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給湯機器

食機洗い乾燥機(1)-機能と省エネ性能

 今回は食器洗い乾燥機をとりあげます。日本での普及率は36%とまだそれほど多くはありませんが1)2)、節水と省エネ(ガス)が図られるとされています。省エネについては比較する対象によって変わってきますが(消費電力量は増えるが使用水量とガス消費量は減る)、利便性と快適性を考えて購入している世帯も多いと思います。

 食器洗い乾燥機の利点は、洗いから乾燥まで容器(庫内)の中で完結でき、ビルトインタイプではキッチンの上で場所を取らないということではないでしょうか。また、手洗いと自然乾燥に比べて出来上がりが衛生的というメリットもあります。

 食器洗い乾燥機は水、電気、ガスを使います。本製品は省エネ法の対象となっていないことから、さまざまな製品が販売されているため、製品や使い方によっては無駄にエネルギーを使う可能性もあり、製品選びや使い方にも注意が必要です。

 今回は、食器洗い乾燥機を対象として、製品の種類や最新の機能について整理します。食器洗い乾燥機を使って十分に汚れが落ちるのか不安な方もいると思います。メーカーへのQ&Aで見るように、洗い残しについての質問も多いことから、使い方が悪いと十分に汚れを落とせないこともあるようです。

 最新の機種は汚れを落とすための様々な機能改良がおこなわれていますので、その機能を整理します。また、洗える食器の種類や数についても製品により異なっているため、購入を検討している使用者には重要な視点です。さらに、運転音や乾燥時に外に吹き出す熱風の制御なども最新の機能では配慮されていますので、それらも整理していきます。また、水道水、電気、ガスなどの使用するエネルギー消費量についてもメーカー資料をもとに整理して、その省エネ性能を分析します。

製品の種類と特徴

(1) 種類

 食器洗い乾燥機は省エネ法の対象とはなっていませんので、メーカーのWeb情報、カタログよりそのエネルギー消費特性等を整理します。ここでは、比較的人気のあるパナソニック、リンナイ、三菱電機の3社のカタログ(主として買替え用カタログ)からその性能を整理します。
 まず、食器洗い乾燥機はその設置場所と容積によって分類できます。

<設置場所による分類>
 ●据え置き型(卓上型)
 ●組み込み型(ビルトイン型):フロントオープン型、スライドオープン型

 卓上型は下の写真左のようにキッチンの上に設置するタイプです。キッチンの料理スペースが少なくなるなどの欠点はありますが、システムキッチンでない場合はこのタイプしか使えません。最近ではスリムタイプなど多様な製品が販売されています。

 ビルトイン型はシステムキッチンの中に組み込まれており、キッチン上部を占有することがなく、炊事の邪魔になりません。ビルトイン型は上の写真の中央にあるようなフロントオープンタイプと写真右のスライドオープンタイプの2種類があります。

(2)容積、寸法

<容積と洗える食器数>
 前述した3社のカタログより、食器洗い乾燥機の容積と洗える食器数を下表に示します。下表から分かる通り卓上型は3社のうちパナソニックのみが提供しています。その容積は36Lと50L、食器点数が24点と40点であり、ビルトイン型と比較しても十分な容積と食器数を示しています。なお、パナソニック以外のメーカーから卓上型の食器洗い乾燥機が提供されていますが、非常に小型であるものが多いため、ここでは省略します。

 一方、ビルトイン型は3社すべてが提供しており、庫内容積が36Lから66Lまでであり、食器点数は33点から56点まで洗うことができます。パナソニックは容積40Lから60Lの製品を幅広くそろえています。三菱電機は容積が42Lと60Lの2種類の製品を提供しています。

 リンナイは36Lから66Lまでをそろえていますが、60L以上の製品を多数提供しています。3社の製品のうち最大容積の製品はリンナイのRSW-F402C-SV/B です。容積は66L、56点の食器を洗うことができます。本製品は日本製品として唯一のフロントオープンタイプの製品です。

表-1 食器洗い乾燥機の容積、洗える食器数

タイプ容積(L) 食器数  パナソニック  リンナイ   三菱電機
卓上型 36 24NP-TSK1
 50 40NP-TZ300
NP-TH4/TA4
ビルトイン型 36 33RSW-C402C-SV
 40 40NP-45KS9W
NP-45MS9S/9W
NP-45VS9S
 42 40NP-45RS9S
NP-45RS9K
RSW-405A-SV/BEW-45L1SM
EW-45H1SM/S
EW-45V1SM/S
EW-45R2SM/S/B
 57 50NP-60MS8W/S
 60 44NP-45VD9S
NP-45MC6T
NP-45RD9S/K
EW-45LD1MU
EW-45MD1SMU/SU
EW-45RD1AMU/SU
 48NP-45KD9AP
NP-45MD9WP/SP/W/S
NP-45KD9A/W
 61 52RSW-601C-SV
 63 37RSW-D401LPE/GPE
RSW-D401AE-SV/B
 47RSW-D401LP/G
PRSW-D401A-SV/B
 66 56RSW-F402C-SV/B
出所)パナソニック株式会社:公式Webサイト、食洗器、2022年7月23日閲覧
リンナイ株式会社:公式Webサイト、食洗器、2022年7月23日閲覧
三菱電気株式会社:公式Webサイト、食洗器、2022年7月23日閲覧

<寸法>
 卓上型とビルトイン型の標準的な寸法を下表に示します。卓上型の標準寸法は、幅55cm、奥行34cm、高さが60cmです。オプションとしてスリムタイプが奥行29cm、高さ50cmのものが提供されています。

 ビルトイン型の標準的な寸法は下表の通りです。幅は45cmと60cmの2種類ありますが、ほとんどの製品は45cmです。奥行は61~63cmが標準ですが、奥行が60cm以下のキッチンのための製品もあります。高さは45cm(浅型)のものと70~85cm(深型:ディープタイプ)のものがあります。表-1から分かるように容積の主流は40L(または42L)と60Lの2種類ですが、60L以上の製品がディープタイプです。購入、買替えするときは、特にキッチンの奥行の寸法を確認して、機種を選択することが必要です。

表-2 製品の標準的寸法とオプション

   寸  法 標準 オプション
卓上型 幅 55cm
 奥行 34cm29cm(スリムタイプ)
 高さ 60cm50cm(スリムタイプ)
ビルトイン型 幅 45cm60cm (幅広タイプ)
 奥行61cm~63cm60cm以下(奥行60cm以下のキッチン用)
高さ(深さ) 45cm70~85cm(ディープタイプ)
出所)パナソニック株式会社:公式Webサイト、食洗器、2022年7月23日閲覧
リンナイ株式会社:公式Webサイト、食洗器、2022年7月23日閲覧
三菱電気株式会社:公式Webサイト、食洗器、2022年7月23日閲覧

 なお、ビルトイン型の容積が大きいとはいっても、庫内の収納には限りがあるため、高さが高いグラスや大きな皿などは洗うことはできません。製品の主流であるスライド式の食器洗い乾燥機はグラスの高さ14.5cm以下大皿27cm以下が限界です(パナソニックカタログより)。ワイングラスやシャンパングラスは庫内に入れることはできても効果的に洗うことはできませんので、良く確認して購入することが必要です。

(3)最新機器の洗浄機能

 食器洗い乾燥機はかって手洗いに比べて汚れを落とす能力が低いと言われていました。特に油汚れや焦げ付いたものが乾燥してこびりついたものを落とすのは非常に難しいと考えられてきました。しかし様々な機能の向上により現在ではかなり頑固な汚れにも対応してきたようです。その機能についてメーカー毎の説明を基に整理したものを下表に示します3)4)5)

表-3 メーカーカタログによる洗浄機能の説明

 メーカー  種 類機能名内 容
パナソニックストリーム除菌洗浄手洗いでは難しい50℃以上の高温、高圧の水流でしっかり除菌。洗浄工程における除菌試験の結果は99%。
3Dプラネットアーム上段ノズル:庫内の隅までフルカバーする高密度水流を噴射
センターノズル:4つの洗浄モードを自動ローテーションする
下段ノズル:垂直高さ2mに達する集中高圧水流を噴射
リンナイスライドオープンタワーウォッシャータワーノズル:上下に延び7箇所から水平方向の高圧シャワー
下部ノズル:360度回転しながら9か所から角度の違う高圧シャワー
除菌スチーム洗浄マイクロメートル単位のスチーム粒子が水の粒子では入り込めない汚れのくぼみに入り込み、手洗いでは落ちない汚れも菌ごと洗い流す
スチーム洗浄洗浄工程の前に細かい高温スチームを発生し、スチームが汚れに浸透し、柔らかくなった汚れを強力水流で一気に洗い流す
フロントオープン上下2段回転ノズル上ノズル:上下に水流を出し上カゴと下カゴをムラなく洗浄
下ノズル:下からの水流で皿の淵までしっかり洗浄
三菱電機シャワーミスト洗剤成分を含んだミストを間欠噴射により汚れをふやかし、浮かせてはがす
ターボ噴射DCブラシレスモーターがターボ噴射で回転数を変えて2種類の水流(ワイド、スポット)で汚れを吹き飛ばす
除菌洗浄60℃~80℃での洗浄で脂を溶かして除菌し、洗浄する
出所)パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月
リンナイ:食器洗い乾燥機、総合カタログ Ⅰ<取替・後付用タイプ>、2022年4月
三菱電機:ビルトイン食器洗い乾燥機カタログ、2021年3月

 まず、各メーカーともに水流の強さを向上し、水流方向を多様にする工夫がされています。パナソニックは3Dプラネットアームと称して3種類のノズルから高圧水流を4種類の洗浄モードを繰り返しながら、あらゆる箇所に水流が届くような機能を搭載しています。下図に4種類の洗浄モードを示します3)

    WIDE   CENTER   NORMAL   CORNER
洗浄水を幅広く噴射し、上カゴを広くカバー。食器の汚れをまんべんなく洗い落とします。ほぼ垂直の角度で、集中高圧水流を噴射。上カゴの中央部にセットされたグラスなどを集中的に洗浄します。上カゴにセットされた食器類に、集中高圧水流をダイレクトに当てることで、汚れを吹き飛ばします。集中高圧水流が、上カゴのコーナーにセットされた食器類にも勢いよく当たるようにします。
パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月

 リンナイはタワーウォッシャーでタワーノズルと下部ノズルからの高圧シャワーにより洗浄します。また、三菱電機はターボ噴射により回転数を変えた2種類の水流で汚れを落とします。

 また、こびりついた汚れに対しては、スチーム洗浄(リンナイ)、ミスト洗浄(三菱電機)により、高温の蒸気を用いてこびりついた汚れを浮かし(柔らかくし)、水流で流します。また、3社とも高温、高圧の水流で除菌ができるとしています。

 このように、どのメーカーも汚れを落とすための工夫がされており、かってのような汚れが落ちていないことは少なくなっているようです。ただし、さまざまな工夫はされていても食器の置き方によってはどうしても届かない場所もあるので、どのメーカーも食器の置き方に関する注意事項が記載されています。

(4)運転音、排気温度の低減対策

 快適性の向上として、ここでは運転音と排気について整理します。食器洗い時の運転音が気になったり、排気の温度が問題になることがあります。そのため、騒音対策として各種の対策により、各メーカーともに45dB以下を達成しています。特に、三菱電機はサイレンサーダクトを利用して34.5dBまで低減した機種を提供しています。また、排気の温度を下げるために、外気を取り込んで温度を下げてから排気するという方法が取られています。

表-4 運転音、排気温度の低減対策

 メーカー 運転音対策  排気温度対策
パナソニック40~44dB(50Hz、機種により異なる)ファンで外気を庫内の蒸気と混ぜ合わせ排気を45℃に低温化
リンナイ38~44dB(50Hz、機種により異なる)約35℃まで温度を下げて排気 注1)
三菱電機騒音の原因となる冷却ファンのないDCブラシレスモータの仕様により40dB以下に。
サイレンサーダクト利用により34.5dB 注2)
本体前面にあるファンから取り込んだ外気を蒸気と混合させ排気を35℃に低減
注1)約35℃はRWX-SD401LPの念入りコース運転時、注2)最小騒音(34.5dB)はEW-45L1S-RAのみ。
出所)パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月
リンナイ:食器洗い乾燥機、総合カタログ Ⅰ<取替・後付用タイプ>、2022年4月
三菱電機:ビルトイン食器洗い乾燥機カタログ、2021年3月

製品の省エネ性能

(1) 省エネ性能の算定方法

<使用条件>
 最も興味のある省エネ性能について、3社のカタログより整理します。まず、省エネ性能を算定するために使われている基準は、日本電気工業会の自主基準(2008年制定、同じ基準が2009年にJIS C9920-1として制定されています)です。

 この自主基準はもともと特定の家電製品の経年劣化により重大事故が起きる恐れのない「設計標準使用期間」を設定するための標準使用条件を定めたものです。これは必ずしも省エネ性能の算定のための基準ではありませんが、どのメーカーもこの基準にある使用条件の下で省エネ性能を算定しています。

 下表に示すように、温度20℃、湿度65%等の環境条件で、標準食器負荷や運転コース、給水圧力(0.03~1.0MPa)、給水温度(20℃)の負荷条件を定めています。また、想定時間は1日2回、365日稼働することを想定しています。

表-5 ビルトイン食器洗い乾燥機の使用条件

 分 類 細項目 内    容 備   考
環境条件 電圧単相100 V又は単相200 V製品の定格電圧による
 周波数50 Hz及び/又は60 Hz
 温度 20℃
 湿度 0.65
 設置標準設置製品の据付説明書による
負荷条件 お皿標準食器負荷製品の取扱説明書に記載の負荷
コース標準コース製造業者が指定する洗浄から乾燥までのコース
給水圧力0.03~1.0MPa
給湯・給水 20℃(+40~-15℃)60℃給湯がある
想定時間1日使用回数  2回
1回の使用時間取扱説明書による
1年間の使用日数 365日
出所)日本電機工業会:消費生活用製品安全法、設計標準使用期間の標準的な使用条件(概要)

<比較する手洗いの消費エネルギー>
 省エネの判断の比較対象である手洗いの場合の消費エネルギーの算定方法を下表に示します。食器点数から使用水量、ガス消費量、洗剤使用量が算定されます。算定手法は表下に示されています。

 食器点数と小物点数は電気工業会の自主基準で決められており、その数に食器1点当たりの使用水量(食器1.35L、小物0.55L)を乗じ、付け置き水量10Lを加えて使用水量を算定します。ガス消費量は初温20℃を40℃まで上昇させるガス消費量として計算されます。また、薬品使用量は食器点数に1点当たり使用量を乗じて算定しています。

表-6 省エネ比較の対象となる手洗いのエネルギー消費量

目安家族数食器点数小物点数使用水量(L)ガス消費量(L)洗剤使用量(mL)適用メーカー
4人331663.41447.9リンナイ
5人372071.01618.9リンナイ
5人402075.01709.6パナソニック
6人442482.618810.6パナソニック
6人472486.719711.3リンナイ
6人482488.020011.5パナソニック
7人502892.921112.0パナソニック
8人523297.822212.5リンナイ
8人5632103.223513.4リンナイ
注)計算方法は以下による。
・水温20 ℃として給湯40 ℃のお湯を使用。流量は6 L/分(0.1 L/秒)
・小物食器は4点/1人として、食洗機と同じ食器点数で算出。
・水道使用量算出式:つけ置き洗い用10 L+(食器点数×1.35 L)+(小物点数×0.55 L)
・ガス消費量算出式:(40〔給湯〕-20〔水温〕)×上記算出水道使用量÷0.80〔熱効率〕÷11,000〔発熱量〕
・洗剤使用量算出式:食器点数×0.24mL
出所)パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月

(2)製品のエネルギー消費特性

 上記の計算条件でメーカーが算定した消費エネルギーを下表に示します。下表はパナソニックの3機種と手洗いについて、消費電力量、使用水量、ガス消費量、洗剤使用量を比較したものです(3社のうち全てのエネルギー消費量を示しているのはパナソニックだけでした)。なお、単位の異なるエネルギー消費量の比較をするため、消費電力量とガス消費量を1次エネルギーに換算して合計した値(熱量単位)も示しています。

表-7 食器洗い乾燥機と手洗いの消費エネルギー、洗剤使用量の比較

 食器数機種及び手洗い消費電力量
(Wh)
使用水量
(L)
ガス消費量
(L)
洗剤使用量
(g, mL)
1次エネルギー
換算値(MJ)
 40NP-45MS9S4909415.0 (g)6.7
手洗い0751709.6 (mL)7.6
 44NP-45VD9S5209418.0 (g)7.0
手洗い082.618810.6 (mL)8.4
 48NP-45MD9SP5209418.0 (g)7.0
手洗い08820011.5 (mL)9.0
出所)パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月
注)1次エネルギー換算値は消費電力量とガス消費量の合計を算出。1次エネルギーの換算係数は以下の通り。
電気1kWhの熱量換算係数:9.97MJ/kWh(「経済産業省:エアコンディショナー及び電気温水機器判断基準ワーキンググループ、電気温水機器の取りまとめ、2021年3月」の昼間の電気の換算係数より)
ガス1m3の熱量換算係数:44.8MJ/m3(環境省:温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度、算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧)

 上表を見ると、電力消費量はどの機種も500Wh前後の値であり、手洗いは電力消費はありません。使用水量は手洗いが75~88Lであるのに対して、食器洗い乾燥機は9Lとなっており、節水効果は非常に大きいものです。また、ガス消費量は手洗いは170~200Lであるのに対して食器洗い乾燥機が41Lと、こちらも大変省エネになっています。洗剤の使用量も若干少なくなっています。

 食器洗い乾燥機は消費電力量が増えてガス消費量が減っていますが、上表の最右欄にこれらのエネルギー消費量を1次エネルギーに換算して合計した数値を示しています。この計算過程について、食器点数40点の場合の一例を下に示します(換算係数は表の注釈を確認ください6)7))。

<食器点数40点の場合の一次エネルギー換算の計算例>
 手洗い:ガス消費量170L→7.6MJ (=0.170×44.8MJ/m3
 食器洗い乾燥機:消費電力量490Wh→4.9MJ (=0.49×9.97MJ/kWh)
         ガス消費量41L→1.8MJ (=0.041×44.8MJ/m3
         合計 4.9+1.8=6.7MJ≦7.6MJ

 この結果を見ると、手洗いは7.6MJ、食器洗い乾燥機は6.7MJと、食器洗い乾燥機が若干少なく(手洗いの約9割)なっています。他の食器点数の場合も結果は同じです。

 次に、食器洗い乾燥機を1回利用する際のコストは下表と下図に示す通りです。食器洗い乾燥機は全体のコストが26~29円であり、手洗いのコスト(53~62.5円)の1/2以下になっています。食器洗い乾燥機のコストの内訳は、電気代は13~14円ですが、水道代2.4円、ガス代6.8円と手洗いに比べて大幅に少なくなっていることが分かります。節水の効果がガス消費量に影響して、これらがコストを押し下げていると言えます。

表-8 食器洗い乾燥機と手洗いのコスト比較(パナソニック製品)

 食器数型式電気代(円)水道代(円)ガス代(円)洗剤代(円)合計(円)
  40NP-45MS9S13.22.46.83.726.1
手洗い019.728.45.053.1
 44NP-45VD9S14.02.46.85.929.1
手洗い021.631.45.558.5
 48NP-45MD9SP14.02.46.85.929.1
手洗い023.133.46.062.5
注)それぞれの単価は以下の通り。
 電力料金単価:27円/kWh、上下水道料金:262円/m3、ガス料金:167円/m3、専用洗剤単価:0.74円/g、手洗いの洗剤単価:0.52L/mL。
出所)パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月
リンナイ:食器洗い乾燥機、総合カタログ Ⅰ<取替・後付用タイプ>、2022年4月

 これらの結果から、もし手洗いをお湯を使わず水で洗っている場合は、食器洗い乾燥機の方が省エネになることはありません。確かに、食器洗い乾燥機を使うと使用水量は減りますがガス消費量は(消費電力量も)増えるので、手洗いの方が省エネということになります。季節的にお湯と水を使い分けていることも多いと思いますが、これらを考慮して省エネを検討することが必要です。

 次に、コストの内訳が示されていないリンナイと三菱電機とを加えて使用水量とコストの比較を行ったのが下図です(全て標準コース)。全メーカーとも同じ計算方法でコストを算出しており、単価は下図の欄外に書いてある通りです。

注)横軸の数字は食器数、英数字は型番、NPはパナソニック、RSWはリンナイ、EWは三菱電機。
電力単価27円/kWh、上下水道単価262円/m3、ガス料金単価167円/m3、洗剤単価0.71円/g。
出所)使用水量、コストはメーカーカタログ値、三菱電機は最新Web情報より。

 この図より、最もコストが低いのは食器点数40点の三菱電機EW-45L1SMであることが分かります。この機種は容積が小型(42L)であり、すすぎ、加熱すすぎの時間が短い設定のため、コストが最小となっています。ただし、最もコストが高いリンナイRSW-F402Cは56点の食器を洗うことができるため1日1回の利用ですめば、三菱電機のEW-45L1SMが1日2回利用した場合と同じコストになります。単純にコスト比較するのではなく汚れ落としの能力や使い勝手を見て購入の判断をすることが必要です。

 省エネルギーに関しては、どのメーカーもセンサーとAIを搭載して、汚れが少ない時や食器数が少ない場合には洗浄時間を短くするなどの省エネ機能を有しています。一例としてパナソニックのAIエコナビは、下図に示すように3つのセンサー(汚れセンサー、食器量センサー、室温センサー)を用いて、すすぎ回数や乾燥時間を削減して節水、節電します。その結果、使用水量が9Lから7.5Lに節約され、コストも29.1円から25.6円に削減できる(12%削減)としています。

出所)パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月

まとめ

 今回は食器洗い乾燥機を取り上げ、製品の特徴と省エネ性能について整理しました。

 食器洗い乾燥機はまだ36%程度の普及率ですが、炊事の快適性と利便性から今後は普及していく可能性があります。そのため、製品の種類や洗浄力などの特徴について整理しました。また、メーカーカタログに記載されている省エネ性能についてまとめてみました。

 食器洗い乾燥機は卓上型とビルトイン型の2種類があります。前者はキッチンの上に設置するものであり、後者はシステムキッチンの中に組み込まれて使用するものです。容積はビルトイン型で33Lの小型のもの、60L~66L(深さがディープタイプ)までの大容積のものがあります。卓上型でも50Lなどの比較的大きなものもあり、狭い空間でも載るようにスリムタイプも提供されています。

 ビルトイン型の寸法は、幅は45cmが中心で一部60cmのものもあります。奥行は65cmのキッチンを対象としており、一部奥行60cmのキッチンに対応している製品があります。キッチンのリフォームをする予定がなければ、キッチンの寸法を確認したうえで製品を購入することが必要です。

 なお、ビルトイン型の容積が大きいとはいっても、庫内の収納には限りがあるため、高さが高いグラスや大きな皿などは洗うことはできません。製品の主流であるスライド式の食器洗い乾燥機はグラスの高さ14.5cm以下、大皿27cm以下が限界です(パナソニック製品)。一般的なワイングラスやシャンパングラスは洗えませんので、良く確認して購入することが必要です。

 洗浄機能を高めるため、各メーカーともに水流の強さを向上し、水流方向を多様にする工夫がされています。また、こびりついた汚れに対しては、スチーム洗浄(リンナイ)、ミスト洗浄(三菱電機)により、高温の蒸気を用いてこびりついた汚れを浮かし(柔らかくし)、水流で流します。さらに、運転音を低くしたり、排気の温度を下げるなどの工夫もされています。

 次に、食器洗い乾燥機の省エネ性能をメーカーのカタログから整理しました。省エネの比較として手洗いの場合の食器数当りの使用水量、ガス消費量、洗剤使用量を設定し(日本電気工業会の自主基準に基づく)、食器洗い乾燥機との比較を行っています。

 その結果、食器洗い乾燥機は電気代はかかりますが、使用水量が手洗いに比較して大幅に少ない(パナソニックでは手洗いの1/8程度)ため、ガス消費量も少なくなっています(手洗いの1/4程度)。そのため、コストは電気代が増えても手洗いに比して1/2以下となります。

 なお、消費電力量とガス消費量を1次エネルギー換算して両者を比較すると食器洗い乾燥機の方が若干少ないことが分かりました(手洗いの9割程度)。ここでは水道供給にかかるエネルギーは考慮していないため、全体のエネルギー消費量はさらに減ると想定されます。

 また、各メーカーともにセンサーとAIを用いた節水、節電運転モードを有しており、標準運転に対して最大で12%削減ができる機種もあるようです(パナソニック製品の例)。このように、いろいろな工夫がされている食器洗い乾燥機ですが、手洗いでお湯を使っていない場合は食器洗い乾燥機の方が消費エネルギーは多くなりますので、実態に合わせて購入を検討することが必要です。

<参考文献>
1) 総務省:全国消費実態調査、主要耐久消費財に関する結果、2015年7月
2) 内閣府経済社会総合研究所:消費動向調査(2022年3月実施分)、調査結果の要点
3)パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月
4)リンナイ:食器洗い乾燥機、総合カタログⅠ(取替・後付用タイプ)、2022年4月
5)三菱電機:ビルトイン食器洗い乾燥機カタログ、2021年3月
6)経済産業省:エアコンディショナー及び電気温水機器判断基準ワーキンググループ、電気温水機器の取りまとめ、2021年3月
7)環境省、温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度、算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧、2022年