家庭での地球温暖化対策の第一の手段はエネルギー消費量を低減させることですが、そのためにエネルギー消費機器の効率を向上させることが重要です。それは同じサービス(熱、仕事、明り等)を受けるのに、エネルギー効率の高い機器を使用すれば、少ないエネルギー消費量で済むためです。
ここではこれまで取り上げてきた個別のエネルギー消費機器のエネルギー効率の指標についてとりまとめ、それらに共通した考え方を示します。また、新たな製品にも適用できるように拡張された指標や、利用者がより分かりやすいように改良された指標についても解説していきます。
<本記事のコンテンツ> ■エネルギー効率の定義 (1)エネルギー効率の事例 (2)エネルギーと仕事の関係 (3)エネルギー効率の定義 ■エネルギー効率の算定法 (1)COP(成績係数) (2)熱効率 (3)燃費 <参考となる本サイトの記事> |
エネルギー効率の定義
(1)エネルギー効率の事例
エネルギー消費機器にもいろいろあり、本サイトでは家電機器、熱利用機器、乗用車などの様々な機器を取り上げています。その機器のエネルギー効率については、機器の種類によりいくつかの異なった定義があります。このエネルギー効率の指標の事例を挙げると以下の通りです。
●エアコン:COP(成績係数)
●ガスこんろ:熱効率
●乗用車:燃費
エアコンのエネルギー効率は「COP(成績係数)」が使われます。また、乗用車は「燃費」、またガス機器などは「熱効率」が使われます。COPはエアコンが室内の熱を除去または増加させた量を消費電力で除したものです。このエアコンの除去・付加熱量はエアコンがした仕事を意味します。他の指標も同じ意味を持ちます。
このように、エネルギー効率には機器が果たした「仕事量」が用いられます。この「仕事量」は物理的な仕事に加えて、熱の移動なども対象にしています。熱の移動も機械の仕事も同じ単位で表すことができますので、それをまず整理してみましょう。
(2)エネルギーと仕事の関係
「仕事」は高校の物理の授業では図-1のように説明されます。仕事量Wは「力Fと移動させた距離sの積」です。一方、エネルギーは仕事をする能力を指します。エネルギーの定義は、「物体が持っている仕事をする能力」となります。エネルギーの種類も色々あり、力学的エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーなどがあります。図-1は力学的エネルギーの例です。
W=F・s
W:仕事(N・m)
F:力(N)
s:移動距離(m)
図-1の下の手のひらにのせた重りを持ち上げる力は、重りの重量mgに等しくなり、この場合の仕事は以下となります。
W=mg・s
m:質量(g)
g:重力加速度(m/s2)
(力の定義より、1N=1g・m/s2)
仕事とエネルギーは同じ単位になります。力の単位N(ニュートン)と距離m(メートル)の積(N・m)は、言い換えるとJ(ジュール)です。Jは熱の単位としても使われます。熱エネルギーは燃料が持つ燃焼した時の発熱する能力です。発熱により液体を温めたり、蒸気にして動力を生み出すこともできます。液体を温めることは分子の活動を活発にすることなので、立派な仕事を意味します。
さらに、電気エネルギーは熱にも力にも変換でき、様ざまな仕事をします。電気の単位はWであり、これはJ/sで表されます。これらのエネルギーに使われる単位から、これらのエネルギーは同じ単位系で表現することができることが分かります。
力、熱、電気に関するエネルギーの単位を整理すると、以下の通りまとめることができます。
●力学的エネルギー:N・m(=J)
●熱エネルギー:J
●電気エネルギー:W・h(=3.6kJ)
上記のWhと3.6kJの関係は以下より得られます。
1W・h=1J/s・3,600s=3.6kJ または 1kWh=3.6MJ
(3)エネルギー効率の定義
上記のエネルギーと仕事が同じ単位であることを確認したうえでエネルギー効率に戻ると、エネルギー効率とは「投入したエネルギーに対して行われた仕事の割合」ということが言えます。すなわち、エネルギー効率とは仕事を投入エネルギー量で除したものとなります。
エネルギー効率=行われた仕事/投入エネルギー量
なぜ、エネルギー効率が1ではないのか、すなわち投下された全てのエネルギーが仕事に変換されないのかは、機器には必ずエネルギーロスが生じるからです。具体的に熱効率を例にエネルギーロスを説明すると以下の通りです。
図-2はガスこんろの例ですが、ガスを燃焼させるとその炎は鍋以外に周りの空気を温め、全てのエネルギーが鍋の水の温めに使われず、エネルギーロスが生じます。そのため、エネルギー効率はどの程度有効にエネルギーを使えるかを示す指標になります。
本サイトで取り上げたエネルギー消費機器に適用されているエネルギー効率を表-1に示します。多くの機器でこの定義に従って指標化されていますが、指標の正確性を追求するために付加的な要素が加わっている場合や、より消費者に分かりやすく年間の消費電力量としている機器もあります。
表-1のエアコンに用いられるAPF(通年エネルギー消費効率、説明は後述)はCOPを補完して1年間のエネルギー効率を表したものです。また燃費もガソリン車(ICE)に加えて電気自動車(EV)にも適用するために新たにWtW燃費を採用するようになっています(2030年以降)。
表-1 エネルギー効率の指標例
指 標 | 定 義 | 改良指標 | 適用機器 |
---|---|---|---|
COP (成績係数) | 付加または除去された熱量 /消費電力量 | APF(通年エネルギー消費効率) 年間給湯保温効率 | エアコン 電気温水器(エコキュート) |
熱効率 | 容器内の水が受けた熱量 /水に加えた熱量 | ガス温水器の場合のモード熱効率 (給湯と追い焚きの両方を考慮) | ガス調理機器(ガスこんろ) ガス温水器/石油温水器 |
燃費 | 走行距離/燃料使用量 | WtW 燃費 | 乗用車(EVを含む) |
照明の効率 | 全光束/消費電力 | 固有エネルギー消費効率 (蛍光灯器具に適用) | LED照明/LED電球 電球 |
年間消費電力量 | 定められた条件での 年間消費電力量 | コンピュータ/複合機/プリンター 電気冷蔵庫/電気冷凍庫 |
エネルギー効率の算定法
ここでは、表-1に示したエネルギー効率のうち以下の3つの指標について、内容の具体的な説明とその算定方法を示します。
●COP(成績係数)
●熱効率
●燃費
(1) COP(成績係数)
COPはヒートポンプを原理にしたエアコンに使われるエネルギー効率の指標です。COPはCoefficient of performanceの略であるため、成績係数と訳されます。この指標の定義は表-1に示した通り「投入した消費電力量に対する付加または除去された熱量」です。
COP=付加または除去された熱量(kWh)/消費電力量(kWh)
=冷房または暖房能力(kW)/定格消費電力(kW)
付加された熱量は暖房の場合、除去された熱量は冷房の場合であり、暖房COP、冷房COPと区別されています。この付加または除去された熱量を分かりやすく言うと、エアコンの能力のことです。この能力を定格消費電力で除してもCOPを算定できます。エアコンの冷房能力が5kW、8kWで、定格消費電力が2kWであれば、COPはそれぞれ2.5、4.0となります。
エアコンは投入したエネルギー量よりも大きな仕事をするという優秀な家電機器です。それは、冷媒の相変化に伴う潜熱を利用したものだからです。この原理をヒートポンプと言いますが、ヒートポンプの原理は冷蔵庫(及び冷凍庫)、全自動洗濯機(乾燥機付き)、電気温水器にも使われています。
エアコンの原理を図-3に示します。エアコンは冷媒を圧縮機で圧縮、減圧器で減圧することで相変化(気体と液体)を生じさせ、その時の潜熱(気化熱、凝縮熱)を利用して庫内(室内)の熱を吸収、放出させるものです。この時に冷媒に加えられるのは圧縮機と減圧器の動力のみであり、その結果投入した消費電力量以上の熱の交換ができるというわけです。
ところで、このエアコンの性能については近年ではCOPよりもAPF (Annual Performance Factor)を使うことが多くなってきました。これは通年エネルギー消費効率と言い、以下で定義されます。
APF= エアコンが稼働する期間の冷暖房負荷(kWh)/当該エアコンの期間消費電力量(kWh)
これは、「ある一定条件下でエアコンを使用したとき、1年間に必要な冷暖房負荷を、1年間でエアコンが消費する電力量(期間消費電力量)で割った数値」です。ここで、冷暖房負荷とは部屋の広さ、外気温を条件として、設定された稼働時間において、設定された室内温度にするためにエアコンが除去する熱量(冷房の場合)と付加する熱量(暖房の場合)の合計のことを指しています。
この指標により、従来は冷房と暖房で別々に示されていたエネルギー効率を1つの指標にまとめることができました。ただし、このことによって年間消費電力量を算定するためのいろいろな条件を決めなければならなくなり、COPのような単純な定義ではなくなったことで、逆に分かりにくくなった面もあります。
現在の省エネタイプとされているエアコンの性能(APF)を示すと以下の通りです。エアコンの省エネ基準は目標年度が2026年度までと2027年度以降の2種類があります。その両基準のAPFを図-4に示します。
冷房能力別に基準値が変動していますが、新基準では冷房能力6.3kW以下(6.3kWのエアコンの部屋の広さの目安は20畳、約32m2)でAPFが6を超えており、旧基準でも概ね5を超えていることが分かります。大変、省エネになっていることが分かります。
APFと同様の指標で、電気温水器(エコキュート)で使われる「年間給湯保温効率」があります。これは下の式で表され、1年間に貯湯槽内の水が温められた熱量を消費電力量(熱量換算)で除して算定されます。
年間給湯保温効率=(1年間に使用する出湯水が得た熱量+保温のために浴槽水が得た熱量)/(1年間に必要な消費電力量×3.6)
(2) 熱効率
熱効率は熱利用をする機器に用いられるエネルギー効率の指標です。熱効率を分かりやすく示すと以下の通りです。水を温めるということは分子レベルでの仕事に相当しますので、仕事とエネルギーの比で表されます。
熱効率(%)=1Lの水が受けた熱量(J)/熱利用機器が与えた熱量(J)×100
上式の分母の「与えた熱量」は燃料(都市ガス、灯油)の使用量にその発熱量を乗じて求めることができます。燃料の発熱量は本サイトの「家庭での活動における二酸化炭素排出量の計算法」に示した通りです。また、分子の「1Lの水が受けた熱量」とは水の容量、比熱、上昇温度差から算定することができます。
経済産業省告示にガス温水器(目標年度が2006年度の製品)の熱効率の測定方法が設定されています。熱効率は定格熱効率とモード熱効率があります。モード熱効率は湯沸器と風呂給湯の2つを使用実態に合わせて評価したものです。以下のコラムにガス温水器の定格熱効率の算定式を示します。
<経済産業省告示 ガス温水器の定格熱効率> ガス温水器の定格熱効率は以下の式によって計算されます。 η=[{M×C×(Tw2-Tw1)}/(V×Q×1,000)]×{(273+Tg)/273}×{101.3/(B+Pm-S)}×100 この式において、η、M、C、Tw2、Tw1、V、Q、Tg 、B、Pm及びSは、それぞれ次の数値を表します。 η:熱効率(%) M:出湯量(kg) C:水の比熱(4.19 kJ/kg・K) Tw2:出湯温度(℃) Tw1:給水温度(℃) V:実測ガス消費量(m3) Q:ガスの総発熱量(MJ/m3) Tg:測定時のガスメータ内のガス温度(℃) B:測定時の大気圧(kPa) Pm:測定時のガスメータ内のガス圧力(kPa) S:温度Tg(℃)における飽和水蒸気圧(kPa) 上記の式のうち、{(273+Tg)/273}は温度補正項、{101.3/(B+Pm-S)}は圧力補正項です。熱効率は気体の標準状態(0℃、1気圧)のもとで算定するものなので、ガス温度TG、大気圧Bの時の値を標準状態にした場合の補正を行っています。 |
一例として、表-2の数値をいれて計算すると、定格熱効率は以下と算定されます。
η=72.7%
表-2の最下欄に温度補正と圧力補正を行わなかった場合の熱効率(η’)についても示していますが、これは65.2%と1割程度の差が生じています。一般的にガス温水器を0℃の温度下で使用することは少ないので、日本ではスペックの熱効率よりも1割程度少ない熱効率で使用していると考えて良いでしょう。
表-2 定格熱効率の算定例
記号 | 項目 | 単位 | 数値 |
---|---|---|---|
M | 出湯量 | kg | 200 |
C | 水の比熱 | kJ/(kg・K) | 4.190 |
Tw2 | 出湯温度 | ℃ | 40 |
Tw1 | 給水温度 | ℃ | 23 |
V | 実測ガス消費量 | m3 | 0.488 |
Q | ガスの総発熱量 | MJ/m3 | 44.8 |
Ts | 測定時のガスメータ内のガス温度 | ℃ | 26 |
B | 測定時の大気圧 | kPa | 100.8 |
Pm | 測定時のガスメータ内のガス圧力 | kPa | 2 |
S | 温度Tg(℃)における飽和水蒸気圧 | kPa | 3.363 |
η | 定格熱効率 | % | 72.7 |
η’ | 定格熱効率(温度、圧力補正せず) | % | 65.2 |
ガスこんろの熱効率は高効率タイプでも55%程度です(最も普及している「ガスグリル付きこんろ、組込型、3口以上」の省エネ基準は55.6%)。これは、図-2に示したようにガスが周辺の空気を温めているためです。
一方、ガス温水器は比較的熱効率は高く、高効率型(エコジョーズ)では約90%まで向上できます。さらに、電気温水器(エコキュート)はヒートポンプの原理を利用しているため、熱効率が100%を超えることができます(エアコンのCOPが1以上であることと同じです)。
エコキュートとガス温水器の熱効率を比較したものを図-5に示します。エコキュートは2025年度目標の省エネ基準が年間給湯保温効率(熱効率)3.5であり、これを1次エネルギー換算すると133.8%となります。また、少人数世帯、寒冷地仕様のエコキュートの省エネ基準は年間給湯保温効率2.7であり、これを1次エネルギー換算すると103.2%です。エコキュートの熱効率が100%を超え、ガス温水器よりも性能が良いことが確認できます。なお、一次エネルギーの換算方法は下のコラムを確認ください。
<エコキュートの年間給湯保温効率を1次エネルギー換算の熱効率に変換する方法> ヒートポンプ給湯器の熱効率(一次エネルギー換算値)= 年間給湯保温効率×3.6(MJ/kWh)/省エネ法における電気から熱量への換算値9.418(MJ/kWh) ※昼間の電気:9.97MJ/kWh 夜間の電気:9.28MJ/kWh 上記以外の電力:9.76MJ/kWh 「昼間」とは、午前8時から午後10時までをいい、「夜間」とは、午後10時から翌日の午前8時までをいう。 ※エコキュートは夜間電力を使用することが多いことから、夜間8、昼間2の割合で省エネ法の換算係数を加重計算した値(9.418MJ/kWh)を採用。 上式から、1次エネルギー換算値の熱効率が100%になる年間給湯保温効率は2.6となります。 出所)経済産業省:エアコンディショナー及び電気温水機器判断基準ワーキンググループ、電気温水機器の取りまとめ(2021年3月) |
(3)燃費
乗用車のエネルギー効率が燃費で表されていることは周知の事実です。燃費の算定式は以下の通りです。
燃費(km/L)=走行距離(km)/消費した燃料(L)
この式は、これまでの「仕事量」とエネルギー消費量の比という算定方法とは異なっています。走行距離は単なる距離であって「仕事量」ではありません。仕事にするためには「F・s」、すなわちどの程度の力が働いているかを考慮する必要があります。書き直すと以下のようになります。
改良燃費(N・km/L)=加えた力×走行距離/消費した燃料
∝重量×走行距離/消費した燃料 (∝:比例するの意味)
このように、乗用車の重量を走行距離に乗ずるのがより正確な燃費となるでしょう。しかし、分かりやすい当初の燃費が普及したものと考えられます。そのため、この燃費は同じ重量の乗用車で比較すべきで、異なる重量のものと比較するべきではありません。
経済産業省の告示における乗用車の省エネ基準は、表-3に示すように車両の重量によって燃費の基準が決められています(2029年までの省エネ基準)。車両が重くなると駆動するために大きな力が必要になって燃費が下がっていくので、省エネ基準も軽減しているのです。
表-3 乗用自動車の省エネ基準
区 分 | 基準エネルギー消費効率 (km/L) |
---|---|
車両重量が741kg未満のもの | 24.6 |
車両重量が741kg以上856kg未満のもの | 24.5 |
車両重量が856kg以上971kg未満のもの | 23.7 |
車両重量が971kg以上1,081kg未満のもの | 23.4 |
車両重量が1,081kg以上1,196kg未満のもの | 21.8 |
車両重量が1,196kg以上1,311kg未満のもの | 20.3 |
車両重量が1,311kg以上1,421kg未満のもの | 19.0 |
車両重量が1,421kg以上1,531kg未満のもの | 17.6 |
車両重量が1,531kg以上1,651kg未満のもの | 16.5 |
車両重量が1,651kg以上1,761kg未満のもの | 15.4 |
車両重量が1,761kg以上1,871kg未満のもの | 14.4 |
車両重量が1,871kg以上1,991kg未満のもの | 13.5 |
車両重量が1,991kg以上2,101kg未満のもの | 12.7 |
車両重量が2,101kg以上2,271kg未満のもの | 11.9 |
車両重量が2,271kg以上のもの | 10.6 |
ところで、この省エネ基準が適用されるのはガソリン車、ディーゼル車、LPガス車に限られています。電気自動車EVにはこれを適用できません。そこで、2030年からは電気自動車にも適用できる燃費基準が設定されます。
新しい燃費は電気自動車とも比較ができるように調整した表-4に示した燃費になります。表中のWLTCモードとはWLTP(国際調和排出ガス・燃費試験法:Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)におけるテストサイクル(Worldwide harmonized Light duty Test Cycle)によって測定された燃費を指します。
表-4 WLTCモード燃費値から新しい燃費を算定する計算式
種 類 | エネルギー消費効率 |
---|---|
特定ガソリン乗用自動車 | WLTCモード燃費値 |
ディーゼル乗用自動車 | WLTCモード燃費値を1.1で除した値 |
特定LPガス乗用自動車 | WLTCモード燃費値を0.74で除した値 |
プラグインハイブリッド 乗用自動車 | WLTCモード走行時の数値を用いて以下の式により算出した値 エネルギー消費効率 =1/[UF(RCD)×{1/FeCD+1/(6.75×RCD/E1)}+{1-UF(RCD)} /FeCS] UF(RCD) :プラグインレンジに応じて算出される係数 FeCD:プラグイン燃料消費率(km/L) FeCS:ハイブリッド燃料消費率(km/L) E1:一充電消費電力量(kWh/回) RCD:外部充電による電力によってWLTCモードで走行できる最大距離(km) |
電気乗用自動車 | WLTCモード走行時の数値を用いて以下の式により算出した値 エネルギー消費効率 = 6750/EC EC:交流電力量消費率(Wh/km) |
日本ではこれまでJC08モードという日本独自の測定方法に基づいて燃費を測定してきました。JC08モードは2011年4月以降に型式認定された新車の燃料測定方法として採用されたものです。これは実際の燃費よりも高い数値が出ることや、欧米では上記のWLTCモードや他の方法で測定されており、日本においても国際的な測定法を採用することにしたものです。
この新燃費では、まずWLTPのテストサイクルに基づき市街地、郊外、高速道路の各モードの燃費を測定します。そしてそれらの各走行モードを平均的な使用時間配分で算定して、総合化されたWLTCモードの燃費を計算します。
電気自動車とガソリン等を燃料とする自動車との比較を可能にするため、新燃費では旧燃費のTank-to-Wheel (TtW)評価に代えてWell-to-Wheel(WtW)評価によってWtW 燃費値を算定します。これは、エネルギー消費量をエネルギーの製造段階に遡って評価するものです。具体的には電気の場合は発電及び送配電の効率、燃料の場合は精製効率、輸送効率等をTtW燃費に乗じてWtW燃費を算定します。
そして、旧燃費との連続性を確保するため、ガソリン自動車のエネルギー消費効率が旧燃費のTtW 評価によるエネルギー消費効率と同じになるよう、WtW 評価によるエネルギー消費効率をガソリンの精製効率、輸送効率等で除した値を新燃費基準におけるエネルギー消費効率とし、単位はkm/Lとしています。
新しいエネルギー消費効率(WtW 燃費値)の計算根拠を下のコラムに示します。この説明を分かりやすくしたイメージ図を下図に示します。
<新燃費の補正係数の根拠> WtWの評価による燃費(WtW燃費)は上図に示すように、ガソリン車の場合は従来の燃費(TtW燃費)にガソリン精製効率、ガソリン輸送効率、ガソリン給油効率を乗じて算定されます。ここで、ガソリン精製効率、ガソリン輸送効率、ガソリン給油効率を乗じたものをWtT効率とします。 WtW燃費=WtT効率×TtW燃費/ガソリン換算値 (ガソリン、軽油、LPG) WtW燃費=WtT効率/電費×ガソリン換算値 (電気) ここで、電費(kWh/km)とは1kmを走行するのに要した電力量Whのことです。ガソリンの燃費と異なって分子と分母が逆転していることに留意してください。 上式のガソリン換算値とはそれぞれの低位発熱量から算定される以下の値です。 軽油換算1.14(35.3/31.3)、LPG換算0.79(24.7/31.3)、電気換算8,700(31,300,000/3,600) WtT効率は、各種統計や計画書に基づき、以下のように計算されます(添え字はG:ガソリン、D:軽油、L:LPG、E:電気を表す)。 WtT効率G=精製効率G(0.929)×輸送効率G(0.995)×給油効率G(0.995)=0.920 WtT効率D=精製効率D(0.939)×輸送効率D(0.995)×給油効率D(0.995)=0.930 WtT効率L=0.983 (計算方法不明) WtT効率E=発電効率×送配電効率=0.714 (2030年の電源構成を考慮して算定) (※電源構成:再エネ22~24%程度、原子力22~20%程度、LNG27%程度、石炭26%程度、石油3%程度、これは第5次エネルギー基本計画の電源構成です) これらから、それぞれのWtWは以下の通り計算されます。 WtWG=0.920・TtWG WtWD=0.930・TtWD/1.14 WtWL=0.983・TtWL/0.79 WtWE=0.714・8,700/TtWE=6,212/TtWE ここで、新たな燃費(エネルギー消費効率)を旧燃費に合わせるため、以下のようにガソリンのWtT効率G(0.920)で除することとします。 エネルギー消費効率(新燃費)=TtW燃費G,E,D,L×WtT効率G,E,D,L/WtT効率G その結果、それぞれの新燃費は以下の通りです。 エネルギー消費効率(新燃費)D=(0.930/0.920)・TtWD/1.14=TtWD/1.1 エネルギー消費効率(新燃費)L=(0.983/0.920)・TtWL/0.79=TtWL/0.74 エネルギー消費効率(新燃費)E=(6,212/0.920)/TtWE=6,750/TtWE 上記の算定式は、表-4の記載内容と同じ内容となります。 出所)資源エネルギー庁:総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会、省エネルギー小委員会自動車判断基準ワーキンググループ・交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会自動車燃費基準小委員会合同会議 取りまとめ(乗用車燃費基準等)、2019年6月25日 |
上記で示された電気自動車及びハイブリッド自動車のエネルギー消費効率を算定する際に用いられる電気の総合効率は71.4%(発電効率と送配電効率を乗じたもの)を用いています。一般的には火力発電の発電効率は最大でも55%程度であり送配電ロスもありますので、この総合効率値は再生可能エネルギーなどの普及を前提としています。
この総合効率値は第5次エネルギー基本計画で設定された2030年の電源構成の目標値を基に計算されたものです。すなわち、電源の割合が化石燃料56%、非化石燃料44%です。現状の電源構成では化石燃料が8割程度であり、また第6次エネルギー基本計画の2030年の電源構成の目標値は化石燃料41%ですので、それを考慮して評価しておく必要があります。
つまり、日本においては電気自動車及びハイブリッド自動車のエネルギー消費効率は、現状では過大評価する(燃費を高く見過ぎる)ことになるということです。また、2030年を想定した場合(電源構成が第6次基本計画の目標通りに達成した場合)では逆に過小評価されることになるということです。
<参考となる本サイトの記事>
●エネルギー使用機器の省エネ基準
「省エネに関する国の法規制(省エネ基準等)」
●省エネに関する国の規制の解説
「エネルギー消費機器のトップランナー制度と省エネラベリング制度」
●熱効率に関する詳しい説明
「ガス温水器(2)-ガス消費量の測定」
「電気温水器-エコキュートの省エネ性能」
●燃費に関する詳しい説明
「乗用車(1)-省エネ性能」