのハード面での改善だけでなく、ソフト面での改善、具体的にはセンサーを利用した加熱し過ぎの防止による省エネも図られるようになっています。日本ガス協会では安全性と省エネ性を目的とした、「Siセンサーコンロ」の導入を自主基準として設定しています4)。
「Siセンサーコンロ」のSiは、3つのS(Safety, Support, Smile)とi(intelligence)を意味しており、温度センサーを用いた下表の機能を搭載しています。IHクッキングヒーターでも示した機能とほぼ同じ機能がガスコンロにも搭載されてることが分かります。
表-4 Siセンサーコンロの安全性、省エネ性向上機能
機能名 | 内 容 | |
---|---|---|
標準推奨 | 調理油(天ぷら油)過熱防止装置 | コンロのセンサーが鍋底の温度を感知し、鍋が約250℃になると自動的に消火して揚げ物油の温度が上昇しすぎるのを防いで、発火を防止する。 |
こんろ消し忘れ消火機能 | ガスの火を消し忘れても、点火後一定時間が経過した時点で、自動消火する。 | |
立ち消え安全装置 | 煮こぼれや吹きこぼれ、強風などで火が消えたとき、自動的にガスを止める。 | |
早切れ防止機能 | ガスの特長を生かした強火での炒め物の際に、安全装置が働いてすぐに火を消さずに火力調整をする。 | |
追加機能 | 焦げつき消火機能 | 煮物調理時に、焦げつきを検知すると初期段階において自動消火する。 |
鍋なし検知機能 | 鍋がのっていない状態では点火せず、使用中に鍋をはずすと自動で小火になり、一定時間後消火する。 | |
湯沸かし機能 | お湯が沸いたら自動的に消火する。一定時間保温したあと、自動消火するタイプもある。 | |
油温度調節機能 | 設定温度になるまで加熱した後、自動的に強火・弱火を繰り返して温度を保ち、揚げ物や焼き物を上手においしく仕上げる。 | |
自動炊飯機能 | 火加減を自動調節。炊飯専用鍋とのセットでごはんを炊く。 |
製品の消費エネルギーに関する特性
(1)火力の構成
現在、生産・販売されているガスコンロ製品の省エネ性能について、資源エネルギー庁の省エネサイトからデータを集計して分析します5)。まず、登録されている製品数は下表に示す通り1,964であり、こんろ部の区分別では「区分F」と「区分C」が多くなっています。「区分D」(卓上型、バーナ3口以上)と「区分H」(ガスレンジ)は登録がありませんでした。
表-5 こんろ部の省エネ区分別の製品数
ガス調理機器の種別 | 設置形態 | バーナの数 | 区分名 | 製品数 |
---|---|---|---|---|
ガスこんろ | 卓上形 | A | 27 | |
組込形 | B | 45 | ||
ガスグリル付こんろ | 卓上形 | 2口以下 | C | 524 |
3口以上 | D | 0 | ||
組込形 | 2口以下 | E | 112 | |
3口以上 | F | 1,252 | ||
キャビネット形又は据置形 | G | 4 | ||
ガスレンジ | H | 0 | ||
合 計 | 1,964 |
表-6に、製品数が多い「区分C」と「区分F」のこんろ部の火力別構成のパターンを示します。「区分C」は「卓上型」で「バーナ2口以下」ですが、バーナの火力が4.2kWと2.97kWの組合せで2つのパターンとなっています。パターンaすなわち4.2kWと2.97kWの組合せがほとんど(94%)を占めます。一方、「区分F」は「組込型」で「バーナ3口以上」ですが、火力が5.24kW(または5.25kW)、4.3kW、1.27kW(乃至1.30kW)の3種を有しています。これらの組合せが3パターンあり、パターンdの4.2kW、4.2kW、1.27kWの火力をもつ製品が多く(59%)を占めています。
表-6 こんろ部のバーナ火力の組合せ別の製品数
省エネ区分 | 火力パターン | 大こんろ | 中こんろ | 小こんろ | 製品数 |
---|---|---|---|---|---|
「区分C」 卓上型 バーナ数 2口以下 | パターンa | 4.2kW | 2.95kW, 2.97kW | - | 492 |
パターンb | 2.97kW | 2.97kW | - | 32 | |
合計 | 524 | ||||
「区分F」 組込型 バーナ数 3口以上 | パターンc | 5.24kW, 5.25kW | 2.97kW | 1.27kW, 1.28kW | 14 |
パターンd | 4.2kW | 4.2kW | 1.27kW~1.30kW | 741 | |
パターンe | 4.2kW | 2.95kW, 2.97kW | 1.27kW~1.30kW | 497 | |
合計 | 1,252 |
下図に「区分C」と「区分F」の代表的な火力構成のガスコンロを示します。また、参考に最新式のIHクッキングヒーターの火力構成についても示しています。IHクッキングヒータの火力(定格消費電力)は3.2kWが2口、2.0kWが1口の構成となっています。IHクッキングヒータの比較対象となる「区分F」のガスコンロは、火力は4.2kWが2口、約1.3kWが1口の構成です。ガスコンロの方が火力が大きいのは熱効率が小さいためと考えられます。
今回の報告で、ガスコンロの熱効率は「区分F」が55.6%程度ということが分かりましたので、IHクッキングヒータの熱効率80%~90%と比べると、熱効率の差は大きい(約1.5倍)と言えます。しかし、前回の報告で示した通り、現状の電力の電源構成からは、電気の熱量当りのコスト、温室効果ガス(二酸化炭素)排出量がより大きい(2.4~2.5倍)ため、その熱効率の差であってもガスコンロの方が有利であるとされました。なお、IHクッキングヒーターの製品の火力については「IH調理器(1)-加熱原理と製品の特徴」に示しています。
ただし、今後の電源構成の変化によっては、再生可能エネルギーの割合が増加していく時点では、これが逆転してくことが想定されます。ガスコンロとIH調理器のランニングコスト、二酸化炭素排出量の比較については、前回報告(「調理器具の比較(2)-レトルト食品のあたため」)を参照ください。
(2)省エネ性能
こんろの省エネ区分別、省エネ基準達成率別の製品数を下図に示します5)。「区分C」と「区分F」は全ての製品が省エネ基準100%です。「区分A」、「区分B」、「区分E」は100%超の達成率を有する製品があります。これらの省エネ基準は比較的省エネ基準が低いため、達成率が100%を超えている製品が生産されているものと思われます。具体的には「区分B」の省エネ基準は熱効率が48.5%であるため、達成率が110%でも53.4%となり、「区分F」の基準値(55.6%)を下回る熱効率です。
グリルの省エネ区分別、省エネ基準達成率別の製品数を見ると下表と下図の通りです。省エネ法の「区分L」(両面焼き、水なし)の製品数が多く、グリルの省エネ基準達成率も100%未満から106%のものまで幅広い製品が登録されています。「区分J」は364製品ありますが、「区分I」は57製品のみであり、「区分K」は登録されていません。
表-7 グリルの省エネ区分別、省エネ基準達成率別の製品数
省エネ区分 | 区分I 片面焼き,水あり | 区分J 片面焼き,水なし | 区分K 両面焼き,水あり | 区分L 両面焼き,水なし | 合 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
グリルの 省エネ基準 達成率 | 100%未満 | 2 | 0 | 0 | 2 | 4 |
100% | 7 | 132 | 0 | 792 | 931 | |
101% | 0 | 0 | 0 | 108 | 108 | |
102% | 0 | 0 | 0 | 11 | 11 | |
104% | 6 | 1 | 0 | 0 | 7 | |
105% | 42 | 231 | 0 | 446 | 719 | |
106% | 0 | 0 | 0 | 112 | 112 | |
合 計 | 57 | 364 | 0 | 1,471 | 1,892 |
次に、ガスオーブンの省エネ区分別、エネルギー消費効率別の製品数を示すと下図の通りです6)。「区分M」(卓上型または据置型)の製品数は8、「区分N」(組込型)の製品数は85です。そのうち、「区分M」の省エネ基準達成率は100%が6製品、105%が2製品です。一方、「区分N」は全てが省エネ基準達成率が101%以上であり、110%が21製品あります。こんろと同様に組込型の方が高い省エネ基準達成率となっています。
最後に、メーカー別、こんろの省エネ基準達成率別の製品数を下表に示します。リンナイが1,400余りの製品を供給しており、東京ガス、大阪ガス、パロマが100以上の製品を提供しています。
表-8 メーカー別、こんろの省エネ基準達成率別の製品数
こんろ部の省エネ 基準達成率 | ノーリツ | パロマ | リンナイ | 大阪ガス | 調布製作所 | 東京ガス | 東邦ガス | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
100%未満 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||||
100% | 71 | 92 | 1297 | 108 | 1 | 192 | 27 | 1,788 |
101% | 0 | 5 | 1 | 1 | 7 | |||
102% | 2 | 1 | 16 | 2 | 21 | |||
103% | 2 | 1 | 3 | 2 | 1 | 9 | ||
104% | 0 | |||||||
105% | 2 | 59 | 8 | 2 | 3 | 74 | ||
106% | 5 | 4 | 1 | 10 | ||||
107% | 5 | 5 | ||||||
108% | 2 | 7 | 1 | 10 | ||||
109% | 4 | 1 | 5 | |||||
110% | 4 | 2 | 16 | 1 | 1 | 24 | ||
112% | 7 | 7 | ||||||
113% | 1 | 3 | 4 | |||||
合 計 | 85 | 104 | 1,422 | 121 | 2 | 199 | 31 | 1,964 |
どのメーカーも省エネ基準は100%以上を達成しており、110%以上の製品も35製品(全体の1.8%)あります。リンナイ、ノーリツ、パロマ、調布製作所、東京ガスが省エネ基準達成率110%以上の製品を提供しています。
まとめ
今回は、ガスコンロの省エネ基準と製品の省エネ特性を整理しました。省エネ法上はガスコンロは「ガス調理機器」という名称で記載されています。調理機能として、こんろ、グリル、オーブンの3種類ありそれを区別するためですが、ここでは一般的に使われているガスコンロという言葉を使います。
省エネ法における省エネ基準は、ガスコンロの機能別に設定されています。こんろは熱効率、グリルとオーブンは1回の調理に要するガス消費量です。省エネ基準の区分は、こんろは調理機器の種別、設置形態、バーナの数により区分されて、それぞれ基準値が設定されています。その基準値は最大でも56.3%です(卓上型、バーナ数2口以下)。グリルとオーブンの省エネ基準は庫内容積の関数で設定されています。
そのため、ガスコンロを選択するときは、省エネ基準が高い区分の機種を選ぶことが重要です。特に、システムキッチンに組み込まれた3口以上のバーナを持つ機種(区分F)は熱効率が55.6%ですので、比較的高い熱効率になっています。
熱効率の向上を図るためにはバーナから出る炎が鍋底から広がって空気を温める熱損失を少なくすることであり、そのため炎が広がらないような改良が行われてきました。また、バナーを囲むごとく(五徳)での熱損失を少なくすること、給排気の構造の改善が行われてきました。
さらに、安全性の向上と加熱し過ぎを防止するため、業界の自主基準としてSiセンサーこんろの導入が推奨されてきました。これは、IHクッキングヒーターでも導入されている温度センサーを用いた過熱防止等の機能です。
資源エネルギー庁の省エネ製品情報サイトより現在の生産・販売されている製品の省エネ基準の達成状況の整理を行いました。こんろについては製品の主流である「区分C」と「区分F」は全ての製品が省エネ基準達成率100%であり、100%を超える製品はありません。これは省エネ基準が他の区分に比べて高いためですが、今後の技術開発が望まれます。
一方、グリルの主流は「両面焼き、水なし」であり、省エネ基準を超える製品がいくつかありますが、最大でも106%です。電化製品と比べて省エネに関する技術開発は難しいものと思われます。なお、オーブンの機能を持つ製品は登録がありませんでした。
次回は、ガスコンロのガス消費量を実際に測定して熱効率を算定し、省エネ基準の達成状況を把握していく予定です。
<参考文献>
1)2002年経済産業省告示第433号(制定)「ガス調理機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」、最終改定2019年経済産業省告示第46号
2)総合資源エネルギー調査会 省エネルギー基準部会、ガス・石油機器判断基準小委員会、最終とりまとめ、2002年4月3日
3)総合資源エネルギー調査会省エネルギー基準部会、ガス・石油機器判断基準小委員会、最終取りまとめ、2004年5月6日
4)日本ガス協会:公式Webサイト、Siセンサーコンロ
5)資源エネルギー庁:省エネ型情報サイト、ガスコンロ、2022年5月6日閲覧
6)資源エネルギー庁:省エネ型情報サイト、ガスオーブン、2022年5月6日閲覧