今回は、電気をエネルギー源とする温水器(給湯器)であるヒートポンプ給湯器(エコキュート)を取り上げます。前回まではガス温水器を対象として省エネ性能を把握し、実際のガス消費量を測定して熱効率等を分析してきました。従来型のガス温水器の熱効率は80%程度、高効率型であるエコジョーズは95%程度の熱効率でした。エコキュートはエアコンと同じ原理の冷媒の潜熱を利用した電気機器であり、熱効率が100%を上回ることができます。
しかし、貯湯槽にある水を温めて利用するため、貯湯槽の設置場所を確保する必要があり、集合住宅での設置は非常に難しいとされてきました。下図に温水器(給湯器)の種類別の普及率を示します1)。エコキュートは2019年の調査で、戸建住宅では24.4%普及していますが、集合住宅では3.0%、全体で14.8%です。ガス温水器は集合住宅では96.6%の普及率となっており(小型瞬間湯沸器を含みます)、基本的に集合住宅ではほとんどがガス温水器です。
今後のカーボンニュートラルに向けて、エコキュートに関する技術開発や普及促進制度などが充実していくことと思われますので、今回はエコキュートを取り上げて、省エネ性能を整理するとともに、ガス温水器との比較を行ってその特徴を整理していきます。
なお、この電気温水器の名称は、告示ではヒートポンプ給湯器、経産省のWebサイトではエコキュートと記載されていますが、本サイトではエコキュートと称します。
エコキュートの原理と特徴
エコキュートは電気をエネルギー源とする温水器であり、エアコンと同様にヒートポンプを用いて貯湯槽にある水を温めます。使われる冷媒は二酸化炭素です。下図に示すように、ヒートポンプユニットと貯湯ユニットから構成されています2)。
水を温める仕組みは以下の通りです。ヒートポンプユニット内にある空気熱交換器での冷媒の相変化(液体の蒸発による熱吸収:潜熱の回収)と温度差による熱移動により、温度(熱)をくみ上げます。さらに圧縮機で高温にされた後、水熱交換器で貯湯ユニットを循環する水を温めます。温められた高温の水は貯湯ユニット内の貯留水を温め、その温水は洗面やキッチン、風呂に利用されます。一方、水熱交換器を出た冷媒は、膨張弁で冷却されて空気熱交換器で熱を吸収するというサイクルになっています。空気熱交換器で空気から熱をくみ上げるためにヒートポンプと称されます。
ヒートポンプで使われるのは圧縮機での機械的な動力とポンプやファンの電力のみであり、得られる熱のエネルギーよりも少ないエネルギー(電力)であるため、熱効率は100%を超えることができます(後に示すように、最高のものでは400%以上のものもあります)。
エコキュートとガス温水器の熱効率を比較したものを下図に示します。エコキュートは2025年度目標の省エネ区分「区分E」(標準世帯、貯湯容量が320L以上550L未満、寒冷地仕様以外のもの)の省エネ基準が年間給湯保温効率(熱効率)3.5であり、これを1次エネルギー換算すると133.8%となります。また、省エネ区分「区分B」(少人数世帯、寒冷地仕様)の省エネ基準は年間給湯保温効率2.7であり、これを1次エネルギー換算すると103.2%です3)。
<エコキュートの年間給湯保温効率を1次エネルギー換算の熱効率に変換する方法> ヒートポンプ給湯器の熱効率(一次エネルギー換算値)= 年間給湯保温効率×3.6(MJ/kWh)/省エネ法における電気から熱量への換算値9.418(MJ/kWh) ※昼間の電気:9.97MJ/kWh 夜間の電気:9.28MJ/kWh 上記以外の電力:9.76MJ/kWh 「昼間」とは、午前8時から午後10時までをいい、「夜間」とは、午後10時から翌日の午前8時までをいう。 ※エコキュートは夜間電力を使用することが多いことから、夜間8,昼間2の割合で省エネ法の換算係数を加重計算した値(9.418MJ/kWh)を採用。 上式から、1次エネルギー換算値の熱効率が100%になる年間給湯保温効率は2.6となります。 出所)経済産業省:エアコンディショナー及び電気温水機器判断基準ワーキンググループ、電気温水機器の取りまとめ(2021年3月) |
一方、ガス温水器で普及している省エネ区分「Ⅱ-6」(瞬間湯沸器、強制通気式、「その他」の構造)の熱効率は84.4%(省エネ基準値)です。ガス温水器は高効率機種であるエコジョーズでも、熱効率は最大でも95%程度です(上図では経産省資料3)に基づき92.5%)。これらの結果より、エコキュートは熱効率値が最低の機種でも高効率ガス温水器であるエコジョーズの熱効率を10%程度上回ることが分かります。
熱効率が高いエコキュートですが、デメリットもあります。エコキュートのデメリットは以下の通りです4)。
(1)ヒートポンプと貯湯槽を設置する場所の確保
(2)夜間電力を利用するため低周波騒音の環境問題
(3)初期費用(本体価格と工事費)が高額
デメリットの第一は場所の確保の問題です。4人家族では貯湯槽の容量は400L程度になりますので、それを設置できる面積と荷重(400kg)に耐えられる床の支持強度が必要です。集合住宅の場合には特に2階以上の場合は設置が困難な場合が多いと思われます。
また、夜間電力を利用することが多いため、ヒートポンプユニットからでる低周波騒音の環境問題があります。普段なら気にならない騒音でも夜間には睡眠を妨げる場合があるため、特に集合住宅の場合は難しい可能性があります。最近では、太陽光発電と連携して昼間の電力を使う方法も提案されています。
さらに、エコキュートの価格はガス温水器の数倍の初期費用(本体価格と工事費)となる場合があり、エコキュートの電気代が節約できても導入費用での課題をクリアする必要があります。なお、リースを利用するなどの方法もありますので、GHG削減の効果と合わせて、良く検討することをお勧めします。
エコキュートの省エネ基準
エコキュートは省エネ法の対象になっており、その法規制は2013年経済産業省告示第38号「電気温水機器のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準」(制定)、2021年告示第115号(最終改定)です。告示の内容の詳細については、本サイトの「エコキュートのエネルギー消費効率」を参照ください。
告示では、エコキュートはヒートポンプ給湯器と呼ばれていますので、法律の記載内容を示すときは、ヒートポンプ給湯器の用語を使います。対象とするヒートポンプ給湯器は、二酸化炭素を冷媒とする家庭用ヒートポンプ給湯器全ての製品としています。ただし、ヒートポンプ給湯器からの温水を暖房に利用する製品は数が少ないため除外されています。
目標年度はこれまで2017年度でしたが、2021年の改定告示により2025年度となりました。現在は2種類の目標年度を持つ製品が存在します。
まず、目標年度が2017年度の製品の省エネ基準を下表に示します。省エネ区分は、想定世帯(標準、少人数)、貯湯容量(4区分)、仕様(寒冷地、それ以外)、保温機能(有無)、貯湯缶数(1缶、複数缶)によって区分されています。標準世帯が32区分、少人数世帯は4区分(貯湯容量、貯湯缶数の区別なし)で全部で36区分です。
表-1 エコキュートの省エネ基準(目標年度2017年度の製品)
区分 | 基準エネルギー |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|
区分名 | 想定世帯 | 貯湯容量 | 仕 様 | 保温機能 | 貯湯缶数 | 消費効率(%) |
1 | 標 準 | 240L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 有 | 一缶 | 2.8 |
2 | 多缶 | 2.4 | ||||
3 | 無 | 一缶 | 3.0 | |||
4 | 多缶 | 2.6 | ||||
5 | 寒冷地仕様 | 有 | 一缶 | 2.3 | ||
6 | 多缶 | 2.0 | ||||
7 | 無 | 一缶 | 2.6 | |||
8 | 多缶 | 2.3 | ||||
9 | 240L以上320L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 有 | 一缶 | 2.8 | |
10 | 多缶 | 2.8 | ||||
11 | 無 | 一缶 | 3.2 | |||
12 | 多缶 | 2.8 | ||||
13 | 寒冷地仕様 | 有 | 一缶 | 2.3 | ||
14 | 多缶 | 2.0 | ||||
15 | 無 | 一缶 | 2.7 | |||
16 | 多缶 | 2.3 | ||||
17 | 320L以上550L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 有 | 一缶 | 3.3 | |
18 | 多缶 | 2.8 | ||||
19 | 無 | 一缶 | 3.2 | |||
20 | 多缶 | 2.8 | ||||
21 | 寒冷地仕様 | 有 | 一缶 | 2.7 | ||
22 | 多缶 | 2.3 | ||||
23 | 無 | 一缶 | 2.7 | |||
24 | 多缶 | 2.3 | ||||
25 | 550L以上 | 寒冷地仕様以外のもの | 有 | 一缶 | 2.9 | |
26 | 多缶 | 2.5 | ||||
27 | 無 | 一缶 | 2.9 | |||
28 | 多缶 | 2.5 | ||||
29 | 寒冷地仕様 | 有 | 一缶 | 2.4 | ||
30 | 多缶 | 2.1 | ||||
31 | 無 | 一缶 | 2.5 | |||
32 | 多缶 | 2.2 | ||||
33 | 少人数 | - | 寒冷地仕様以外のもの | 有 | - | 2.4 |
34 | 無 | 2.8 | ||||
35 | 寒冷地仕様 | 有 | 2.0 | |||
36 | 無 | 2.4 |
備考2 「寒冷地仕様」とは、JIS C9220(2011)に規定する冬の寒さが厳しい地域での使用を想定した仕様を指す。
備考3 「保温機能」とは、ふろの湯を循環加温する機能を指す。
なお、電気温水器のエネルギー消費効率の指標は年間の給湯パターンに基づく給湯熱量と年間消費電力量の比で、下の式で表されます。下式で熱量の単位はMJ、消費電力量の単位はkWhです。
<ふろ保温機能のあるもの>
年間給湯保温効率=(1年間に使用する出湯水が得た熱量+保温のために浴槽水が得た熱量)/(1年間に必要な消費電力量×3.6)
<ふろ保温機能のないもの>
年間給湯効率=1年間に使用する出湯水が得た熱量/(1年間に必要な消費電力量×3.6)
この指標は外気温に影響を受けるため、寒冷地か否か(仕様)による省エネ基準の差が大きくなっています。目標値は2.0から3.3までの範囲となっています。この数値は投入した電力量の2.0倍から3.3倍の熱量が得られることを意味しており、非常に高い熱効率を持つことが分かります。
目標年度が2025年度の製品の省エネ基準を下表に示します。2025年度が目標の省エネ区分は、想定世帯(標準、少人数の2種)、貯湯缶数(1缶、多缶)、貯湯容量(3区分)、仕様(寒冷地、それ以外)によって区分されています。2017年度の省エネ区分で設定していた保温機能での区分はなくなり、貯湯容量の区分も3区分となり、全区分数は10区分と少なくなりました。
省エネ基準の目標値は最低でも2.7、最大で3.5と厳しくなっています。2017年度の目標基準値に比べて、寒冷地仕様の目標基準値が大きく改善したことが分かります。
表-2 エコキュートの省エネ基準(目標年度2025年度の製品)
区 分 | 基準エネルギー消費効率 | ||||
---|---|---|---|---|---|
区分名 | 想定世帯 | 貯湯缶数 | 貯湯容量 | 仕 様 | (%) |
A | 少人数 | - | - | 寒冷地仕様以外のもの | 3.0 |
B | 寒冷地仕様 | 2.7 | |||
C | 標 準 | 一缶 | 320L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 3.1 |
D | 寒冷地仕様 | 2.7 | |||
E | 320L以上550L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 3.5 | ||
F | 寒冷地仕様 | 2.9 | |||
G | 550L以上 | 寒冷地仕様以外のもの | 3.2 | ||
H | 寒冷地仕様 | 2.7 | |||
I | 多缶 | - | 寒冷地仕様以外のもの | 3.0 | |
J | 寒冷地仕様 | 2.7 |
備考2 「寒冷地仕様」とは、JIS C9220(2018)に規定する冬の寒さが厳しい地域での使用を想定した仕様を指す。
エコキュート製品のエネルギー消費の特性
目標年度が2017年度の製品数を資源エネルギー庁の省エネ型製品情報サイトの情報より取りまとめると以下の通りです5)。資源エネルギー庁のサイト情報では2017年度の製品データは省エネ区分が示されていません。そのため、データの記載のある貯湯容量、仕様、貯湯缶数の3種類の指標から省エネ区分を把握して整理しました。
表-3 省エネ区分別の製品数(2017年目標)
省エネ区分 | 製品数 | |||
---|---|---|---|---|
区分名 | 貯湯容量 | 仕 様 | 貯湯缶数 | |
1, 3 | 240L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 一缶 | 14 |
2, 4 | 多缶 | 13 | ||
5, 7 | 寒冷地仕様 | 一缶 | 6 | |
6, 8 | 多缶 | 6 | ||
9, 11 | 240L以上320L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 一缶 | 54 |
10, 12 | 多缶 | 10 | ||
13, 15 | 寒冷地仕様 | 一缶 | 0 | |
14, 16 | 多缶 | 0 | ||
17, 19 | 320L以上550L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 一缶 | 488 |
18, 20 | 多缶 | 93 | ||
21, 23 | 寒冷地仕様 | 一缶 | 302 | |
22, 24 | 多缶 | 0 | ||
25, 27 | 550L以上 | 寒冷地仕様以外のもの | 一缶 | 52 |
26, 28 | 多缶 | 0 | ||
29, 31 | 寒冷地仕様 | 一缶 | 25 | |
30, 32 | 多缶 | 0 | ||
合 計 | 1,063 |
まず、製品数は全部で1,063製品あります。そのうち、貯湯容量が「320L以上550L未満」で貯湯缶数が「一缶」の製品が最も多く、790製品ありました(寒冷地、寒冷地以外を含む)。この製品だけで全体の7割以上を占めています。家族数が4人世帯の場合、貯湯容量が370Lから400L程度が推奨されていますので、このランクが最も多くなるものと思われます。
次に、省エネ基準達成率別の製品数を下表に示します。この結果から、省エネ基準を満たしていない製品はありませんでした。省エネ基準達成率が「100~104%」が671製品(全体の63%)と最も多くなっています。省エネ基準を2割以上超過している製品も35製品と3%程度あります。
表-4 省エネ区分、省エネ基準達成率別の製品数(2017年目標)
区分 | 省エネ基準達成率 | 合計 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
≦99% | 100-104% | 105-109% | 110-114% | 115-119% | ≧120% | ||
1,3 | 2 | 2 | 10 | 14 | |||
2,4 | 12 | 1 | 13 | ||||
5,7 | 6 | 6 | |||||
6,8 | 5 | 1 | 6 | ||||
9,11 | 13 | 40 | 1 | 54 | |||
10,12 | 4 | 6 | 10 | ||||
17,19 | 386 | 33 | 13 | 36 | 20 | 488 | |
18,20 | 48 | 45 | 93 | ||||
21,23 | 174 | 55 | 39 | 19 | 15 | 302 | |
25,27 | 27 | 8 | 17 | 52 | |||
29,31 | 8 | 8 | 9 | 25 | |||
合 計 | 0 | 671 | 204 | 88 | 65 | 35 | 1,063 |
メーカー別の省エネ基準達成率別の製品数(目標年度2017年度)を示したものが下図です。9社から製品が販売されており、三菱電機が308製品、コロナが286製品、パナソニックが148製品を提供しています。省エネ基準の達成率については、三菱電機が125%を超える製品を10製品、ダイキン工業が2製品提供しています。三菱電機は年間給湯保温効率が4.0(1次エネルギー換算の熱効率は153%)を超える製品を12製品提供しており、最大は4.2の製品でした。
次に、目標年度が2025年の製品について省エネ区分別の製品数を集計すると以下の通りです。全製品数は592製品とやや少なくなっています。やはり、貯湯容量が「320L以上550L未満」の製品が最も多く、486製品と全体の82%を占めています。
表-5 省エネ区分別の製品数(2025年目標)
区 分 | 製品数 | ||||
---|---|---|---|---|---|
区分名 | 想定世帯 | 貯湯缶数 | 貯湯容量 | 仕 様 | |
A | 少人数 | - | - | 寒冷地仕様以外のもの | 4 |
B | 寒冷地仕様 | 4 | |||
C | 標 準 | 一缶 | 320L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 17 |
D | 寒冷地仕様 | 4 | |||
E | 320L以上550L未満 | 寒冷地仕様以外のもの | 334 | ||
F | 寒冷地仕様 | 152 | |||
G | 550L以上 | 寒冷地仕様以外のもの | 23 | ||
H | 寒冷地仕様 | 7 | |||
I | 多缶 | - | 寒冷地仕様以外のもの | 47 | |
J | 寒冷地仕様 | 0 | |||
合計 | 592 |
次に、省エネ基準達成率別の製品数を下表に示します。この結果、省エネ基準を満たしていない製品は362製品(全体の61%)ありました。目標年度が2025年なので、今後省エネ性能が向上していくものと考えられます。一方、省エネ基準達成率が「115%以上」の製品も12製品あり、これらの製品を選択していくことで、より省エネを達成できると思われます。
表-6 省エネ区分、省エネ基準達成率別の製品数(2025年目標)
区分名 | ≦94% | 95-99% | 100-104% | 105-109% | 110-114% | ≧115% | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
A | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 |
B | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 |
C | 2 | 8 | 7 | 0 | 0 | 0 | 17 |
D | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 |
E | 191 | 54 | 52 | 13 | 16 | 8 | 334 |
F | 22 | 47 | 56 | 7 | 16 | 4 | 152 |
G | 8 | 4 | 11 | 0 | 0 | 0 | 23 |
H | 0 | 0 | 7 | 0 | 0 | 0 | 7 |
I | 14 | 0 | 33 | 0 | 0 | 0 | 47 |
合計 | 249 | 113 | 166 | 20 | 32 | 12 | 592 |
まとめ
今回は、電気温水器のうちエコキュート(ヒートポンプ給湯器)のエネルギー消費の特性をまとめした。エコキュートはエアコンと同じ原理(冷媒を使った潜熱による熱回収と熱移動)で水を温めます。
省エネ法の対象とされており、目標年度が2017年度、2025年度の省エネ基準が設定されています。省エネ区分は2017年度基準では想定世帯、貯湯容量、仕様、保温機能、貯湯缶数によって36に区分されています。目標年度が2025年度の省エネ区分は想定世帯、貯湯缶数、貯湯容量、仕様によって区分され、10区分と少なくなりました。
省エネ基準の指標値については、年間給湯保温効率(または年間給湯効率)であり、1年間に使用する出湯水が得た熱量と保温のために浴槽水が得た熱量を1年間に必要な消費電力量を熱量に換算した値で除したものとなっています。
省エネ基準の目標値については、2017年度は2.0から3.3の範囲となっています。一方、2025年度の目標値は2.7から3.5と厳しくなっています。これは、1次エネルギー換算の熱効率が100%の時の年間給湯保温効率が2.6にあたることから、2021年の改正時にこれを超えることを目標としたものと想定されます。
1次エネルギー換算の熱効率をガス温水器と比較すると、最も普及している「区分E」の1次エネルギー換算値は133.8%でした。また、少人数世帯の「区分B」は1次エネルギー換算値が103.2%でした。これに対して、ガス温水器で広く普及している省エネ区分「Ⅱ-6」の熱効率は84.4%であり、高効率機種であるエコジョーズは最大でも95%程度ですので、エコキュートの省エネ性能が非常に大きいことが分かりました。
現在、生産・販売されているエコキュート製品を資源エネルギー庁のサイトからデータを収集し整理しました。目標年度が2017年度の製品の登録は1,063、2025年度の製品のそれは592でした。目標年度が2017年度の製品は省エネ基準を全て達成していましたが、目標年度が2025年度の製品は省エネ基準を満たしていない製品が362(全体の61%)ありました。今後、性能が向上していくことが期待されます。省エネ基準達成率が高い製品を選ぶことで、より省エネ効果を高めGHG排出量を削減することができます。
<参考文献>
1)環境省:公式Webサイト、2019年度の家庭のエネルギー事情を知る〜給湯機器について〜、
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/2019/result3/detail7/index.html
2)日本冷凍空調工業会:家庭用ヒートポンプ給湯機、ヒートポンプ給湯機とは、
https://www.jraia.or.jp/product/heatpump/p_about.html
3)経済産業省:総合資源エネルギー調査会、省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会、エアコンディショナー及び電気温水機器判断基準ワーキンググループ、電気温水機器の取りまとめ、2021年3月
4)東京電力エナジーパートナー:くらしTEPCO、暮らしの電化、エコキュートのメリット・デメリット、https://evdays.tepco.co.jp/entry/2022/02/14/kurashi9
5)資源エネルギー庁:省エネ型製品情報サイト、エコキュート、2022年7月1日閲覧