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給湯機器

食器洗い乾燥機(2)-エネルギー消費量の測定

 最近はテレワークをする人の増加により自宅で食事をする機会が増え、炊事の中でも食器洗いが家事の負担になっている世帯も多いと思われます。そのような世帯では食器洗い乾燥機は家事の負担を減らす便利な機器の1つかもしれません。

 前回は食器洗い乾燥機の機能と省エネ特性を整理しました。メーカーのカタログにより最近の製品は汚れを落とす機能が向上してきており、また手洗いに比べて省エネで低コストであることが分かりました(「食器洗い乾燥機(1)-機能と省エネ性能」を確認ください)。

 具体的には、食器洗い乾燥機は電気代はかかりますが、使用水量が手洗いに比して大幅に少ない(手洗いの1/8程度)ため、ガス消費量も少なく(手洗いの1/4程度)、コストは電気代が増えても手洗いの1/2以下とされていました(パナソニックの最新製品の結果より)。

 今回はこのメーカーカタログ値について、実際の食器洗い乾燥機のエネルギー消費量を測定して、省エネ性能やコストの数値を確認します。また、地球温暖化防止に関係する1次エネルギー消費量についても手洗いとの比較を行います。そして、食器洗い乾燥機の省エネ運転にも触れていますので、以下に報告します。

エネルギー消費量の測定方法

(1)計測の対象とした食器洗い乾燥機

 測定対象とした食器洗い乾燥機は、リンナイ株式会社のRSW-F402Cです。これは日本製では唯一のフロントオープンタイプであり、高さ80cm程度ある大容量タイプです。庫内容積は66L、標準収納食器数は56点です。また、定格消費電力は洗浄モーターが130W、ヒーターが800Wです。

表-1 食器洗い乾燥機の仕様

  項  目   内  容
メーカーリンナイ株式会社
型式フロントオープンタイプ食器洗い乾燥機RSW-F402C
電源電圧 AC100V
周波数50Hz - 60Hz
消費電力洗浄モーター  130W
ヒーター 800W
最大消費電力 930W
外形寸法幅448mm×奥行564mm×高さ755~855mm
質 量 約30 kg
使用水量(標準コース) 約12L
水道水圧0.03 ~ 1MPa
洗浄方式回転ノズル噴射による加熱洗浄方式
すすぎ方式ためすすぎ方式
乾燥方式ヒーターとファンによる強制排気乾燥
庫内容積  66L
標準収納食器数食器大皿 8点、中ばち 9点、小皿 10点、茶わん 8点、吸い物わん 8点、湯のみ・コップ13点(以上食器56点)
小物はし 8組、スプーン 8点、フォーク 8点(以上小物24点)
出所)リンナイ株式会社:フロントオープンタイプ食器洗い乾燥機(家庭用)RSW-F402C、取扱説明書

 本製品は上下に2つのノズルを持ち、上かごと下かごをムラなく洗浄するとされています(下の写真参照)。下かごの容積が大きいためフライパンなども洗うことができます。また、フロントオープンタイプであるため、食器の出し入れが容易であるという特徴もあります。前回の報告でも示したように、運転音の低減化、排気の低温度化の機能もついています。

 本製品の運転コースのオプションは下表に示す通りです。標準コース、スピーディコース、念入りコース、節水コースと、洗いをせずに乾燥のみを行う乾燥コースの5コースがあります。今回の測定ではスピーディコースで運転しています。

 下表には乾燥時間の初期設定を示しています。乾燥する時間は「乾燥時間」スイッチから設定しなおすことができます。時間を長くしたり、短くしたりすることができます(0に設定することも可能です)。

表-2 運転コースのオプション

 運転コース  汚れの程度乾燥時間  目安運転時間
標準コース普通の汚れで、食後間を置かず運転するとき 60分130分(給水温度60℃)
150分(給水温度20℃)
スピーディコース普通の汚れで付け置き後直ぐに食器を洗う時 30分85分(給水温度60℃)
105分(給水温度20℃)
念入りコースひどい汚れ 60分150分(給水温度60℃)
180分(給水温度20℃)
節水コース油汚れが少なく水道代や電気代を節約するとき 120分190分(給水温度60℃)
205分(給水温度20℃)
乾燥コース乾燥のみをするとき 120分120分
注)給水温度60℃とは給水管をガス温水器に接続し、設定温度を60℃に設定した場合。

 また、給水は水道管に直接接続する方法とガス温水器に接続する方法の両方が可能ですが、本機はガス温水器に接続しており、その設定温度は40℃です。ガス温水器は下表に示すようにリンナイ製のRUF-VS2005SAUです。

 水道に接続する場合はガスは消費しませんが、ヒーターの消費電力量が多くなります。また、ガス温水器の設定温度によってもガス消費量と消費電力量が変わることになります。

表-3 測定対象のガス温水器の仕様

   項  目  内  容  外観写真
メーカーリンナイ株式会社  
型式RUF-VS2005SAU
機能自動湯はりタイプ
使用都市ガス  13A 
ガス消費量
kW(kcal/h)
給湯 42.7(36,700)
風呂 11.6(10,000)
同時使用時 42.7(36,700)
出湯能力
(L/min)
水温+25℃  19.6
水温+40℃  12.2
外形寸法(mm)高さ610×幅250×奥行250
質 量 (kg)  22.3
消費電力(W)待機時  3.0
凍結予防ヒータ  98
同時使用時  164
省エネ基準省エネ区分 区分O
省エネ基準 80.4%
基準達成率 100%
風呂部熱効率 78.6%
給湯部熱効率 81.0%
出所)リンナイ株式会社、ガスふろ給湯器、取扱説明書
注)省エネ基準は資源エネルギー庁、省エネ型製品情報サイト、ガス温水器(2022年6月16日閲覧)による。

(2)エネルギー消費量の測定方法

 食器洗い乾燥機は、電気とガスの両方を使います。電気の測定はラトックシステム株式会社RS-WFWATTCH1を用います。ガスの測定は東京ガスのガスメータを用います。また、水道使用量も東京都の水道メータより測定しました。

表-4 電力モニター(ワットチェッカー)の仕様

 項 目  内   容     外 観 写 真
メーカー名ラトックシステム株式会社
製品名・型番RS-WFWATTCH1
電源100V
測定範囲1~1,500W
測定項目毎秒の電圧、電流、消費電力
毎分の積算電力量、電気料金、CO2排出量
データ保存CSV形式
通信方法Wifi
出所)ワットチェッカーRS-WFWATTCH1、取扱説明書

表-5 ガスメータの仕様

 項  目    内   容   写  真
メーカー名東京ガス株式会社
製品名・型番通信機能付きマイコンメーター JO型
表示ガス消費量積算値
最小読み取り値0.001m3
最大圧力3.5kPa
最大流量4m3/h
機能過大流量遮断、圧力低下遮断、感震遮断、継続時間オーバ―遮断、微小もれ疑い警報
出所)東京ガス株式会社、公式Webサイト

(3)洗う食器類

 食器洗い乾燥機で洗う食器類は下表の通りです。食器が42点、小物が28点であり、これは1日に使った食器全ての点数です。本食器洗い乾燥機の標準収納食器数は56点(表-1参照)ですので、これより少ない量(能力の3/4)になっています。

 下の写真に食器を格納した状態を示しています。上段かごに24点、下段かごに18点配置しています。小物ははし、フォーク等ですが、これは下段かごに置いています。 

表-6 洗った食器の種類と数

 分 類  か ご 食器種類 数 分類食器種類 数 
食器類 上段 24グラス 2小物類はし(組) 8
ワイングラス 2フォーク、ナイフ 8
茶碗 2スプーン 9
湯飲み 2お玉 2
マグカップ 2しゃもじ 1
コーヒーカップ 2
小皿 5
中ばち 5
小ばち 2
 下段 18大皿 2
中皿 6
小皿 2
どんぶり 1
スープ皿 3
コーヒー皿 1
グラス 2
ワイングラス 1
 合 計  42 合 計 28

エネルギー消費量の測定結果

(1)食器洗いに要したエネルギー消費量

 食器洗い乾燥機の稼働時の消費電力の推移を下図に示します。メーカーへのヒアリングにより、下図に番号で示した工程は、(1)排水、給水、(2)加熱洗浄、(3)給排水とすすぎ、(4)加熱すすぎ、(5) (6) (7)ヒーター断続乾燥、(8)余熱乾燥(送風のみ)であることが分かりました。この食器洗いに要した時間は95分、消費電力量は730Whでした。

 また、水使用量とガス消費量の累積値を示したものを下図に示します。どちらも開始20秒から1分程度、さらに開始25分ごろから約10分間、断続的に3回使用されています。食器洗いに要した水使用量は16Lガス消費量は30Lでした。

 これらの結果から、工程別の所要時間とエネルギー消費量を下表に示します。工程の区切りが明確でないため、下の数値は正確なものではなく大まかな数値です。同表にはポンプ、モーター、ヒーター、ファンの稼働状況も示しています。

 まず、電気は(2)加熱洗浄と(4)加熱すすぎのヒーターと洗浄モーターの両方を使っているときに多くを消費しています。水とガスは連動していて、最初の(1)排水・給水と(3)給排水・すすぎの時のみ使用されています。ヒーター断続乾燥(5,6,7)はヒーターが断続的にON、OFFされています。最後の(8)余熱乾燥はファンのみが稼働しています。

表-7 工程別のエネルギー消費量

  項  目 時間消費電力量水使用量ガス消費量設備稼働状況
(分)(Wh)(L)(L)給排水P洗浄Mヒータファン
(1)排水・給水2約148
(2)加熱洗浄24324
(3)給排水、すすぎ10111222
(4)加熱すすぎ24326
(5),(6),(7)断続乾燥2567
(8)余熱乾燥10約1
合計957301630
注)給排水P:給排水ポンプ、洗浄M:洗浄モーター、上記はメータ値の目視による大まかな数値。

 今回測定したエネルギー消費量とスペックにある数値とを比較したものが下表です。今回の測定の運転コースはスピーディコースで行っています。スペック値の運転コースは標準コースであるため、洗いやすすぎの時間などが異なっています。また、食器洗い乾燥機の使用条件は前回の報告で示したように、気温20℃、湿度65%、給水圧力0.03~1.0Mpaなどと決まっていますが、正確にこの条件に合わせることは不可能ですので、スペック値を参考値としてみるにとどめます。

表-8 今回測定値とスペック値との比較

  項  目      今回測定    スペック    備    考  
食器点数(小物点数)42(28)56(24)
運転コーススピーディコース標準コース
稼働時間(分)95130
消費電力量(Wh)730922スペック値は電気料金24.9円、電気料金単価27円/kWhより計算
水道使用量(L)1612
ガス消費量(L)3051スペック値はガス料金8.5円、ガス料金単価167円/m3より計算
出所)スペック値はリンナイ株式会社、食器洗い乾燥機、総合カタログ 2022 Ⅰ(取替・後付用タイプ)、2022年4月

 次に、今回の測定値と手洗いによるエネルギー消費量を比較します。手洗いのエネルギー消費量は日本電機工業会の自主基準で下表の注釈のように算出することになっています。この方法に基づき計算した結果、水使用量82.1 L、ガス消費量186.6 L、洗剤使用量10.1mL となりました。

表-9 手洗いとのエネルギー消費量の比較

種類食器点数小物点数水使用量
 (L)
ガス消費量
 (L)
洗剤使用量
(mL, g)
1次エネルギー消費量
 (MJ)
手洗い422882.1186.610.1mL8.4
今回測定4228163010g8.6
注)手洗いのエネルギー消費量は以下の計算によります。
・水温20 ℃として給湯40 ℃のお湯を使用。流量は6 L/分(0.1 L/秒)
・水道使用量算出式:つけ置き洗い用10 L+(食器点数×1.35 L)+(小物点数×0.55 L)
・ガス使用量算出式:(40〔給湯〕-20〔水温〕)×上記算出水道使用量÷0.80〔熱効率〕÷11,000〔発熱量〕
・台所用洗剤使用量:標準食器点数×0.24mL
・電気の1次エネルギー換算係数:9.97MJ/kWh(参考文献1)
・ガスの1次エネルギー換算係数:44.8MJ/m3(参考文献2)

 今回の測定値については、使用量は手洗いの1/5ガス消費量は1/6であることが分かりました。また、1次エネルギー換算値(熱量)を上表の最右欄に示しています。ここでは消費電力量とガス消費量のみを1次エネルギーに換算しています(1次エネルギーの換算係数は上表の参考文献を参照ください)。計算の手順は以下の通りです。

 食器洗い乾燥機(今回測定値):730Wh×9.97MJ/kWh+30L×44.8MJ/m3
               =7.3MJ+1.3MJ=8.6MJ
 手洗い(計算値):186.6L×44.8MJ/m3=8.4MJ≦8.6MJ

 従って、手洗いの方が1次エネルギー消費量はわずかに少ないことになります。これは、洗った食器数が食器洗い乾燥機の能力の3/4であることが原因です。能力上限の食器数で比較すればこの差は逆転していたでしょう。

 また、この結果は電力の1次エネルギー換算値が非常に高いことにも影響しています。現在の我が国の電源構成(化石燃料が約8割)ではやむを得ない結果と思われます。ただし、この計算では水道水供給における1次エネルギー消費量は考慮されていないため、これを考慮すると食器洗い乾燥機の方が少なくなるものと思われます。 

(2)食器洗いに要したコスト

 次に、このエネルギー消費量でのコストを計算すると、下表になります。コストの計算では、カタログにある料金単価を用いて計算しています3)4)。この結果、今回の測定値は水道代は4.2円とスペック値(3.1円)よりやや多くなっていますが、電気代が19.7円(スペック値24.9円)、ガス代が5.0円(スペック値8.5円)と少なくなっているため、合計では35.9円とスペック値(43.5円)の8割程度となっています。

表-10 エネルギー消費にともなうコスト比較

  項  目 電気水道ガス洗剤合計
スペック値(標準コース)24.9円3.1円8.5円7.0円43.5円
今回測定消費量730Wh16L30L10g
料金単価27円/kWh262円/m3167円/m30.7円/g
料 金19.7円4.2円5.0円7.0円35.9円
手洗い消費量082.1L186.6L10.1mL
料金単価262円/m3167円/m30.68円/mL
料 金021.5円31.2円6.9円59.6円
出所)リンナイ:食器洗い乾燥機、総合カタログ 2022 Ⅰ(取替・後付用タイプ)、2022年4月

 測定条件(気温、水温、気圧等)が同一の条件ではないこと、今回の測定が標準コースではなくスピーディコースであることなどの相違があることを考慮してこの数値を確認することが必要です。気温ゃ水温がスペックの使用条件より高いことや洗浄時間が短いことなどから、スペック値より小さな値となっています。

 ここで、食器洗い乾燥機と手洗いのコストを比較したものを下図に示します。手洗いのコストは、水道代21.5円、ガス代31.2円、洗剤代6.9円となり合計59.6円となります。この結果より、今回の食器洗い乾燥機の使用に要したコスト(35.9円)は手洗いの約6割程度ということができます。

(3)食器洗い乾燥機の省エネ対策

 今回は運転コースをスピーディコースにして運転しましたが、本製品には節水コースなどもあるため、それを使って省エネを行うことも可能です。節水により水使用量とガス消費量が削減できます。ただし、ガス消費量を減らすことはできても節電はできません。

 メーカーのカスタマーセンターからの情報では、節電を行うには本製品は乾燥時間の設定ができるため、乾燥工程を省略する乾燥時間を0にする)ことが有効とのことでした。加熱すすぎ終了後の食器はかなり熱くなっているので、ドアを開けておけば自然に乾燥するとのことです。

 実際に乾燥工程を省略して運転したところ、3時間後に食器は乾いていましたが、庫内は濡れておりカビが生えないか心配な点もありましたので、布で吹いて対応しています。これは、省エネと利便性の選択をどうするか判断が分かれるところだろうと思います。

 今回の測定結果より、この方法で約70Whを節電できることが分かります。食器数が多く標準コースのように乾燥時間が長い場合は、より多くを節電できます。また、節電するには他の機種で装備しているようにセンサーとAIによる食器数と汚れに応じた最適(節電)運転を行うことが有効です。

 さらに、電力は夜間電力を利用するなど、電力のピークを避けて利用することも重要と思われます。そのため、タイマーを使って夜間に運転させる方法が有効です。これは、ピーク電力の低減と節電(節約)の両方に効果があります。そのためには、多くのメーカーが行っている運転音対策は重要な役目を果たします。

まとめ

 今回は実際の食器洗い乾燥機のエネルギー消費量を測定して、スペック値と比較するとともに、手洗いとの比較を行いました。

 測定した食器洗い乾燥機は、リンナイ製RSW-F402Cです。これは日本製では唯一のフロントオープンタイプであり、高さ80cm程度ある大容量タイプです。庫内容積は66L、標準収納食器数は56点です。

 本製品は、上下に2つのノズルを持ち、上かごと下かごをムラなく洗浄することができ、下かごの容積が大きいためフライパンなども洗うことができます。また、フロントオープンタイプであるため、食器の出し入れが容易であるという特徴もあります。

 本製品の運転コースのオプションは標準コース、スピーディコース、念入りコース、節水コースがあり、洗いをせずに乾燥のみを行うコースもあります。標準コースで運転時間は130~150分(給水温度が60℃、20℃により異なります)、スピーディコースで85分~105分です。

 今回、洗った食器は42点(上段かごに24点、下段かごに18点)、小物が28点(下段かご)です。これは1日に使った食器全ての点数であり、家族が2名のため1日1回の使用で間に合います。本食器洗い乾燥機の標準収納食器数は56点のため、能力の3/4を処理することになります。

 今回の洗浄に用いた運転モードはスピーディコースです。このコースは余り汚れが多くない場合に用いることができます。スピーディコースの洗浄の工程は6段階に分けることができ、(1)排水+給水、(2)加熱洗浄、(3)排給水とすすぎ、(4)加熱すすぎ、(5)ヒーター断続乾燥、(6)余熱乾燥(送風のみ)という工程になっています。

 食器洗いに要した時間は95分、消費電力量は730Whであり、全ての工程で電気が使われていました。また、水とガスは工程の(1)、(3)のみで使用されており、食器洗いに要した水使用量は16L、ガス消費量は30Lでした。これをスペック値(標準コース、食器数56点)と比較すると、水使用量は多いですが消費電力量、ガス消費量は少なくなっていました。

 また、食器洗いに要したコストは、水道代は4.2円とスペック値(3.1円)よりやや多くなっていますが、電気代が19.7円(スペック値24.9円)、ガス代が5.0円(スペック値8.5円)と少なくなっているため、洗剤代(7円)を含めて合計では35.9円とスペック値(43.5円)の8割程度となっています。

 さらに、今回の測定結果について、手洗いのエネルギー消費量及びコストと比較しました。手洗いに要するエネルギーは水使用量82.1L、ガス消費量186.6L、洗剤使用量10.1mLと計算されました(日本電機工業会自主基準による)。この結果より、両者の1次エネルギー消費量を比較すると、手洗いの方がわずかに少ないことが分かりました。ただし、この計算には水道水供給における1次エネルギー消費量は考慮されていないため、これを考慮すると食器洗い乾燥機の方が少なくなると思われました。

 これに単価を乗じてコストを算定すると、手洗いの水道代、ガス代、洗剤代は順に21.5円、31.2円、6.9円となり合計59.6円であるため、今回の測定値(35.9円)は手洗いのコストの約6割となっていました。このことから、食器洗い乾燥機は手洗いに比べて低コストであることは分かりましたが、電気とガスの1次エネルギー換算値で比較すると手洗いの方が少ないなど、省エネ上のメリットは少ないと言えそうです。

 今回は運転コースをスピーディコースにして計測しましたが、節水コースなどを用いて省エネ(節ガス)を行うことができます。また乾燥工程を省略することで節電も可能です。加熱すすぎ終了後の食器はかなり熱くなっているので、ドアを開けておけば自然に乾燥するためです。また、電力は夜間電力を利用するなど、電力のピークを避けて利用することも重要と思われます。

<参考文献>
1)経済産業省:エアコンディショナー及び電気温水機器判断基準ワーキンググループ、電気温水機器の取りまとめ、2021年3月
2)環境省、温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度、算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧、2022年
3)パナソニック:ビルトイン食器洗い乾燥機、総合カタログ B(買替え用)、2022年8月
4)リンナイ:食器洗い乾燥機、総合カタログ 2022 Ⅰ(取替・後付用タイプ)、2022年4月