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給湯機器

ガス温水器(3)-炊事、洗面のガス消費量

 最近のエネルギー供給事情の悪化により、今後は天然ガスの不足も見込まれるとのことです。天然ガスは電力の電源とされるだけでなく、家庭のエネルギー源としても重要な燃料です。多くの地域で都市ガスのインフラが整備され、配管を通して供給される都市ガスの使い勝手は他の燃料(灯油など)に比べて大きな利点があります。

 カーボンニュートラルに向けて化石燃料の利用は今後少なくなっていくものと思われますが、都市ガスの便利さゆえに、当面は天然ガス(家庭では都市ガス)の利用は続くものとみられます。そのため、現在の二酸化炭素排出量を削減するためにも、都市ガスの利用を少なくする省エネ行動は非常に重要です。また、今後の天然ガスの供給不足に備えて、ガスの消費量を節約する方法を把握しておくことも重要です。

 都市ガスをエネルギー源とする製品にはガスコンロとガス温水器があります。両者ともに省エネ法の対象となっています。ガスコンロの省エネ基準や製品のエネルギー消費特性は「ガスコンロ(1)-省エネ性能」で整理しました。最近の製品はガス消費量を少なくするための制御機能が加わっており、省エネ型になっていることが分かりました。また、ガスコンロのガス消費量も測定して、その熱効率なども分析してきました(「ガスコンロ(2)-ガス消費量の測定」を参照ください)。

 ガス温水器については、その省エネ基準や製品のエネルギー消費特性は「ガス温水器(1)-省エネ性能」で整理しました。また、ガス温水器の風呂の給湯時のガス消費量についても測定、分析しました(「ガス温水器(2)-ガス消費量の測定」を参照ください)。風呂の「湯はり」に多くのガス消費量を要することが分かっています。今回は検討が残されているキッチンや洗面所等の水栓使用時のガス消費量について分析します。

 前回報告したガス温水器の省エネな使用方法について、文献では炊事時に水を出しっぱなしにしないことや、設定温度を下げることで省エネが図れるとされていましたが、今回はそれを実際の測定によって確認します。ただし今回の測定結果は水栓から水を利用した時の1分間のガス消費量です。そのため、実際のガス消費量は利用した時間を乗じて算定することが必要です。なお、本測定は7月半ばに行っており、初期水温が高いためガス消費量が少なくなっていることに留意してご確認ください。

ガス消費量の測定方法

(1) 測定対象とするガス温水器

 測定の対象としたガス温水器の仕様を下表に示します。測定の対象としたガス温水器はリンナイ株式会社のガス温水器(RUF-VS2005SAU)です。型式(VS20)から分かるように給湯能力は20号(春・秋の水温17℃から42℃のお湯を1分間に20L供給することが可能)です。

表-1 測定対象のガス温水器の仕様

   項  目  内  容  外観写真
メーカーリンナイ株式会社  
型式RUF-VS2005SAU
機能自動湯はりタイプ
使用都市ガス  13A 
ガス消費量
kW(kcal/h)
給湯 42.7(36,700)
風呂 11.6(10,000)
同時使用時 42.7(36,700)
出湯能力
(L/min)
水温+25℃  19.6
水温+40℃  12.2
外形寸法(mm)高さ610×幅250×奥行250
質 量 (kg)  22.3
消費電力(W)待機時  3.0
凍結予防ヒータ  98
同時使用時  164
省エネ基準省エネ区分 区分O
省エネ基準 80.4%
基準達成率 100%
風呂部熱効率 78.6%
給湯部熱効率 81.0%
出所)リンナイ株式会社、ガスふろ給湯器、取扱説明書
注)省エネ基準は資源エネルギー庁、省エネ型製品情報サイト、ガス温水器(2022年6月16日閲覧)による。

 本製品は2017年の製品であるため、省エネ基準の目標年度は2006年度です。省エネ区分は「区分O」(給湯機付きのガス風呂釜で、強制通気式、強制循環式、屋外式)であり、その省エネ基準は熱効率が80.4%であり、本製品の省エネ基準達成率は100%です。なお、風呂部と給湯部の熱効率はそれぞれ78.6%、81.0%です。

(2) 測定対象とする水栓

 測定するのは以下の3か所の水栓(下の写真)です。

 ●キッチン
 ●洗面所
 ●浴室

 水栓の仕様と水温調節方法を下表に示します。キッチンと洗面所の水栓はシングルレバーの混合水栓です。これは1つのレバーで、水温と水量の両方を調節します。浴室の水栓はサーモスタット混合水栓であり、左右のレバーで水温と水量を調節します。右レバーで水量の調節と、カランとシャワーの切換えができます。また、サーモスタット混合水栓は水温設定が可能であり、左レバーで水温を設定します。

表-2 水栓の仕様と水温調節方法

 場 所  水栓の仕様  水温の調節方法 写真
キッチンキッチン用シングルレバー混合水栓レバーの左右開度により調節 左 
洗面所洗面所用シングルレバー混合水栓レバーの左右開度により調節 中央
浴室浴室用サーモスタット混合水栓サーモスタットにより水温設定が可能 右 

 なお、水温の調節レバーは、ガス温水器から供給される湯と水の混合を調節するものです。湯の温度を設定するのはガス温水器のリモコンで行います。従って水栓から出る水の温度はガス温水器で設定した温度以上には上がりません。これはサーモスタット混合水栓も同じであり、手元で40℃の設定をしていても、ガス温水器の設定温度を低くしていれば40℃には上がりません。メーカーによれば、水栓での温度を40℃にするためにはガス温水器の設定温度を50℃程度にしておく必要があるとのことです1)

 シングルレバー混合水栓の水温の調節は右図のように、右側にレバーを回すと水が供給され(全水)、左側に回すとお湯が供給されます(全湯)。レバーを「中間」にすると水とお湯が混合され中間の温度になって出てきます。好みの温度にするには開度を調節します。サーモスタット混合水栓のように、水温設定を行うことはできません。

 シングルレバー混合水栓の水量の調節はレバーの上下の開度により調節します。レバーを最上部にすると「全開」となり、最大の水量が得られます。また最下部にすると「全閉」の状態になり、温水の供給は停止します。

(3) ガス消費量の測定方法

<吐水量の測定方法>
 水栓から吐出する水量(吐水量)を測定するために、ストップウォッチで10秒または20秒間に容器内に溜まった水の重量を測定することで、1分間の水量(1kg=1Lで換算)を算定しました。測定は2回行い、測定値がばらつく場合は3回以上行い、平均値を算定しました。

<ガス消費量の測定方法>
 ガス消費量は下表のガスメータにより測定します。ビデオ撮影によりガスメータの読み取り値と時刻を把握してガス消費量を測定しました。ガス消費量が10~15L使用された時間を秒単位で測定し、その結果より1分間当りのガス消費量を把握しました。

表-3 ガスメータの仕様

 項  目    内   容   写  真
メーカー名東京ガス株式会社
製品名・型番通信機能付きマイコンメーター JO型
表示ガス消費量積算値
最小読み取り値0.001m3
最大圧力3.5kPa
最大流量4m3/h
機能過大流量遮断、圧力低下遮断、感震遮断、継続時間オーバ―遮断、微小もれ疑い警報
出所)東京ガス株式会社、公式Webサイト

<ガス消費量の測定、分析の視点>
 ここで、各水栓のガス消費量を以下の視点に着目して測定、分析します。
 (a) 各水栓の湯と水の供給時における吐水量の相違
 (b) 各水栓のガス消費量の相違(特に「全湯」の場合)
 (c) シングルレバー混合水栓における水温開度によるガス消費量の相違
 (d) シングルレバー混合水栓における水量開度によるガス消費量の相違
 (e) ガス温水器の設定温度による水栓使用時のガス消費量の相違

 初めに水栓ごとの吐水量とガス消費量がどの程度異なるかを分析します(分析の視点のa、b)。そして、水温と水量の調節によってどの程度ガス消費量が変わってくるか(分析の視点c、d、e)が分析の中心です。そのため、水量と水温を下表の通り設定して測定を行いました。

表-4 測定における設定オプション

測定のオプションオプション1オプション2オプション3
水量レバー:水量開度「全開」
「中間」
水温レバー:水温開度「全湯」左レバー
「中間」中央レバー
「全水」右レバー
ガス温水器の設定温度40℃38℃

 すなわち、水量(開度)はレバーが「全開」と「中間」(上表のレバーの位置を確認ください)の2種類、水温(開度)はレバーが左側「全湯」、中央「中間」、右側「全水」の3種類です。また、ガス温水器の設定温度についても設定することとし、「40℃」を基本として省エネのためのケースとして「38℃」の2種類を設定することとしました。

各水栓のガス消費量の測定結果

(1)各水栓の「全水」及び「全湯」時の吐水量、ガス消費量

 まず、各水栓の「全水」と「全湯」の供給時における吐水量、ガス消費量の測定結果を下表と下図に示します(分析視点のa、b)。どの測定においても水量開度は「全開」、ガス温水器の設定温度は40℃で行っています。「全水」と「全湯」の供給においてキッチンと洗面所については、吐水量は大きく変わりませんが、浴室は「全水」の場合は18.0L/分「全湯」の場合は9.0L/分と2倍の差があることが分かります。

表-5 各水栓の「全水」及び「全湯」時の吐水量、ガス消費量

 場 所 ガス温水器の
設定温度 ℃
水温開度
(湯・水)
水量開度吐水量
L/分
ガス消費量
L/分
キッチン「全水」「全開」9.0
40「全湯」「全開」8.116.6
洗面所「全水」「全開」9.0
40「全湯」「全開」8.113.9
浴 室「全水」「全開」18.0
40「全湯」「全開」9.018.1

 一方、水温開度を「全湯」にした場合のガス消費量については、洗面所が最も少なく13.9L/分、次いでキッチンの16.6L/分、浴室の18.1L/分でした。キッチンと洗面所は吐水量が同じですので、ガス消費量の違いは供給水温に差が出るものと思われます(キッチンの水温が高くなる)。

 また、浴室の吐水量はキッチン、洗面所の1.1倍に対して、ガス消費量はキッチンの1.1倍、洗面所の1.3倍ですので、浴室の水温はキッチンのそれと同程度、洗面所のそれより高い水温になるはずです。洗面所の水温が一番低いのは、洗面所ではその役割からあまり高温の湯を必要としないためと思われます。

(2)シングルレバー水栓の水温開度別の吐水量、ガス消費量

 次に、シングルレバー水栓(キッチン、洗面所)の水温開度別の吐水量及びガス消費量の測定結果を下表に示します(分析視点のc)。ガス温水器の設定温度は40℃、水量開度は「全開」です。

表-6 シングルレバー水栓の水温開度別の吐水量、ガス消費量

 場 所ガス温水器の
設定温度 ℃
水温開度
(湯・水)
水量開度 水 量
  L/分
ガス消費量
 L/分
キッチン40「全湯」「全開」8.116.6
40「中間」(湯水混合)「全開」9.69.3
洗面所40「全湯」「全開」8.113.9
40「中間」(湯水混合)「全開」8.79.4

 下図にキッチンと洗面所での測定値を比較したものを示します。吐水量はレバーを左側(「全湯」)にしたものと「中間」(湯水混合)にしたものとの比較では、後者の場合が若干多くなっています。これは湯に水を混合させることで、吐水量が増えるものと思われます。

 この時のガス消費量は当然のことながら湯を多く使う「全湯」の方が多くなっています。キッチンと洗面所との比較では、「全湯」の場合は前述の通りキッチンの方がガス消費量が多くなっていますが、「中間」の場合は逆に洗面所の方が若干多くなっています。これは水栓の構造が異なるため、水と湯の混合割合が変わるためかもしれません。

 さらに、それぞれのガス消費量の比(「中間」/「全湯」)はキッチンで56%、洗面所で68%となっています。このことから、キッチンでは水温開度を「中間」に設定することで「全湯」時の44%を省エネ(節ガス)することができます。また、洗面所でも同様に32%の省エネが可能です。

(3) キッチン水栓の水量開度別の吐水量、ガス消費量

 キッチンにおける水量開度別の吐水量及びガス消費量の測定結果を下表に示します(分析視点のd)。水量開度を「中間」に設定した結果、吐水量は4.7L/分となり、「全開」の約6割(58%)となりました。この時のガス消費量は10.1L/分であり、「全開」と比べると約6割(61%)となっていました。

 このことから吐水量とガス消費量は比例することが分かります。これは容易に想像つくことですが、測定により明らかになりました。従って、水栓の水量開度を絞ることで省エネが可能になります。

表-7 キッチン水栓の水量開度別の吐水量、ガス消費量

 場 所ガス温水器の
設定温度 ℃
水温開度
(湯・水)
水量開度吐水量
L/分
ガス消費量
L/分
キッチン40「全湯」「全開」 A8.116.6
40「全湯」「中間」 B4.710.1
水量開度が「全開」と「中間」の比 B/A0.580.61

(4) ガス温水器の設定温度別のキッチン水栓の吐水量、ガス消費量

 ガス温水器の設定温度を変更した場合のキッチン水栓の吐水量、ガス消費量の測定結果を下表と下図に示します(分析視点のe)。ここでは、水量開度を「全開」と「中間」の場合の結果を示しています。水量開度が「全開」の吐水量は8.1L/分、「中間」のそれは4.6~4.7L/分で、ガス温水器の設定温度による違いはありません。

 一方、ガス消費量は「全開」と「中間」での差異があると同時に、ガス温水器の設定温度でも差異があります。温度を2℃下げることで、水量開度が「全開」の場合は2割程度ガス消費量を削減することができます。また水量開度が「中間」の場合は6%程度削減できます。

 これらのことから、キッチンでのガス消費量を低減させるためには、「全開」で洗い物をせず水量開度を中程度にし、さらにガス温水器の設定温度を2℃下げることで約43%(1-9.5/16.6)の削減ができることが分かりました。

表-8 ガス温水器の設定温度別のキッチン水栓の吐水量、ガス消費量

 場 所ガス温水器の
設定温度 ℃
水温開度水量開度吐水量
L/分
ガス消費量
L/分
キッチン40{全湯」「全開」8.116.6
38{全湯」「全開」8.113.0
40{全湯」「中間」 4.710.1
38{全湯」「中間」 4.69.5

水栓の利用におけるガス温水器の省エネ対策

 ガス消費量の測定結果をもとに、水栓の利用時におけるガス温水器の省エネ対策をまとめます。なお、今回の測定結果は、ガス温水器と水栓までの配管状況(延長、口径、つまり等)により異なることが想定され、ガス消費量の数値はそれに依存したものであることをご承知おきください。

① キッチンでは水温開度を「中間」(湯水混合)に設定することで「全湯」時の44%を省エネ(節ガス)することができ、洗面所でも同様に32%の省エネが可能です。
② 吐水量とガス消費量は比例しますので、なるべく水を出しっぱなしにしないようにします。もし、水を出しながら食器洗いをするときは、水量開度を「全開」から「中間」に設定することで、4割程度のガス消費量を削減できます。
③ ガス温水器の設定温度を40℃から38℃に2℃下げることで、キッチンの水栓の水量開度が「全開」の場合は約2割、「中間」の場合は6%程度削減できます。

 これらは、炊事や洗面をするときに、水栓の水量と水温をなるべく必要以上に大きくしないことが重要であることを示しています。夏の暑いときはお湯を使わず、水を使うのが最も省エネになります。

 また、節水型または節湯型の水栓も販売されており、これらを利用するという方法もあります2)3)。販売されている製品は節水、節湯の両方の機能を備えている水栓が多いようです。

 下表に節湯水栓、節水水栓の一例を示します。節湯水栓はなるべく湯の量を抑制する水栓であり、泡沫吐水のような小流量吐水エコセンサーを使った水優先吐水などがあります。節水水栓は節水コマ内蔵水栓のように構造上、水を出にくくしたものや、止水機能を備えたものなどがあります。

表-9 節湯水栓、節水水栓の一例

区分名称キッチンでの節水効果備考
節湯水栓手元止水タッチレス水栓9%建築物省エネ法 A1
小流量吐水スポット微細シャワー17%
微細シャワー17%
泡沫吐水17%
建築物省エネ法 B1
水優先吐水エコハンドル9%
エコセンサー9%
建築物省エネ法 C1
節水水栓節水コマ内蔵水栓開度が小さい場合小流量の構造低炭素建築物認定基準 イ
サーモスタット湯水混合水栓瞬時に設定水温にできる節水効果低炭素建築物認定基準 ニ
シングルレバー湯水混合水栓水温、水量調節が迅速により節水低炭素建築物認定基準 ホ
定量止め水栓定量になると止水する機能低炭素建築物認定基準 ト
自動水栓自動的に給水、止水する機能低炭素建築物認定基準 リ
手元止水機構付き水栓手元で止水操作可能なため節水可能低炭素建築物認定基準 ヌ
出所)建築物省エネ法解説、令和大改正版、株式会社エクスナレッジ、2021年
出所)一般社団法人バルブ工業会:公式Webサイト、節湯水栓・節水水栓について
      手元止水     小流量吐水     水優先吐水
出所)一般社団法人バルブ工業会、公式Webサイト、節湯水栓(節A1/B1/C1)について

 節湯水栓の一例として下図(左)のように水と湯の境に「カチッ」とクリック感を設けることで、水と湯を使い分けしやすくなることで節湯効果を高める製品があります。従来型の混合水栓と比較して湯の使用量を約9%削減できるとされています4)

 また、自動水栓(下右の写真)はセンサーを用いて水栓の開閉を自動で行うものです。通常の自動水栓の節水効果は68%、さらに節水タイプ(泡沫水栓)の自動水栓は84%の節水効果があるとされています4)。これらの節水水栓、節湯水栓を利用して賢く省エネルギーを行うことが必要です。

出所)TOTO株式会社:水栓金具カタログ、2021年2月、「節湯水栓」をもとに作図
出所)TOTO株式会社:水栓金具カタログ、2021年2月、自動水栓

まとめ

 エネルギー需給の逼迫化に伴い最近ではガス消費量の抑制が取りざたされるようになってきました。そのため、今回は、水栓を利用するときのガス温水器のガス消費量の分析を行いました。キッチン、洗面所、浴室の3か所の水栓を利用したときのガス温水器のガス消費量を測定することで、その省エネ対策を検討しました。

 実測を行ったガス温水器はリンナイ株式会社のガス温水器(RUF-VS2005SAU)です。本製品は15℃の温度上昇したお湯を20L/分供給することが可能であり、給湯部の熱効率は81.0%です。また、測定対象の水栓は、シングルレバー混合水栓(キッチン、洗面所)、サーモスタット混合水栓(浴室)の2種、3箇所です。

 水栓はレバーを動かして水温と吐水量を調節します。シングルレバー混合水栓はレバーを上下に動かすことで吐水量を、左右に動かすことで水温を調節することができます。サーモスタット混合水栓は左右のレバーで吐水量と水温を調節できます。水温の調節はどちらも水と湯の混合割合を変えることで行います。ただし、湯はガス温水器の設定温度で供給されますので、水栓の水温はその設定温度以上にはなりません。

 分析の視点は、(1)水栓の場所、種類、(2)水量開度(レバーの上下角度)、(3)水温開度(レバーの水平角度)について、吐水量とガス消費量を比較することです。結果を判断しやすいように、水量開度は「全開」と「中間」、水温開度は「全湯」、「全水」、「中間」の3種類について測定しました。また、水温のもととなるガス温水器の設定温度を40℃を基準として、省エネの検討のために38℃を設定して、測定を行いました。その結果は以下の通りです。

● 水栓の場所の違いによる吐水量は、水温開度が「全水」の場合、キッチンと洗面所は9L/分でしたが、浴室では18L/分と2倍の吐水量となっていました。このことから、大量の水をためるには浴室の水栓を使うと早く貯められることが分かります。

● 水温開度が「全湯」の場合の吐水量は、キッチン、洗面所は8L/分、浴室は9L/分でした。水と湯の供給においてキッチンと洗面所については吐水量は大きく変わりませんが、浴室では水と湯の場合では2倍の差があることが分かりました。

● 水温開度を「全湯」にした場合のガス消費量については、洗面所が最も少なく13.9L/分、次いでキッチンの16.6L/分、浴室の18.1L/分でした。キッチンと洗面所の吐水量が同じなため、キッチンの水温が高くなっているはずです。

● キッチンでは水温開度を「中間」(湯水混合)に設定することで「全湯」時の44%を省エネ(節ガス)することができ、洗面所でも同様に32%の省エネが可能でした。

● 吐水量とガス消費量は比例しますので、省エネのためにはなるべく水を出しっぱなしにしないようにする必要があります。もし、水を出しながら食器洗いをするときは、水量開度を「全開」から「中間」に設定することで、約4割程度のガス消費量を削減できました。

● ガス温水器の設定温度を40℃から38℃に2℃下げることで、キッチンの水栓の水量開度が「全開」の場合は約2割、「中間」の場合は6%程度削減できました。

 水栓での温水利用時における省エネのためには、節水水栓や節湯水栓を活用することも有効です。節湯水栓は湯の量を抑制する水栓であり、泡沫吐水のような小流量吐水とエコセンサーを使った水優先吐水などがあります。

 節水水栓は節水コマ内蔵水栓のように構造上、水を出にくくしたものや、自動水栓のように止水機能を備えたものなどがあります。通常の自動水栓の節水効果は68%、さらに節水タイプ(泡沫水栓)の自動水栓は84%の節水効果があるとされています(メーカー試算値)。

 次回はガスと電気の両方をエネルギー源とする食器洗い乾燥機を取り上げ、エネルギー消費特性を分析する予定です。

<参考文献>
1)TOTO株式会社:公式Webサイト、お客様サポート、Q&A
https://qa.toto.jp/faq_detail.htm?id=12142&category=1802&page=1
2)建築物省エネ法解説、令和大改正版、株式会社エクスナレッジ、2021年
3)一般社団法人日本バルブ工業会:公式Webサイト、節湯水栓・節水水栓について
4)TOTO株式会社:水栓金具カタログ、2021年2月