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冷蔵庫①-省エネ性能

冷蔵庫の冷却の仕組み

 冷蔵庫はエアコンのところで説明したように冷凍機の原理(蒸気圧縮冷凍サイクル)で対象物を冷却します。エアコンと同様に庫内を冷やすのは冷媒の働きです。下図のように冷媒が圧縮、凝縮(熱交換)、減圧、蒸発(熱交換)と循環している過程で、蒸発器での熱の吸収により冷却効果を得ることになります。原理は、エアコンと同様に、①熱は温度が高い物質から低い物質に移動する、②圧力を加えるまたは減らすことにより温度が変化する、③相変化(気体と液体の間で変化すること)により熱を吸収(液体から気体になる際の蒸発熱)または放出する(液体から気体になる際の凝縮熱)ことを用いています。

 具体的な各過程における冷媒の機能は以下の通りです。
(1)冷媒は圧縮機によって圧縮されて、高温・高圧の気体になる(②の原理)
(2)冷媒は凝縮器(冷蔵庫外の熱交換器)で液体になり、熱を放出する(①と③)
(3)冷媒は減圧器(膨張弁)で減圧されて低温、低圧の液体となる(②の原理)
(4)冷媒は蒸発器(冷蔵庫内の熱交換器)で気体となり、熱を吸収する (①と③)

 このように、冷蔵庫の内部にある蒸発器により冷却を実現するのですが、庫内は製氷室、野菜室、冷蔵室、冷凍室など温度の異なる貯蔵室に仕切られているため、冷気をファンを用いてうまく温度コントロールしています。冷蔵庫の主要な動力は圧縮機であり、コンプレッサーを用いて圧縮します。冷蔵庫の負荷(熱を除去する量)は外気温度、庫内の冷却物の量、扉の開閉頻度等によって変わるため、庫内にセンサーを設けてコンプレッサーの運転を制御します。従来はコンプレッサーの運転をON-OFF制御していましたが、最近は省エネのためインバータによる回転数制御を行う機種も出てきています。

24時間稼働している冷蔵庫の消費電力

 冷蔵庫はその役割上、毎日稼働することが必要です。そのため、家庭の消費電力量に最も影響を与えるものです。定格消費電力は小さくても24時間稼働していますので、1日の消費電力量は多くなります。下表を見てください。冷蔵庫と定格消費電力が大きい他の家電の1日及び年間の消費電力量を比較してみました。

 今回比較対象の冷蔵庫は2010年に販売された庫内容積475L、6ドアのもので、年間消費電力量は家電買換えナビゲーション「しんきゅうさん」により把握すると465kWhでした(「しんきゅうさん」は第2回報告の「家電製品の省エネ情報源」を参照してください)。

表-1 冷蔵庫と他の定格消費電力が大きい家電との年間消費電力の比較

定格消費
電力(W)
消費電力
(W)
使用時間
(h)
1日消費
電力量(Wh)
年間消費
電力量(kWh)
冷蔵庫935324720465.0
電子レンジ1,2006000.2(12min)12043.8
IH調理器1,4008000.5(30min)400146.0
ドライヤー1,2001,1400.2(12min)22883.0
注)冷蔵庫は「2010年製造、475L、6ドア」の年間消費電力を省エネ製品買換えナビゲーション「しんきゅうさん」により把握した数値。

 年間の消費電力量は、冷蔵庫の設置の仕方、各庫内の温度設定、周囲温度やドアの開閉頻度、新しく入れる食品や飲料の量や温度、使い方により変動します。日本では、年間消費電力量の計算はJIS C9801-3の測定基準に基づいて測定されています(詳細は本サイトの「冷蔵庫のエネルギー消費効率」を確認ください)。

 次に、他の家電製品の消費電力量については、家電のカタログには年間消費電力量は示されておりません。それは冷蔵庫と違って、使い方が個人によって大きく異なるためでしょう。そのため、これらの家電製品の年間消費電力量を、1回の消費電力量、1日の平均使用時間を表のように設定して計算しました。

 電子レンジの定格消費電力は1,200Wですが、通常の消費電力を600Wと仮定し、毎日12分(0.2時間)使用して43.8kWh/年となり、冷蔵庫の10分の1程度と算定されました。IH調理器も同様に平均消費電力800W、毎日30分使用、146kWh/年の消費量となり、これも冷蔵庫の3分の1程度です。同様にドライヤーは平均消費電力1,140W、毎日12分間使用で83kWh/年で冷蔵庫の6分の1程度です。このように、定格消費電力の大きさではなく使用頻度、使用時間が消費電力量に大きな影響を与えます。

 冷蔵庫も省エネ技術が進んでおり、過去25年間の年間消費電力量の変化は著しいものがあります。下図は1995年から2020年に販売された冷蔵庫の年間消費電力量を示しています 。1995年の1200kWhから2020年は250kWh程度と実に約80%減少しています1)。10年前と比べても40%以上の省エネとなっており、新しい製品に買い換えることで大きな省エネ効果が得られます。

出所)環境省、省エネ製品買換えナビゲーション、「しんきゅうさん」のデータより集計

冷蔵庫の省エネ基準

 冷蔵庫の省エネ基準は下表の通り設定されます(目標年度が2021年度以降の各年度のもの)。表中のエネルギー消費効率とは冷蔵庫の場合、年間消費電力量のことを指します(家電製品によりエネルギー消費効率は異なっています)。この表に示すように、 基準エネルギー消費効率(E)は、冷蔵庫の調整内容積(V)に応じてが変わっています2)。ここで、調整内容積とは「各貯蔵室の定格内容積に調整内容積係数を乗じた数値の総和」のことを言います。

表-2 冷蔵庫の基準エネルギー消費効率の算定方法

区分名冷蔵庫の種類 冷却方式定格容積(L)基準エネルギー消費効率の算定式
 a冷蔵庫及び冷凍冷蔵庫冷気自然対流方式 - E=0.735・V+122
 b冷気強制循環方式 375L以下 E=0.199・V+265
 c 375L超 E=0.281・V+112
備考:E及びVは、次の数値を表すものとする。
 E:基準エネルギー消費効率(kWh/年)
 V:調整内容積(各貯蔵室の定格内容積に調整内容積係数を乗じた数値の総和であって、次に掲げる算定式により算出し、小数点以下を四捨五入した数値)(L)
 V=∑Kci×Vi (i=1~n)
 Kci:調整内容積係数(次の表の左欄に掲げる貯蔵室の種類ごとに右欄に掲げる数値)
 Vi:定格内容積(次の表の左欄に掲げる貯蔵室の種類ごとの数値)(L)
 n:冷蔵庫及び冷凍冷蔵庫の貯蔵室数
<貯蔵室の種類> <調整内容積係数 Kci
  パントリー      0.38
  セラー        0.62
  冷 蔵        1
  チラー        1.1
  ゼロスター     1.19
  ワンスター     1.48
  ツースター     1.76
  スリースター又はフォースター 2.05
出所)1999年通商産業省告示第704号(制定)「電気冷蔵庫のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年経済産業省告示第46号

 これは各貯蔵室の設定温度が異なるため、必要となる冷凍負荷が変わるためです。そのため、調整内容積係数はその設定温度に応じて冷蔵室(係数は1)の容積の何倍になるかを示すものあり、この係数を貯蔵室容積に乗じたものを合計して、調整内容積を算定します。標準的な冷蔵室の設定温度は4℃、セラーは12℃、ツースターは-12℃などであり(JISで決められています)、この設定温度を用いて各貯蔵室の調整内容積係数が設定されています( 詳細は本サイトの「冷蔵庫のエネルギー消費効率」を確認ください )。

 そして、ここで算定された基準エネルギー消費効率を当該製品の年間消費電力量で除することによって省エネ基準達成率が算定されます。

 省エネ基準達成率(%)=基準エネルギー消費効率/年間消費電力量×100
 
 また、冷蔵庫の多段階評価値は以前は省エネ基準達成率を用いて5段階評価で設定されていました。しかし2020年11月以降、多段階評価値は1.0から5.0までの41段階に設定されるようになりました3)。多段階評価点を算定する方法は下表の通り、まず調整内容積の関数で計算される多段階評価比率を算定し、これを用いて多段階評価点を算定します。

表-3 冷蔵庫の多段階評価点の算定方法

多段階評価点(Y)の算定方法多段階評価比率(X)の算定方法
(1)多段階評価比率が100未満の場合
 Y=2+1/29×(X-100)
 Y:1未満の場合は1.0とする
(2)多段階評価比率100以上の場合
 Y=2+2.5/61×(X-100)
 Y:5を超える場合は5.0とする
(1)調整内容積が266以下の場合
 X=EM/E×100
 EM:0.735V+122(単位:kWh/年)
(2)調整内容積が266を超える場合
 X=EM/E×100
 EM:0.199V+265(単位:kWh/年)
E=測定したエネルギー消費効率(kWh/年)、EM:調整内容積により算定される効率(kWh/年)、V:調整内容積(L)、Y:多段階評価点、X:多段階評価比率
出所)2006年経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」、最終改定2021年経済産業省告示第194号

 一例として、以下の冷蔵庫の多段階評価点を算定します。下に示すようにこの冷蔵庫の多段階評価点は4.3となります。

・冷蔵庫の仕様:東芝2020年製冷蔵庫VEGETA(型番GR-S470-GZ)
・定格内容積465L、調整内容積543L(V)
・定格消費電力86W、消費電力量は235kWh/年(E)
・省エネ区分:冷気強制循環方式、375L超であるため区分は「c」
・基準エネルギー消費効率:0.281V+112=264.6kWh/年
・省エネ基準達成率=基準エネルギー消費効率/年間消費電力量×100  
  =264.6/235×100=112.6
・多段階評価比率:X=EM/E×100、EM=0.199V+265より
 X=(0.199×543+265)/235×100=158
・多段階評価点:Y=2+2.5/61×(X-100)=2+2.5/61×(158-100)=4.3

 この省エネ達成率並びに多段階評価値の算定方法から分かるように、省エネの評価は同種の機能を有している冷蔵庫の比較をする場合に、どちらが省エネかを見ることに使えることになります。冷蔵庫に特別な機能を求めていない方で、単に省エネの機種を選びたいと思われる方は年間消費電力量を見るのが一番良いと言えます。 

販売されている製品の省エネ評価

 資源エネルギー庁の「省エネ型製品情報サイト」のデータから、現在販売されている製品において、多段階評価点がどのような傾向になっているかについて、定格内容積が同様の製品で調べてみました。冷蔵庫の機能は様々で、いろいろな付加機能がついていると思われますが、ここではそれらを無視して、定格内容積だけで多段階評価点の傾向をメーカー別に集計しました。下図に最も製品数が多い「定格内容積450L以上500L未満」の代表機種において多段階評価点ごとの製品数をメーカー別に集計したものを示します。

表-4 メーカー別、多段階評価値別の製品数( 定格内容積450L以上500L未満 )

 表の見方として、例えばAQUAは多段階評価点「3.5」の製品が5製品あることを示します。製品数により色分けで示しており、青系は製品数が少なく、赤系は製品数が多いことを示しています。パナソニックは多段階評価点「2以下」が10製品あり、最大でも「4.0」以上の製品が2製品です。一方、三菱電機と東芝は多段階評価点「4.0」以上はいずれも10製品あることが分かります。また、最も評価が高い「4.5」の製品は東芝製であることも分かります。

まとめ

 冷蔵庫の定格消費電力は比較的小さなものですが、1年中稼働しているため年間消費電力量は大変大きくなる傾向にあります。そのため、省エネ型の機種を選ぶことが重要となります。冷蔵庫の省エネ性能は年々向上しており、10年前と比べて40%以上の省エネとなっており、新しい製品に買い換えることで大きな省エネ効果が得られます。

 冷蔵庫の省エネを表す指標として省エネ基準達成率及び多段階評価値があり、これらを参考にして選定することが必要です。省エネ基準達成率は各貯蔵室の冷却の度合いを考慮して換算した「調整内容積」を用いて算定された基準エネルギー消費効率を、当該製品のエネルギー消費効率で除して算定されています。

 そのため、省エネ基準達成率を見るときは、同様の容積、冷却機能を持つ冷蔵庫の比較に用いるべきであり、異なる容積や冷却機能を持つ製品を比較するべきではありません。もし、単に省エネを求めるのであれば、年間消費電力量で比較して購入すべきということになります。

<参考文献>
1)環境省、省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」
   https://ondankataisaku.env.go.jp/shinkyusan/ 、 閲覧日2021年7月30日
2)1999年通商産業省告示第704号(制定)「電気冷蔵庫のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改定2019年7月1日経済産業省告示第46号
3)2006年経済産業省告示第258号(制定)「エネルギー消費機器の小売の事業を行う者その他その事業活動を通じて一般消費者が行うエネルギーの使用の合理化につき協力を行うことができる事業者が取り組むべき措置」、最終改定2020年経済産業省告示第243号
4)経済産業省、資源エネルギー庁、省エネポータルサイト、省エネ型製品情報サイト、https://seihinjyoho.go.jp/、閲覧日2021年7月30日