前回はガス温水器が使われる用途や特徴、そしてエネルギー消費特性などを整理してきました。また、資源エネルギー庁のサイトから現在販売されている製品の省エネ性能を分析しました(「ガス温水器(1)-省エネ性能」を参照ください)。今回は、実際のガス温水器を用いてガス消費量を測定し、その熱効率などを分析します。
ガス温水器の用途は、給湯、洗面、風呂の湯沸かし、温水暖房などがあります。このうち、大量の水を温める風呂での利用が最も多くのエネルギー(ガス消費量)を使うのではないかと思われます。そのため、今回はガス温水器の風呂での使用におけるガス消費量を測定します。
前回の報告にも示したように、季節によって水の初期温度が異なります。温水器のメーカーでは、春・秋は平均水温17℃、冬は5℃として給湯量の設計をしているようです。今回の測定時期は6月末であるため初期水温はかなり高いことから、測定したガス消費量は少ない傾向となるはずです。そのような条件であることを認識してご覧ください。
ガス消費量の測定方法
(1) 対象としたガス温水器
今回、測定の対象としたガス温水器はリンナイ株式会社のガス温水器(RUF-VS2005SAU)です。型式(VS20)から分かるように給湯能力は20号(春・秋の水温17℃から42℃のお湯を1分間に20L供給することが可能)です。表中の機能の内容にも示されている通り、水温と水量を設定して「湯はり」を自動的に行うことができます。
表-1 測定対象のガス温水器の仕様
項 目 | 内 容 | 外観写真 | |
---|---|---|---|
メーカー | リンナイ株式会社 | ||
型式 | RUF-VS2005SAU | ||
機能 | 自動湯はりタイプ | ||
使用都市ガス | 13A | ||
ガス消費量 kW(kcal/h) | 給湯 | 42.7(36,700) | |
風呂 | 11.6(10,000) | ||
同時使用時 | 42.7(36,700) | ||
出湯能力 (L/min) | 水温+25℃ | 19.6 | |
水温+40℃ | 12.2 | ||
外形寸法(mm) | 高さ610×幅250×奥行250 | ||
質 量 (kg) | 22.3 | ||
消費電力(W) | 待機時 | 3.0 | |
凍結予防ヒータ | 98 | ||
同時使用時 | 164 | ||
省エネ基準 | 省エネ区分 | 区分O | |
省エネ基準 | 80.4% | ||
基準達成率 | 100% | ||
風呂部熱効率 | 78.6% | ||
給湯部熱効率 | 81.0% |
注)省エネ基準は資源エネルギー庁、省エネ型製品情報サイト、ガス温水器(2022年6月16日閲覧)による。
本製品は2017年の製品であるため、省エネ基準の目標年度は2006年度です。省エネ区分は「区分O」(給湯機付きのガスふろがまで、強制通気式、強制循環式、屋外式)であり、その省エネ基準は熱効率80.4%、本製品の省エネ基準達成率は100%です1)。
表-1から風呂部と給湯部の熱効率はそれぞれ78.6%、81.0%と分かります。給湯部は風呂の「湯はり」やシャワーなどの給湯を行うものですが、風呂部は「追い焚き」による温度上昇を行うものです。このことから、「追い焚き」は熱効率が若干低いことになります。
(2) ガス消費量の測定方法
今回の測定では、下表の通り風呂の「湯はり」と2人の入浴時のシャワー等の利用時におけるガス消費量を測定しました。本ガス温水器は給湯温度と水量を設定可能であり、それぞれ40℃、200Lと設定しました。この時の給水温度は23℃であるため、ガス温水器による上昇温度は17Kです。
表-2 風呂の利用時におけるガス温水器の稼働条件
項 目 | 内 容 | 備 考 | |
---|---|---|---|
風呂の「湯はり」 | 給湯量 | 200L | 本製品の初期設定値 |
給水温度 A | 23℃ | 温度計で計測 | |
給湯温度 B | 40℃ | 温度設定 | |
上昇温度 B-A | 17K | ||
入浴時のシャワーの利用 | 入浴者A(男) | 洗髪、体を洗う際でのシャワーの利用 | 「追い焚き」なし |
入浴者B(女) | 洗髪、体を洗う際でのシャワーの利用 | 「追い焚き」なし |
ガス消費量は既設のガスメータで測定しています。読み取りの最小単位は1Lです。ビデオを用いて撮影し、1分ごとの積算ガス消費量より、1分間のガス消費量を把握します。都市ガスの供給事業者は東京ガスであり、供給ガスの種類は13A、発熱量は45MJ/m3です(熱効率の算定では、発熱量はこれまで使用してきた環境省の資料にある44.8MJ/m3を使用します)。東京ガスの供給圧力は1.0~2.5kPaとされています2)。
表-3 ガスメータの仕様
項 目 | 内 容 | 写 真 |
---|---|---|
メーカー名 | 東京ガス株式会社 | |
製品名・型番 | 通信機能付きマイコンメーター JO型 | |
表示 | ガス消費量積算値 | |
最小読み取り値 | 0.001m3 | |
最大圧力 | 3.5kPa | |
最大流量 | 4m3/h | |
機能 | 過大流量遮断、圧力低下遮断、感震遮断、継続時間オーバ―遮断、微小もれ疑い警報 |
ガス消費量の測定結果
(1)「湯はり」時のガス消費量
表-2に示した風呂の利用条件でガス温水器のガス消費量を測定しました。まず、風呂の「湯はり」時のガス消費量(1分毎)の推移を下図に示します。開始3分から14分まではほぼ一定のガス消費量を示しており、平均値が33.6L/分でした。「湯はり」は18分後に終了しており、「湯はり」に要した総ガス消費量は488Lでした。
このガス消費量の推移についてやや不規則な変動をしているためメーカーに問い合わせたところ、以下の回答が返ってきました。
『実際の自動「湯はり」運転は、設定量の「湯はり」後に湯温を確認し、放熱等により設定温度より低ければ「追い焚き」を行う「沸き上げ」運転終了後に自動「湯はり」運転が完了となります。』
すなわち、「湯はり」を行った後に水温を確認し、設定温度に満たなかった場合は設定温度にするために「追い焚き」をするとのことです。上の図では12分間の定常運転の後に、測定開始後16分から18分までの2分間に「追い焚き」をしたと考えてよいと思われます。
それでは、「湯はり」の定常運転時のガス消費量は定格ガス消費量(表-1から42.7kW)に対してどの程度の熱量割合かを計算すると以下の通りです。
「湯はり」時の供給熱量=33.6(L/min)×44.8(kJ/L)/60=25.1kW
能力に対する「湯はり」の熱量割合=25.1kW/42.7kW×100=58.8%
この計算によると、給湯部のガス消費量の能力42.7kWに対して、今回の「湯はり」の定常運転時は能力の約6割のガス消費量で運転していたことになります。これより、「湯はり」時は残りの4割(17.6kW)の能力を他の蛇口やシャワー等で使うことができることになります。
また、「湯はり」の水量について考察すると以下の通りです。「追い焚き」をする前の15分間程度で「湯はり」は終了していると思われますので、200Lを15分間で供給しているので給湯量は約13.3L/分です。出湯能力は表-1に示す通り25℃上昇の場合で19.6L/分ですので、今回の測定における出湯量の能力に対する割合は以下となります。
給湯量の給湯能力に対する割合=13.3/19.6×100=67.9%
この計算結果より、今回の「湯はり」における給湯量は能力の約7割程度であったということができます。この件についても、メーカーに問い合わせたところ、以下の回答を得ました。
『「湯はり」する際、給湯器は給湯回路からふろ回路を経由して浴槽にお湯を供給しますので、機器内圧損が大きく給湯器への供給水圧が低い場合、最大出湯量より少ない量での「湯はり」になります。』
この指摘によれば、出湯量は配管延長や配管の経年的な閉塞なども影響するものと思われます。入居後、既に20年以上も経過しているため、管路等の通水能力が低下していることが給湯量低下の大きな要因と考えられます。
(2)シャワー使用時のガス消費量
次に、2人の入浴時のガス消費量の推移を下図に示します。Aは入浴時間は20分間であり、Bは26分間でした。どちらも、入浴時はシャワーを使って髪の毛と体を洗っています。シャワーは40℃の温度設定で使用しています。下図より、シャワーの使用時の最大ガス消費量は20L/分です。また、Aの入浴時のガス消費量は82L、Bのそれは168Lで、合計250Lでした。
シャワー使用時のガス消費量を図に示された最大ガス消費量である20L/分と仮定すると、シャワーの給湯に要する熱量及び能力に対する熱量の割合は以下の通りです。
シャワーの供給熱量=20(L/min)×44.8(kJ/L)/60=14.9kW
能力に対するシャワ―の熱量割合=14.9kW/42.7kW×100=34.9%
この結果から、シャワー時の供給熱量は約15kW、能力の約35%であり、多くの熱量を使うことが分かります。先程計算した能力に対する「湯はり」の熱量割合が6割程度でしたので、「湯はり」とシャワーを同時に使うと、このガス温水器の能力限度に近くなります。一般的には「湯はり」後にシャワーをすることが多いので、問題はないものと思われます。
シャワーの給湯量は10L/分とされています(メーカーへのヒアリングによる)。そのため、シャワーを20分間継続すると、200Lが消費されます。その際に、消費されるガス消費量は400L(20L/分×20分)です。風呂の「湯はり」に要したガス消費量は488Lでしたので、単純な計算ではシャワーで給湯する方がガス消費量は少ないということになります。これは、風呂の「湯はり」中に浴槽中の温度が低下してしまい、後で「追い焚き」をする必要があったためと思われます。
(3)風呂の利用における全ガス消費量
以上の結果から、この世帯の「湯はり」、「入浴」に要したガス消費量は全部で738L(=488+250)でした。前月の1日平均ガス消費量は850L/日でしたので、その87%に相当していました。入浴での洗髪は毎日するわけではないので、1か月単位ではこの割合は減少しますが、それでも入浴に要するガス消費量が多くを要することが分かります。
ここで、今回の測定では2人が続けて入浴したため、「追い焚き」はしていません。しかし、1人が入ってから時間が経つと冷めてくるので「追い焚き」が必要となる場合があります。そこで、1人が入浴した3時間後に「追い焚き」をした場合のガス消費量を測定しました。平均室温が27℃程度であり、バスタブに蓋をしているので3時間経過しても水温が大きく低下していない可能性はあります。
下図にガス消費量の測定結果を示します。「追い焚き」は約4分間で終了しています。この「追い焚き」によるガス消費量は50Lでした。1分間の平均ガス消費量は12.5L/分です。これは、シャワーの20L/分よりも小さな値です。
この結果より、風呂の利用時で「追い焚き」を1回した場合は、「湯はり」、シャワー利用を含めてガス消費量は788L(=738+50)となります。この数値は6月半ばの気温が高い時期での測定結果であることを考慮いただく必要があります。
ガス温水器の風呂利用のコスト、二酸化炭素排出量
1回の風呂の利用(湯はり、2人の入浴)に要したエネルギー量、コストと二酸化炭素排出量を計算すると以下の通りです。「追い焚き」なしの場合は、1回当りの風呂の利用(2人入浴)のコストは125.5円、二酸化炭素排出量は1.65 kg-CO2でした。また、「追い焚き」を含む場合はコストは134.0円、二酸化炭素排出量は1.76 kg-CO2でした。
なお、今回の測定は6月半ばの比較的気温が高い時期のもの(外気温26℃)であることに留意する必要があります。冬季には水温が低下するため、大幅に増加する可能性があります。冬季のガス消費量については、後日報告したいと思います。
表-4 2人世帯のお風呂に要するコスト、二酸化炭素排出量
ガス消費量 (L) | 熱量 (MJ) | コスト (円) | 二酸化炭素排出量 (kg-CO2) |
|
---|---|---|---|---|
「追い焚き」なし | 738 | 33.1 | 125.5 | 1.65 |
「追い焚き」を含む | 788 | 35.3 | 134.0 | 1.76 |
ガス温水器の熱効率の算定
ここでは、測定したガス消費量から本ガス温水器の熱効率を算定します。経済産業省告示にあるように、ガス温水器(目標年度が2006年度の製品)の熱効率の測定方法はJIS S2109(2019)に示されています(「ガス温水器のエネルギー消費効率」を参照ください)。
熱効率には定格熱効率とモード熱効率があります。モード熱効率は湯沸器と風呂給湯の2つを使用実態に合わせて評価したものです。ここでは、風呂の「湯はり」の熱効率のみを算定するため、定格熱効率を算定します。なお、前述したように、今回測定した「湯はり」のガス消費量は、設定温度を確認して2分ほど「追い焚き」運転を行っているようですので、実際には「湯はり」の後に2分間の「追い焚き」運転の際の熱効率となります。
定格熱効率の算定式は以下です。下式で大カッコ内が通常の熱効率の式ですが、この後に続く2つの中カッコの式が温度と圧力による補正項です。
η=[{M×C×(Tw2-Tw1)}/(V×Q×1,000)]×{(273+Tg)/273}×{101.3/(B+Pm-S)}×100
この式において、η、M、C、Tw2、Tw1、V、Q、Tg、B、Pm及びSは、それぞれ次の数値を表しています。
η:熱効率(%)
M:出湯量(kg)
C:水の比熱(4.19 kJ/(kg・K))
Tw2:出湯温度(℃)
Tw1:給水温度(℃)
V:実測ガス消費量(m3)
Q:ガスの総発熱量(MJ/m3)
Tg:測定時のガスメータ内のガス温度(℃)
B:測定時の大気圧(kPa)
Pm:測定時のガスメータ内のガス圧力(kPa)
S:温度Tg(℃)における飽和水蒸気圧(kPa)
この式に、表-5の数値をいれて計算することにより、定格熱効率は以下と算定されました。
η=72.7%
表-5 定格熱効率の算定結果
記号 | 項 目 | 単位 | 数値 |
---|---|---|---|
M | 出湯量 | kg | 200 |
C | 水の比熱 | kJ/(kg・K) | 4.19 |
Tw2 | 出湯温度 | ℃ | 40 |
Tw1 | 給水温度 | ℃ | 23 |
V | 実測ガス消費量 | m3 | 0.488 |
Q | ガスの総発熱量 | MJ/m3 | 44.8 |
Ts | 測定時のガスメータ内のガス温度 注1) | ℃ | 26 |
B | 測定時の大気圧 注2) | kPa | 100.8 |
Pm | 測定時のガスメータ内のガス圧力 注3) | kPa | 2.0 |
S | 温度Tg(℃)における飽和水蒸気圧 注4) | kPa | 3.363 |
η | 定格熱効率 | % | 72.7 |
η’ | 定格熱効率(温度、圧力補正せず) | % | 65.2 |
注2)大気圧Bは気圧計(エンペックス気象計株式会社製)による測定値。
センサはアネロイド型、精度は±0.2kPa。
注3)ガス圧力Pmは東京ガスの供給圧である1.0~2.5kPaから設定。
注4)飽和水蒸気圧Sは空気調和設備計画設計の実務の知識(改訂4版)、オーム社より引用。
<熱効率の温度補正、圧力補正について> 上記の熱効率の算定に用いているガスの発熱量(Q)は、1気圧(101.3kPa)、0℃の値です。そのため、測定時の実測ガス量(V)をこの条件に合わせて補正する必要があります。 具体的には、理想気体の状態方程式から導出されます。 PV=nRT P:圧力 V:体積 T:絶対温度(=273+Tg) n:モル数 R:気体定数 この式を変形した以下の式から、体積(V)は温度(T)に比例し、圧力(P)に反比例することが分かります。 V=nRT/P したがって、1気圧、0℃の時のVに補正するためには、以下を用いることになります。 1気圧への補正:V×(B+Pm-S)/101.3 0℃への補正:V×273/(273+Tg) |
上式の計算結果より、熱効率は72.7%でした。本製品の定格熱効率は給湯部が81.0%(表-1参照)ですので、やや小さい値になっています。これは、前述した通り一部「追い焚き」運転を行っていること、また今回の測定方法とJISの定格熱効率の測定条件が異なっているためと思われます。
JISの測定条件との大きな相違は、JISの上昇温度が初期水温から40Kとなっているのに対し、今回の測定は17Kという違いがあります。また、JISの条件が「水の加熱が定常状態」の測定を行うのに対し、今回の測定は非定常状態(定常との遷移状態)も含んだ熱効率となっています。
これまで、熱効率を算定する際には温度と圧力の補正は行いませんでした。今回は、ガス供給圧力の仮定値(2.0kPa)を使って、温度、圧力の補正を行いました(東京ガスの供給圧力1.0~2.5kPaから設定)。上表では補正を行わない場合の熱効率も計算しています。その結果は65.2%(表-5のη’)であり、補正によって1割程度増加することが分かりました。
温度補正項(273+Tg)/273は、通常の温度(20℃~30℃)であれば1.1倍程度になります。圧力補正項101.3/(B+Pm-S)は、ほぼ1.0に近い値となるため、補正することにより熱効率は1割増し程度になるものと考えられます。これまで、実測値による熱効率を算定してきた結果を、そのような視点で再評価することが必要と思われます。
ガス消費量を節約する方法
給湯は世帯のエネルギーの3割程度を消費しています。給湯にはガス温水器を使っている世帯が多いと思いますので、ガス温水器の省エネについて検討した結果を下表に示します。
炊事の時は、食器洗いは蛇口(温水器)の水を出しっぱなしにしないことや、食器洗いの温度の設定を低くすることなどで、省エネができます。風呂については、お湯の設定温度を下げることや、入浴は間隔をあけずに入浴して、なるべく「追い焚き」をしないことなどで、省エネが可能です。
表-6 ガス温水器の省エネ方法と効果
用 途 | 省エネ方法 | 省エネ効果 |
---|---|---|
炊 事 | 食器洗いは蛇口(温水器)の水を出しっぱなしにしない。 | 年間のガス消費量12.78m3の削減 (45℃のお湯を流す時間を1分間短縮) |
食器洗いの温度の設定を低くする。 | 年間のガス消費量8.80m3の削減 (65ℓの水道水(水温20℃)を使い、湯沸器の設定温度を40℃から38℃にし、1日2回手洗いした場合(使用期間:253日)) |
|
洗う前に水につけておいたり、ヘラやボロ布で汚れを拭き取っておく。 | 洗うお湯の量を減らすことができる。 | |
風 呂 | お湯の設定温度を下げる。 | 低減温度に応じて、ガス消費量を削減できる。 |
入浴は間隔をあけずに入浴(なるべく「追い焚き」はしない) | 年間のガス消費量38.20m3の削減 (2時間放置により4.5℃低下した湯(200ℓ)を「追い焚き」する場合(1回/日)) |
|
浴槽に水をためて沸かす「追い焚き」よりも、お湯をためる「湯はり」の方が省エネ | 一般的に風呂は、「追い焚き」や沸かし直しをするよりは、給湯のほうがガスを効率よく使うことができる。 | |
お湯が冷めないように蓋をする。 | 「追い焚き」のガス消費量を削減できる。 |
今回のガス消費量の測定においては、2人の入浴者は間隔を開けずに入浴しており「追い焚き」はしていないため省エネが図られています。「追い焚き」による消費エネルギーの追加をなるべくしないようにすることで省エネが図れます。
ここでは、ガス温水器の利用方法に限定して省エネ方法を示しましたが、省エネタイプのガス温水器を利用することも、省エネにつながります。従来型の温水器(熱効率80%)とエコジョーズなどの高効率温水器(熱効率95%)とを比較すると、後者が約2割ほどガス消費量を減らせることが分かります。
なお、ガス温水器はセンサーを使って、水温、水位を制御していることやリモコンによる操作を行うため、電気を利用しています。表-1に示しているように、本製品も待機電力が3Wと、稼働していなくても電力を使用します。そのため、本製品にはこの待機電力を低減するメニューが付いています。このメニューを利用することや、旅行などで長時間利用しない時は電源を切っておくことが節電につながります。
ガス温水器は化石燃料である天然ガスを使ったエネルギー消費機器です。2050年頃のカーボンニュートラルに向けて、これらのガス温水機も電気を利用した機器に移行していくものと想定されます。しかし、電気を利用した温水器(エコキュート)は400L程度(4人家族用)のタンクを設置する必要があり、集合住宅では設置が困難であることや、夜間の低周波騒音などの問題もあり、現状ではあまり普及していません。
しかし、エコキュートはエアコンと同様に熱効率が非常に高いという特徴もあることから、需要サイドの緩和の強化に向けて、さらなる技術開発や普及対策が進んでいくことと思われます。次回は、エコキュートの省エネ性能について取りまとめていく予定です。
まとめ
今回は、1回の風呂の利用におけるガス温水器のガス消費量の測定を行って、消費エネルギーの把握と熱効率の分析を行いました。また、文献から温水器の省エネ方法についても取りまとめました。
測定に使用したガス温水器はリンナイ株式会社のガス温水器(自動湯はりタイプ)RUF-VS2005SAUです。給湯能力は20号で1分間に20Lの給湯が可能です。製品名にある通り、水温と水量を設定して「湯はり」を自動的に行うことができます。
本製品は2017年に発売された機種であるため目標年度は2006年度であり、省エネ区分は「区分O」、省エネ基準達成率は100%であるため、熱効率は80.4%です(個別の熱効率は風呂部78.6%、給湯部81.0%です)。
本製品を用いて、風呂の「湯はり」を行い、2人が入浴しました。ガス消費量の測定結果は「湯はり」に488L、2人の入浴(シャワーの利用)に250L、合計738Lを使用しました。この測定では、2人が続けて入浴したため、「追い焚き」はしていません。前月の1日平均ガス消費量に対する入浴に要したガス消費量の割合を算定すると8割を超えており、非常に多くのエネルギーが入浴に使われることが分かりました。
次に、「追い焚き」をした場合のガス消費量を別途測定しました。1人が入浴後3時間後に他の1人が入浴する際の「追い焚き」時間とガス消費量は、約4分、50Lを要していました。この時の室温は26℃であり、冷めにくい条件であったことを考慮する必要があります。
「湯はり」における定格熱効率を算定すると、72.7%となりました。本製品の仕様によると給湯部の熱効率は81.0%であり、やや低い値が得られていることが分かります。今回は熱効率の計算においては、温度補正及び圧力補正を行っています。補正を行う前の熱効率は65.2%であり、補正によって1割程度増加していました。これまでガス器具の熱効率を算定した際には補正を行っていませんでしたので、算定した熱効率を1割程度増加させる補正が必要であることが分かりました。
これらの計測結果より、2人、1回の風呂の利用でコストは125.5円、二酸化炭素排出量は1.65kg-CO2でした。また、風呂の利用で1回「追い焚き」をした場合は、それぞれ134.0円、1.76 kg-CO2でした。これらは夏場の比較的水温が高い時期での測定ですので、冬の水温が低い時のガス消費量はこれらの値より相当大きくなると想定されます。
給湯に要するエネルギーは世帯の消費エネルギーの約3割を占めています(資源エネルギー庁調べ)。そのため、ガス温水器の省エネが重要なものになります。そこで、ガス温水器の省エネについて、炊事、風呂の用途別に効果的な方法を整理しました。給湯温度や炊事や入浴の方法を工夫することで、比較的大きな省エネが行えることが分かりました。
ガス温水器は化石燃料である天然ガスを使ったエネルギー消費機器であるため、カーボンニュートラルに向けて電気を利用した機器に移行していくものと想定されます。電気を利用した温水器(エコキュート)は集合住宅では設置の困難性などから現状ではあまり普及していません。しかし、エアコンと同様に熱効率が非常に高いという特徴もあることから、次回はエコキュートの省エネ性能について取りまとめていく予定です。
<参考文献>
1)資源エネルギー庁:省エネ型製品情報サイト、ガス温水器、2022年6月16日閲覧
2)東京ガス株式会社:東京ガス公式Webサイト、東京ガスネットワーク、都市ガスについて、https://www.tokyo-gas.co.jp/network/gas/shurui/index.html
3)空気調和・衛生工学会:空気調和設備計画設計の実務の知識(改定第4版)、オーム社、2017.