これまで、エアコンの暖房時の消費電力については細かく検討してきましたが、冷房時についてはデータが十分とれず不十分な検討に終わっていました。今回は、冷房時の消費電力について1か月程度の消費電力を測定しましたので報告します。
今回消費電力を測定したのはダイキン製のエアコンです。換気ができることや省エネ性能がさらに高まっていることを受けて買い替えました。年初に購入、設置しているため、6月末から冷房運転を開始しました。
2022年6月末は記録的な暑さで冷房による消費電力が上昇しました。そのタイミングで電力需給が逼迫し節電要請が出ていました。しかし、節電を要請されても冷房を止めると地獄のような暑さになるため、使用せざるを得ません。特に、夜間は寝室に熱がこもって暑くなるため、エアコンを停止して寝ていると熱中症にかかる恐れがあります。
7月に入り、やや暑さも和らいだ時点で、節電のための試みも行いました。しかし、7月末に再度猛暑が押し寄せたため、節電を行うことが困難になりました。本サイトの趣旨は「明るく健やかなサステナブル社会の実現」なので、節電をして健康を害することはできません。
今回の測定においては、冷房運転の当初にいろいろな試行錯誤を行っています。そのため、あまり統一的な運転でないため、統計的なデータ分析には適していませんが、その試行錯誤の過程でいくつかのエアコンの冷房時の特性が分かりましたので、それを示したいと思います。継続的にデータを収集していますので、統計的な分析は後日行う予定です。
エアコンの冷房時の消費電力の測定方法
(1) 測定対象としたエアコン
測定を行ったエアコンはダイキン製ルームエアコンAN40ZRBKP-Wです。その仕様は下表に示す通りです。冷房能力は4.0kW(暖房能力5.0kW)、消費電力800Wであり、冷房の対象とする標準面積は鉄筋構造の建物では28m2です。
表-1 測定対象のエアコンの仕様
項 目 | 内容(数値) | ||
---|---|---|---|
メーカー | ダイキン工業株式会社 | ||
型 番 | AN40ZRBKP-W | ||
電 源 | 単相200V | ||
冷房 | 能力(kW) | 4.0 | |
消費電力(W) | 800 | ||
面積の目安(m2) | 鉄筋アパート南向洋室 | 28 | |
木造南向和室 | 18 | ||
暖房 | 能力(kW) | 標準 | 5.0 |
低温 | 9.1 | ||
消費電力(W) | 標準 | 900 | |
低温 | 3,390 | ||
面積の目安(m2) | 鉄筋アパート南向洋室 | 23 | |
木造南向和室 | 18 | ||
消費電力量 kWh | 暖房時期間合計 | 761 | |
冷房時期間合計 | 305 | ||
期間合計(年間) | 1,066 | ||
通年エネルギー消費効率(APF) | 7.1 | ||
省エネ基準達成率(%) | 144 | ||
冷房定格エネルギー消費効率(冷房COP) | 5.0 |
出所)ダイキン工業株式会社:ルームエアコンRX/Rシリーズ、取扱説明書
ダイキン工業株式会社:ルームエアコンカタログ、2021年11月(2022年度製品用)
本エアコンの特徴は換気(給気と排気)ができることと、湿度管理(除湿と加湿)ができるということです。一般的にエアコンは除湿機能はありますが、加湿はできません。本機の加湿は無給水加湿であり、屋外の空気中の水分を取り込んで加湿します。また、普通は冬季に給気を行うと冷たい外気が侵入しますが、本機ではエアコンの熱交換器で適温に変えて室内に給気されます。
また、通年エネルギー消費効率(APF)は7.1であり、このクラスの省エネ基準は4.9ですので、省エネ基準達成率は144%です。APFの数値は全製品の中でも最高クラスです。また、冷房時の成績係数(COP)は5.0です(能力4.0kWを消費電力800Wで除して求めます)。この意味は、投入した電力の5倍の冷房が行われる(熱量を室外に排出)ということです。APF、COPの詳細な説明については、本サイトの「エアコン(1)-省エネ性能」を確認ください。
運転モード並びに風量、風向の設定オプションは以下の通りです。運転モードは冷房、除湿冷房、除湿、暖房、高温風、加湿暖房の6種類です。それぞれの温度と湿度の設定は下表の通りです。冷房時の温度設定は18℃から32℃まで0.5℃刻みで設定ができます。
表-2 エアコンの運転モード
運転モード | 温度設定 | 湿度設定 |
---|---|---|
冷房 | 18℃~32℃(0.5℃きざみ) | 湿度を下げると除湿冷房になります |
除湿冷房 | 美肌、連続、50%、55%、60%、切 | |
除湿 | 温度を変えると除湿冷房になります | 連続、50%、55%、60% |
暖房 | 14℃~30℃ | 湿度を上げると加湿暖房になります |
高温風 | 温度変更不可 | 湿度変更不可 |
加湿暖房 | 14度~30℃ | 切、40%、45%、50%、美肌 |
加湿 | 温度を変えると加湿暖房になります | 40%、45%、50%、連続 |
出所)ダイキン工業株式会社:ルームエアコンRX/Rシリーズ、取扱説明書
また、風量と風向のオプションは下表の通りです。風量は「しずか」と5段階の設定ができます。風向は上下6段階、左右7段階、スイングとワイドのオプションがあります。風向左右を自動にすると、人感センサーが作動して人のいる方向に風を向けます。
表-3 エアコンの風量、風向オプション
調節項目 | オプション | 備 考 |
---|---|---|
風量 | 自動、しずか、風量1~風量5 | |
上下風向 | 自動、上下6段階、スイング、ワイド | |
左右風向 | 自動、左右7段階、スイング、ワイド | 自動は人感センサーが作動して人のいる方向に風を向けます |
本機には人感センサーと床温度センサーが設置されており、人体(発熱体)の動きを検知し、人がいる空間を認識します。また、床温度センサーは床と壁の温度を検知します。上表の「自動」オプションは、これらのセンサーにより好みの設定に応じて自動的に風量、風向が設定されます。
さらに、運転方法について好みの設定を学習し、温度、湿度、気流をエアコンが選択して快適な運転を行う「AI快適自動」のモードがあります。
(2)消費電力量の計測、データ収集方法
表-1に記載があるように、本製品の電源は単相200Vです。そのため、これまで使用してきたワットチェッカーは使えません。また、暖房時の消費電力を測定した電源200Vのエアコンでも使用可能な電力計エコキーパーEC-200(「エアコン(4)-暖房時の消費電力」を参照ください)も、ソケットの形状が合わず接続できませんでした。
そこで、本エアコンの「おしらせ」メニューにある「電力・電気代」の「消費電力量」の表示を見ることで把握することにしました。ただし、この計測結果は積算電力量が50kWhまで0.1kWh単位でしか表示されません。さらに、50kWhを超えると、1kWh単位の表示になってしまいます。
以前使用していた電力計エコキーパーEC-200では、積算電力量が10kWh未満なら0.01kWh単位までの計測が可能でしたので、時間単位の消費電力の変動などかなり細かな統計的な分析ができました。しかし、今回は電力量の最小単位が0.1kWhであるため、時間単位の分析などはやや難があることが想定されます。ただし、消費電力の変動傾向は把握できますし、1日の総消費電力量の分析には問題ないと考えられます。
また、本エアコンにはwifiの通信機能により遠隔でスイッチのON/OFFや運転モードの変更、各種の情報を見ることができます(スマートリモートコントロール機能)。そのため、データを携帯電話(iphone)で読み取り、それを記録することにしました(下にスマートリモートコントロールの画面をスクリーンショットした結果を示します)。記録の時間単位は1時間であり、起床する毎日6時から就寝する22時まで記録します。
エアコンの設定温度を28℃~29℃に設定し、運転モードは「冷房」、「風量:自動」、「上下風向:最上段」、「左右風向:スイング」で設定して、データ取得を開始します。
(3)室内、屋外温度の計測方法
室温、外気温の測定は、温度データロガAD-5326TTを用いて1時間毎に測定、記録します。本器は2つのサーミスタで同時に室内、屋外の温度を測定、記録ができます。CSV形式で保存されたデータを収集してデータの分析を行います。
表-4 温度データロガの仕様(A&D社の温度データロガ)
項 目 | 内 容 | 写 真 |
---|---|---|
メーカー名 | 株式会社エー・アンド・デイ | |
製品名・型番 | 温度データロガー、AD-5326TT | |
測定範囲 | -40.0~90.0℃ | |
測定精度 | ±1.0℃(40℃未満) ±2.0℃(40~69.9℃) ±3.0℃(70℃以上) |
|
センサ | サーミスタ | |
測定間隔 | 30秒毎 | |
記録間隔 | 1分~12時間の間隔で設定可能 |
エアコンの冷房時の消費電力の測定結果
(1)1日消費電力量、室温、外気温
本測定は7月1日~7月31日の1か月間連続して行いました。1日の平均温度と消費電力量の測定結果を下図に示します。一部、7月21日と22日は旅行に出かけているため、データはありません。
上図より、外気温は1日平均値が24℃から34℃まで変動しているのに対して、室温の1日平均値は26℃~28℃までに制御されています。この期間でのエアコンの設定温度は28℃~29℃です。設定温度値よりもやや低い室温となっています。また、消費電力量は大きく変動しており、外気温の影響を受けているようでもありますが、その傾向は明確ではありません。
(2)時間消費電力量の把握
1日の時間消費電力量、室温、外気温の変動の一例を下図に示します。下図は7月1日と2日の変動を示したものです。測定していない22時から翌朝の6時までのエアコンの時間消費電力量は、小売電気事業者から得た世帯の時間消費電力量を用いて推計しています。夜間時はほぼエアコンの消費電力量だけのため推計が容易です(推計の詳細は下のコラムに示しています)。
22時~翌朝6時のエアコンの時間消費電力量:小売電気事業者の世帯の時間消費電力量から推計。
出所)世帯の時間消費電力量:東京ガス、会員サイト、myTOKYO GAS、電気使用量、時間使用量電力量
上図にはエアコンの消費電力量と「他消費」(他の電気機器の消費電力量:全体の消費電力からエアコン分を引いたもの)を示しています。他の消費電力については、短時間で消費電力量が多いのは洗濯乾燥機と食器洗い乾燥機、長時間稼働しているのは照明、テレビ、冷蔵庫等です。
<22時から翌朝の6時までのエアコンの時間消費電力量の推計方法> エアコンの消費電力量は、スマートリモートコントロールにより携帯端末で、1日の積算値が得られます。ここで得られるデータは毎日自動的に更新され、0時には0にリセットされます。従って、起床した6時の積算値は0時から6時までの消費電力量です。一方、エアコンのリモコンの表示では、自動的にリセットされませんので、リセットした時間からの積算消費電力量が表示されます。従って、就寝する22時に積算電力量をリセットすると22時からの電力量を得ることができます。 A:6時のスマートリモート表示値:0時から6時までの積算消費電力量 B:6時のエアコンのリモコン表示値:22時から6時までの積算消費電力量 C=B-A(22時から0時までの積算電力量) 22時から0時までの時間消費電力量=C/2 0時から6時までの時間消費電力量=A/6 このようにして22時から6時の時間消費電力量を推計しますが、あくまでも推計値であるため、小売電気事業者からの時間消費電力量を取得して、この推計を検証します。夜間はほとんど電力を使用しないため、稼働しているエアコンの消費電力量を推計することができます。 |
このようにして把握した時間消費電力量の変動パターンを下図に示します。下図では各時間の開始時刻の外気温も示しています。外気温は朝5時頃に最低(27.8℃)となり、15時と16時に最高(32.7℃)となっています。一方、エアコンの消費電力量は22時から23時台と6時から9時台が少なく(0.21kWh)、13時台が最大(0.33kWh)となっていますが、その変動幅は比較的小さくなっています。
このように、消費電力量は気温が最大の15、16時台ではなく13時台がピークとなっているのは、13時台が空調負荷が最大となるからと思われます。具体的には12時から13時台に昼食休憩となることが多く、テレビ等の機器の発熱や調理に要した燃料の発熱、リビングに集まる人体の発熱が空調負荷を高めると考えられます。
また、気温が高い15時台は2番目に高い消費電力量(0.32kWh)となっており、夕食の調理やリビングでくつろぐ人体の発熱が高い17時から19時は3番目に高い消費電力量(0.31kWh)となっています。このことから、外気温、テレビ等の機器の発熱、調理による発熱、リビングに集まる人体の発熱が消費電力量を増加させていることが想定されます。
省エネのための消費電力量の分析
(1)夜間時の消費電力量
毎日の消費電力量を記録していて気が付いたことは、意外に夜間の消費電力量が多いことです。夜間の熱中症を予防するため、エアコンは1日中稼働させています。これは、冬季では就寝中にはエアコンを停止しているのと大きな違いです。夏季は冬季よりも約8時間稼働時間が長くなることになります。
下図に、7月5、6日の外気温、室温、消費電力量を示します。この日のエアコンの設定温度は29℃でした。7月5日はそれほど暑くないため、昼間のエアコンの消費電力量は0.1kWhから0.4kWhであり、非常に少ないことが分かります。夕方は涼しかったため18時には一度エアコンを停止したぐらいです。
しかし、その後食事時間となり温度が上がったため、再度稼働させましたが、その後は外気温が低いにもかかわらず、0.35kWh程度が翌朝まで続きました。この7月5日夜から6日までの消費電力量がなぜこれほど高かったのかについて、以下に考察した結果を示します。
エアコンの消費電力量は外気温の熱負荷に加えて室内の熱容量と空調負荷にも大きな影響を受けることが分かっています。この空調負荷とは室内の熱収支を検討した「エアコン(7)-暖房時の室内の熱収支」にも示した通りです。
エアコンの消費電力に関係しているのは、基本となる室内熱容量(室内の空気、家具などを冷やす容量)に加えて、照明器具などの発熱、在室人員の発熱、窓からの日射、換気による熱交換や壁・窓を通しての熱貫流などがあります。このうち照明やパソコンなどの発熱器具等及び人体の発熱が室内空調負荷です。
下図にリビングと寝室の平面図を示しています。リビングの面積は約20m2、寝室は約10m2です。エアコンはリビングの西壁、北寄りに設置されています。寝室にはエアコンは設置されていません。
エアコンの冷房運転を始めてから7月中旬までは、エアコンの負荷を考慮して昼間はリビングと寝室の襖を閉じて生活し、夜寝るときに襖をあけてエアコンで冷やしていました。これが夜間に消費電力量を上昇させる要因になったようです。夜間はエアコンの冷房の対象面積が1.5倍(20m2から30m2)になっており、急に室内熱容量が増えたことにより、消費電力量が大きく増加したと考えられます。
また、寝室での人体による発熱も空調負荷を高めているものと思われます。居住者は昼間は他の部屋にいることや屋外に出かけることがあるのに対して、夜間は2名が必ず寝室にいるためです。7月5日から6日にかけてのように室温と外気温の差がない時は、人体の発熱の影響が大きくなってくるものと思われます。
なお、7月5日の19時に消費電力量がピークとなっているのは、1度エアコンを停止したことや18時~19時頃に夕食の調理により隣のキッチンからの熱が流入したため空調負荷が増加したためと思われます。
そこで、7月下旬(7月23日)以降はこの襖を日中も空けておき、就寝時間もエアコンが対象とする室内容積を昼間と同じにしました。本エアコンの標準室内広さは28m2であり、30m2を対象とすることに大きな問題はないはずです。そのことによって夜間時の消費電力量が昼間よりも多くなることはなくなっています(下図参照)。
(2)運転モードが「送風」時の消費電力量
次に、7月17日と18日の外気温、室温、消費電力量を下図に示します。7月17日は非常に涼しい日で、夜は24℃程度でしたのでエアコンを「送風」モードにして運転し、良く睡眠できました。送風モードの消費電力量は6時間で0.1kWhと非常に少ないものでした。
次の日の夜も送風モードにして就寝したところ、0時半頃に暑くて起きてしまい、エアコンを冷房に変更しました。この後のエアコンの消費電力量は夜にもかかわらず最大0.6kWh、平均0.4kWhというものでした。確かに夜間の外気温は27℃前後と前日とは3℃ほど高かったのですが、室温とほぼ同じ温度でありながらエアコンの消費電力量が非常に大きかったことが分かります。
節電のために「送風」モードにして運転することは可能ですが、「送風」モードは室内を冷やしている(熱を屋外に排出している)わけではなく、単に風を送っているだけであることに留意する必要があります。つまり、「送風」モードの後に室内を冷房するためには、室内の空気や家具などを冷やすために、多くの消費電力量を要することになります。何より、夜間時の室温の上昇が問題になりますので、注意が必要です。
(3)エアコンの休止後の消費電力量
続いて7月13日と14日の外気温、室温、消費電力量を下図に示します。これらの日は昼間も温度が上がらず、外気温と室温はほぼ同じような推移をしています。この両日はエアコンを1時休止しています。7月13日は外出により9時から13時まで休止しました。また、7月14日は在宅でしたが朝の気温が涼しかったため、6時から10時までエアコンを休止しました。
外気温からの影響はないため、消費電力量は室内の空調負荷により影響を受けて変動しているものと考えられます(この日の設定温度は28.5℃です)。7月13日の0時から起床する6時までは人体の発熱負荷により0.3~0.4kWhの消費電力量です。22時から翌14日の6時までも最大0.4kWhの消費電力量となっています。
また、13日は9時から13時まで外出しておりこの期間の人体やテレビ等の機器の発熱はありません。また昼食、夕食の調理はしていないため、キッチンからの発熱はなく消費電力は上昇していません。その結果、この日の消費電力量は非常に小さいものでした。
一方、14日は在宅での運転休止であり、この間は人体や機器の発熱はあったため、運転再開後はやや大きな消費電力量が続くことになったものと思われます。運転を休止したことによる消費電力量の削減分は、その後の消費電力量の増大に相殺されるように思われます。
この14日の現象は、7月5日の1時休止後の消費電力量の増大と同様の現象と思われます。このことから、外出する時間帯以外はエアコンを定常的に運転しておくことが必要であり、運転モードを変えたり停止したりしても、あまり消費電力量の削減にはつながらないと考えた方や良さそうです。
なお、エアコンの間欠運転と連続運転の消費電力量の相違(どちらが経済的か)については、様々な情報があり統一した見解はないようです。外出時間が30分以上であればエアコンをOFFにするという情報も、気温条件や居室の断熱性などにより変わってきます1)。今回の計測結果も、外気温の比較的低い気象条件(室内熱負荷の影響が大きい)で行った結果であることに留意する必要があります。
また、今回はエアコンの冷房運転の試行期間であることもあり省エネに関する有効な情報を得ることはできませんでした。データを引き続き収集していく予定ですので、今後も消費電力量データの分析を順次行っていく予定です。
まとめ
今回は、エアコンの冷房時における消費電力量を計測し、それに与える影響について分析しました。今回計測を行ったのはダイキン製ルームエアコンAN40ZRBKP-Wです。その仕様は冷房能力は4.0kW、冷房COP5.0、APF7.1、省エネ基準達成率144%の製品です。
消費電力量の測定はスマートリモートコントロール機能により、消費電力データを携帯端末で受信して収集、記録しました。本機能の表示単位は0.1kWhであり、やや有効数字が少ないことが欠点です。この機能を利用して、7月の1か月間(2日間を除く)の6時から22時までの時間消費電力量を把握しました。22時から翌朝の6時までは、小売電気事業者の時間消費電力量を収集して推計しています。
収集した時間電力量および外気温、室温データから、それぞれの1日の時間変動パターン(1日変動率を7月の1日平均値に乗じたもの)を作成しました。その結果、消費電力量は気温が最大の15、16時台ではなく13時台がピークとなっていました。これは、12時から13時台に昼食休憩となることが多く、調理にかかる熱とリビングに集まる人体の発熱が空調負荷を高めると考えられました。
また、気温が高い15時台は2番目に高い消費電力量となっており、夕食の調理やリビングでくつろぐ人体の発熱が高い17時から19時は3番目に高い消費電力量となっていました。このことから、外気温、調理による発熱、リビングに集まる人体の発熱が消費電力量を増加させていることが分かりました。
データの分析結果から、意外に夜間の消費電力量が多いことが分かりました。外気温がそれほど高くなくても昼間の消費電力量よりも夜間時のそれが多い日もありました。7月の中旬までは、エアコンの負荷を考慮して昼間はリビングと寝室の襖を閉じて生活し、夜寝るときに襖をあけてエアコンで冷やしていました。そのため夜間はエアコンが冷やす面積が1.5倍になったことが原因と考えられました。また、寝室での人体による発熱も空調負荷を高めて消費電力量が上昇した原因であることも分かりました。
エアコンを「送風」モードで運転した場合、外気温が上がって「冷房」モードに変更した時に大きな消費電力量となっていました。「送風」モードは室内を冷やしている(熱を屋外に排出している)わけではなく、単に風を送っているだけであるため、室内の空気や家具などを冷やすために、より多くの電力量を要することになったと考えられました。
また、エアコンの休止後の消費電力量について考察しました。外出によりエアコンを1時休止した場合は、不在のため人体や機器の発熱はありませんので、エアコン運転後の消費電力量は少なくなっていました。一方、在宅中にエアコンを休止している場合は再開後には大きな消費電力量となっており、休止による削減分は相殺されて、削減効果は少ないと考えられました。
このことから、エアコンは外出して不在にする以外は、定常的に運転しておくことが必要であり、モードを変えたり休止したりしても、消費電力量の削減にはつながらない(削減効果は低い)と考えられます。
今回は比較的気温が低い時期におけるエアコン運転時の消費電力量を分析しました。次回は8月初めころまでの気温がかなり上がった時期のエアコンの消費電力量のとりまとめを行います。気温と他の気象条件との関連についても分析する予定です。
<参考文献>
1)ダイキン工業:公式Webサイト、空気とくらし空気のお悩み調査隊がゆく、mission5-1 夏のエアコンつけっぱなし検証